ようこそ、『鎮守府の日常』へ。
この前書きはノリで書いているものだから、まず読んで落ち着いて欲しい。
うん、「また」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、この文章を読んだ後、君は、きっと言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれると思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい…
そう思って、この前書きを作ったんだ。
じゃあ、本文に行こうか。
提督執務室―――
「…というわけで、陸奥を暫く秘書艦に充ててやって欲しい」
陸奥との会話を終えた長門は、早速提督に陸奥を秘書官に起用する進言をしていた。
「…というわけだが、問題あるか?扶桑」
長門の進言を受けた神林提督は、隣に立つ『現』秘書艦の扶桑に問う。
陸奥を『秘書艦にする』という事は扶桑を『第一艦隊旗艦から外す』という事である。
本人の了承もなしに、というのは気が引けた。
「そうですね…私としては、特に問題はないと思いますが」
顎に手を当て、今後の予定を思案していた扶桑は肯定の意を示した。
その返答を聞いた彼は、改めて思案する。
元々、此処の艦隊では第一秘書艦こそ扶桑に固定されているが、入渠等で扶桑が不在の際は他の艦娘が交代で秘書艦を勤めている。
その結果この艦隊に所属している艦娘は任期の長短こそあれど、ほぼ秘書艦を経験しているのだ。陸奥も例外ではない。
そう、普段なら問題は無い…のだが、現在は南西諸島海域を攻略中なのだ。
敵海域攻略中に、むやみやたらに第一艦隊の旗艦を変えるのは戦略・士気共に問題があるので、少々慎重になる。
尤も、今回の話題に上がっている『陸奥』は戦艦としても破格の性能を誇る『長門型戦艦』の2番艦だ。
その性能・装備共に姉妹艦の長門となんら遜色はない。実力は十分。
このタイミングで第一艦隊に組み込み、艦隊の主力として長門と共に二枚看板を張る事が出来れば、現海域の攻略にも大きく貢献する事になるだろう。
今後も艦隊の主力として活躍してもらう為にも、早いうちに第一艦隊に組み込むのもアリか。
「…そうだな、調整してみよう。細かい日程は扶桑に任せる。引継ぎもあるだろうからな」
「了解しました。早速調整してみますが、遅くとも数日後には」
「だ、そうだ。長門、それで良いか?」
「十分だ。ありがとう、提督。扶桑にも世話をかける」
「いえ、お互い様ですから」
安心したように礼を言う長門に対して、穏やかな笑顔で応える扶桑。
彼女にも『大切な妹』がいるので、長門の気持ちは大体分かるのだ。
「…やはり、気になりますか?」
長門の礼に応じつつ、扶桑が問う。勿論陸奥についてだ。
「そうだな…やはり、心配にはなる。失礼だが提督に扶桑、貴方達は陸奥の『最後』を知っているんだよな?」
長門の言葉に、提督の眉が動き、扶桑が顔を顰める。
『戦艦陸奥』の最後は、少々特殊な『曰く付き』のものだった。
「…例の『爆発事故』の事、だよな」
「確か、爆発の原因は未だに解明されていないんでしたよね?」
提督と扶桑の言葉に頷く。
「あぁそうだ。『弾薬の自然発火による誘爆』や『敵国スパイの工作』に『乗組員の放火』なんて話もあるが…大事なのはそんな事じゃない」
「…実戦に一度も参加することなく沈んだ、という事か」
長門の表情から察するに、そう言うことなのだろう。
「そうだ、そしてコレはあくまで私の推測なんだが…あいつは自信が無いんだと思う。私とあいつは、如何しても比べられてしまうから」
長門の言葉に頷く。
長門と陸奥は同型艦だけあって基本性能・装備共に殆ど一緒だ。
※唯一、『運』というステータスが違うようだが、それによって具体的にどうなる、というデータはない。
一応『命中及び回避の補正に関わるらしい』との報告もあるが、命中も回避も装備によって強化が出来るため、何とでもなる。
大体、どれ程『命中』や『回避』か高かろうが、『攻撃を外す』事もあるし『攻撃に当たる』事もあるのだ。
しかし、姉である長門が大戦を戦い抜いた猛者であるのに対し、陸奥は実戦に一度も参加することなく謎の事故で沈んでしまった。
指揮官達が二人を比べた際、どちらをより頼もしく感じるか…考えるまでも無い。
先程の会話を思い出す。
陸奥は、明らかに自分を警戒していた。そして長門と親しげに話す自分を複雑そうに見ていたのを覚えている。
「優秀な身内に対するコンプレックス…という奴か」
無意識に口に出した言葉に、長門が頷く。
「そう言うことになるんだろうな。でも、私にはどうしたら良いかわからないから…」
「長門…」
落ち込む長門の肩に、扶桑が優しく手を添える。
扶桑には長門の気持ちも、陸奥の気持ちも何となく理解する事が出来た。
自身にも同型艦の妹がいるし、自分達『扶桑型戦艦』は諸々の事情で他の戦艦と比べて劣っている事が多い。
だが扶桑は、今の自分に不満も不安も無かった。なぜなら―――
「安心して。提督に任せておけばきっと大丈夫だから」
「…さらっと責任重大な発言をするなよ、扶桑」
扶桑の言葉に、提督が苦笑する。
「あら、今回の件は提督が一番適任ですよ?」
「そうだな…提督、宜しく頼む」
「いや、確かにそうかも知れんが…あまり期待するなよ?」
扶桑と長門の言葉に、手を振ることで応える提督。
―――これは『期待』ではなく、『確信』なんですけどね。
口に出した所で彼は苦笑しかしないだろうから、扶桑は浮かんだ言葉を心の中で呟くに留めることにした。
陸奥がメインだっつってんのに、陸奥が出てこないという。
いや、思いのほか筆が進まず、こんな短い文章ですが一先ず更新することにしてしまいました。
…文才って何処かに売ってませんかね?
次回こそ、次回こそむっちゃん無双にしますので!
※お知らせ
今作を更新時点でUAが29000突破、お気に入りも700突破。
更に日間、時には週間ランキングにもちらほら載る様になりました。
それもこれも、読者である皆さんのお陰です。本当にありがとうございます。
話数も増えてきたので、そろそろ話の時系列や提督の設定等の説明をしようかなと思っています。
短い文章になると思うので、恐らく『活動報告』を利用する事になると思います。
時期は未定ですが、宜しくお願いします。
12月4日追記:本文の内容を鑑み、尚且つ後編が異様に長くなったのでこの話を『閑話』とし、今後更新する予定だった『後編』を二つに分け改めて『中編』『後編』として更新することにいたしました。ご了承下さい。