“自称”何でも屋の幻想郷―――生活   作:牙の道化師

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暇人が通りますよー。


人間と妖怪の違い―――なんてのは無い。

はてさて、あの後3人は妖怪を探す事になった。

時刻は丑三つ時―――では無いが、余りにも行動が遅いとすぐその時間帯になる。

 

「それで?当てはあるの?」

 

鈴仙が尋ねる。

 

「ある訳が無い。」

 

直人はやれやれと言う仕草をする。

 

「じゃあどうするウサ?」

 

てゐが面倒くさそうに尋ねる。

 

「少なくともあの依頼人達でも来れる場所じゃ無いと意味が無いな。」

「どうしてウサ?別に無理に来ようとしても無駄だと思わせれば良いと思うけど?」

「珍しく正論ね?」

「うるさいウサ。」

 

確かにてゐの言葉は正しい。

あの依頼人達が妖怪を殺したいと思っていても、その場所に行けないと解れば諦めるだろう。

 

「それも有りだとは思うけど、結局は問題の先送りにしかならないんだよ。仮にそれで上手くいったとしても、今度は強行手段にでるかも知れない。それこそ、見境無しで。」

「………ちょっと考えが浅はかだったウサ。」

「まぁ仕方無いとは思うがね。ただ妖怪に文句を言いたいだけならその方法でも良いんだけど、完全に妖怪を嫌ってるからねぇ。」

 

本日2回目のため息。

そんな会話を聞いていた鈴仙が不意に尋ねる。

 

「貴方は―――妖怪の事をどう思うの?」

 

その言葉に直人は、こう答えた。

 

「どちらでもない、かな。」

「どちらでもない?」

 

鈴仙は言葉の意味を捉えられない。

直人は理由を告げる。

 

「だってそうだろ?人間の中にも妖怪より恐ろしい狂気を持った奴も居る。自分の欲望の為に命を奪う奴だって居る。妖怪は本能の赴くまま行動し生きている。並外れた力を持っている。結局の所、どちらも違うようで同じ存在なんだよ、俺にとってはだけど。」

 

―――だから、好きでも嫌いでもない―――

 

彼はそう告げた。

 

「………じゃあ、貴方はどういった奴に好意を持つのよ?」

「簡単な事さ、信念を貫き確固たる意思を持っていて―――相手の痛みが解る奴に好感を持てるね。君は違うのかい?」

 

寂しげな笑顔を浮べ、直人は尋ねた。

 

「―――私は……。」

「………いい加減に歩くのも疲れたウサ。」

 

てゐが流れを折った。

 

「そうだなー、少ししみっったれた話だったなー。で?そろそろ出口か?」

「え……?えぇ、そろそろ見えてくるわ。」

「結局何処で見つけるのさ?」

 

直人は少し考えて―――思いついた。

 

「霧の湖に続く林道に行ってみようか。」

 

そうして、一路は林道に向った。




結局、彼が言った人間なんて存在しているのかさえも怪しいですが。

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