転生オリ主チートハーレムでGO(仮)~アイテムアビリティこれだけあれば大丈夫~   作:バンダースナッチ

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第11話

 戦争とは政治手段の一つである。

 

 では政治の目的とはなにか? 手段と言うものはその目的があってこそ初めて成り立つものである。

 この質問には多くの回答が存在するのだろう。それこそ人の数ほどに。

 

 人々が平和に暮らせるように、国家繁栄のために、国が飢えないように、より富を得られるように。

 その目的とはその国がその国にとっての利益になる事をする。ここに答えが至るのではないかと考える。

 

 では戦争とは国にとっての利益になり得るという事なのか? 答えはイエスであり、ノーでもある。勝つか負けるか、当初の予定通りか否か、範疇の被害かそうでないか。しかし共通するのは結果としてだ。

 

 では戦争というものを良しとするのか? 政治としてみればそれは正しいのだ、戦わなければならない時もあれば、戦うことによって得られるものもあるし、守れないものもある。

 

 だが実際に戦争に参加するもの、そして参加させられる者たちにとってはどうか?

 戦いによって国が富むと考えているのか? だから戦えると考えているのか? だから人を殺せるというのか? だから死ねるというのか?

 私には分からない。いや、分からなくなったというべきか。今目の前に広がる光景とは今まで私が人生で学んだ事を否定するよう現実を突きつけてくる。

 

 

 人の命とはかくも軽いものなのか……いや、その認識すら甘いのかもしれない。

 

 

 

 

 ゼルテニア城にてゴルターナ公を始めとする南天騎士団の幹部組と会った翌日、私は父、そしてリシューナ子爵と共に出陣を果たしていた。

 

 現在の戦争の流れは数十万の軍同士がぶつかり合う戦いは少ない。そういった大会戦に発展するまでに砦を奪いあったりする小競り合いが続いくのだ。

 南天騎士団の兵数は10万以上にものぼる。だが、それだけの兵士が一度に入れる場所などそうそう存在しないのが現実だ。

 ゼルテニア城を代表とする各領地の本城、ベスラ要塞などの要塞規模の拠点、その位だろうか。このうち元々の常備軍は1万程度、それ以外では平時では農作業やその他の業務に就く人間が2万程、そして残りの7万は傭兵や農民など兵士階級ではない者たちだ。

 つまり砦や小城などはそれだけの兵員を納めるような設計はされていないのだ。

 しかし、そういった拠点は兵站として扱われ、補給物資の集積や後方支援等に活躍することになる。

 

 つまり、来る大会戦の時にどれだけ有利な場所の拠点を落としていくかが重要になってくるのだ。

 

 今回の戦闘ではオルランドゥ伯率いる3万を主力とし、ゼラモニア大平原へと進出。私の参加するリシューナ子爵を隊長とする別動隊は4千の兵を率いてザーゲイト砦を攻撃することになった。

 この砦の予想兵数は千名程、砦と言うよりは小規模な城とも言えるレベルではあるが、正面の門は固く閉ざされ、両脇に弓塔が備えられている。

 地図上の位置で言えば、ゼラモニアの中心部にある大平原から北側に位置する場所にある。重要度でいえばさして高くは無いが、ここを抑えられれば現在鴎国側の重要拠点であるナルビナ城塞へ一歩近づくことが出来るようになるのだ。

 

 

 

 砦よりやや離れた位置、本陣に私は居る。現在何をしているかと言われれば延々と支援魔法を使っているところだ。

 プロテジャとヘイスジャを使い補助をかけて行く、1部隊にかけ終わったら次の部隊にという感じだ。私の隣にはアイテム士が居り、時折エーテル使用と休憩を挟みながら作業を続けている。

 既に砦攻めを開始して2時間を経過している。主だった部隊への補助は終了しており、多少の余裕が出来始めた頃だ。

 

 城攻めのセオリーとして守兵の3倍の兵力を用意するべきと言われている。いや、もっと言えば城攻め等するべきではないとさえ言われているが……。

 この時代、この世界においての攻城戦も元の世界のそれとあまり変わりはない、ただそこに色々とファンタジーな光景が見えるだけだ。

 

 寄せ手が壁へ近づいたときに矢と魔法が飛んでくるのだ。炎に雷、それに氷と……その魔法によってできた3色の光りを思わず幻想的と思えてしまったが、それは矢と同じく、いやそれ以上に人の命を奪う光であった。

 しかし魔法は魔法、使うには魔力を消費するのだ。故に初手に撃たれてからは要所で撃たれるだけで、やはり最も多い攻撃手段は弓矢なのだろう。

 

 こちらは梯子で城壁を攻めたり、矢で応戦したり、破城槌をもって正門を破壊しようと試みている。

 多少の距離と兵が殺到している事から詳しくは見えないが、それでも兵が城壁登ろうとし、それを防ごうと守兵との戦い……人が落ちていく様が伺える。

 

「これが……戦場です」

 

 その光景に目を向けていると後ろから声をかけられた。相手はダレンさん。

 そうして初めて自分の手が震えていることに気がついた。

 

「皆が戦っています、国のために……あるいは故郷のために」

 

「僕には分からない……国や故郷が大事なら戦わなければいいだろうに」

 

 その言葉にダレンさんは答えてはくれなかった。ただゆっくりと目を閉じ、何かを噛み締めるように押し黙っている。

 私にとって戦争とは遠い世界の話だった。テレビの向こうの話。決して歩いてたどり着ける場所ではない、遠い過去か遠い国の話だ。いや、今でもここからあの場所まで目に見えない壁があるとさえ思っていた。

 

 

 日が傾き始め、1日目の攻めが中止されることになる。合図である鐘を鳴らし、部隊が後退していく。

 私は今の役割を考えると戻ってきた人たちを回復していくべきか、そう考え移動しようとした所、今度は父から呼び出しがあった。話の内容はタイミングを考えれば予想出来る。そしてその予想は残念ながら当たっていた。

 

「明日の砦攻めに参加してもらいたい」

 

 リシューナ子爵を始め、ダレンさんやその他数名の士官らしい人たちが集まる部屋で、父はそう口にした。

 本来の予定では私は今回の戦いでは直接的な参戦はする予定では無かったらしい。しかし、斥候からここより北の拠点から援軍が出た可能性が高いそうなのだ。数はそれほど多くはないらしいが、それでも砦と外からの挟撃は避けたいのは当然の事だ。

 リシューナ子爵を始め、数名はあまりいい表情をしてはいない。だが、ここに私が来るまでに結論は出ているのだろう、ここで私を交えて参戦の是非を論じるつもりはないらしい。

 

「部隊はダレンが率いる、お前の身も守ってくれよう……やれるか?」

 

「はい……大丈夫です、多分」

 

「そうか、なら今日はもう休んでおけ。それと、無理はするな」

 

 戦争に参加させておいて無理をするなとはどういう思考なのか、一瞬問いたくもなってしまった。だが、それも父としての優しさなのかもしれないと無理やりに結論をつけて私は休むことにした。

 

 

 

 緊張と不安、様々な感情が整理できずに中々寝付けずに居た。用意された簡易的な天幕から抜け出し、夜風に当たる事にした。陣地内では所々に篝火が用意され、思いのほか明るい状態を保っていた。流石に陣を抜け出すことは出来ないため、あまり人目につかないようにゆっくりと歩いていく。

 そこで視界に入ってきたのはこちらに向かってくる男性、目立つ長身と金髪からその人がリシューナ子爵である事はわかった。

 

「なんだ、まだ起きてたのか?」

 

「ええ、ちょっと寝付けなくって」

 

「……そうか。だが無理にでも寝ておけよ、寝付けないにせよ目を閉じて横になってるだけでもいい。そうでないと明日持たんぞ?」

 

「そうですね……もう少ししたら休みます」

 

 短い会話を済まし、私はその場を離れようとした。子爵の横を通り過ぎ、少し進んだところでどこに向かって放った言葉か、独り言のような声が漏れてきた。

 

「すまないな……本当はお前のような子供が戦場に出る必要なんてないんだ。そういうのは私達大人の役目だ」

 

「それでも、僕も貴族として生まれてしまいましたから」

 

 人は生まれを選ぶことは出来ない。しかし、そこには生まれながらに受け入れなければならない事もあるのだ。この時代はそれが特に顕著ともいえるかもしれない。私が生まれをどう思おうとも、周囲はそれを突きつけてくるのだ。ならばそれを変えられるまでは私は今ある現実に向き合う事も必要なのだろう。

 

「生まれてしまったか……全く、難儀な話だな」

 

「そうですね、同感です」

 

 リシューナ子爵そこでやっと初めて会った時、若干軽く見えるような表情に戻っていた。そして最後に一言……。

 

「トリスタン! ……死ぬなよ」

 

「……はい!」

 

 

 

 

 ――翌日になり、再び砦攻めが開始される事になった。私は第2陣にて攻撃に参加、魔法で壁上に居る弓兵や魔道師を狙う事になった。

 

 第1陣は昨日と同じように既に攻撃を開始している。私の身長ではその様子を伺う事は出来ないが、砦からは怒号が響いている。

 視線を上げて僅かに見える視界には弓塔が見える。数十人程だろうか? 門に殺到しているであろうこちら側に、まるで雨のように矢を放っている。そしてその中に私も進むのだと思うと心が恐怖染まってくる。手にした杖を握り締め、目を閉じて集中をしていく。

 

 そして指揮を執っているダレンさんからついに攻撃の指示が出された。

 

「さあトリスタン様、行きましょう……決して私や近くの兵たちから離れないで下さい。それと魔法の射程ぎりぎりまで離れていて下さい、不用意に壁に近づけば狙い打たれます」

 

「うん、守備は任せるよ」

 

 繰り返すことになるかもしれないが、戦場に置いて魔道師とは優先的に狙われる職業だ。黒魔法を始めとする攻撃魔法は防御側からすれば非常に脅威であるし、白魔法などの補助もそれを潰せば相手側の戦力アップを根本から潰すことが出来る。当然それはこちらも同じことがいる。相手の魔道師は優先的に排除する。そうでなければ被害は広がる一方なのだから。

 そのため私の側には10人以上の重装兵が固めている。それは父の配慮かそれは分からない、だがそれでも今の私には僅かでも周りの力が必要なのだ、この配置には感謝するべきだろう。

 

 そしてついにダレンさんが号令をかけ、私達は攻撃に参加をした。

 

「よし、第2陣続け!」

 

 その一言で雄叫びを上げながら進行をしていく。私は周囲を固める兵たちの速度に合わせて隊の後方から進んでいく。

 

 砦へと近づくにつれてその姿が見えてくる。そして再び塔の方を見たときに僅かな違和感を感じた。

 一心にこちらへと射撃している兵の中に、砦の内部に合図を送っている男が見える。私達が来た事を知らせる事なのか? だがその視線は私達のほうとは別方向……西側に向かれている。

 そちらには小さな丘を挟んで森があるだけだ、畏国の兵は配置されていない。

 そして、砦の中から煙が上がり始めた。

 

「もう砦を落とした……?」

 

「いえ、まだ門も破っておりません……何かの合図でしょうか?」

 

 私の護衛をしてくれている重装兵の一人がそう返してくれた。

 合図……そして不自然な方向を向いている塔の兵……もうこれだけで嫌な予感がしてくる。急いでそれをダレンさんに伝えに行く前に戦況は動き出してしまった。

 

「西側より敵兵!」「なんでだ!? 一体どこから来たんだ!」

 

「砦より敵兵が打って出てきたぞ!」「くそ! 前の奴らが邪魔だぞっ!」

 

「何をしている! 落ち着け! 第一陣の後退を援護しろ!」

 

 攻撃の第2陣に合わせての砦からの攻撃、そして別方向からの攻撃。

 盤上で見るならば単純な作戦なのだろう。しかし現実はそうではない、そういった事態に対して適切な行動を取れるだけの教育を受けたもの、そして判断出来るだけの経験を積んだものだけではない。ならばどうなるか? 動揺と混乱は広がり、それは致命的な隙となって私達に襲いかかることになった。

 

「いかん! トリスタン様、後退を! 何をしている、外に出てきたなら条件は同じだ! 直ぐに反撃にかかれ!」

 

 ダレンさんの叫びが周囲の声でかき消されそうになりながら届いてくる。

 既に私たちは砦に十分以上に近づきすぎた、そして狙われるのは……。

 

「いたぞ! 魔道師隊を潰せ! 残りは弓兵を中心に散らしていけ!」

 

 私のいる方には所属する黒魔道士が集まっている。数は50程だが、それでもこの場で言えば倒すべき集団に当たるだろう。

 当然それを守る兵は付けられている……しかし、今回はタイミングが非常に悪かった。野戦であれば平面からの攻撃に対してもっと兵を厚く出来ただろう。しかし今回は砦攻めが主体だったのだ、ならば来る攻撃は上からが主となる。各員の間に弓を防ぐ盾を構えた歩兵が配置されている状態なのだ。

 

 鎧をつけたチョコボに乗る……この世界においての騎兵が突撃を仕掛けてきた。数がどれほどかは分からない、だがそれでもその質量は私の周囲に居た重装兵だけで止められるものでは無い。

 一人ははじかれ、一人は槍を突きつけられ、一人は剣で首を撥ねられ……私の視界は一瞬にして地獄のような光景へと変わり果てた。

 

「敵の歩兵を抑えろ! 急いでここを潰すぞ!」

 

 敵の指揮官はしきり叫びながら指示を飛ばしている。

 私の居た場所を突破した騎兵はさらに後ろに居た魔道師隊へと攻撃を仕掛けて言っている。応戦も始まっているが、そもそも魔法とは詠唱に多少なりとも時間がかかる。ここまで接近されてしまえばもはや無力化されたようなものだ。

 護衛役の兵たちはとにかく後退しろと叫び、それをさせまいと突撃をしてくる。

 

「早く後退を――!」

 

 残った護衛の兵が私を掴み立ち上がらせようとした。

 

 しかし次の瞬間にはその胸から剣が生えるように貫かれていた。

 

「あ――あぁ……」

 

 吹き出した血液が私に降り注いでくる……視界は赤く染まり、目の前にいた人は人だったものに変わり果てていく。

 腰が抜け、地面に座り込んでしまう。その衝撃で失禁をしてしまったが、最早それを気にする意味はないのだろう……次に視界に入ってくるのは、今目の前の兵を殺した人間。

 

「子供だと!? なんでこんなところに……

だが……悪く思うな」

 

 剣を上段に構え、それが振り下ろされていく

 

 ただゆっくりとその瞬間が過ぎていく

 

 避ける? 防ぐ? 逃げる? 

 

 どれも私には選ぶことが出来ない

 

 しかし、事ここに至って私は理解した

 

 死とは平等なのだ、今この瞬間に命の重さなど等しく無いのだ

 

 ああ、良かったのかもしれない。彼らがこの思いをさせなくて

 

 願わくば……これからもそうであって欲しい

 

「何をしてやがる!」

 

「なにっ――があ!?」

 

 私を殺そうとしていた兵は、また別の兵に殺された。

 その兵はこちらえと近づいてきた、兜を脱ぎ捨て、私を掴みあげて強引に立たせて来た。その顔は……ゼルテニア城で見た顔だった。

 

「お前はあの時のガキ……何してやがる、早く後退するぞ!」

 

「……あ、うぅおぇ」

 

「おい! 大丈夫か!?」

 

 胃の中にあるものぶちまけ、涙が溢れてくる。

 吐しゃ物特有の臭が立ち込めてくる、だが……それが何程マシなことか。

 血と鉄の打ち合う臭いに比べればどれだけ人間的な臭いか……。

 

 ああ、当然の事ながら今わかった……私は死にたくない。

 ならばどうする? 決まっている、私を殺そうとするならば等しく殺してしまおう。

 今この瞬間に命の重さがないのなら……何を思う必要がある。

 

「おい! とにかく下がるぞ、歩けるか!? くそったれ、急げまた騎兵が来るぞ!」

 

「ああ……わかったよ。あいつらが僕を殺そうとするんだ……」

 

 魔法を行うことなど幾度も行った。

 何も変わらない、ケアルを自分に使うのと、ベヒモスにフレアを撃つのも、人間に攻撃魔法を使うのも、何一つ変わらない行為だ。

 

「おい……何言ってるんだ」

 

「虚空の風よ、非情の手をもって 人の業を裁かん  ブリザラ」

 

 巨大な氷塊が空中に現れ、先ほど私たちを超えて後方へ向かった敵へと飛び進んでいく。

 その氷塊にぶつかり、10程の騎兵が落下、もしくは倒れていった。

 

 そうだ、なんていうことはないのだ。全て同じ条件なのだ。

 

「くっ! あの魔道師を殺せ!」

 

 皆等しく死ぬのだ、私も彼らも。

 

「地に閉ざされし、内臓にたぎる火よ 人の罪を問え  ファイジャ」

 

 爆音と共に、巨大な炎弾が敵に降り注ぎ燃え盛っていく。

 人の肉が焼け焦げる臭いが鼻についてくる、だが今何を思う意味がある。

 

 歩みを砦へと向ける、敵騎兵の一部が砦内へと後退していく様子が見える。

 だが、安全な場所など無いのだ。

 

 新たに魔法を唱えようとしたところで、再び嘔吐をしてしまう。体にあるのは酷い疲労感、魔力切れだろうか?

 

「おい! もう無理だ、下がるぞ!」

 

「……エーテルを」

 

「は? おい、何言って……もうやめとけ!」

 

「うるさい! あいつらが僕を殺そうとするんだ! だったら……だったら殺される前に殺さなきゃならないだろ!」

 

 自分でも驚く程の大声が出た気がする。目の前の男は目を丸くしている。

 驚いた様子であったが、男はハッと気づき叫んできた。

 

「やばい! おい逃げろ!」

 

「何を――え?」

 

 左肩に衝撃がはしった。見ると不自然なオブジェクトのように矢が突き刺さっている。

 鉄という異物が入り込んだためか、体から熱が奪われていく感覚がする。そしてそれを強引に引き抜くと今度は焼けるように熱く感じられる。

 だが構うものか。これも当然なのだ、私もまた命に重さなどないのだから。

 

「おい……お前……」

 

「持ってるエーテル全部寄越せ」

 

 やっと男はそれに従ってくれた。持っている数は一つだったが、それを奪うように飲み干す。

 僅かながらに体に魔力が戻ってくる。ああ、そうだ、私もエーテルなど沢山持っていたのだ。

 

 人ごとにように考えながら、次はこちらへと弓を放ってくる壁へと視線を向ける。

 煩わしい。本当に煩わしい。

 

「大気に潜む無尽の水、光を天に還し 形なす静寂を現せ  ブリザジャ」

 

 先ほど出した氷塊よりもさらに巨大な塊、それが複数個現れ……壁にいる弓兵たちへと落ちていく。

 壁の一部を崩しながらその姿が見えなくなっていく。

 

「あ……あはは、そうだ、全部壊せばいいんだ」

 

「おい、何言ってるんだ……おい!」

 

 ハイエーテルを取出し、それを飲み干していく。次いでアビリティを変更、時魔法に。

 次の狙いを定めようという時に、次は私の体が吹き飛ばされた。

 自分の左半身が焼け焦げている……ああそうだ、相手にも黒魔道士がいるならば当然と言える。

 だが、私はまだ動ける。立ち上がれるのだ、ならば戦いは終わっていない。

 

 今まで以上に魔力を練り上げていく。徹底的に潰せばいいのだ、全て、全て、全て!

 

「時は来た。許されざる者達の頭上に 星砕け降り注げ――」

 

 いくつもの矢の雨が降り注いでくる、足に、腕に刺さっていく。だが、私の魔法は完成されたのだ。

 

「――メテオ!」

 

 虚空より隕石が落ちていく。塔を 門を 壁を 敵を 人を壊し、殺しながら。

 

 笑い声が聞こえてくる、こんな時に笑うのは誰なのか? それが自分から発せられている事にも気付けず、私は後ろから殴られる感触で意識を絶たれた。

 

 最後に視界に入ったのは、悲しそうな表情をするダレンさんだった。


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