仮面ライダーを受け継ぐ者   作:剣 流星

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どうも、剣 流星です。
リアルがとても忙しく、連休中にどうにか執筆時間が取れたので投稿します。
では外伝中編をどうぞ~。


外伝3プラネタリアン~チェイス、機械の少女との出会い 中編 ~

 

少女「おめでとうございます!あなたは250万人目のお客様です!」

 

 

ニコリと笑顔をチェイスに向けてくる目の前の少女。長い髪を二つに分けて結ぶ俗に言うツインテールと呼ばれる髪型で、耳の部分にインカムのような機械を身に付け、服装はコンパニオンを思わせるような服を着ていた。

 

 

チェイス(何故、こんな廃墟に人間の少女が居る?この辺り一帯は30年以上前に封鎖されて、無人のはずでは?)

 

 

チェイスは先程まで廃墟を探索して得られた情報で、この辺り一帯が封鎖されて無人になっている事を知っていたため、少女が一人でこんな廃墟に居る事に疑問を抱いた。

 

 

少女「あ、あの・・・・も、申し訳ありません!本当に申し訳ありません!!」

 

 

黙って考え込んでいたチェイスに対して少女は何を思ったのか急に謝りだした。

 

 

チェイス「・・・・?(な、なんだ?急に謝り出し始めたぞ?)」

 

 

急に謝りだした少女に対して訳が分からず、黙ってその謝罪の言葉を聞くチェイス。

 

 

少女「あの・・・本当は違うんです。お客様は、本当はちょうど2497288番目のお客様で、2712番もごまかしてしまいました!ですが・・・きっと、喜んでいただけると思って・・・」

 

 

とめどなく喋り続ける少女。チェイスはその少女の注意深く観察すると、不意にその少女対して人間としてはおかしい違和感のような物を幾つか感じ取った。

 

 

チェイス(・・・まさか、この少女)

 

少女「あの、お客様?」

 

 

黙ったまま自分をじ~っと見つめるチェイスに対して、どうしたのかと首をかしげ声をかける少女。

 

 

チェイス「・・・おまえは・・・ロボットなのか?」

 

 

チェイスは目の前の少女がロボットなのかとたずねた。ロボット、それはロイミュードであるチェイスと同じ、人の手によって作られた人の姿を形どった機械。チェイスは目の前少女から発せられる、人間としては不自然ないくつかの事柄から少女がロボットなのだと結論づけた。

 

 

少女「はい、ロボットです。」

 

チェイス「・・・やはりそうか。」

 

 

チェイスは少女の返事を聞き、少女がロボットならば廃墟にいた事も、少女から感じる人間としては不自然な事柄にも納得がいった。

 

 

少女「当館解説員の、「ほしのゆめみ」と申します」

 

少女はそう言って微笑むと手に持った何かを差し出した。

 

 

チェイス「・・・これは?」

 

 

少女が差し出された物、それは蛍光灯や電源コードなど様々なガラクタを束ねてケーブルで縛った物だった。

 

ゆめみ「花束です。ご来館の記念にどうぞお受け取り下さい。」

 

チェイス「は、花束?」

 

 

少女から差し出された花束と呼ばれるガラクタの束を受け取り固まるチェイス。

 

 

チェイス「・・・・・・・・・・・」

 

ゆめみ「あの・・・・お客様?」

 

チェイス「・・・・・・・・・・・・・」

 

ゆめみ「あの・・・・・も、申し訳ありません!実を申しますと、本物のお花が用意できなかったんです。」

 

チェイス「本物の・・・花?」

 

ゆめみ「はい。お花は当デパート1階の生花売り場でお求めできます。ご来店いただかなくても、お電話一本で迅速に配達されるのですか・・・この頃売り場まで電話が通じないんです。ですから自分で作ったんです。」

 

チェイス「?(このロボット・・・この辺り一帯が30年以上も前に封鎖されて、無人になっているのを知らないのか?)

 

 

チェイスは目の前で喋り続けるロボットの少女を見ながら考えた。このロボットの少女はこの都市が閉鎖された事を知らず、この場所に居る事について。そしてある考えにたどり着いた。

 

 

チェイス(・・・・置き去りにされたのか。)

 

 

チェイスは自分の考えに対して悲しい思いになり、目の前のロボットの少女に対して何とも言えない顔を向けた。

 

 

ゆめみ「あの・・・お客様?どうなさいました?もしかして、ご体調がすぐれないのですか?」

 

 

黙ったまま立ち尽くすチェイスに対して、「体調がすぐれないのでは?」と勘違いしたゆめみは、表情を伺うようにしてチェイスの顔を覗き込んだ。そんなゆめみの声を聞いてハッとなったチェイスは、ゆめみに向けていた何とも言えない表情を見られまいと、ゆめみから視線を外し、周りを見回した。

 

 

チェイス(・・・・・この場所は・・・・この建物を外から見た時に見た、ドーム型の部分の中みたいだな)

 

 

チェイスは今自分がいる場所を内部から見て、外から見た時に見えたこの建物のドーム状の部分だと確認した。

 

 

チェイス(・・・・電灯も空調も動いていると言うことは、自家発電機が生きているのか。椅子が並んでいて、中央にある機械は・・・・プラネタリウムの投影装置?なら、ここはプラネタリウムなのか?)

 

 

チェイスはこのドームの中心にある大きな機会、プラネタリウムある投影装置を見て、ここがプラネタリウムであると悟った。

 

 

ゆめみ「あの・・・お客様?」

 

チェイス「・・・・なんでもない。」

 

ゆめみ「そうですか。では、改めてよろしいでしょうか?お客様はちょうど29年と80日ぶりの客様です。ようこそ、花菱デパート本店屋上プラネタリウム館へ♪」

 

 

ゆめみはそう言って深々と頭を下げた。その後、チェイスはゆめみの長話を黙って聞きた。チェイスはゆめみの話を聞きながら、そのコロコロ代わる表情を見て思った。「この少女はもしかしたら自分のように人の心に近いものをもっているのでは?」と。

チェイスは機械生命体ロイミュードである。チェイスはその中でもナンバー000の番号を与えられた試作型のロイミュードであった。ロイミュードの中で唯一「人間を守れ」という基幹プログラムを組み込まれ、人間に対して反乱を起こした他のロイミュードから人々を守ったとプロトドライブであった。だがグローバルフリーズ時、ハートロイミュードに敗北したことで機能停止に追い込まれ、ハートに同じロイミュードである「友」として迎えられ、ブレン達による記憶消去や改造をうけ、ロイミュードの開発した戦士魔進チェイサーとして生まれ変わらされていた。そんな時、チェイスは進ノ介や霧子と出会い、戦いの中で霧子が身を挺して進ノ介を庇ったのを目の当たりにして以来、言動や行動に変化が発生した。その後、紆余曲折をえて、仮面ライダーチェイサーとして進ノ介と共に戦っい彼らとの触れ合いで人の心を学び、人に近い心を持った事を誇りに思っていた。

 

チェイスは進ノ介や霧子、剛達との触れ合いで人に近い心を持つことが出来たのだから、この目の前のロボットの少女も自分と同じ様に周りの人間とのふれあいで人に近い心を持つことができたのではと思った。現に、目の前で話をしているゆめみの話の中には、このデパートの従業員の事も含まれており、その事を話す時のゆめみがとても嬉しそうにしているのを感じ取り、かつてゆめみの周りにいた人達が、ゆめみを大切にしていた事がよくわかった。

 

だがこれほどにゆめみを大切にしていた人達が、30年近く経っても今だにゆめみを迎えに来ない事を変だと思い、その事について考え思考し、一つの結論を導き出した。

 

 

チェイス(迎えに来ない・・・と言うよりは来れない。おそらく、ここの従業員達はもう・・・・・・)

 

 

チェイスは自分の導き出した答えに対して物悲しいくなり目の前のロボットの少女を見た。少女はそんなチェイスを見ながら、チェイスに250万人記念の特別投影を見る事をすすめた。

チェイスはその話に対してOKを出し、投影が始まろうとしたが、投影装置・・・ゆめみが言う愛称「イエナさん」が故障していたため、投影が中止になり、チェイスは一旦この場所を離れる事をゆめみに言ってその場を後にし、ゆめみから渡されたガラクタの花束を持ってクリムの元へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリム「・・・損傷箇所は多かったが、肝心な部分は無事だった。少し時間がかかるが、トライドロンの修理は可能だ。」

 

チェイス「・・・・・そうか。」

 

 

クリムのトライドロンの修理状況を上の空で聞きながら、ゆめみからもらったガラクタの花束を見ながら頷くチェイス。

チェイスは別れ際にゆめみが「次に来るときはお客様の為に特別上映を行う」と笑顔で言い、チェイスはその言葉と笑顔が頭から離れずにいた。

 

クリム「・・・・?どしたチェイス。戻ってきてから心ここにあらずといった感じだが・・・何かあったのか?」

 

チェイス「・・・・実は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリム「・・・・置き去りにされたロボットの少女か。」

 

チェイス「・・・ああ。」

 

 

チェイスはクリムに今日調べてわかった事、そして置き去りにされたまま、帰らぬ主達を待ち続けているロボットの少女・ゆめみについて話した。

 

 

クリム「・・・・帰らぬ主を待ち続けるロボットの少女か。なるほど、きみの様子が戻ってきてからおかしかったのはその少女の事を考えていたからか。」

 

チェイス「・・・ああ。トライドロンが直り、このまま俺達が去っても、あの少女は今までと同じ様に帰らぬ主を待ち続けると思うと・・・哀れに思えてな。何とかしてやりたい・・・・・そう思えてならない。」

 

 

クリム「「何とかしてやりたい」か・・・・・・ふふふっ、君の口から他人を気遣う科白が自然と出てくるとは、君の自我も随分と成長したものだな。君を作った者の一人としてはとても嬉しい限りだよ。・・・・よし!明日、私もその少女に会ってみよう。」

 

チェイス「会うだと?」

 

クリム「君が気にしているそのロボットの少女と言うのが気になってね。」

 

チェイス「気になる・・・・気になるのはいいのだが、トライドロンの修理はどうするんだ?」

 

クリム「修理自体はシフトカー達だけで十分だ。私がいなくても問題ない。だからチェイス、明日は私をその少女の所に連れて行ってくれ」

 

チェイス「・・・・わかった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜が明けた、次の日。

チェイスは昨日クリムに言われたとおり、クリムを持って、昨日と同じルートでゆめみが居るであろうプラネタリウムへと向かった。その途中、昨日と同じように、ゆめみが使用しているであろうメンテナンスベットと、それに接続されている多くの機械が並べられている無人の部屋へと来ていた。

 

 

クリム「・・・ふむ、この設備は例の少女が使用している物なのか?」

 

チェイス「多分そうだろう。」

 

クリム「この辺り一帯の電源は落ちているはずだから、ここの機械を動かしている電源は、この建物に備え付けられている非常用の電源かなにかのおかげなのだろう。30近くも持つとは奇跡に近いね。実に興味深い!

少し調べてみよう。チェイス、私をモニター近くに近づけてくれ」

 

チェイス「わかった。」

 

 

チェイスはクリムに言われたとおり、手に持っているクリムを設備のモニターに近づけた。

 

 

クリム「では・・・・」

 

 

クリムはチェイスに持たれたまま、目の前にあるモニターを操作するために、シフトカーの1台を遠隔操作してモニターを操作し始めた。モニターが点滅し、様々な文字や数字が所狭しとモニターに表示され始め、それをクリムは次々と読み取っていく。

 

 

チェイス「・・・何かわかったか?」

 

 

自分の目の前のモニターに次々とデータが表示されて行くのをみて、自分の手の中にいるクリムに倒して訪ねるチェイス。

 

 

クリム「これは・・・・・実に興味深い!この設備に残されている最新の彼女のデータを見てみたのだが、自己診断プログラムと対人情報データベース、会話ルーチンに自我の発生の兆候らしきものが見られる!この娘は自ら自我を・・・人間の心を得ようとしている!」

 

チェイス「自我を・・・・人間の心を?それは本当なのかクリム?」

 

 

自分の手の中のクリムに目を向けながら、チェイスは昨日会話してゆめみが自分と同じように人の心を持っているのでは?と思った事は間違いではなかったを思った。

 

 

クリム「だが・・・・」

 

チェイス「?」

 

クリム「成長する彼女の自我に対して、彼女のスペックではそれを処理しきれないでいる。このまま自我が成長し続けたならいずれ限界が来るな。」

 

チェイス「限界が?!」

 

クリム「ああ。最悪の場合自己崩壊を起こしてしまうだろう・」

 

チェイス「自己崩壊・・・だと?」

 

 

チェイスはクリムの言葉を聞き、信じられないと言う顔をした。

 

 

クリム「とにかく、まずは彼女と接触しなければ話にならない。チェイス、彼女元への案内を再開してくれ。」

 

 

そう言ってシフトカーを設備から外しながらクリムは自分を持っているチェイスへ、ゆめみの元へと案内する事の再開を促した。

 

 

チェイス「わかった。」

 

 

チェイスはクリムに返事をすると、クリムとシフトカーを持って、ゆめみが居るであろうプラネタリウムへと向かった。部屋と出て長い廊下を歩き、プラネタリウムのある両開きの扉の前へと移動する。と、その途中・・・チェイスの耳にゆめみらしき声が聞こえてきた。

 

 

ゆめみ?「・・・・プラネタリウムはいかがでしょう?どんな時も決して消えることのない、美しい無窮のきらめき、満点の星々が皆様をお待ちしております。」

 

 

クリム「うん?この声は?」

 

チェイス「・・・おそらくあの娘だろう。」

 

 

プラネタリウムに居ると思ったゆめみの声がプラネタリウム室の中からではなく、廊下の先から聞こえてきたため、開けようとした扉の前から移動し、ゆめみが居るであろう廊下の先へと移動した。

廊下の先、そこはかつてこのプラネタリウムの受付だったと思わしき場所だった。ガラスが破れた扉とカウンターがあるこの施設の受付らしき場所でゆめみは、客の呼び込みの呼び込みらしきことをしていた。そんなゆめみをクリムとチェイスはしばらく黙って見ていた。

ガラスの破れた扉の脇で、吹き込んでくる雨に濡れるのも厭わず、微笑みながら、誰も訪れないであろうプラネタリウムの呼び込みらしき事をするゆめみ。その姿はまるで見捨てられた犬のように二人には見えた。

 

 

ゆめみ「こんにちは、お客様」

 

 

チェイス達に気づき、客の呼び込みを中断して声をかけるゆめみ。

 

 

チェイス「・・・何をしていたんだ?」

 

ゆめみ「はい。発声練習をしていました。いつお客様がいらっしゃっても良いように、万全の態勢でお迎えしなければなりませんので。」

 

チェイス「練習・・・か。」

 

 

ゆめみの言葉を聞き、切ない気持ちになり、何も言えなくなって再び立ち尽くすチェイス。

 

 

ゆめみ「お客様?もしやご体調がすぐれないのですか?」

 

 

心配そうにチェイスの様子を伺うゆめみ。そんなゆめみに心配かけまいとすぐに返事をするチェイス。

 

 

チェイス「・・・・いや、問題ない。」

 

 

ゆめみ「そうですか。お元気そうで何よりです。」

 

 

チェイスの「問題ない」という言葉を聞いて安心し、笑顔を向けるゆめみ。そんなゆめみに、クリムは声をかけた。

 

 

クリム「君が「ほしの ゆめみ」くんだね。」

 

 

ゆめみ「・・・え?声?」

 

 

突如自分にかけられた自分のでも、チェイスのものでもない第三の声に少し驚いたような表情をしたゆめみは、その声の主を探すべく辺りを見回す。

 

 

クリム「こっちだよ、こっち。」

 

 

ゆめみ「え?・・・・ベルト?」

 

 

声の発生元であるチェイスの持っているベルトを見て驚いたような顔をするゆめみ。

 

 

クリム「こんな姿で失礼、私はクリム・スタインベルト。チェイスから君の話を聞いて興味を持ったので会いに来た。」

 

 

ゆめみ「まあ・・・」

 

 

突如目の前のベルトがしゃべりだした事に対して、驚きの表情を浮かべるゆめみ。

 

 

ゆめみ「最近のおもちゃはよく出来てますね。お客様の物なのですか?」

 

クリム「おもちゃではない!今はこんな姿ではあるが元は人間でね、とある理由で今はこのベルトに記憶と意識を移植している。“元”人間が付くが、今はむしろ君やここにいるチェイスと同じような存在だ。」

 

ゆめみ「え?チェイス?私と同じような存在?」

 

 

クリムの言った言葉に対して頭に?マークを浮かべるゆめみ。

 

 

チェイス「・・・そう言えば自己紹介がまだだったな・・・・チェイスだ。機械生命体「ロイミュード」と言う、お前達ロボットと同じ人の手で作られた存在だ。」

 

ゆめみ「機械生命体「ロイミュード」?・・・・・では、お客様は私と同じロボットなのですか?」

 

チェイス「・・・まあ、似たような物だな。」

 

ゆめみ「そうだったのですか。全然気がつきませんでした。それにしても本当によく精巧に出来ていますね、最新型は。同じロボットの私でも分からないくらい精巧にできているのですね。」

 

チェイス「いや・・・・まあな。」

 

 

チェイスの事を、同じ世界で作られた自分と同じロボットの最新機種だと勘違いをするゆめみ。チェイスは本当の事、自分達がこの世界の者ではないと言う事を言うと、話がややこしくなると思い、その勘違いを正さずにそのままにしておく事にした。

 

 

ゆめみ「ここまで人間に近いのなら、お客様にはもしかして・・・涙を流す機能も付いているのでは?」

 

チェイス「涙を・・・・流す機能?確かに付いてはいるが・・・・なぜそんな事を聞く?」

 

ゆめみ「私には涙を流す機能はありません。ですから、涙を流すと言う行為にとても憧れているんです。」

 

チェイス「涙を流す事に・・・・憧れか・・・・」

 

 

ゆめみの一言で、チェイスは過去、一度だけ涙を流した時の事を思いだした。それはチェイスが初めて女性を好きになり、そして・・・・失恋した時に流したものだった。

 

 

チェイス「そんなに・・・良い物ではない。だが・・・・あの時、胸の痛みによって流した涙を・・・誇らしいと思っている。」

 

ゆめみ「胸の痛み・・・・故障していたのですか?」

 

チェイス「いや・・・・ケガや故障の類の痛みではない。失恋による心の痛みによって流した涙だ。」

 

ゆめみ「失恋・・・では、お客様は恋をした事があるんですか?それはとても素晴らしいことです。私は恋と言うものをしたことがありませんが、伝え聞いた話では、とても素晴らしいものだと言われています。ですのでとても憧れます。」

 

チェイス「素晴らしい・・・か。確かに素晴らしいものだな。俺自身の恋は失恋と言う残念な結界になったが、俺は恋をした事・・・・そして失恋し、胸を痛めた事がむしろ誇らしいと思った。」

 

ゆめみ「なぜ誇らしいと思ったのですか?」

 

チェイス「『人間』に近づけた・・・・そう思ったからだ。」

 

ゆめみ「そうなのですか。少し・・・羨ましいと思います。」

 

チェイス「お前も・・・いつか・・・出来ると思う。」

 

ゆめみ「私が・・・・恋を?」

 

チェイス「ああ。お前が・・・そのまま自我を確立させて、心を得たのならな。」

 

ゆめみ「心を得る?お客様、それは一体どう言う意味なのでしょう?・・・・あっ!申し訳ありません!!」

 

クリム「ん?どうしのだね?なぜ突然謝罪を・・・・」

 

 

突然目の前のゆめみが謝りだした事に対して驚き、その理由を尋ねるクリム。そんなクリムに対して申し訳なさそうな顔でゆめみは答えた。

 

 

ゆめみ「本当に申し訳ありません。イエナさんは現在修理中で投影ができません。ですので、お約束した特別上映ができず・・・・本当に申し訳ありません。現在スタッフと緊急連絡を取っておりますので、到着次第早急に修理に取り掛かりますので。」

 

 

チェイス・クリム「「・・・・・・・・・」」

 

 

ゆめみの言葉になんと言えない顔をする二人。

 

 

クリム(スタッフに緊急連絡・・・・だと?彼女は今現在自分が置かれている状況が分かっていないのか?彼女程のスペックがあるロボットなら、自分が置かれている状況の把握は出来るはず・・・もしや、状況を「把握出来ない」のではなく、「把握したくない」からあんな態度を?)

 

 

クリムはさきほど見た、ゆめみのメンテナンス用の設備から得たゆめみのスペックを思い出し、彼女の先ほどの言動に対して疑問を抱いた。そんなクリムの思考を他所に、チェイスは別の事を考えていた。そしてその考えをゆっくりと口にした。

 

 

チェイス「・・・クリム、マッドドクターと何台かのシフトカーを貸してほしい。」

 

クリム「マッドドクター達を?何をするつもりだ?」

 

チェイス「・・・投影機を修理する。」

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

初登場キャラ出典作品

 

 

ほしの ゆめみ(planetarian ~ちいさなほしのゆめ~)

 


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