仮面ライダーを受け継ぐ者   作:剣 流星

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どうも、剣 流星です。
最新号のヤングジャンプを見て驚きました。
極黒のブリュンヒルデ、アニメ化企画進行中と極黒のブリュンヒルデの扉に書かれているではありませんか!
アニメ化、とても楽しみです。
では第4話をどうぞ。


第4話 現れる怪物

翔子(あっ!そうだ・・・丁度いい機会だから、あの事を聞いてみよう。)

 

翔子は、今目の前で新しく友達になった誠也に対して、初日の夕方頃に見たある事を聞こうと思った。

 

翔子(あの時、誠也くんの目の前で、何もない所から魔法陣のような物が現れて、そこからプラモデルみたいな赤い鳥が出てきた事・・・あれが何んだったのか・・・)

 

翔子は誠也がこの村にきた初日の夕方、山の中に居るであろう例の怪物を探すためにプラモンスターを召喚した所を偶然見てしまったのである。

翔子はそれを見て以来、その事が気になって仕方がなかったのである。

 

翔子「あの・・・誠也くん、その・・・」

 

誠也「ん?なに?」

 

翔子「この村に来た日の夕方「キーンコーンカーンコーン♪」ってあっ!」

 

誠也「あっ、午後の授業10分前の鐘だね。」

 

翔子「ど、どうしよう。「ごんた」にご飯あげないといけないのに・・・」

 

誠也「「ごんた」?」

 

翔子「うん、神社の裏にいる子狐。この前、足を怪我して動けなくなっている所を見つけて、ご飯をあげてたの。」

 

誠也「そうか~、なるほどね~。けど、今から神社に行く時間は無いから、俺が家に戻って何か食べる物をあげておくから、翔子は早く教室にでも戻ってそのお弁当食べちゃいなよ。」

 

翔子「う、うん。お願いね。」

 

誠也「ああ、任せて。」

 

翔子「うん♪」

 

そう言って返事をした翔子は駆け足でその場を去った。

 

誠也「さて、俺も一旦家に戻らないと。」

 

そう言って誠也は岩永の家へと戻って行った。

 

孝介「お、やっと戻ってきた。遅いぞ。皐月さん、もう仕事に出かけて行っちゃったぞ。」

 

岩永家の居間で、テレビを見ながら食休みをしている孝介に声をかけられた。

 

誠也「あ~、お昼ご飯用意してもらったのに、なんだか悪いことしたな。」

 

孝介「お前の分の昼飯はテーブルの上に置いてあるかなら、皐月さんが帰ってきたら謝っておけよ。」

 

誠也「そうします。」

 

そう言って誠也は居間に入ると、テーブルの上に用意してある自分の昼飯を見た。

 

誠也(魚のソテーか・・・これなら狐にもあげられるな。)

 

そう思った誠也はソテーが乗っている皿を手に持ち、そのまま岩永家を出て、翔子が行った子狐が居る神社の裏手へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春日神社の裏手。そこは青白い色を湛えた泉と山に面したうっそうと茂る森がある場所だった。

 

誠也「さ~て、翔子の言っていた子狐は何処にいるんだろう?」

 

そう言って誠也は辺りをキョロキョロ見始めた。

 

誠也「子狐、子狐と・・・・ん?」

 

誠也は一本の木の根元近くに木の根が小さな穴蔵を作って居るのを発見した。

 

誠也「・・・ここだな。餌用の小皿もあるみたいだし、たぶんココだろう。」

 

そう言って誠也は小皿の上に持って来た魚のソテーを置いた。

 

誠也「よし!多分これでいいはずだ。さ~てと、一旦岩永の家に戻るとしますか。」

 

そう言って誠也はその場を離れ、神社の入口がある本殿前へと移動した。

 

誠也「さて、カナリヤ達、探索から戻ってきてるかな~って・・・ん?あれは・・・・」

 

神社の境内の入口の鳥居近く。そこに巫女服を着たいろはが警察官と話しているのが誠也の目に写った。

警察官が来ると言う事は只事じゃないなと思い、誠也は警察官と話しているいろはに近づいて声を掛けた。

 

誠也「いろはさん。」

 

いろは「ん?誠也くん?」

 

誠也「何かあったんですか?」

 

いろは「いやね、駐在さんからさっき話しを聞いたんだけど、実は今朝、村に居る家畜やペットが数匹、怪物に襲われたらしいのよ。」

 

誠也「怪物!?」

 

いろはの口から怪物という言葉が出てきて驚く誠也。

誠也は本来この村の周辺で目撃されている怪物を探し出し、退治する為に来たのである。

初日から今日まで怪物探しをプラモンスター達に任せて探していたが、すべて空振りであった。

そこで、探索の手を増やすため、今日はカナリヤにも探索に出てもらっていたのである。

 

いろは「私達、朝はほら、村のあちこちを回っていたから。だから情報が上手伝わってこなかったんだろうけど、まさか朝っぱらからそんな事が起きてたなんてね・・・」

 

警察官「怪物って言っても、熊か何かの見間違いだと思うんだけども、山に近い家の家畜やペットが被害に遭っているみたなんだな。何かに食い荒らされたような荒らされ方だって言うんだけど、人には今の所被害は出てないみたいだ。」

 

いろは「怖いわね~。」

 

誠也(・・・・被害が出始めている・・・・早く探して退治しないと・・・)

 

実質的な被害が出始めたため焦る誠也。

 

警察官「とにかく、夕方以降は外出を極力控えるようにしてもらって、山には山狩りが終わるまで入らないようにしてもらうから。それと、いろはちゃん達は山狩りが終わるまでは避難してもらうからね。」

 

いろは「はい、わかりました。」

 

警察官「そんじゃあワシはこの辺で。」

 

そう言って警察官はその場から去って行った。

 

誠也「避難?」

 

いろは「家のすぐ裏って山なのよね~、今回の事でばあちゃんは村の方で用意してくれたホテルに行くみたいなんだけど・・・」

 

誠也「いろはさんはどうするんです?」

 

いろは「大げさなのは嫌だから、どっかに泊めてもらおうと思ってるんだけど、泊めてもらう所はこれから探そうと思うの。」

 

誠也「そうですか。」

 

いろは「いっその事、孝介の所にでも泊めてもらおうかな~。」

 

誠也「孝介さんの所って・・・孝介さんも僕も岩永の家に泊めてもらっている身ですから無理なんじゃ・・・」

 

いろは「皐月さんに言えば大丈夫よ。」

 

誠也「その自信はどこから来るんだか・・・・まあとにかく、岩永の家に泊まるんなら、家主の皐月さんに言ってくださいね。皐月さんは今の時間帯だと働きに出てるはずですから。」

 

いろは「わかった。連絡入れてみるわね。」

 

誠也「ええ、じゃあ僕はこれで。」

 

そう言って誠也はその場を後にした。

 

誠也(被害にあった家はどれも山に近い家ばかり・・・やっぱり山に潜んでいるのはほぼ間違いないな。取りあえず、カナリヤが戻ってくるまで被害のあった家を回って見よう)

 

そう思った誠也は被害のあった家を回って見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カナリア《・・・とうとう被害が出てしまったわね。》

 

誠也「ああ、けど人には今の所被害が出てないって話だけど、それもいつまで・・・」

 

被害のあった家をすべて回った後、一旦岩永の家に戻ろうとした誠也は途中で探索から戻って来たカナリヤたちと合流した。

 

カナリア《・・・それにしても家畜やペットが先に被害に遭っている事や、山に潜んでいることを考えると、もしかして今回の怪物って言うのは、響鬼の世界の怪人・魔化魍なのかもしれないわね・・・》

 

誠也「だとしたら厄介だな・・・魔化魍は「浄めの音」でないと倒しづらいんだよな~」

 

カナリア《一応、私達が再現したライダーの力は、専門の倒し方でないと倒せない魔化魍やアンデットもある程度は倒せるようにはなっているけど・・・》

 

誠也「専門の力を持っているライダーの力と比べると見劣りする・・・か・・・ハァ~。」

 

そう言って誠也は軽くため息を吐いた。

 

カナリア《・・響鬼の力を受け継いだ隆史くんは特訓中で戦闘は無理・・・・なら、今の戦力だけでどうにかしないといけないわね。》

 

誠也「ない物ねだりしても仕方がないか~。とにかく、今は一旦岩永家に戻るとしよう。山狩りが行われるのは明日からみたいだから、今夜またガルーダ達に出てもらうから。」

 

カナリヤ《私も行くわ。山狩りになって、山に入った猟師の人達が犠牲になった。なんて事にならない様に今夜中に見つけないとね。》

 

誠也「そうだな。」

 

そう言って誠也は岩永の家に戻った。

 

誠也「ただいま戻りました~。」

 

家の玄関を空けて中に入ると、中から複数の女性の話し声が聞こえてきた。

 

誠也「ん?皐月さん以外に誰かいる?」

 

カナリア《お客さんかしら?》

 

頭に?マークを浮かべながら、誠也は複数の声がした居間の方へと向かった。

 

銀子「あ、ヤッホー。お帰り~」

 

誠也「え?!銀子さん?!」

 

いろは「あ、お邪魔してるわね。」

 

誠也「あ、いろはさん・・・結局岩永の家に泊まることにしたんだ・・・・」

 

そこにはテーブルを囲んでおしゃべりをしている、皐月と銀子、いろは、孝介が居り、そのそばで話をしている4人を見ている翔子が居た。

 

皐月「あら、お帰りなさい。」

 

誠也「・・・あの、この状況は?」

 

誠也は居間になぜか居る銀子といろはについて聞いてみた。

 

皐月「山狩りが終わるまで、危険だから山の出入は禁止になってるでしょう?山に住んでいる銀子さんと山の近くに住んでいるいろはちゃんには今夜ウチに止まってもらうことにしたの。いいかしら?」

 

誠也「いいも何も、俺らは泊めてもらっている身ですから、皐月さんが良いなら・・・」

 

皐月「そう?よかった~。孝介くんにも快く了承してもらったし、これで心おきなく二人を泊められるわね~。」

 

誠也「そ、そうですか・・・(人が多くなると動きづらくなるな~、今夜は俺も探索に出ようと思ってたんだけど・・・・)」

 

カナリヤ《・・・これじゃあ誠也は身動きが取りずらいわね・・・・今夜の探索は私達だけでやったほうがいいみたいね》

 

誠也《・・・お願い。》

 

カナリヤに今晩の探索の事を念話でお願いする誠也。

 

誠也「そ、それにしても孝介さん、銀子さんといつの間に中が良くなったんですか?」

 

孝介「ああ、お前が居ない時にも会っていてな。」

 

皐月「さて、お話しに夢中になっちゃったわね。今、お二人が寝るお部屋の準備、してきちゃうわね。」

 

そう言って立ち上がり、居間を出て行く皐月。

 

誠也「・・・・なんだか今夜は騒がしくなりそうだな~」

 

翔子「そうだね。」

 

いつの間にか誠也の横に来た翔子が相づちをうった。

 

 

 

 

 

 

夜、夕飯の後、ガルーダ達やカナリヤを探索に出した誠也は居間に居た。

 

銀子「おら~、飲んでるかぁぁ!」

 

誠也「・・・・・・・・」

 

岩永の家の居間は今、カオスとかしていた。

 

酒瓶を片手に孝介の方をバシバシと叩く銀子。

 

いろは「もっと持ってこーい!」

 

皐月「いろはちゃん、サイコーよ♪」

 

酒を片っ端から飲み干すいろはとそれに付き合うようにして飲む皐月。

 

翔子「・・・・・すごい事になってるね、誠也くん。」

 

誠也「そうだな・・・翔子。」

 

そんな酒を飲んでテンションが上がっている大人たちを遠巻きにして、ジュースを飲みながら誠也は翔子と肩を並べながら座って見ていた。

 

銀子「あれ~、翔子ちゃん。今、誠也くんを名前で読んでた~?」

 

孝介「へ~、いつの間に仲良くなったんだ?」

 

皐月「あらあら、すっかり仲良くなったみたいね。お母さん、嬉しいわ~」

 

翔子「え?あ、え・・・え~と/////」

 

誠也「げっ!こっちにも飛び火してきた!」

 

お互いをいつの間にか名前で呼び合っている二人を見て絡んでくる酔っ払い集団。

 

いろは「誠也くん、いつの間に翔子ちゃんにフラグ立てたの~?」

 

誠也「はあ?フラグ?!」

 

銀子「誠也くん、意外と手が早いんだね~。」

 

皐月「あらあら、じゃあ将来的には誠也くんにお義母さんって呼ばれるようになるのかしら~」

 

誠也「え!?お義母さん?!」

 

翔子「ちょっ、な、なに言ってるの!お母さん!!////////」

 

孝介「いや~翔子ちゃんにまで手を出して、この事を向こうにいるはやてちゃんが知ったらなんて言うかな~。」

 

誠也「ちょと!なんでそこにはやての名前が出てくるんですか!?」

 

銀子「はやてちゃん?」

 

孝介「あ、はやてちゃんっていうのはね、誠也の事が・・・」

 

誠也「いらん事を吹き込もうとするなぁあああああああ!!」

 

・・・・・こうして岩永の家の夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

皐月「・・・・すぅ・・・・・すぅ・・・・」

 

いろは「う、うぐぐ・・・・・」

 

翔子「・・・・・・・」

 

孝介「・・・・・・うーん。」

 

先ほどまでの喧騒が嘘のような静寂が支配する岩永家の居間。

 

先程まで宴会をしていた面々は今、居間で撃沈している。

 

誠也「・・・・たく、本当にしょうもないな~。」

 

居間で寝ている面々を見ながら言う誠也。

 

誠也「今が夏場じゃなかったらみんな風邪ひいてるぞ。」

 

そんな事を思いなが、誠也は寝ている面々に探してきたタオルケットを掛けてあげた。

 

誠也「さて、ちょっと遅くなったけど探索に出るか。カナリア達に任せっぱなしも悪いしね。」

 

そう言って誠也はみんなを起こさないようにしながら岩永の家を後にした。

 

誠也「さて、とりあえす村の山に比較的近い場所を回るように歩くか。」

 

そう言って誠也は歩き始めた。

 

誠也(・・・そう言えば翔子、宴会の間、ずっと神社の裏に居るごんたの事心配していたな~)

 

誠也は先ほどの宴会の間、浮かない顔をしていた翔子の事を思い出した。

翔子は、家畜やペットが怪物に襲われた事を聞いて、ごんたも襲われるんじゃないかと心配していたのである。

 

誠也(翔子の話だと、ごんたは足を怪我しているんだったよな。子供で足に怪我してるんだもん、心配になるよな~。帰りに神社の裏に寄ってごんたを捕まえて保護しておくか。)

 

そんな事を考えているうちに、誠也はいつの間にか春日神社の石段の前まで来ていた。

 

誠也「さて、今の所は異常無し・・・か。ん?」

 

神社の周りを見て異常が無いと言った誠也は、次の瞬間、石段を誰かが駆け上がっているのに気づいた。

 

誠也「あれは・・・翔子?!なんでこんな夜中に翔子が・・・・いや、それよりも、こんな夜中に出歩いたら例の怪物に襲われるかもしれない!」

 

翔子の身が危険だと思った誠也はすぐに石段を駆け上り、翔子の後を追った。

 

石段を駆け上がり、神社の境内に入った誠也は境内内を見回す。

 

誠也「翔子は・・・・・やっぱりごんたの居る神社の裏手か。」

 

そう言って誠也は神社の裏手へと走って行った。

神社の裏手へと向かう誠也。

誠也は昼間、餌をあげた場所・・・神社の裏手の森の近くへと足を向けた。

 

誠也「ん?なんだ?この匂い・・・」

 

裏手に入り、翔子を探している誠也の鼻に何か腐ったような物の匂いが伝わってきたので思わず足を止める誠也。

 

誠也「この匂いは・・・いや、今は匂いより翔子だ!」

 

そう言って誠也は再び翔子がいるであろう場所へと走り出した。

 

誠也「翔子は・・・・居た!」

 

誠也は昼間来た、餌をあげた場所でしゃがんで何かを見ている翔子を見つけた。

 

誠也「翔子!」

 

翔子「え?誠也くん?」

 

バツの悪そうな顔をして立ち上がる翔子。

 

誠也「こんな夜中に・・・・危ないだろう!ん?」

 

誠也は翔子の足元で何かがもぞもぞと動いているの物を見た。どうやら子狐のようである。

子狐は翔子が持ってきたのであろう袋の中に首を突っ込んで、一心不乱に食べているようであった。

 

誠也「それが・・・ごんた?」

 

翔子「あ、うん・・・ごめんね。勝手に出てきちゃったりして・・・」

 

誠也「全くだよ。しかし・・・どうして急に?」

 

翔子「孝介お兄ちゃんと銀子お姉ちゃんが「ごんた」が怪物に食べられちゃうかもしれないって話をしてたのを聞いて、それで・・・」

 

誠也「居ても立ってもいられずに家を飛び出しちゃったって事?はぁ~、孝介さん・・・何迂闊なことを翔子ちゃんが聞こえるような場所でしてるんだ・・・・」

 

翔子「本当は、誠也くんに付いて来てもらおうと思ったんだけど、どこにも姿が見当たらなかったから・・・」

 

誠也「あ~その・・・・ごんたを捕まえて保護しておこと思ってね。(ウソ・・じゃないよな。探索のついでにごんたを保護しようとは思ってたんだしね。)」

 

翔子「そうだったんだ・・・・ありがと。」

 

誠也「い、いや別にお礼言われるようなことじゃ「二人共~!」って孝介さん?!」

 

声のした方向を二人が向くと、そこには二人にむかって走って近づいてくる孝介の姿があった。

 

翔子「孝介お兄ちゃん?」

 

誠也「どうしてここに?」

 

孝介「どうして・・・も・・何も・・・・翔子・・・ちゃんが・・・・・家を・・・飛び出すのを・・・見たから・・・・」

 

二人のそばで、息を整えながら途切れ途切れで言う孝介。

 

翔子「そう・・だったんだ・・・ごめんなさんい。」

 

孝介「まったくだよ・・・まったく、誠也も一緒だとは思っていたけど、お前な~、なんでこう毎回毎回危険な事に首を突っ込むんだ!おまけに今回は翔子ちゃんまで巻き込んで!」

 

誠也「ま、毎回毎回って・・・それに、なんで俺が主犯みたいな言い方になってるの?!」

 

孝介「日頃の行いのせいだろうが!お前は前例が数多くあるんだぞ!誘拐犯のアジトに突入したり・・・」

 

誠也(・・・アリサとすずかが誘拐された時のことね。)

 

孝介「麻薬のバイヤーを捕まえようとしたり・・・」

 

誠也(・・・実は麻薬の売人じゃなくてガイヤメモリーの売人だったんだけどね。)

 

孝介「港にある使われていない倉庫で大立ち回りをしたり・・・・」

 

誠也(倉庫を根城にしていたクロンギ達を退治した時のことね。)

 

孝介「もう兎に角上げたらキリがないぐらいあるんだから、疑われたってしょうがないだろうが!」

 

肩をいきり立たせながら言う孝介。そばで聞いてた翔子は、孝介の話した話しの内容に驚きながらも若干呆れたような複雑そうな顔をしていた。

 

翔子「・・・ねえ、今孝介お兄ちゃんが話してくれた事って・・・・」

 

誠也「あ~、まあ・・・多少の語弊があるみたいだけど、俺が今まで会った事件の事だよ。」

 

翔子「す、すごいね・・・・」

 

誠也「そんな若干呆れたような顔をしないでくれ~」

 

翔子の若干驚いたような、呆れたような複雑そうな顔を向けられていたたまれなくなる誠也。

 

孝介「さて、そいつを連れに来たんだろう?ならそいつを連れてとっととこんな場所から離れよう。」

 

孝介は翔子の足元でもぞもぞ動いているごんたを見てそう言った。

 

誠也「そうです・・・ね。ん?(なんだ・・・・匂いがキツくなってる?!)

 

誠也はこの場所に来てから鼻に付いた匂いがきつくなっている事に気づいた。

 

誠也「!」

 

誠也は不意に自分たちが来た神社の方向を振り向いた。

 

孝介「なっ!」

 

翔子「ひっ!」

 

そこには大きな体躯を持った何かが居た。

外見は熊に似ているが、頭の形がいびつに歪み、体のあちこちの毛や皮がズル剥けになっており、内蔵や筋肉、骨がむき出しになっているのである。

 

誠也(なんだアレ!?)

 

誠也は二人を庇うようにしてその体を前へと移動させた。

 

誠也(まさか・・・あれがこの辺りで見かけられた怪物?!でも・・・あれは魔化魍じゃない・・・・なんだアレ?!)

 

異形の出現で体を硬直させている二人を他所に、冷静に思考を巡らせようとする誠也。

 

誠也(兎に角、二人を逃がさないと・・・二人が居たんじゃ変身して戦う事もできない。だが・・・・)

 

そう思いながら誠也はゆっくりと怪物がいる方向を見た。怪物は神社へと向かう方向にいる。村の方へと逃げるには怪物の側を通らなくてはならない。

 

誠也(この二人を連れてそれをするのは無謀だ・・・・かと言って俺が囮になるにも、変身せずにあいつの相手をするのもまた無謀・・・)

 

どうしようと考えながら二人の姿をチラリと見る。

孝介は硬直しながらも叫び声を上げそうなのを必死に耐えているような状態で、翔子は胸にいつの間にか硬直して固まっているごんたを胸に抱きながら孝介にしがみついていた。

 

誠也(どうする?このままじゃ身動きが・・・「誠也!」ってえっ!」

 

後ろをチラリと見ている瞬間、孝介の叫び声が響き、慌てて前を向く誠也。その視線の先、そこには走って誠也たちに近づいてくる怪物の姿が目に入ってきた。

 

誠也「しまっ《誠也!》ってえ?!」

 

突然響く念話の声。その声と同時に、赤と青と黄色の何かが怪物へと飛びかかって行った。

 

誠也「ガルーダ達!来てくれたのか・・・じゃあさっきの念話は・・・」

 

怪物へと襲いかかり、足止めをしているのは誠也のプラモンスター・ガルーダ、ユニコーン、クラーケンであった。

 

孝介「あれは?!」

 

翔子「あれって(確か誠也くんが村に来た日に呼び出していたヤツ!)」

 

突如現れたプラモンスター達を見て戸惑う孝介と翔子。

 

カナリヤ《誠也!無事?》

 

誠也(カナリヤ!すまない、助かった!)

 

誠也はプラモンスター達を引き連れて救援に来てくれたカナリヤに礼を言った。

 

カナリヤ《礼は後!あの三体、魔力切れ寸前だから、そう長く持たない!今のうちに二人を連れて逃げて!》

 

誠也《わかった!(かと言って、村に行く方には怪物(アイツ)が居るし・・・・仕方がない、一旦山の方に逃げるか!)

 

誠也「二人共、今のうちに逃げるよ!」

 

翔子「え?」

 

孝介「けど・・・」

 

誠也「いいから、こっち!」

 

そう言って誠也は二人の手を取り、山の方へと走り始め、それに続くようにしてカナリヤもついて行った。

そうしてしばらく山の中を走り、連れている翔子が限界に達しそうなのを見て、誠也はその足を一旦止めた。

 

誠也「翔子・・・大丈夫か?」

 

翔子「ハアハアハア・・・・・だ、大丈夫・・・・けど・・・なんで夢に・・・出てきた・・・怪物が・・・出てくるの?」

 

息を整えながらも何かを言う翔子。

 

誠也(夢?なんの事だ?)

 

そんな事を思いながら、誠也は孝介の方を見た。

 

孝介「ハアハア・・・・・な、なんだったんだアレ、それにアレに襲いかかった三体のちっこいの・・・・」

 

同じように息を切らせながら孝介は先ほどの事を言っていた。

 

カナリヤ《危なかったわね。》

 

先程まで無言で誠也たちに無言で追従していたカナリヤが誠也に念話で話しかけて来た。

 

誠也《まったくだ・・・・・実にいいタイミングで来てくれたな、カナリア。》

 

カナリア《ええ、全くよ。探索を続けていたら、神社の方角から人の話し声が聞こえてきて、念の為にと向かったんだけど・・・ホント、行ってよかったわ。》

 

誠也《ああ、本当に来てくれて助かった。けど・・・・アレ、すぐに追いついてくるだろうな・・・》

 

カナリア《ええ。今頃はガルーダ達も魔力切れで消えているでしょうから、もうこっちを追っている頃でしょうね》

 

誠也《となると、やっぱり俺が囮になってアイツを二人から引き離した後、変身して倒すってのが一番妥当だろうな》

 

カナリヤ《それしかないわね。》

 

誠也はカナリアと今後どう行動するかを念話で話し合い、自分が囮となって二人から引き離すと作戦を取ることにした。

 

誠也「・・・二人共、アイツはまた俺達を追ってくると思う。だから俺が囮となってアイツを二人から引き離すから、二人はそのスキに逃げて。」

 

孝介「・・・え?」

 

翔子「・・・囮って・・・・そんな!」

 

孝介は現実逃避でもしているのか、持ってた携帯を操作してメールを誰かに送っており、翔子は今だに胸の中で大人しくしているごんたを抱きしめていた。

 

孝介「な、なに馬鹿なこと言ってるんだ!そんな危ない事させられるわけ無いだろう!」

 

携帯の操作をやめて孝介が叫んだ。

 

翔子「そ、そうだよ危ないよ!」

 

誠也「けど、これが一番確実に助かる方法なんです。この三人の中で、俺が一番足が早い。だから俺が囮になるのが一番適しているんです。」

 

翔子「けど・・・・」

 

誠也「無論、死ぬつもりはないです。俺がアイツを引きつけている間、二人は村に戻って助けを呼んできてください。」

 

誠也は反対している二人に対して、なんとか了承してもらおうと説得する。

 

孝介「・・・確かに足がこの中で一番早いお前が囮になるのは一番適しているのはよく分かったが、だからと言って自分より年下の子供にそんなことさせられるか!」

 

誠也「年下って・・今はそんな事言っている場合じゃないでしょう!」

 

孝介「囮が必要なら、俺がやる!」

 

誠也「なっ!だ、ダメです!囮は俺がって・・・危ない!翔子!!」

 

翔子「えっ?」

 

突然翔子の背後にある暗闇から鋭い爪が翔子に襲いかかろうとしていたので、誠也は咄嗟に翔子を押し倒してかばった。

 

翔子「きゃあ!!」

 

誠也「くっ!」

 

ブンッ!

 

先程まで翔子の頭があった空間を鋭い爪が空を切り、翔子をかばった誠也の左腕の二の腕辺りに傷を作る。

 

誠也「くっ!もう追いついてきたのか!」

 

爪が来た方向を見ると、先ほどの怪物が居た。

 

カナリヤ《この!》

 

突然現れた怪物に対して、カナリヤは誠也達を庇うために怪物の顔面に体当たりをした。

 

怪物「――!」

 

カナリヤの突然の体当たりに怯む怪物。

 

カナリヤ《今のうちよ!》

 

誠也「『《すまない、カナリヤ!》二人共逃げるぞ!」

 

誠也の声を聞いて二人も今度は硬直する事もなく、素早くその場を離れるために走り初め、誠也も二人を追うようにして走り始めた。

 

三人とカナリヤは怪物から逃げるために走り、やがて山頂付近にある吊り橋のある場所へとたどり着いた。

 

翔子「も・・・・もう・・ダメ・・・・」

 

翔子が胸にごんたを抱きながら吊り橋の入口の柱にもたれかかる。

 

孝介「お・・・俺も・・・もう・・・」

 

誠也「二人共しっかり!(無理もないか・・・体を鍛えている俺ならともかく、二人にはもう走り続ける体力は・・・・)」

 

翔子「もう・・・ダメだよ・・・・私達、あの怪物に食べられちゃうんだ・・・・・ううううっ・・・・・」

 

恐怖と疲労困憊な翔子は座り込み、絶望して泣き始めた。

 

孝介「は、はははは・・・・短い人生だったな~」

 

翔子に連れられて、ついに孝介も諦めてしまった。

 

誠也は絶望した二人を見て、何か決意をしたような顔をすると、二人に近づいて叫んだ。

 

誠也「簡単に諦めるな!諦めたらそこでオシマイだ!」

 

突如大きな声で叫んだ誠也を見て驚いた顔をする二人。

 

誠也「諦めずに・・・もう少しだけ頑張ろう?」

 

翔子「・・・でも、もう・・・どうしようもないよ。」

 

孝介「ああ。そうだよ・・・もう・・・どうしようもない・・・」

 

誠也「どうしようもなくなんて無い!」

 

そう言って誠也は悲壮感が漂う顔をした翔子に近寄ると、その頭に手を置いて優しく撫でた。

 

誠也「大丈夫!俺がなんとかする!約束する、俺が二人の最期の希望になる!」

 

約束は目を見て・・・

かつて異世界を旅した時に出会った世界と少女を救った誠也が尊敬する人物の言葉・・・

それを守るかのように誠也は、翔子の目を見て言うと、撫でていた手を翔子の頭から離した。

そしてくるりと翔子達に背を向けると、二人をかばうようにして怪物が来るであろう方角を睨みつけた。

 

翔子「最期の・・・」

 

孝介「・・・希望?」

 

誠也の背中を見てつぶやく二人。

 

カナリア《どうするの?》

 

誠也の側で浮かんでいるカナリヤがどうするのかを誠也に聞いてきた。

 

誠也《ここで奴を倒す!》

 

カナリア《倒すって・・・変身するの!?正体がバレるわよ!?》

 

誠也《仕方がないさ。それに逃げようにもこの吊り橋は一人ずつしか渡れないし、不安定だから走ることもできない。これじゃあ橋の途中でヤツに追いつかれる。》

 

カナリヤ《仕方がないわね・・・・?!来るわよ!》

 

カナリヤの念話を合図に、誠也達が来た暗い森の中から怪物が現れた。

 

孝介「くっ!」

 

翔子「こ、孝介お兄ちゃん、誠也くん・・・・・」

 

怯えながら孝介にしがみつく翔子。

 

誠也「・・・・二人共、そこを動かないで。」

 

そう言って誠也は、何かを決意したような顔をして怪物の目の前へと歩き出した。

 

孝介「なっ!おい!誠也!何やってるんだ!にげろ!!」

 

翔子「誠也くん!危ないよ!逃げて!!」

 

二人が誠也に逃げるように言うが、誠也はそれを聞かずに歩みを進める。

 

怪物「ぐるるるるるっ・・・・・・」

 

低い声を発しながら誠也を睨みつける怪物。

 

誠也「・・・二人共、今から起きること・・・みんなには内緒にしておいてね。」

 

そう言って誠也は右手にハメられている手の平型の指輪をベルトのバックルへとかざした。

 

電子音声「ドライバーオン!」

 

突如電子音声があたりに響くと、誠也の腰にベルトが現れた。誠也の持つ力の証・ウィザードライバーである。

誠也はドライバーのハンドオーサーを操作して、手の平形のバックルの傾きを左に傾ける。

 

電子音声「シャバドゥビタッチヘーンシーン!!シャバドゥビタッチヘーンシーン!!~」

 

誠也「変身!」

 

誠也はそう言って、今度は左手に付けた赤い宝石の指輪・・・フレイムのウィザードリングをかざした。

 

電子音声「シャバドゥビタッチヘーンシーン!!フレイム!!プリーズ!!・・・・・ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!!!」

 

左手を横に突き出す誠也。すると左側から赤い魔方陣が現れ誠也を通過し変身が完了する。そこには絶望を希望に変える指輪の魔法使い・仮面ライダーウィザードの姿があった。

 

誠也「さあ、ショウタイムだ!」

 

 

つづく

 


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