仮面ライダーを受け継ぐ者   作:剣 流星

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どうも、剣 流星です。
最近、魔装機神Ⅲにハマってしまい、執筆速度が遅れている今日この頃です。
なるべく週一で出せるようにしますけど、もし更新してない時は、どうかご了承ください。
では第3話をどうぞ。


第3話 友達になった日

神社で巫女服の女性に追いかけられ、銀子と名乗る銀髪の女性と会った次の日の朝。

誠也は午後から出勤することになっている皐月に見送られながら、孝介と一緒にいろはに村を案内してもらう事になった。

昨日、いろはに謝りに行った孝介は、いろはに誠也の事を話すと、「ならまだ、村の中に何があるのかわからないでしょうから。久しぶりに帰ってきた孝介共々、私が村を案内してあげる!」と言ってきたのである。

孝介自身も久しぶりの村で、記憶が結構あやふやになっているのもあり、その話を快く引き受けたのである。

 

 

 

いろは「君が誠也くんね。昨日は驚かせてごめんね。孝介の幼馴染で春日神社で巫女をやってる、春日いろはよ。よろしくね♪それにしても本当に女の子に見えるわね。本当に男の子?」

 

昨日、誠也達を棒を持って追い立ててきた巫女服の女性が、目の前に立って手を差し出していた。

 

誠也「え、ええ・・・・そう・・・ですけど。」

 

昨日の怒って追い立ててきたイメージもあってか、差し出された手を恐る恐る取る誠也。

 

いろは「ん?なんか怖がってない?」

 

孝介「そりゃ一番最初に会った時の姿が、物凄い形相で棒を持って迫ってくる姿だったんだもん、怖がるのも無理ないと思うぞ。」

 

いろは「うっ!それに関しては誠也くんには悪いと思っているわよ。何もしてない誠也くんに対して怒って追い立てて・・・けど!元はといえばあんたが覗きをしたのがいけないんじゃない!しかも何、誠也くんを置いて一人で逃げちゃうなんて恥かしいと思わないの?」

 

孝介「うっ!それについては、本当にすまないと思っている。」

 

誠也「まあまあ、それよりも今日は村の案内、よろしくお願いします。」

 

いろは「うん、任されました。村のことで分からないことがあればどんどん聞いてきてね。」

 

誠也「はい。」

 

いろは「じゃあ早速、しゅっぱーつ!」

 

朝空に、いろはの声が響いて、誠也達の村の案内がスタートした。

ちなみに今、誠也の側にはカナリヤはい居ない。

昨日帰ってきたガルーダ達の捜査が空振りに終わったので、今日は朝からガルーダ達と一緒に捜査に出かけて行ったのである。

誠也も捜査に加わろうかと行ったのだが、建前上、アルバイトでこちらに来ているので誠也にはそっちを頼むと言ってきたのである。

確かにアルバイトで来ていることになっているので、アルバイトの仕事をサボるのはマズイ。その為、仕方なく捜査はカナリヤ達に任せることになった。

 

しばらくいろはの後を付いて行く形で、道なりに進む孝介と誠也。

 

やがて三人は孝介が初日に仮眠を取ったバス停へとたどり着いた。

 

いろは「最初はここ。まずは玄関から始めないとね。」

 

孝介「このご時世に、村に行くには必ず通るってか」

 

いろは「ここじゃ、「山一つ越えて~」なんて言葉が今でも通じるからね」

 

誠也「う~ん、「山一つ越えて~」か、確かにここは四方を山に囲まれていますからね。ちなみにバス停はここしかないんですか?」

 

いろは「うん、だから村の外から来る人は、車で来る人以外は、大抵最初はここにたどり着くのよ。」

 

誠也「なるほど・・・だから玄関って言ったんですね。」

 

いろは「そう言う事。さ~て、じゃあ次行くよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日来た神社の石段の前にたどり着く三人。

 

いろは「ここも言うまでもないけど、私が勤めている春日神社の前。簡単に由来でも教えておこうか?」

 

誠也「お願いします。」

 

そう言っていろはの神社の由来について説明が始まった。

その内容は、この春日神社が800年前に建立されたもので、祭っている神様は「豊田葦高媛命(とよたあしたかひめのみこと)」と言う女神。各地に残る羽衣伝説に出てくる天女のことだという。

おとぎ話では被害者だが、詳しい民話ではかなりの才人で、山を切り開き、田や畑を作って村の人達の生活を助けたと言う内容だった。

 

誠也「へ~。かなり頭がいい人だったんですね。」

 

いろは「違う世界の人だったからなんじゃないのかな?ここより進んだ世界から来た異世界人だったとか。」

 

孝介「なんか急に胡散臭くなってきたな。」

 

誠也(ここより進んだ世界から来た異世界人ね~)

 

いろはの一言を聞いて誠也は、外の世界から来た管理局のクロノやリンディ、そして、かつて小さい頃、共に様々な異世界を一緒に旅した仮面ライダー・ディケイドこと門矢士とその仲間達の顔を思い浮かべた。

 

誠也(今頃、どうしているのかな~士さん。)

 

久しぶりに司の顔を思い浮かべる誠也。

 

孝介「お~い、何してるんだ~。置いてくぞ~。」

 

聞こえてくる孝介の声でハッとなり、周りを見回す。

既に孝介といろはの姿は周りになく、遠くの方にその姿があった。

 

誠也「すません!ボーとしちゃいました!すぐ行きます!」

 

そう言って誠也は二人の後を追うようにして走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

春日神社の後、村の商店街の方を回った誠也達は今、村にある川へと足を運んでいた。

 

誠也「・・・「熊注意!」ってここ、熊出るんですか?」

 

川辺近くに立っている看板・「熊注意!」を見て誠也は前を歩いているいろはに聞いた。

 

いろは「うん、時々降りてくるのよ。観光客が捨てていった生ゴミの臭いに誘われて降りてくることがあるのよ。」

 

孝介「お、降りてくるのか。」

 

いろは「ええ、現に春先にもクマが降りてきて結構大騒ぎになったのよ。まったく、ゴミを捨てていくなって言ってるのにゴミを捨てていく観光客が後を立たなくて困ってるのよ。」

 

誠也「マナーを守らない観光客ほどタチの悪いものは無いですからね~。」

 

いろは「まったくよ。」

 

そう言って二人の先を歩くいろは。

川沿いを上流へと歩いていく三人は、やがて沢へとたどり着いた。

沢では老人が鮎釣りをしているのが見えた。

 

孝介「ハァハァ・・・・」

 

息を切らせながら、いろはの後を付いて行く孝介。

 

いろは「もう息切れ?だらしないわね~。」

 

孝介「し、仕方ないだろう!向こうではこんなに歩くことは滅多に無いんだから!」

 

いろは「その割には同じ所から来てる誠也くんは息切れ一つ付いてないわよ?」

 

孝介「こ、コイツは普段から走り込みやら、筋トレやらを異常なほどしてるんだよ!こんな筋トレオタクと一緒にするな!」

 

いろは「自分の日頃の運動不足を棚に上げて筋トレオタクって、ちょっと誠也くんに対して失礼じゃない?」

 

孝介「お前はコイツの異常な程の量のトレーニングメニューを見た事ないからそんな事言えるんだ。アレを見たら、誰でも俺みたいに言うぞ?」

 

いろは「異常なほどの量?」

 

孝介「ああ。誠也、お前の一日のトレーニングメニューの内容、こいつに教えてやれよ。」

 

誠也「・・・・異常な量ね~。それほどでもないと思うんだけど・・・・まあ、いいか。ちょうど今、トレーニング表持っていますから見せますね。」

 

そう言って誠也はポケットから折りたたまれた紙を取り出し、それを広げていろはへ見せた。」

 

いろは「どれどれ~・・・・・・・え?!こ、これ、本当に一日分のトレーニング量なの?」

 

誠也「ええ、そうですけど?」

 

誠也がいろはに見せた紙に書かれてあるトレーニングメニューの量は、軍隊の訓練も真っ青の量であった。

 

いろは「・・・・これを見れば、孝介じゃなくても筋トレオタクって言っても過言じゃないわね。」

 

誠也「そ、そうですか?(まあ無理もないか、このメニューは軍隊より厳しいで有名な響鬼さん特製の鬼の特訓メニューを参考にしてあるからな~)」

 

いろは「ま、まあ誠也くんが普段から体を鍛えてるって事はよ~く分かったけど、あんたが日頃から運動不足気味で情けないのは変わらないわよ。」

 

孝介「うっ!」

 

いろは「さあ、とっとと先急ぐわよ。午前中に全部回るんだから。」

 

そう言って孝介を急かすいろは。

 

孝介「え~!まだ歩くのか~。俺、もう歩くのやだな~。」

 

いろは「・・・だったら走ってもらおうじゃない。ほら、つべこべ言わずに歩く!」

 

孝介「うっ!わかったよ。」

 

誠也「ヤブヘビでしたね。孝介さん。」

 

孝介「うるさい。」

 

 

 

 

 

 

沢を登り山の奥へと足を運んだ誠也達三人は、山奥にある谷へとやってきた。

誠也達の目の前には谷に架かっている吊り橋が谷からの風で揺らいでいた。

 

いろは「ここは地元の人でも滅多に来ないんだけど、一応場所くらいは教えておくね。」

 

誠也「一応?」

 

いろは「久しぶりに帰ってきて気楽に探検をして、好奇心で橋を渡ったはいいけど道に迷わないように・・・とか。」

 

孝介「そんな小学生の冒険みたいな事しねーよ!なあ誠也。」

 

誠也「え、ええ。(はは・・・好奇心じゃないけど探索はしようとしてたんだよな~迷わないように気を付けないと・・・)」

 

本来の目的で怪物を探しに来た誠也にとっていろはの先ほどの言葉は耳が痛い話であった。

 

いろは「ここからとなり村までは山一つ越していかないといけないから、実質ここが村の終着点だから。それじゃ戻ろうか。こっちから行くと近道だから。」

 

そう言っていろはは登ってきた道とは別の道を降り始めた。

道と言えない獣道のような道を足を滑らせないように注意しながら降りる三人。

そんな中、誠也は自分達の背後に何者かの気配を感じ取っていた。

 

誠也(ん?誰か尾行している?)

 

背後に感じる気配を感じ取った誠也は何者なのだろうと歩きながら思案した。

 

誠也(気配を消さずに付いて来ているって事は素人っぽいからプロじゃない。もしかしたらたまたま帰り道が一緒になった地元の人かな?)

そんな事を考えて歩く誠也はやがて道は神社の裏手へと出た

 

いろは「あ、そうだ。さくやちゃんにメール送りたいんだど、携帯借りていい?」

 

孝介「いいけど、使い方わかるのか?」

 

いろは「それぐらい大丈夫よ。」

 

いろははそう言って孝介の携帯を操作し始めた。

 

誠也(携帯を弄る巫女さん・・・・なんともシュールな光景だな~。)

 

そんな事を思いながらいろはが携帯を使い終えるのを待つ誠也。

 

いろは「はい、送信。ありがとね。」

 

そう言って携帯を返すいろは。

 

誠也「さくやさんになんて送ったんです?」

 

いろは「知りたい?孝介に見せてもらいなよ。」

 

そう言ったいろはの言葉を聞き、孝介は送信済みから最新の一件を呼び出しそれを見ていたので、誠也はそれを横から見せてもらった。

 

誠也「何なに「妹に会えない禁断症状が出てきた。さくや愛してる」って・・・なんじゃこら!」

 

孝介「うぉおおおおおおいいいっ!なんてもんを送りやがるんだああああああっ!」

 

いろは「あ、バレた?あはははっ!」

 

そう言いながら身を翻して本殿へと駆けるいろは。

 

いろは「それじゃあ二人共、今度うちあわせの日時送るから。忘れずに来てよ~!」

 

手を大きく振って、いろはの姿は二人から見えなくなった。

 

孝介「まったく・・・」

 

誠也「あははは・・・・騒がしいと言うか、面白い人ですね。」

 

そう言いながら、誠也は昨日会った時の姿とのギャップを見て少し苦笑いをした。

 

???「ふぅぅ・・・・」

 

孝介「どわああああああっ」

 

誠也「うわっ!なんだ!?」

 

いろはの消えた方向を見ていた孝介が、突然叫び声を上げたので驚く誠也。

 

銀子「あはは、おはよう二人共。朝から元気いいね。」

 

誠也「あ、銀子さん。おはようございます。」

 

孝介の背後に立つ銀子に挨拶をする誠也。

 

孝介「銀子さん!いきなり背後から耳に息を吹きかけないでください!」

 

銀子「あははは、ちょっとしたお茶目だよ。軽く笑って許して。」

 

そう言って胸の前で手を合わせてごめんのポーズをして言う銀子。

 

銀子「さっき居たのいろはちゃんでしょ。仲直りできたんだ。」

 

孝介「ええ、まあ。」

 

誠也「おかげさまで。所で、銀子さん。俺達、山から降りてきたんですけど、その俺達の背後から現れたってことは・・・さっきからちょっと離れた辺りから感じていた背後の気配は銀子さんの物だったんですね。」

 

銀子「あれ?気づいてたの?すごいね誠也くん、まるでゴ○ゴみたいだね。」

 

誠也「ゴ○ゴって・・・俺は世界的な殺し屋ですか(^^;」

 

孝介「コイツは探偵志望なんですよ。父親が探偵やってるからその後を継ぐみたいなんですよ。だから、気配探知なんかもできるんですよ。」

 

銀子「え!?誠也くんって探偵なの?!私初めて見た。」

 

誠也「正確に言えば探偵のたまごですけどね。」

 

まるで珍しいものを見たかのような反応をする銀子。

 

銀子「ねえねえ、やっぱり殺人事件の現場に置い合わせたり、警察の捜査に協力したり、悪の組織や怪盗と対決したりするの?」

 

誠也「え?あ、いや~今の所殺人事件の現場には居合わせた事はないし、警察の捜査に協力したり、怪盗と対決したりはしてないですね~。(悪の組織との対決は絶賛今している最中ですけどね(^^;)。」

 

そんな事を考えながら苦笑いを浮かべる誠也。

 

銀子「え!?そうなの?な~んだ、つまんない。」

 

誠也「え、いや~まだ俺、見習いみたいなもんですから。」

 

孝介「見習い探偵に何期待してるんですか。だいたい殺人現場に居合わせたり、怪盗と対決する探偵なんて、お話しの中だけですよ。なあ誠也。」

 

誠也「え?あ。そう・・・ですね。(そうなんだけど、うちの父さんに限っては有り得そうなんで怖いんだけどね。(^^;))」

 

孝介「所でなんで朝っぱらから山の中にいるんです?」

 

孝介は銀子が朝っぱらから山の中にいた事に対しての理由を聞いてみた。

 

銀子「ん?うちの場所知りたい?遊びに来る?でも流石にちょっと時間を置いてから誘ってくれないと、太陽も高いし、ムードも無いし、何より誠也くんみたいな幼気な少年の前では・・・」

 

誠也「朝っぱらから何言ってるんです!一体何るすつもりなんですか!?」

 

孝介「・・・もういいです。」

 

銀子にツッコミを入れる誠也を見て脱力する孝介。

 

銀子「ごめんごめん。あんまり人に見せられるような所じゃなくて。私は山の方に住んでいるから、里の人との付き合いは、けっこう難しいんだ。」

 

誠也「山の方に住んでいる・・・へ~そうなんですか。」

 

孝介「付き合い、難しいのか。」

 

銀子「うん・・・町内会費も払ってないしね。」

 

真面目な顔で言う銀子。

 

誠也「ちょ、町内会費って・・・・(そもそも、山の中に住んでいるんだから、払わなくてもいいんじゃ?)」

 

孝介「・・・でも祭りには参加するんですよね?」

 

銀子「う~んと・・・そうだね。どうしようか。参加したほうが良いかな?」

 

誠也「そりゃ出ないより出た方が面白いですよ。」

 

孝介「それに、いろはが言ってました。若い人が少ないから人手不足だって。」

 

銀子「そっか~。じゃあ正義の味方の銀子さんとしては、お手伝いしない手はないね。」

 

誠也「いや、正義の味方って・・・」

 

そう言って笑顔で言う銀子に対して軽く突っ込む誠也。

 

銀子「それじゃあ、お手伝いが必要な時はいつでも読んでね。」

 

そう言ってくるりと身を翻して銀子は行ってしまった。

 

誠也「・・・色々とツッコミ所満載の人ですね。」

 

孝介「・・・ああ。」

 

それから誠也たちはまだ行っていない場所をぐるりと回り、一時間ぐらいして、昼前に岩永家へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皐月「お帰りなさい。」

 

いろはの村の案内から戻った誠也達を皐月が迎えた。

 

孝介「ただ今戻りました。」

 

誠也「戻りました。」

 

皐月「丁度いいタイミングで戻ってきたわね。今からお昼を作ろうと思っていたんだけど、二人は何が良い?」

 

誠也「お昼ですか?う~ん・・・・」

 

皐月にお昼は何が良いと聞かれ考える誠也

 

孝介「なんでもいいです。」

 

誠也「俺もなんでもいいいです。・・・けど、何でもいいってのも逆に迷うんですよね。」

 

誠也は時々家族に食事を作っているので、メニューを聞いて何でもいいと答えられて困った事を思い出した。

 

皐月「ふふ。そうね。昔、誰かに同じこと言われたの?」

 

誠也「ええ、上の姉二人と妹に。」

 

皐月「それでどうする?」

 

誠也「そうですね・・・・・」

 

そう言って考え込む誠也。その時、ふと昨日、翔子がお昼を食べに戻ってきていた事を思いだした。

 

誠也「じゃあ翔子ちゃんの好きな物で良いと思います。昨日聞きましたけど、翔子ちゃん、お昼はこっちに戻って食べてるんでしょう?だったら俺らの好きな物より翔子ちゃんの好きな物を用意したほうが良いと思います。」

 

皐月「え・・・・・・」

 

誠也の発した言葉が理解できないという風な顔をしてきょとんとして首をかしげる皐月。

 

皐月「ねえ、それ、何の事?」

 

誠也「え?何の事?って翔子ちゃん、昨日言ってましたよ。家に戻って食べる時間があるから、普段は家で食べているって。」

 

皐月「家で?いいえ、毎朝、私、お弁当作って渡しているわよ。」

 

誠也「え?」

 

皐月の言葉を聞いて考え込む誠也。

 

誠也(どういう事だ?翔子ちゃんはお弁当を持って学校に行っている。けど、お昼は家に戻って食べていた。お弁当を食べることが出来ない理由でもあるのか?)

 

そんな事を考えているとふと、ある考えが誠也の頭の中によぎった。

 

誠也(お弁当を食べられない理由がなんであれ、翔子ちゃんはお弁当を食べておらず、その事を皐月さんには隠し通してきた。そして今日はお昼には皐月さんが家に居る事を知っているから、家に戻ってお昼を食べることが出来ない・・・なら、お昼、どうするんだろう?)

 

そんな考えに至った誠也は翔子の様子を見るために岩永の家を飛び出した。

 

孝介「え?!おい!どこに行くんだ!」

 

皐月「誠也くん。ご飯はー!?」

 

誠也「すぐに戻ります!ちょっと翔子ちゃんの様子を見てくるだけですから。」

 

岩永の家を飛び出し、商店街を駆け抜けた先、そこに翔子が通う学校があった。

 

誠也(行っても意味ないかもしれない。けど、お昼に岩永の家に戻っているのは、教室に居場所が無いからってことじゃあ・・・それが理由なら、お昼よりそっちの方が問題だ!)

 

誠也は翔子がお昼に家に戻っているのは「教室に居場所が無いからなのでは?」と思ったのである。

誠也は昔、家族が目の前で殺されたせいで度々発作を起こしている義妹の霞がいた。

霞は発作はふとした切っ掛けで発作するもので、それは学校の授業中などでも度々起こしていた。

それのせいで霞はクラス内では浮いた存在になっていた。そしてそんな霞に対して、霞のクラスメイトの態度は酷いものだった。

のけ者、仲間はずれは言うに及ばず、ひどい時は机に落書きされたり物を隠されたり、嫌がらせをされたりしていたのである。

そのせいで学校が終わっていないのに、いじめのせいで途中から帰ってきてしまうと言う事が度々あったのである。

誠也はその事を思い出し、翔子が同じ目に遭っているのでは?と思い、居ても立ってもたまらずに翔子の学校へと飛び出してしまったのである。

 

 

誠也「・・・ここか。」

 

昼休み前に学校の門へとたどり着いた誠也。

 

誠也(ここを見張っていれば、わかるかな?)

 

そう思った誠也は校門から少し離れた所にある塀の陰に隠れて様子を伺った。

そしてお昼休みのチャイムが響いた後、変化が起きた。

 

校舎内からお弁当を持った翔子が校門を出ようとした時、男子生徒が立ちはだかったのだ。

彼とその友人らしき男子に囲まれて、うつむく翔子。

 

男子1「ほ~らな。言った通りだろ~」

 

男子2「おいおい岩永。どこに行くんだよ」

 

蔑むような笑いが入る。

その様子は待ち構えていた網に獲物がはいったのを喜んでいるように見えた。

その様子を見た誠也は、かつてクラスメイトに虐められていた義妹のかすみの姿をダブって見えて、誠也は思わず翔子達の前に出て行った。

 

男子1「黙っててやるからさ~。何しているのか言ってみろよ」

 

男子2「どうしたんだよ。言えねーのかぁ?」

 

翔子「・・・・・・」

 

男子1「こいつ、昨日も出てっただろう。タカミにも何か言われてたの見たんだぜ」

 

男子2「女にも嫌われてるんじゃねーの?だって暗いんだもんな。こいつ。」

 

男子1「そーそー。一人だけ葬式って感じ」

 

そんな風に翔子に食ってかかる男子たちの前に誠也が姿を現した。

 

誠也「翔子ちゃん、待たせたね。」

 

翔子「え?鳴海くん?」

 

男子1「あー!なんだお前!岩永には先に俺達が話してるんだ!」

 

男子2「部外者は引っ込んでろ!」

 

突然現れた誠也に対して面白くないと、食ってかかる男子の二人。

 

誠也「先に話してるって言ってもな~、こっちが先約なんだけど。翔子ちゃんは俺に用があって出てきてくれたんだからな。」

 

怒気を抑えながら、なるべく話し合いですまそうと話を進める誠也。

 

男子1「ああっ!何なんださっきからお前!!関係ない奴は引っ込んでろって言ってんだろ!!!」

 

誠也「関係なくないよ。俺は彼女の友達なんだから。」

 

男子2「はあ?友達?こんな根暗女の友達になるなんて、物好きなやつだな~」

 

翔子「根暗女・・・・・・」

 

翔子が根暗女という言葉を聞き、辛そうな顔をした。

 

誠也「・・・・あのさ、女の子に向かって根暗だとか一人葬式だとか少し言い過ぎじゃないか?翔子ちゃん、傷ついてるぞ。」

 

男子1「なんだよ!根暗を根暗って言って何が悪いんだ!」

 

男子2「傷つこうがどうしようがそいつが根暗なのが悪いんだ!自業自得ってやつだよ!ハハハッ!(バキッ!)って・・・なんだ?」

 

突然した何かを砕いたような音が響いたので、男子生徒二人は黙り込んだ。

 

誠也「・・・・・これ以上俺の友達を侮辱するな!もし、それ以上侮辱の言葉を言ったら・・・この後ある夏休みを病院のベットの上で過ごすことになるぞ!!」

 

足元に転がっている小石を拾い上げ、それを握り潰しながら睨みつける誠也。

その顔には、明らかな怒気が含まれ、その形相は大人が見ても腰を抜かすぐらいの物だった。

 

男子1「ひ・・・ひぃいいいー!」

 

男子2「に、逃げるぞ!」

 

そう言って二人は、誠也立ちの目の前から腰を抜かしながら立ち去って行った。

 

誠也「・・・まったく!不愉快な連中だ!」

 

二人の後ろ姿を見ながらそう言う誠也。

 

翔子「あ、あの・・・あ、ありがとう。」

 

誠也「ん?ああ、別にたいした事無いよ。それよりもあの二人組、こんな感じでいつも絡んでくるの?」

 

翔子「う、うん・・・・いつも私をからかって面白がってるの・・・・。」

 

誠也「そうなんだ・・・・ったく!どうしようもない連中だな「あの・・・」ん?」

 

翔子「・・・なんで・・・助けてくれたの?あんなに・・・鳴海くんの事・・・避けてたのに。」

 

誠也「なんでって・・・・友達を助けるのは当たり前だろう?」

 

翔子「と、友達?私達・・・友達・・・なの?」

 

誠也「うん、名前を呼び合ったんだから、もう友達だよ。」

 

誠也はそう言って、自分の友人の一人である全力全開少女が言った、友達になる最初のキッカケの言葉を言った

 

誠也「俺は少なくてもそう思ってるし、そうなりたいと思ってる・・・・迷惑・・・かな?」

 

翔子「ううん!」

 

誠也の問いかけに翔子は首を横に激しく振った。

 

誠也「なら、問題ないね。」

 

翔子「友達・・・か。あ、ありがとう!鳴海くん!」

 

誠也「誠也。」

 

翔子「え?」

 

誠也「これからは名前で読んでくれよ。」

 

翔子「誠也・・・うん!なら、私の事も翔子でいいよ。ちゃん付けだとちょっと恥ずかしいから////。」

 

誠也「あ・・・うん。わかったよ、翔子。」

 

翔子「これからもよろしくね誠也くん!」

 

誠也「ああ!」

 

そう言って誠也は翔子に向けて手を差し出した・

 

翔子「?えっと…?」

 

誠也「ちょっとしたおまじないだ。手、貸かして。」

 

そう言われ、おずおずと翔子は手を差し出すと、誠也は翔子の手を無理矢理な感じで握手し、さらに形を組み替え、手を離すと今度は拳を数回打ちつけた。

 

誠也「よし!」

 

誠也が翔子にしたおまじないとは、誠也がかつて異世界を旅した時に出会ったライダーの一人、如月 弦太朗に教えてもらった握手と共に互いの拳を数回打ち合わせる「友情のシルシ」のことだった。

 

誠也「これからもよろしく!翔子!」

 

翔子「う、うん!よ、よろしくね!誠也くん!」

 

 

 

つづく

 


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