やっと暑さも段々と収まってきて過ごしやすくなりました。
みなさんの住んでいる所ではどうですか?
では第41話をどうぞ。
リュート「カラスが?」
日本国内にある財団Xが所持している宿泊施設。その内の部屋の一つで、財団X親衛隊隊長であるリュートは、副隊長であるシャンハイからカラスが魔女を使って、逃げた魔女のハーネスの回収に向かったと言う報告を聞いていた。
リュート「ふ~・・・
シャンハイ「はい、矢車氏からの報告通り、高千穂も
リュート「・・・ミュージアムか」
リュートは、自分の副官たる金色の長い髪をした少女からの報告を聞いて考え込んだ。
シャンハイ「・・・・リュート様?」
リュート「・・・・・・よし、シャンハイ。カラスを止めて、魔女の少女達を保護するよ。」
シャンハイ「保護ですか?」
リュート「ああ。
シャンハイ「はい。では早速、今動ける親衛隊のメンバーを招集します。」
*
良太「な、何だよ。その「死に顔動画」って。」
先程から誠也と寧子が話している「死に顔動画」と言う単語に不穏な何かを感じ、誠也にその事を聞く良太。
誠也「・・・死に顔動画は、寧子さんに渡した携帯にインストールしてある悪魔召喚アプリの付属機能です。縁のある人物が近い将来死ぬ運命だった場合、その時の動画が配信される物なんですよ。」
良太「近い将来、死ぬ運命の人の動画が・・・・あっ!」
誠也の話を聞いてハッとなる良太。良太は先ほど佳奈から自分が死ぬ予知を聞かされ、もしこの事が寧子がバレた場合、寧子は全力で良太を守り、その結果、良太が死ぬ予知の前に佳奈が予知した寧子が死ぬ予知の事がバレると悟り、あわてた。
佳奈『村上!寧子が動画を見るのを止めなさい!!』
先ほどの誠也の説明を部屋の中から聞いていたのか、佳奈が良太に寧子が動画を見るのを止めるよう叫ぶ。
良太「あッ!・・・黒羽!見るな!!」
動画を見ようとする寧子を止めようとする良太であったが、寧子は既に動画を見てしまっていた。
寧子「こ、これは・・・」
寧子が見た良太の死に顔動画。その内容は、寧子に飛んできた光の光線から寧子を守るため、良太が寧子を突き飛ばして代わりに良太自身が光線に体を吹き飛ばされる映像だった。
良太「く、黒羽?」
動画を見て動きを止める寧子に対して、恐る恐る声を掛ける良太。
寧子「・・・村上くん、さっき私に「動画を見るな!」って叫んだよね。佳奈ちゃんも・・・なんで?」
顔を伏せながら良太と佳奈に、先ほど動画を見るなと叫んだ良太達に対して理由を聞く寧子。
良太「そ、それは・・・」
佳奈『・・・・・』
寧子の質問に対して何も答えられず、ただ黙ったままの良太と佳奈。そんな二人に対してさらに寧子は質問を投げかけた。
寧子「ねえ、ひょっとして佳奈ちゃんは予知で村上くんが死ぬことが分かってたんじゃない?今日村上くんが来たのも、その予知について教えるためなんでしょう?」
佳奈『・・・・・・』
佳奈は何も答えず、ベットに横になって天井を見続けた。そんな佳奈に対して寧子は悲しげな顔をしながら叫ぶように言葉を投げかけた。
寧子「どうして私に何も言ってくれなかったの!」
良太「黒羽、佳奈を責めないでやってくれ。佳奈はこの事が黒羽に知られれば俺を守るために黒羽が最初に見た予知みたいに死んでしまうのを恐れて話さなかったんだ!」
寧子「私が・・・死ぬ?」
良太「ああ。最初、佳奈は黒羽が死ぬ予知を見たんだ。だがその後、俺に予知について相談しようとした事で予知が変わって、代わりに俺が死ぬ予知に変わって・・・」
寧子「そうだったの・・・でも!だからって・・・・」
誠也「三人共落ち着いて。兎に角、動画はもう一つ有るんだから、そっちを見て、今後の事について対策を練りましょう。」
寧子「そ、そうだね。じゃあ二人共中に入って。対策を立てるのにも玄関先でやるわけにはいかないから。」
誠也「あ、はい。じゃあ、おじゃまします。」
そう言って誠也は良太達と共に寧子達の部屋へと再び入った。
寧子「まずはもう一つの動画を・・・シノちゃんの動画を見てみよう。」
良太「シノ?誰なんだソレ?黒羽達の仲間なのか?」
佳奈『シノは私達と同じ様に研究所から逃げ出してきた魔女の一人よ。私達とは別々に逃げていたんだけど、死ぬ未来があるって事は、どうやら研究所が放った刺客に見つかったみたいね。』
寧子の代わりに良太の問に答える佳奈。そんな佳奈にも見えるような位置で携帯を操作し、寧子はもう一つの方の動画を再生しようとしていた。
寧子「どう?佳奈ちゃん。」
佳奈『大丈夫、見えるわよ』
寧子「じゃあ再生させるね」
そう言って寧子は動画を再生した。
寧子の持つ携帯の画面に一斉に視線を向けて集中し、携帯の画面に映し出される映像を見る誠也達。
動画の映像はどこかの湖の近くに有るボート乗り場近くに有るボート小屋が最初映し出されていた。そのボート小屋からシノと思わしき少女が走って出てきた。そしてそのシノに対して画面外から突如飛んできた光線が当たり、シノの体の半分を吹き飛ばし、シノは血だらけになって地面に倒れた所で映像は終わっていた。
寧子「これが・・・・シノちゃんの最後の姿・・・・」
動画が終わり、佳奈に見えるようにして掲げていた携帯をおろしながら辛そうな顔をする寧子。そんな寧子を他所に、佳奈は先ほどの映像に出てきたシノの命を奪った光線について考えていた。
佳奈『あの光線・・・まさか、今回の刺客はキカコなの?』
良太「キカコ?」
佳奈『AA+の魔法使い・・・「砲撃」の使い手なの。ハイブリットではないけど、その分この「砲撃」が半端ない威力があるのよ。研究所の奴ら、何考えてるの?あんなのビーコンだけで抑えられるとでも思っているの!』
誠也「そ、そんなに強力なのか?その「砲撃」の魔法と言うのは?」
佳奈『ええ。キカコの「砲撃」の魔法は、もはや兵器と言っても過言ではないぐらいの威力を持ってるわ。小さな島程度なら吹き飛ばせるんじゃないかしら』
良太「・・・場所は、俺や黒羽の死ぬ場所と同じ場所みたいだな。だぶん、黒羽はこのシノって子を助けるためにこの場所に行って、俺はその後をついてって死んだんだろうな。」
死に顔動画の背景に写って居る湖を見て映像の場所がどこか、何故自分や寧子がこの場所に来たのかを推理して話す良太。そんな良太の推理を聞いている誠也達の居る部屋に、突然部屋の扉を乱暴に叩く音と何者かの声が響いた。
小鳥『(ドンドンドンッ!)寧子さん居ますか!大変なんです!!』
千絵『寧子居る?大変なの!!』
寧子「小鳥ちゃん?千絵ちゃん?」
突如部屋に響いた小鳥と千絵の切羽詰った声を聞いて訝しみながら玄関へと向かい扉を開ける寧子。
小鳥「あっ!居た!良かった~」
千絵「寧子、大変なの!」
寧子「どうしたの?小鳥ちゃん、千絵ちゃん。」
玄関の扉が開いて、寧子が居た事に安堵する小鳥と千絵に「どうしたの?」と声をかける寧子。そんな寧子に小鳥は持っていたトランシーバーを差し出しながら捲し立てるように話し始めた。
小鳥「連絡用のトランシーバーにシノって言う人から連絡が来たんです!「助けて!」って」
寧子「シノちゃんから?!」
小鳥の話を聞いて、小鳥の持っていたトランシーバーをひったくる様にして取った後、トランシーバーの向こうに居るであろうシノに話しかけた。
寧子「シノちゃん!」
シノ『寧子!?助けて!!今、Aクラスの刺客に追われてるの!!』
寧子達『!?』
トランシーバーから聞こえてくるシノの話を聞いて驚愕する寧子達。
シノ『お願い・・・もう電池が切れる・・・早く助けに来て。今、湖の側の公園に「シノさん!こっちに来ます!」え?!マズイ!隠れ・・・(ブツン!)』
誠也(なっ!今の声・・・)
トランシーバーから聞こえてきたもう一人の女の子の声を聞いて一瞬驚く誠也。そんな誠也の側で通信の切れたトランシーバーに対して再び呼びかけ続ける寧子。
寧子「シノのちゃん?シノちゃん!!」
寧子は通信が切れたトランシーバーに必死になって呼びかけるが、反応は返ってこず、それが無駄であると悟った寧子はトランシーバを放り投げて、突然玄関へと駆け出した。
佳奈『村上!誠也!寧子を止めて!!寧子はシノを助けるために湖に行くつもりよ!予知で見たあの湖に!!』
誠也「えっ?あ!」
良太「黒羽!よせ!行くな!!」
トランシーバーから聞こえてきたもう一人の女の子の声を聞いて、それについて考えていた誠也は佳奈の声に反応できず、部屋を出て行こうとした寧子に反応できず、それどころか寧子を追うようにして部屋を出て行った良太も止めることができず、見逃してしまった。
誠也「あっ!良太さん待って!!良太さんも湖で死ぬ予知されれるんですよ!」
部屋を出て行く良太を呼び止める誠也。だが良太はそんな物が聞こえてないかのように寧子の後を追って部屋を出て行った。
誠也「チッ!全く、自分も湖で死ぬ予知されてるのに自分まで行ってどおするっての!小鳥さん、俺は良太さんを追いますから、小鳥さんはもうすぐランニングに戻ってくる田中先輩にこの事を!圭介と竜輝には俺から携帯に連絡を入れておきます。千絵さんは能力を使って湖周辺を侵入禁止にして、警察無線と110番通報を一時的に無効にしてください。」
千絵「わ、わかった。」
小鳥「は、はい!」
状況がつかめず、呆然と立ち尽くしている千絵と小鳥に指示を出した誠也は、自分の携帯を取り出し短縮ダイヤルで圭介と竜輝の携帯にかけながら部屋を出て行った。
誠也(
誠也はトランシーバーから聞こえてきたもう一人の女の子の声が、かつて異世界を旅した時に出会った小悪魔の女の子「こあ」の物だと確信し、湖に「こあ」も一緒に居るのなら彼女の身も危険にさらされていると考え、湖へと向かう良太達を追う速度を上げた。
つづく