特異点の白夜   作:DOS

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そろそろこの物語も100話!
番外編とキャラ紹介を除いたらこの話で97話かな?



『白い綿毛』

 

 

 

「はぁ!!」

 

ビュッ!

ツナの死ぬ気の炎を纏った拳が光努の顔に吸い込まれるように放たれたが、それを首をかしげることで回避した光努は、今度はツナに拳を放った。

 

すぐさま炎を噴出して後ろへと距離をとり、そのあとを追うように光努は床を蹴ってついて行ったが、今度は上へとツナは方向転換。光努もやはり後を追うようにして上へと跳び上がる。

 

だがそれを向かえ打つように、ツナは上へと飛んだ体制から体を縦に回転させるようにして、踵を思い切り跳んで来た光努へと叩き込んだ。

 

それでもそう簡単に当たるべくもなく、腕をクロスさせてガードしたが、そこは地面から離れているため踏ん張れず、そのまま重力に逆らって床へと飛ばされたが、光努は難なく着地した。

 

「どうだラル。光努は」

「異常だな。あのグローブにまだ慣れていないとはいえ、炎も使わず身体能力だけで互角に戦っている。いや、あいつはまだまだ余裕そうだな」

 

最初は驚き、冷や汗を流したラルだが、ツナと光努の戦いを見ているうちにとりあえず慣れ、冷静に光努を分析し始めていた。

 

「身一つであれだけ動ける人間など、(フォン)を思い出すな」

「俺もだ。光努の腕力や脚力はすげーからな」

 

(フォン)とは、赤いおしゃぶりを持つアルコバレーノの一人。

108の拳法を編み出した武道の達人であり、イーピンの師匠でもある人物である。

 

「しかし、見れば見るほど異常だな」

 

ツナの拳を手のひらで受け、そのまま掴んで床へと叩きつけようとする。

人一人持ち上げるほどに腕力が高い光努にとっては、腕一本でツナを振り回すことも可能だったが、ツナは死ぬ気の炎の推進力を利用し、自分の体が光努の真上に来た瞬間に掴まれていない手から炎を放出させて逆にツナの方から向かい、光努に拳を叩き込む。

 

が、すぐにツナの手を離して後ろに跳んで距離を取ると、ツナの拳はそのまま床を砕く結果へと終わった。

 

先程から起こっているのは、お互いに避けて攻撃を叩き込むということ。空中へと逃げるツナに攻撃を仕掛けても、ツナほど宙を自在に飛ぶすべを持たないため、やはり攻撃がどうしても当たりにくくなる。それでも上空からのツナの攻撃を避けて受けてカウンターを仕掛けているのはさすがの一言だった。

 

「死ぬ気の炎は実際の炎のように熱を持ったエネルギー。にもかかわらず、素手で受け止めて平然としているとは、本当に人間か?」

「それは俺も思ったんだけどな。でも事実、あいつは一人の人間だろ。ただちょっと規格外みたいだけどな」

 

その時、トレーニングルームの扉が開いて誰か入ってきた。

ツナと光努の戦いを見ていたラルは、ちらりと扉へと向けたが、そこにいた人物を見た瞬間少し目を見開いた。

 

「獄燈籠!?なぜお前がここにいる?」

 

タバコの煙を吐きだしながら、歩いてくる獄燈籠がそこにはいた。

やることがあったため、光努と了平とクロームがきたタイミングよりかは少し遅れてくることになり、ついさっきボンゴレアジトへと到着したのだった。

 

ラルとリボーンのところまで来て、ツナと光努が戦っているのを見て面白そうに目を細めた。

 

「ほぅ、あれが噂の、ボンゴレ10代目か。見たとこ10年前のようじゃが、中々どうして強そうじゃのぅ」

「ちゃおっす(ロウ)。久しぶりだな」

「リボーンか、懐かしいのぅ。この時代にお前さんらは、もういないからな」

 

昔の友人に会えた喜びか、リボーンを見た獄燈籠の表情は本当に嬉しそうだった。

反対にラルは少し苦い表情をしていたのだが、その様子にリボーンは笑っていた。

 

「おい、俺を無視するな」

「ラルか、前に見たときよりも、相当無理しとるみたいじゃな」

「!」

「地上には非7³線(ノン・トゥリニセッテ)が充満しとるのにな。ここは大丈夫みたいじゃが」

 

そう言って鋭くラルを見る獄燈籠に、ラルも無言で睨み返す。

 

非7³線(ノン・トゥリニセッテ)とは、アルコバレーノにとって有害な物であり、この10年後の世界では大気中に照射されているため、地上を歩くだけでアルコバレーノの体は呪いで蝕み、最終的に死にいたる。アルコバレーノのなりそこないであるラルも、リボーン達程ではないが有害なため、既にその体は呪いに蝕まれていた。

 

「余計なお世話だ。お前はどうしてこんなところにいる」

「なに、光努と一緒に日本に来たんじゃよ。ところで、あの二人は何をしとる?」

「光努の実力を見たくってな、ツナとバトらせてんだ」

「ほぅ。じゃが、うちの光努に勝てるか?」

「今のツナじゃまだまだじゃねーか?」

「リボーン、そこは沢田を援護するところじゃないのか?」

「ボロクソ言って指導するのが俺のスタイルだ」

「鬼かお前は」

「お前さんは人のこと言えないじゃろ」

「お前もな」

 

さてと、というふうにして獄燈籠が懐から取り出したのは、赤い色にアヤメの花の模様があしらえられた匣。その匣を見た瞬間、ラルとリボーンの目が少し細待った。

 

「何をする気だ?」

「ふむ、突然の攻撃に対応する訓練、とか面白そうじゃろ」

「面白いな」

「あまりやりすぎるなよ」

 

全くもって反対の色を見せないリボーンとラルに、自分で言っておきながら若干呆れたふうな獄燈籠。しかしスパルタのラルをもってやりすぎるなという獄燈籠も獄燈籠であった。

 

竜をあしらった赤いリングをはめて、真っ赤な色の嵐の炎を灯した。

リングの上で揺らめく小さめの炎だが、その色は真紅色に燃え盛り、純度の高さが伺える。決して派手な炎ではないが、ラルやリボーンもその炎を、獄燈籠の実力を肌で感じていた。

 

バシュ!

 

炎を匣に注入し、開いた匣から飛び出した嵐の炎の塊が、ツナと光努の戦いの中へと突っ込んでいった。

 

「「!!」」

 

突如自分達のところへ突っ込んできた炎の塊に、ひとまず戦うのをやめて二人共後ろに下がるのと上空へ行くことで距離を取った。さっきまでいた場所で炎の塊が停滞したが、本体がギュルギュルと渦を巻くように回転すると同時に、細かい嵐の炎の塊が当たりに飛び出した。

 

「うぉ!危ね」

 

飛んでくる細かい炎を避ける光努。大量に降ってくる炎を、的確に見切り、避ける。ツナも自身の炎を前にだし、大空の炎を噴出することで炎を受け止めた。

だが、

 

(炎を突き破ってくる!)

 

ツナの炎を突き抜けて、体まで飛んでくる炎。ひとまずその場で防御するのをやめ、上空を飛び回って炎を避けた。

 

そして避けるツナの瞳に映った炎の中身を、ツナは確かに見た。

 

(これは・・・羽!?)

 

よくよくと見れば、嵐の炎を纏った羽が辺りの壁に突き刺さっていた。

 

「つうか、あれって鳥か」

 

光努の言うとおり、嵐の炎の塊となってツナと光努の間に位置していたのは、大きな鳥。

 

赤みがかった羽が所々にある全体的に黒い、独特の色をした鳥。実際にいるかどうかはともかく、匣用に付けられたカラーかもしれない。羽を広げた大きさは優に2メートルを超えるほどに巨大な鳥は、その鋭い瞳と嘴に鉤爪、威風堂々とした姿をしていた。

 

「鷲!?」

嵐鷲(アクィラ・テンペスタ)のフゼじゃ。ほれお前ら、一度ストップ」

 

パンパンと手を叩く獄燈籠の元に、大鷲が飛んで腕に止まる。

羽をたたみ、堂々としたその威厳溢れる姿は、まさに鳥の王者と呼ぶにふさわしい風格だった。

 

獄燈籠のストップ宣言に、ひとまず地面に降り立ったツナと光努は、リボーン、ラル、そして獄燈籠の元へと近寄ってきた。

 

「よう籠。用事は終わったのか?」

「終わった。じゃから行くぞ」

「了解♪じゃあな、ツナ」

「光努、どこに行くの?ていうかその人だれ?」

「獄燈籠っつって、イリスファミリーの『アヤメ』だよ」

「それって確か、槍時さんと同じような人ってこと?」

「そうそう、そんな感じ」

「すごいざっくばらんな説明じゃな。まあ確かに確信だけ付いとるが」

 

ツナと獄燈籠は初対面。だが、光努の説明で2度あった海棠槍時を思い出す。

1度目はコンビニ強盗の中、2度目は大空のリング戦に来たとき。

 

そしてそこからツナの頭の中では、じゃあ獄燈籠も常識的な人じゃないかな?という結論に至ったが、さっき問答無用で攻撃を仕掛けた時点でその考えは捨てたのだった。

 

何か失礼なことを考えたのを見破られたのか、フゼが獄燈籠の腕の上からツナにギロリという鋭い目でツナを見ると、「ひぃ!」という風に怯えたのにラルが呆れたのは余談である。

 

「光努、籠。おめーらこのアジトから出るのか?」

「うん。日本にはルイがいるらしいからそっち行く」

「外はミルフィオーレだらけだけど、おめーらなら大丈夫だな」

「なんならわしが地上焼いてこようか?」

「そうだな、それもいいかもな」

「ちょ!ラル!何物騒な同意してるの!ダメに決まってるじゃない!籠さんも何言ってるの!」

 

どうでもいいが、獄燈籠さんというのだと何か言いにくいのでツナはボンゴレの超直感を駆使して直感的に呼びやすい籠さんで呼ぶことになったのだが、本当にどうでもいい。超直感の無駄遣いである。

 

鷲のフゼを匣に戻り、獄燈籠は自分の懐にしまう。そして光努と一緒にそのままトレーニングルームを出ようとする。

 

「ちょ!リボーン大丈夫だよね!?本当にしないよね?」

「大丈夫だ。籠は(つぇ)ーからミスはしないはずだぞ」

「いやいや、誰もそんな心配してないよ!」

 

ツナの声も虚しく、光努と獄燈籠はトレーニングルームを、ボンゴレのアジトを去るのであった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

曲がったような木が生い茂り、少し不思議な雰囲気を持つ森の中、草を踏みしめる足音がする。

 

少し薄暗く、まだまだ時間帯的には速い時間。そろそろ明るみだして朝になりかけてきているのだろう。夜露で葉が少し濡れ、朝の風が中々に寒そうな雰囲気を出している。

 

そんな中歩く人物が羽織っている服が、風でふわりとはためくが、その人物は特に止まることなかった。

 

どこかの山の頂上だったのか、少し森の木々が開けた場所から辺りを見たとき、太陽がかすかに日をだして日の出に差し掛かったことを理解し、少し眩しい太陽光に目を細めた。

 

紫色の宝石の付いたシンプルなリングをはめた右手と反対の手で、ポケットから匣を取り出した。リングから紫色の炎、つまり雲属性の炎を出し、匣へと注入する。

 

匣が開いて出てきたのは、白い綿毛。匣を植木鉢のようにして、出てきたというよりは咲いたというような言葉が合う。紫色の雲の炎を微かに、よく視認しなければ見えないほどに薄く、全体的に炎をおびている。

 

茎を手に持って息を吹くと、綿毛は細かくバラバラに飛び、風に乗ってあたりへと散らばった。ふわふわとゆっくり飛んでいく綿毛を見つつ、見ていた人物はその長く後ろで一つに結われている頭を少しかいた。

 

ピッピッピッピ。

 

携帯端末が着信を告げたのを確認して、取り出した。

メールが来たのを確認し、端末を操作して映し出された文章を見た。

 

[よぅルイ!これからそっち行くからよろしく☆by光努]

 

金色の長めの髪に、羽織られた白衣。

飛び散った綿毛を見ながら匣をポケットに戻し、だんだんと太陽が登っていく様を見ながら、これから来る楽しみに、思わず微笑んだ。

 

 

 

 




メローネ基地襲撃まであと5日!
次回はイリスの日本アジトへレッツゴー!

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