10年後の世界において、マフィアの頂点に立っていたのは、白蘭率いるミルフィオーレファミリー。
彼らの目的は、
7つのボンゴレリングと、7つのマーレリング、そして7つのアルコバレーノのおしゃぶり。
その為、ボンゴレリングを狙った彼らは、全てのボンゴレを殲滅するべく、ボンゴレファミリーの人間の他、彼らと関わりの深い者達にまで、その手を広げていった。それにより、ボンゴレはほぼ壊滅状態。今やミルフィオーレに見つからぬように、彼らは今もどこかで活動を行っていた。
しかし、ボンゴレリング自体は、すでに10年後のツナの手によって砕かれ、この世に存在しなくなっていた。その為、白蘭は10年前のボンゴレファミリーを現代に呼び出し、彼らの持っているまだ砕かれる前のボンゴレリングを狙おうと画策した。
アルコバレーノのおしゃぶりは、ほとんど手中にある。
この時代の技術力をもってすれば、最強の赤ん坊と言われたアルコバレーノを限定的に無力化する術すらも作り出すことが可能のため、彼らはあっさりとミルフィオーレにやられ、おしゃぶは奪われてしまった。
すでマーレリングに関してはミルフィオーレが現時点で所有しているため、いま時点で半分のトゥリニセッテは我が手中にあるといってよい。
しかし、白蘭が欲した究極権力の鍵には、後二つ知らざる鍵があった。
それが、
一つのおしゃぶりと、一つのリング。
白いおしゃぶりと、フィオーレリングの存在。
マフィア界においても秘中の秘。そもそもこの世界において知っている人間自体がわずかしかいないため、白蘭がこの存在をどうやって知ったのかが謎だったのだがそれはいい。
問題は、この時代においてフィオーレリングとおしゃぶりの二つが存在しないという問題。10年前に、フィオーレリングの保持者であるイリスファミリー2代目ボスである少年が、リングととも突如行方不明となった、その為、どこにいるのかわからないイリスのボスを探し白蘭は、イリスファミリーも攻撃対象にいれ、彼らを殲滅した。
イリス本拠地の破壊痕からわかるように、大々的に攻撃が行われ、本拠地がなくなったイリスファミリーの他のメンバーは世界中に散っていることだろう。
しかし、攻撃を続け、捜索を続けた白蘭も、どうしてもフィオーレリングを見つけることができなかった。
そして考えたのが、ボンゴレリング奪取の作戦と同じ。過去のイリスファミリーのボスを連れてきて、一緒についてくるリングを奪うという選択肢。
そしてやってきたイリスファミリーのボスである少年を見て、白蘭は自分の中に再び野望への道筋がみえたことに喜んだ。
今現在、イリスのボス、白神光努はそんな白蘭の目をどうやってかいくぐり、過去に戻ることができるのだろうか?
***
「ふーん。それで、イリスファミリーはもれなく壊滅したと」
『ま、そういうことだな』
ルイの説明に、納得したような、納得していないような声で光努は感想を漏らす。
「でもおかしくね?こういう荒事のためにいる『アヤメ』の連中はどうしたんだよ。全員やられたなんてことはないだろ?」
「そんなわけ無いじゃろ。イリスの『アヤメ』は常に最強じゃて」
イリスの『アヤメ』は抑止力。あまりにも戦闘員の数の少ないイリスファミリーの唯一の戦闘部隊。もしも攻め込まれたとしても大丈夫なように、それぞれ戦闘員は強大な力を持っているので安心。というふうに本来ならなるはずだった。
「だったらどうして本拠地がボロボロに?」
『そのアジトは一旦諦めた。オレの判断でな』
光努の疑問に答えたのは、モニターに映って通信を行っている10年後のルイ。
『籠と槍時とクルドがいれば基本は問題がない。が、人間1日で世界のどこへでも行けるわけではないからな』
「てことは、つまり・・・」
『うん。攻め込まれた時に都合悪く誰も近くにいなかった』
「アホか!」
というか基本的に連絡手段が鳥に手紙をくくりつけるというこの時代においては旧旧時代的連絡手段しか持ち合わせていない『アヤメ』のメンバーを収集、連絡を取ることすら基本的に不可能に近いはず。戦える人間のいないところで攻め込まれたら普通にやられるのは当然といえば当然である。
というかこんなんでよく今まで大丈夫だったなとも思う。そういえば今までは良いタイミングで帰ってきた、とか言ってたな。
しかし戦闘部隊がいないのであれば、責め放題じゃね?普通に光努は思った。
『まあそれ以外は灯夜がいればそれで終わったが、灯夜も現在遠くにいるから帰って来れない』
「そんなわけで、わしらもあちこちに潜伏中ってわけじゃよ。見つかったら面倒な
敵がわらわら狙って来よるし」
今だにイリスファミリーはミルフィオーレの狩りの対象。悠々と外を歩くとあっと今に敵に囲まれるのが現状だった。
「敵の狙いは、このフィオーレリングってことか」
鎖の巻きつけてあるリングを取り出し、嘆息する光努。
「そういえば俺が行方不明ってことだけど、一体どういうことだ?」
光努の疑問も最も。光努は10年前に行方不明になったらしい。だが、10年前の光努はここに居るため、今のところ行方不明にはなっていないはず。
『光努。お前がいなくなったのは、昔俺がお前に10年バズーカの弾を見せたその日だ』
「!その日って・・・」
俺がタイムトラベルをしたから行方不明になった?
いや、でもおかしい。同じように今までタイムトラベルをした10年前にはランボやイーピンもいたけど、ここにはしっかりと10年後のランボ達だっている。
そもそもここは10年後の世界なのだから、10年後の自分だっていておかしくない。
ただたんに本当にこの時代の光努は行方不明なのか、それともどこかに消えてしまったのか。
もしくは、最初から10年後の白神光努という存在などなかったのか。
「おかしなはなしだよなぁ・・・」
「ま、そういうことは後にして、過去に戻ることを考えたらどうじゃ?」
それもそうだな。まだ情報不足なことより目標をもつ。
その過程で何かしらのヒントが得られるかもしれない。
「そういえばルイ。白蘭の狙いがボンゴレリングならツナ達ももしかしてこっちに来てるのか?」
『そのようだ。実はつい最近ミルフィオーレの6弔花の一人の電光のγが雲雀恭弥に倒されたという情報を得た』
「恭弥に?それって10年後のってことか」
『そのようだ。さらにγは、そこで過去の沢田綱吉を見たと、報告しているらしい』
「10年前の、か・・・」
この時代に置ける沢田綱吉は、既に死亡となっているらしい。
ミルフィオーレとの争いをやめるため、交渉の場にて条件として一人でやってきたボンゴレ10代目を、ミルフィオーレ側は一切の交渉をせずに射殺したらしい。
「ツナ達も帰れないでいるのか。オレの行方不明の日付と今日の日付を計算すると、およそ今は9年10ヶ月半ってところか」
10年バズーカなのに10年たっていないとはこれいかに。
「そんで、どうやった帰れるかルイに心当たりないのか?」
『と言われてもな。オレの知り合いでタイムトラベルに詳しい心当たりは正一くらいかな』
「正一?」
『5年くらいに少し知り合ったやつでな。俺と同じで機械系に詳しく、確か最近はタイムトラベルについて研究してたって聞いたな』
あまり外に出ないから人との関わりが少ないんじゃないかな、と思っていたルイの生態だったが、光努の予想より結構なパイプがあったらしい。
確かにルイは技術主任を勤めているだけあってその筋じゃ割と有名人らしい。同じような仲間をどこかで見つけてもあまり不思議ではないな。
「おお、いい情報じゃん。その正一ってどんなやつ?ていうかどこにいるのさ」
『ミルフィオーレファミリー第2ローザ隊隊長の6弔花やってる奴だ』
「思いっきり敵じゃねーか!!」
『でも正直直接戦うタイプじゃないから、一対一なら話聞いてくれんじゃね?』
「一部隊長が敵と一対一になるわけないじゃろ」
「あ、籠もやっぱそう思う?」
でも確かに他の手がかりが思いつかない。というか手がかりにすらなっていないが、案外10年バズーカのこと詳しいんじゃないか?
ボヴィーノファミリーに聞くという手もあるが、ランボに持たせているという時点でそこまで詳しく知らなさそうだからあえてスルーする。
こうなったらミルフィオーレだろーがなんだろーが利用するものは利用するに限るな。
「で、入江正一ってどこにいるんだ?」
『少し前に日本来たから、今のところはまだ日本にいるな』
「日本か。じゃあ俺も行こうかな。どうせツナ達も並盛りにいるだろ?」
あ、でも10年バズーカは10年後の自分と今の自分の位置を入れ替える道具だから、10年後のツナ達の居場所によっているところが変わるか。
でも確か電光のγを倒したのは雲雀恭弥。ということは、恭弥がいるなら並盛かもしれない。そしてγがツナ達を目撃したのもその時らしいから、やっぱり全員並盛りに来てるのかな?
『当たり。どうやら過去のボンゴレファミリーは日本の並盛に潜伏してるらしい』
「じゃ、日本に行って入江正一のところに殴り込みに行くか」
「お主割と過激じゃのう。まあ待て。行くのはもう少しあとでも良いじゃろ」
今にも飛び出して行こうかと思われる光努を、獄燈籠はなだめる。
「なにかあんのか?」
「まあよく考えてみぃ。イリスファミリーは基本ミルフィオーレの抹殺リストに載ってるんじゃ。なのに公共機関を普通に使って大丈夫じゃと思うか?」
ふむ、確かにそう言われればそうだ。どこにミルフィオーレの人間が潜んでいるかもわからない状態じゃ、うかつに外に出るのは危ないかもしれない。
もしも顔写真とか手に入れているのであれば、見ただけで一発でわかる。白髪の子供なんてそもそも目立つし。もっとも、むこうが光努という存在をどれだけ知っているか分からないが。
「実はもうすぐミルフィオーレの部隊が日本へ行くらしくての、そこに便乗してこっそりと行こうと思うんじゃよ」
「お、マジで?そりゃいいや。でもどうやってのるんだ?変装とか?」
「ま、そんなところじゃの。それより、やつらが動くまでまだ時間があるんじゃがの」
「そうだな」
ごそごそとポケットを探り、獄燈籠が取り出したのは、手のひらサイズの立方体の箱と、赤い宝石のついたシンプルなリング。
「さっきの地上での戦いでも、
にやり、といって楽しそうに笑う獄燈籠。
そんな顔につられるようにして、光努も楽しそうに笑った。
「もちろん、超興味ある♪」
リングから出た炎。炎を纏った魚や武器の数々。空を飛ぶ手段。
これだけ見て、光努に興味がわかないわけない。
とりあえずの情報収集としてルイに現状を聞いて考えていたが、それでもずっと気になっていたのは当然だ。
自分も同じようにやってみたいと思うのも、子供の性なのかもしれない。
ひとまずルイとの通信を終えた光努と獄燈籠は、通信室を出てスイートルーム風の部屋に戻り、別の扉のところ。
『修行場』と書かれた扉へと入っていったのであった。
光努「懐かしの次回予告のコーナー」
獄燈籠「特別ゲストはわしじゃ」
光努「じゃあ最近のマイブームは?」
獄燈籠「次元爆弾作りじゃ」
光努「字がおかしくね?時限だろ?」
獄燈籠「『次元を超えるほどに強力!』という意味合いを込めてわしが名づけた」
光努「そんな物騒な爆弾作るなよ!」
獄燈籠「ちなみに次回はわしによる、よくわかる匣リング教室じゃ」
光努「お、ちょっと楽しみ」
獄燈籠「びしばしいくからのぅ。覚悟せい」
光努「よっしゃぁ!かかってこいやぁ!」
獄燈籠「次回もよろしくのぅ」
光努「またなー」