特異点の白夜   作:DOS

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未来編がついに始まった!
リング戦が結構話数にすると長かったから未来編も長くなるかな。


未来編Ⅰ 『10年後』
『知っているけど知らない場所』


 

 

 

目の前が真っ白になった。いや、真っ黒?

 

よくわからないが、暗闇に全身を包まれたような気がした。

 

それに妙な浮遊感。深海の奥へ奥へと沈んでいくような感覚。

 

そしてだんだんと意識が沈んでいく様な、そんな気がする。

 

昔、どこか似た感覚に襲われたことがある気がする。

 

そうだ、確か・・・・・。

 

別の世界へと行く時のような、そんな感覚だった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

目を覚ますと知らない天井というフレーズをよく聞くが、そんなことなど普通あるかないか、そもそも起きた時点で天井を見つめてる人は割と少ない気がするのは自分だけだろうか。

 

知らない天井と起きた瞬間に認識できるのは、きっとその人物が起きた時から頭がと目が冴え渡っている高血圧の人間なのだな。

と、ここまで前置きをしておいたが、今目の前に見えているのは、もちろん知っている天井。

 

というか、ルイの私室の中みたいだ。

 

ソファの上に寝転がっていた体を起こし、周りを見渡してみる。

確かに天井も壁も机もソファもルイの私室であることに間違いはない。

 

が、どうにも少し埃っぽい気がする。

 

他にもおかしい点といえば、机の上にあった皿とカップ、紅茶も存在しないし、鉄の箱もなくなっている。そしてさらに変な点もある。ルイの私物の機械が置いてある第二部屋を見てみたが、そこには機械のきの時もなく、何もない空間が広がっているだけだった。

 

「なんだ、この古びた感じは同じ部屋なのにまるで・・・」

 

何年も人が使ってないかのような。

 

「ま、探索すればわかるか」

 

ひとまず光努は部屋を出て、廊下を歩く。

特に廊下も変わったところはなさそうだし、外から見た景色も特に変わった・・・ところ・・・は・・・・・。

 

「おいおい、何だこれ?」

 

通常、廊下から見える景色は、正面広場と技術舎、倉庫と他にも森や公園など多くの建物が広がり、門まで見えるはずだが、今の景色は。

 

()()()()()()()()

 

崩壊して瓦礫と化した技術舎。森も燃えた跡が目立ち、地面には爆発の痕がいくつも目立つ。ふと見渡しても、あちこちに破壊痕、戦いの跡が残っているのがわかる。一体何があったんだ?

 

よくよくと見れば、この母屋の半分位も崩壊している。ルイの部屋のあった場所と数カ所はなんとか無事だった場所だったみたいだ。

 

「どう見ても10年後だよなぁ、ここ」

 

俺の落とした10年バズーカの弾、十年弾(光努命名)の暴発によって、多分10年後に飛ばされた。最初に目を覚ましたときはそうだと思ったが、だんだんと自信がなくなってきたな。本当に10年バズーカだったのなら、その効力は5分だけのはず。にもかかわらず、俺が目を覚ましてからすでに5分以上の時間が立っている。

考えられるのは、

 

①十年弾の故障

②じつは10年バズーカの弾じゃなかった

③ハクリが暗躍してた

④自分の知らない何か

 

そうだな・・・③は自分でふと思い浮かんだが多分ないな。あいつは基本的に傍観しているやつだし。

 

②というのも多分ない。ルイが持ってきたものなら本当に10年バズーカの弾だったんだろうな。面倒くさがりだが、自分からやることに妥協はない。楽しそうに、問答無用で用意するからな。

 

①というのも、今の俺にはわからないな。故障してどうなるか、そもそも詳しいことすらあんまり知らないしな。だがありえなくはない。

 

④に至っては考えてみたがまったくわからないな。

 

「やっぱり現時点で必要なのは、情報か」

 

知っている場所、来たことも見たこともある場所でも、まったく知らない場所。

ならば、この10年後の世界を知らないとな。

 

そう、最初にこの世界に来た時のように、情報を集めだけだ。

 

窓の外から見える景色に、白い点が見えた。

総勢は10名程。全員同じような服装しているな。

 

肩にショルダーアーマーを備えた真っ白な上着。肩に何かの紋章のようなのが見えるが、どこの紋章かは見たことない。それ以前に興味があるのは、奴らの足元。

奴らは全員、空を飛んでこちらに向かってきている。足元から、赤い炎や黄色い炎を噴射しながら飛んでいる。ツナが手から死ぬ気の炎を噴射して飛行するかのごとく、おそらくあれは、死ぬ気の炎。ボンゴレかと思ったが、どうやら違うみたいだ。

 

「なんにしても、ここにいる時点で敵だな」

 

この破壊されたイリスファミリーの本部。そこに入り込むものは、敵。

情報を得るためには、多少の犠牲もやむ得ないな。

 

光努は廊下の窓を開き、窓枠に脚をかけて力をこめ、外へと跳んだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

ミルフィオーレファミリー、第13バルサミーナ隊。

隊長である男、バッティスタは、部下を引き連れて上空を飛んでいた。

ミルフィオーレファミリーの開発し所有しているF(フレイム)シューズは、ツナのグローブと同じ原理で持ち主の死ぬ気の炎を足元のシューズから放出し、空中を飛行が可能な靴である。

 

隊長1名と部下9名の計10名。B(ランク)の隊長であるバッティスタは、特筆すべき性格はあまりないが、仕事は真面目な方だった。今回きた彼らがやってきた場所は、イリスファミリー跡地。

 

一度滅ぼしたその場所にわざわざ一部隊が来たのには、もちろん理由があった。

常に敵を探そうとするミルフィオーレの優秀な通信部のモニターに情報が、巨大なリング反応が突如出たらしい。

 

通常ならありえないくらいの反応。その時近くにいて、ちょうど動ける部隊が第13部隊だけだったため、急な出撃となった。

 

しばらくの移動を経てたどり着いたのは、もはや抜け殻となってミルフィオーレにとってはなんの価値も見いだせないような壊れた土地。

眼前に迫った破壊痕のイリスファミリー。

 

特に変わった様子があるわけでもなく、相変わらず錆びれている。本当にこんなところに巨大なリング反応があったのかと思うバッティスタと部下達だったが、ひとまず地上に降りようとした時に気づいた。

 

固まって空を飛行していた10名の間に、11人目の人影がいつの間にかいた。

 

その影は、まだ少年だった。

 

柔らかそうな白い髪を風に揺らしながら、楽しそうに笑みを浮かべた表情と裏腹に、その瞳は鋭く敵を見つめている。さっきまで何もいなかった場所に突如表れた少年は、その口を開いた。

 

「なあ、あんたらの事教えてくれよ」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「こいつ!」

 

すぐに行動に移った部下達。否、移ろうとしたその刹那、光努の右手が一瞬で一人の首元に伸びて触れたと思ったら、がくりと首が傾き、意識を手放した。

 

「なっ!このやろう!」

 

どこからか取り出したのか、槍を構え、後ろから光努を突き刺そうとした。

だが光努は、伸ばした右手と逆の左手を背中にまわし、槍の先端を掴み取った。万力のような光努の力で握られた槍を、彼はわずかたりとも動かすことができなかった。

 

そのまま体を回転させて、槍の上に脚を乗せて立ち、そのまま槍を伸ばしたままの男の顎を加減しながら蹴りつけ、その意識を刈り取った。

 

この間わずか3秒。

 

そのまま光努は自分で気絶させた二人を掴み、そのまま重力に従って地面へと落ちていった。

 

呆気にとられたバッティスタと残りの部下7名だったが、すぐに自分たちに襲いかかった襲撃者を再確認し、足元の炎を噴射して落下していく光努を追いかけた。

 

彼らが追いつくより速く、地面へと着地した光努。

 

高さは20メートル程の高さを飛んでいたのだが、そんなことなど関係ないように光努は難なく地面を砕きながら着地し、気絶させた二人を地面に寝転がらせた。

そして地面の上に立つ光努の眼前に、空中からどんどんと人影が降りてきた。

 

「おーい、こっちこっち」

 

手を振って笑う光努に対して若干肩透かしをくらったが、それでも全員地面に降り立ち、バッティスタは隊長として一歩前に出て、光努に対して口を開いた。

 

「少年、お前は何者だ。それと、部下を返してもらおうか」

「俺は光努。そういうあんたらは何者だ?マフィアか」

「我々はミルフィオーレファミリー、第13バルサミーナ隊。俺は隊長のバッティスタだ」

「第13部隊。結構でかいな。ミルフィオーレもやっぱり聞いたことないな」

 

光努の言葉に、バルサミーナ隊のメンバーたちは呆れている。この時代において、ミルフィオーレの名前を聞いたことのない人間がいるとは思わなかった。だが一般人ならマフィアに関してわからなくてもしょうがないかもしれない。ということはこいつは一般じかという疑問も頭に浮かんだが、どう見てもさっきの行動は一般人の範疇を軽く超えている。

つまり、

 

「隊長、さっさとリング回収して帰りましょうや」

 

ボゥ!

 

「!・・・へぇ」

 

部下の一人が拳を握り、少し力を込めるような感じがしたと思ったら、その指にはめられていた黄色い宝石の付いたシンプルなリングから、黄色い鮮やかな炎が生み出された。

 

ただの炎ではなく、キラキラと光とともに燃える黄色い炎を見て、光努は心底面白そうにしていた。

 

そのまま槍を構えると、槍の先端が黄色い炎に包まれた。

 

昔見た、(ハイパー)死ぬ気モードのバジルが、己の武器に死ぬ気の炎を灯した時のように。だがこちらは、死ぬ気モードにもならずに炎を産み出し、武器に灯した。どうやらあのリングの力によるところのようだ。

 

「その炎、死ぬ気の炎か。どういう原理でリングから出てんだ?」

「リングも知らんとは呆れたやつだ。さっさと貴様を始末して回収させてもらおう」

 

他の者たちも同様に、それぞれの武器に様々な炎を灯しながら構える。

バッティスタは部下達の好戦的なことに少し嘆息していたが、元々そういう任務。邪魔するものは排除する。それが任務の全て。その為、バッティスタも炎をだそうとした時だった。

 

「お主ら、あまり人ん家に土足で上がらんでもらえんかのぅ」

「!」

 

ゴゥ!!

言葉の方向に振り向く間も与えられず、バッティスタとその部下達の足元が赤く染まったと思ったら、彼らを人のみにする真っ赤な火柱が荒々しく天へと燃え上がった。

 

抵抗しようとするも、ありえない炎の嵐の中、部下達は何もすることができずにどんどんと倒れていった。

 

光努は彼らが炎に飲まれるその光景に呆気にとられるも、声のした方向にゆっくりと顔を向ける。

 

そこには、男が一人いた。

 

全身軍服に使われるような国防色とも呼ばれる深緑に近い色の服に身を包み、足元と手には真っ黒なブーツにグローブ。頭を覆うように巻かれたバンダナに抑えられた白髪と、その顔に刻まれたシワから、およそ60歳を過ぎるほどに高齢であることが伺える。白い顎鬚と、口に加えて火がつけられているタバコ。その瞳は、とても老齢とは思えないほどに鋭く、とても威厳に満ち溢れていた。

 

男はズボンのポケットを探ると、そこから取り出したのは、

 

「コンバットナイフ?」

 

ヒュン!

 

「うぉっと!」

 

一瞬、男の姿がぶれたと思ったら、光努の目の前でナイフを振る態勢に入っていた。

 

眼前に迫ったナイフを、咄嗟に体を反らせるように曲げると、顔の前をすぐにナイフが通過していった。その際、風に揺られる光努の前髪の先が、少しナイフにかすって切り裂かれた。

 

「ん?避けられるとは、お主やるのぅ」

 

(この爺さん、速いな・・・)

 

光努に刃物を向けて、よけられも止められもしなかったものは、かなり少ない。

男の振るう刃の速度、一足で光努に近寄ってきたことといい、どう見ても一般人とは思えないほどだった。

 

「面白くなってきたな」

 

そんな男を見て、光努は楽しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 




隊の名前は原作にあるけど、隊長とかはオリジナルにしました。
ところどころ都合上、オリジナルの人物を用意します。
その人物がその後も出てくるかどうかは別として。

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