特異点の白夜   作:DOS

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『劇的に匠が作りました。』

 

 

 

 

ここはすでに廃墟となった黒曜ランド。

土砂崩れによって、もともとあった多くの植物園や動物園等、いくつも土のしたに埋まってしまい、上の方に建っていた建物がボロボロとなって残っていた場所。

が、その建物の少し前に崩壊してしまったため、工事業者が入り浸って改築を行っていた。

 

「で、これが〝新・黒曜ランド〟だ」

「「「・・・・・・・」」」

 

俺が指したもともとボウリング場がついていた最も大きい建物があった場所を見て、隣にいたクローム、犬、千種の三人は呆然としていた。

 

なぜなら、目の前にあるのは、元々あった建物と同じ。つまり、汚れ具合やひび割れ具合といったものもほぼ一緒。割れたガラスの再現度も高いなー、おい。

というかわざわざ同じように直さなくても。

と思ったけど、よくよくと窓枠に残った割れたガラスを触ってみると固定されてる。しかも強化ガラスに変更されて先が鋭くなってるから、窓から侵入しようとしたら窓ガラスの破片に突き刺さって危なっかしい。というか意図的にそうなるように計算して、割れた窓ガラス風に加工した強化ガラスを設置されている。

 

この建物を立てた人物、ルイに聞いたらイリスの建築業者と監督したのは知り合いと言ってたけど、予想よりもとんでもないもの作ってそうだな。

 

ま、からくり屋敷みたいで 楽しそうだけどね。

 

「見た目は同じ、だが中はまったく別モンらしい」

 

ルイから説明書をもらってきたら安心だな。というか説明書のある家ってのもどうかと思うのだが。

 

「えー、まずは正面から入ってみましょう、だってさ」

 

正面に回って見てみると、やはりボロボロ。だがよくよくと見ればボロボロの壁はそういうふうに加工してあるだけで中身はとんでもなく硬い。何を使ってるんだか。鋼鉄製かよ。

 

「なんら。見た目全然変わってねーじゃん」

「でもこれ、すごく丈夫だよ」

「見た目だけは廃墟らしいんだとよ」

 

犬的には見た目そのままでつまんなさそうだが、この説明書を見る限り、なかなか面白い反応が見れそうだ。

 

「クローム、千種。これ持ってろ」

「これは?」

「・・・リング」

 

シンプルなシルバーのリング。リング全体を覆うような龍が彫ってあるのがポイント。

 

説明書きには、建物の中に入る前にはこのリングをつけましょうという注意事項がついていたからな。もしも入らなかったら大変なことになるらしい。そんなわけで、

 

「犬、ちょっと正面から入ってみろよ」

「ひゃっほぅ!一番乗りびょん」

 

犬も子供だなー、あはは。

ほら見てみろよ、正面から入った犬に向かって矢が放たれて地面が開き、中から燃えるような火柱(幻術ではなく本物)が立ち上って、かろうじて回避した犬が転がりながらこっちに戻ってきた。

 

「危うく丸焦げになるところだったびょん!!光努おぉ!!」

「だってつまんないって言ってたし」

「誰もこんな危険求めてねーびょん!」

「まあそう言うなって。この先はさらに超危険(面白い)

「なんか字が変らびょん!」

 

さっきのリングをつけてないものは不法侵入者として、入ろうとしたら罠が作動する仕組みらしい。

 

説明書を見る限り、今の犬が引っかかった罠はまだまだ序の口だそうだ。

一体どんな面し、いや恐ろしい罠があるんだろうかね。

 

「じゃ、犬もリング付け足し、中に入るか」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「中は結構前と同じ感じなんだね」

「ダメージ加工してそれっぽくしてあるけど全部新品だな」

 

ボーリング場や映画館だったところは割と造りはそのまんまで、備品とかは全部新品な物がついてる。無駄に金かかってるな、これ。わざわざ建物の外観に合わせて細工してあるから無駄に金がかかって無駄に凝ってる。

 

「そして普通の部屋もあると」

 

他にも普通の部屋。具体的にはベッドと机と棚が設置してある簡易的、あとは好きに使って改造してもいいような部屋がいくつかある。しかも台所とか風呂シャワーも完備されてるので生活する分にはまったくもって問題なく生活できる。なんてハイテクな廃墟だ。

 

「じゃ、ケーキでも食べよっか」

 

カラオケボックスのような部屋を一室借りて、机の上にケーキを置く。

白いクリームで覆って苺を載せたホールケーキ。シンプルだがシンプルだけにうまそう。

 

クロームと犬の目はケーキをみてキラキラ輝いてる。わかりやすい二人。

 

「今頃ツナ達は竹寿司でリング戦の打ち上げやってるだろうしな。どうせお前ら参加とかしないだろ」

「るせーびょん。あんな奴らと馴れ合わねーし。それよりケーキ食べていい?」

「犬・・・・お預け」

「千種、それ何か違うよ」

 

そう言いながらサクサクケーキを切ってお皿に取り分けるクローム。

千種もさっさとジュースとコップを用意してるし、こいつら食う気満々だな。

恭弥も誘ったんだけど、来ればよかったのに。

 

ま、骸の拠点だった黒曜ランドなんて、恭弥にしたら死んでも自分からは来たくないだろうしね。まあ骸がいるよって言うなら喜んで殺意と一緒に飛んでくるかもしれないが。

 

「あ、そういえば」

 

そしてケーキを食べ終わって黒曜ランドを歩き、別のスペースへと歩いてきた。

 

「確かこの当たりに」

「「「?」」」

 

壁を触りながら歩いていることに疑問を持つクロームたち三人。

が、すぐにその疑問は驚きに変わる。

 

ガコン。

 

「で、このあと床が」

 

ゴゴゴゴゴゴゴ。

壁の一部が凹むと思ったら、床がスライドして地下への梯子が付いた穴が出現。

なにこれ、からくり屋敷というより秘密基地。

三人ともなんかぽかーんとしてる。写メっとこ。

カシャ☆

 

「よーし。お前ら行くぞ」

「「「・・・・はっ!」」」

 

呆けた顔から帰ってきた三人は、地下に降りる俺に続いて地下へと降りる。

地上から地下10メートル程の空間。目の前にある鉄の扉を開けるとそこにあったのは、

 

「・・・モニタールーム?」

 

クロームの言ったとおり、いくつものモニターといくつものキーボード。後はよくわからない機械が大量に設置されている10畳くらいの部屋。

 

「ふむ。面白そうな部屋だな」

「わかるの?」

「マニュアルは読んだしな。ここから全てが動かせる」

 

全ての罠の作動はもちろんのこと、扉の開閉、ロック、機械の動作。

電気もテレビも、家電製品も簡単にすべてが操作できる。つまりここさえ入れば、この建物のすべてが乗っ取ることができる。

 

なんでこんな部屋作ったのかな。作ったやつは何考えてんだが。

まあここにいれば外も隠しカメラで全部わかるから対したものだよ。

この三人には使い方を教えておいたほうがいいが、犬は無理そう。千種も面倒くさいとか言いそうだから素直に聞くのはクロームだけか。

ならば、叩き込んでやろうじゃないか。最強の要塞の動かし方を!

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ただいまー」

「お帰り、光努」

 

黒道邸に帰って来て出迎えたのは、海棠槍時。

そういえば槍時はリング戦の最終日に来たけどその前は何してたんだろうか。日本中に行っていろいろと仕事とかしてたらしい。数日でまわるとか、どうやって移動していたのやら。

 

今回は日本にいる期間が長いらしい。長いと言っても2週間も経ってない気がするけど。

 

「じゃ、早速出かけますよ」

 

唐突にそう言って自分の持っていたバッグを背負う。結構大きめのバッグ、という

かケースかな。何が入ってるのか。2メートル近いから大抵の物なら入りそうだ。幅は30センチくらいだけど。

 

「出かける?随分と急だけどどこに?」

「イタリア。灯夜さんから連絡がありましたよ」

「!・・・しゃあねえ。行くか」

 

向こうの様子はどうなってるのか。

リング戦の後始末、プレギエーラファミリーがどうなったのかも気になるし。

一体何があったのやら。

 

というわけで、並中には少し休むと連絡して、イタリアに槍時と出発した。

 

 

 

 




そろそろキャラクター紹介を作ってみようっと

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