当然といえば当然なので、未来編は出番が増えます。
主人公なのに増やす必要のあるというのがなんともいえない・・・・。
イタリア某所の、とある小さな小さな下町の路地裏が始まりだった。
冷たい風が吹き、吐く息が白くなる中、石畳の上で三人の人間が会っていた。
男性が一人、女性が一人、そして10歳程の年齢の少年が一人だった。
コートやマフラーをつけた紳士と呼べるような身なりの良い初老の男性と、古着を着た下町の女性。そしてこちらも古着の服を着て、白い息を吐いている少年。
男性はこの場において、女性と女性が連れてきた少年と初めて会った。
少年は、自分の右の掌を上に向けると、そこには光球状の炎が輝いていた。その炎を見た男性は、その少年に優しそうな笑顔を浮かべ、自らのマフラーを少年の首元
に丁寧に巻きつけ、言葉を出した。
―――間違いない。お前は、私の息子だよ。
それが、ボンゴレ9代目と、炎を宿した少年XANXUSの、最初の出会いだった。
***
「XANXSU」
「同情すんな!カスが!」
ツナの言葉を、自らの声でかき消すXANXUS。
「・・・俺には分かるぞぉ。おまえの裏切られた悔しさと恨みが、俺にはわかる・・」
「カスザメが・・・てめーに分かるだと。知ったような口を・・・きくんじゃねぇ・・・」
「いいや、わかる!!知っているぞぉ!」
「なら言ってみろ!俺の何を知ってる!ああ?」
XANXUSの睨みつけるような視線と言葉に、スクアーロはしばし無言だったが、意を決したように口を開いた。
スクアーロの口から語られたのは、XANXUSの出生。
イタリアの下町で生まれたこと。
生まれながらにして死ぬ気の炎を宿していたこと。
そしてXANXUSの母親は、そんな幼い自分の息子の宿す炎を見て、自分とボンゴレ9代目との間に生まれた子供だという妄想にとりつかれたこと。
全ては、貧困から生まれた不幸だった。
幼いXANXUSと出会った9代目は、何も知らぬXANXUSの炎を見て何を思っていたのか。彼はそのままXANUXSを穏やかな瞳で見つめ、自分の息子であるとXANXUSに優しく語りかけ、養子とした。その後のXANXUSは、9代目の息子とともに、威厳、実力ともに、文句なく10代目の次期ボス候補として立派に成長した。
だがある日、XANXUSは己の秘密を全て知ってしまった。
自分は、9代目となんの血の繋がりもないことを。
そして、
XANXUSは9代目に裏切られたと思い、絶望した。
息子と言っておきながら、はじめから自分をボスにするつもりはなかったのだと。
激しく怒り、XANXUSの中にどす黒い感情が芽生えた。
スクアーロがXANXUSに初めてあったのもその頃で、一目見てかなわないと、その怒りについていくと決めた時だった。
そして半年後、XANXUSはボンゴレを己の力で手に入れるため、ヴァリアーでクーデターを起こした。
そこからはリボーン達も知っての通り、9代目に破れ、XANXUSは8年間の眠りについた。
それが、スクアーロがゆりかご事件のあとに調べた全て。わずかに残った意識の中で、XANXUSと9代目の戦いの際に聞いた会話の中で知った真実。
「9代目が、お前を殺さなかったのは・・・・最後までお前を受け入れようとしたからじゃないのか・・・?」
その言葉がつぶやかれたのは、ツナからだった。
すでに力を使い果たしたため炎は切れて、地面に膝を付きながら疲弊していたが、ポツリとつぶやいた。
ツナの言葉に全員が耳を傾け、XANXUSはツナを無言で睨みつけている。
「9代目は血も掟も関係なく、誰よりもお前は認めていたはずだよ。9代目はあんたのことを、本当の子供のように・・・」
「るせぇ!気色の悪い無償の愛など、クソの役にもたつか!!俺が欲しいのは、ボスの座だけだ!」
血のつながりが必要なら、掟を壊せばいい。
今のボンゴレのボスを力で引きずり下ろせば、力によって自分こそが最強のボスとすることができる。それがXANXUSの考え、ゆりかごの目的。
新たなボンゴレを作り出し、最強のボンゴレを作ること。そのために必要なのは、力。全てをねじ伏せるほどの、圧倒的な力が必要だった。
「だが、XANXUSの野望もこれまでか」
光努の呟く言葉に、隣にいた槍時も同意する。
「ええ。この戦いは、綱吉君達の勝ちですね」
その言葉の正しさを証明するかのように、どこからかチェルベッロの二人が現れた。
「それでは、リング争奪戦の最終結果を発表します」
「判定の結果、XANXUS様の次期後継者候補の権利は剥奪されました」
当然といえば当然。9代目の息子でないということは、ボンゴレのボス候補として認められないのがボンゴレの掟。XANXUS側の存在ともいえるチェルベッロだが、それでも掟を破るような真似はしない。いや、むしろこの展開をまるでわかっていたかのような表情が、そのマスクをつけた無表情な顔からかすかに読み取れたような気がした。
「よって大空のリング戦の勝者は、沢田綱吉氏。ボンゴレの次期後継者となるのは、沢田綱吉氏とその守護者6名です」
その言葉に、XANUXSはすでに限界を超えていたためか、意識を手放した。
山本や獄寺、了平やクロームはツナの勝利の宣言に表情に笑みを浮かべた。
眠っているランボや、普段は無愛想な雲雀も、心なしか笑っているような気がした。
ツナも、了平の妹の京子にもらった手作りの必勝のお守りを取り出して握り、戦いが終わったことに嬉しそうに笑ったあと、その意識を手放した。
「10代目!」
「ツナ!」
獄寺や山本はツナに駆け寄り、状態を見てみるが、特に危険な状態でないことがわかってほっとした。かなりの傷があるが、致命傷はなく、全身疲労のせいで気絶したのだろう。
「皆さま、こちらをどうぞ」
XANXUSの元にいたチェルベッロが一人ツナ達の元へ歩み寄り、その手にあるものを差し出してきた。
差し出したのは、XANUXSの持っていたハーフボンゴレリング。
ツナの持つボンゴレリングと合わせ、完全なる大空のボンゴレリングが完成した。
「ん?そういえば他のリングはどうした」
そう言って獄寺は自分の持っている嵐のボンゴレリングを取り出す。
クロームは自分で持っていた霧のリングを取り出した。
が、他の守護者は取り出さない。というかリングを持っていない。
「あ、隼人。残り全部俺が持ってる」
といって光努がポケットから雨と晴れと雷と雲のリングを取り出した。
一体いつの間に手に入れたのか。明らかに雲雀や山本が手に入れたあとにこっそりと奪ったと考えるのが妥当。もっと言えばスリ取ったともいう。
「正確には恭弥とすれ違っと時とか武抱えた時とかにこっそりと。晴れと雷は先に見つけた」
「いつのまに・・・」
「別におめぇがリング集めても関係ねぇだろ」
「なら聞くが、この戦いで俺はどうしたら勝てる。ていうか俺に勝利条件よく考えたらなくね」
「・・・・・・・」
確かに。と、この場のほとんどが思ったがあえて口に出さなかった。というよりかみんな一度は思ったけど自分が勝つからいいかと思ってる。
「そして俺は考えたんだ。勝てないならどうしたらいいか。よし!全部のリングを集めようと」
「いやおかしくね!?」
「正直光努の存在は大空のリング戦ではまったくもって不必要ですしね」
「全部XANXUSのせいだし」
ちらりと光努がXANUSの方を見てみると、ヴァリアー勢がどこからか持ってきた担架でこっそりとXANXSUを運んでいる様が見えた。運んでいるのはベルとスクアーロ。片腕で器用に運んでいる。
が、後後ボンゴレの者たちに連れて行かれるだろう。
9代目を重症に追い込み、モスカの中に入れたのだから当然。ただ9代目の性格上、死刑という罰はないはず。それだけ9代目も、義理とはいえ息子のXANXUSのことを認めていたのだから。
「さてと。あとは任せて、帰るか槍時」
「そうですね」
「ちょ、光努」
「リボーンらにもよろしく言っといてな」
観覧席の赤外線解除に少々手間取っているため、ツナ達を残して光努たちは並中をあとにしたのであった。
***
「槍時、XANXUSどうだった?」
「氷は溶かしましたので、問題ないでしょう」
XANXSUの片手を凍らせた死ぬ気の零地点突破。
槍時が一旦別行動をとったのは、その氷を溶かす方法を知っていたと言ってたから。
「どうやって溶かすの?」
「死ぬ気の炎で溶ける。結構簡単ですよ」
死ぬ気の炎を凍らせるのに死ぬ気の炎で溶けるとか、矛盾してるな。
ま、先手に回ればいいことないってことなのか。
「大空のリング戦も無事に終了。あとは灯夜達か。そういえば槍時は来るのに遅かったけど何してたんだ?」
「街中にはプレギオーレとヴァリアーの兵隊が多くいましてね。排除してましたよ」
「ヴァリアーもか。ふーん」
多方、戦いが終わったあとに部下を使って全員抹殺するつもりだったのか。暗殺部隊のヴァリアー、というかXANXUSらしいといえばXANXUSらしいな。
「あとはランチアと途中で会って、並中に向かったのですよ」
その際にランチアと少し交戦してすぐに和解したのは余談である。
「灯夜の方は、今何してるかな」
墓造会によって操られた、プレギエーラファミリーの本拠地にいる灯夜。そしてそれをサポートしているであろうルイの二人。まだ、リング戦の後始末は残っていた。
ひとまず黒道邸に戻り、通信機器をつけてみたが、灯夜の方から連絡があった様子はない。今まさに忙しいのか、もしくは。向こうの状況次第で、何かしらの対策が必要。あとは向こうからの通信を松の実だが、その通信は、割と速く来るのだった。
***
ドゴォ!
燃え盛る炎が陽炎を立ち昇らせる。
炎が大きな建物の中を巡り、壁や床を燃やし尽くす。
外側からでもわかる炎に燃やされた壁が、中からの爆発音に従って外側に吹き飛ばされた。
吹き飛ばされる壁の瓦礫とともに、人と思われる影が飛び出して燃えていない地面
に着地した。
「勘弁してくれや。オレはそいつに用があって来たんやけど」
着地した人影は、立ち上がって壊れた壁の方を見た。
赤みがかった髪色に、和服のような服を来た男。腰に巻かれた帯には、鞘に収められた小太刀が刺さっていた。笑っているような声を出しているが、その表情は分からない。楽しげに笑った狐のお面が、その男の顔を隠していたからだ。
「悪いな。この人に手出しするのは遠慮してもらおうか」
瓦礫を踏みつけ建物の中から人を抱えて男が出てきた。
黒髪に黒いスーツを着た男、黒道灯夜。肩に担がれているのは、あちこちに傷跡が見える少々年老いた男性だった。灯夜自身には、至って目立った傷が見られないが、着ているスーツの方は先ほどの火事の中を出てきたからか、ところどころ焦げ跡が見えるが、それでもほぼ無傷。
肩に担いだ男性を、火の届かない芝生の上に寝かせ、二人は向かい合って対峙した。
「その狐のお面、壊してやろうか」
「いきなりそれかい。物騒な奴やな~」
くっくっくと喉を震わせ、愉快そうに笑う。
お面で表情は見えないが、やはり笑みを浮かべていることだろう。
「オレの用事は、そこの老体を始末することやったんやけど、面倒なやつがいてくれたな」
「そりゃ、残念だったな」
「本当なら時間通りスムーズに終わらせる予定やけど・・・・もう時間やし、帰らしてもらうわ」
「この人はもういいのか?」
「本当なら始末したいとこやけど、向こうも潮時やし。なにより時間切れや」
そう言って懐から狐面の男が取り出したのは、黒い靄の入った丸い球。握り締め、破裂させると、黒い霧が男の周りを充満し、その姿を包み隠した。
次第に濃くなり、ふと霧散した霧の中には、すでに誰もいなくなっていた。
周りの気配を探り、本当に誰もいなくなったことを確認すると、灯夜は懐から携帯を取り出した操作した。
「まずは、ルイと連絡をとるか」
これで完全に、リング戦は終わったのだった。
ようやくリング戦も終了!
何話かしたら未来編予定。