ヴァリアー襲来編もあとわずか!
この章だけで30話以上になってるから未来編はもっと長くなるかな?
できるだけ1話1話をもう少し長くしてみよう。
あとできれば更新速度を上げたいです。
炎を纏った拳を振うツナと、己の武器である槌、柄の長さも頭の大きさも通常より遥かに大きい槌を振い、ウィーラは攻撃した。
横からぶち当てるように振るう槌を、ツナは空中で身を捻って躱し、そのまま勢いよくかかと落としをお見舞いする。
が、それで簡単にやられてくれることもなく、引き戻した槌の柄でもってガードされる。
そこから再びツナの拳がウィーラを狙った。
観戦しているディーノやバジル達も固唾を飲む中、広々とした校庭での戦いが繰り広げられる。少し離れたところでは、膝をついて疲弊しているXANUXSと、そばに立つやはりこちらもすでにボロボロのスクアーロがいた。
ちなみに、もはやリング争奪戦が第三者の介入であやふやの中、本来ならば観客席にいるリボーン達は援軍として途中から参加をチェルベッロより許可されたのだが、彼ら観戦組を囲っていた赤外線センサーの檻が解除されなかった。
その為、やはり全員観戦するしかない状況。しかもこのセンサーは内側の攻撃を喰らうと大爆発するので、無理やりの脱出もほぼ不可能という状態。
この状態を作り出したのは、後々邪魔な奴らをまとめて始末しようかなと考えていたマーモンが檻に細工をしたのだが、今回は明らかにそれが裏目に出た。
まあマーモンの方も戦闘中なため、すっかりと自分が檻に細工したというのは忘れている状態なのだが。
とまあ観客席の様子が分からないままだが、それでも戦いは続く。
ボンゴレリングを狙うウィーラに、自分達を狙う敵を倒そうとするツナ。
一体どちらに戦いの分があるのか?
まったくもって怪我もなく万全な状態で現れたウィーラと、すでに先の戦闘で体力も落ちてボロボロ、しかしXANXSUにもらった死ぬ気の炎で回復し、まさに不死鳥のごとく空中へと舞い上がったツナ。起動力は手の炎による推進力で抜群に高い。だが、正直なところ倒すのが難しいかもしれない。
XANXUSのような炎の使い方できない以上、戦う方法はやはり炎を纏うグローブで殴り、後は蹴り飛ばすなどの体術。XANXUSの時は空中で縦横無尽に駆け回り、上下左右と変幻自在に拳や蹴りを叩き込むことができたが、今回は相手は地に足をつけているため、少し攻撃方法制限される。
だが、相手も先のXANXUSのごとく空中を飛べるとは限らないので、やはりここは問題ないのかもしれない。
しかしXANXUSと違って今回のウィーラは、見た限り死ぬ気の炎を使わない。その為、ツナの編み出した〝零地点突破・改〟と、初代の編み出した〝零地点突破〟の二つの技は使えなくなった。言ってしまえば、XANXUSには圧倒的に有効に効いたため、ほぼ確実に勝利を収めることができたが、ウィーラには使えない為、勝利が見えない。
基本的には零地点突破を使わずとも、そんじょそこらの不良や少々接近戦ができる位のマフィア程度なら、ツナのスピードを視認できずに軽くあしらえるが、ウィーラの身体能力や動体視力はかなり高い位置にある。
至近距離からXANXUSの炎の弾丸を避けたこともあるが、その槌を振り下ろす豪腕は並の力ではない。当たればただでは済まないほどに強い。
骸の人間道を破ったツナだが、ウィーラにも通じるのだろうか。
「ま、結局のところ、戦いの行方は神のみぞ知るってところかな」
「・・・白神光努。てめぇ、こんなところで何してやがる」
ギロリ、という擬音が文字となって見えそうなほどに眼光を鋭く光らせるXANXUSにたいして、いつの間にか背後からツナとウィーラの戦いを観戦していた光努は楽しそうに笑った。
さっきまで一緒にいたスクアーロは、自分は関係ないとばかりに光努を無視して目の前の戦いを見ている。
「せっかくだし、今の他の状況教えとくよ。ずっと戦ってたし知らなかっただろ」
確かに、とおもうスクアーロ。
今のXANXUSに最初ほどに他を見ているほどに余裕はなかったはず。
他の場所で誰が誰と戦っているのかもほぼ分かっていないはず。
「さっきスクアーロ投げつけたあとで少し体育館見てきたけど、クロームにベルとマーモンで〝暗殺者〟のアドルフォと戦ってるみたいだ。で、恭弥と〝道化師〟のジャンピエロ。後は隼人と了平、それにルッスーリアとランボが一緒に行動してるな。あらかたの雑魚は途中でおいてきた武と一緒に蹴散らしたみたい」
「〝暗殺者〟と〝道化師〟まで来てるとは、とんだ飛び入り参加だな」
舌打ちして不平を漏らすXANXUS。
確かにXANXUSの言うとおり、もはやリング戦がめちゃくちゃになっている。
というかこのあとチェルベッロ的にどうするつもりなのだろうか?
(つーか、今の話にレヴィの名前が出なかったがスルーなのかボスさんよぅ・・・・)
ちなみにレヴィはそこらへんで転がっています。もちろん気絶してるし、誰にも気づかれなかったのであろう。
さて、話は戻して眼前の戦いを見てみようか。
柄が80センチ程もあり、頭の面は直径30センチほどもある通常の大工道具に使われるようなハンマーと大きさがかけ離れている槌。ウィーラはその手に持った槌でもって、空中から縦横無尽に攻めてくるツナを迎え撃った。
「先ほどよりも速さと攻撃力が増してる。さっきのXANXUSの仕業か」
ウィーラの言うとおり、ツナはXNAUXSの炎を吸収して威力は上がっている。
もちろんスピードも。それでも攻撃を躱すウィーラはさすがといえる。
「なら、攻め方を変えるとするか」
スルリ。
後ろ腰に通していたベルトにさしてあった槌を引き抜いた。
全部で3本腰にさしてあるうちの、2本目の槌。
最初の槌と違って、頭の大きさは面の部分がおよそ先ほどより小さい10センチ程。
柄自体は仕込み式なのか、振ると長さが代わり、長さおよそ2メートルほどにもなった妙なバランスを持つ槌だった。
ヒュンヒュンと風切りを音を出しながらくるくると回転させ、ツナの元へと近づいてくる。
「ふっ!」
「!」
一瞬で近づいたウィーラの槌を、空中へと飛ぶことでツナは躱した。
だが、空中へと逃げる前に、柄の端を持ってリーチを伸ばした長い方の槌を振るってツナを上空へと上がる前に撃ち落とした。
そのまま一瞬ひるんだツナに向かって、蹴りを放った。
「くっ!」
咄嗟に炎を噴射して後ろへと素早く移動したが、先ほどの攻撃のダメージがまだ残っているのか少しフラっとしている。隙を見逃さず、ウィーラは地面をけって追撃を仕掛けた。
長さや大きさの違う槌を巧みに振り回し、ツナを翻弄する。
空中にいると言っても、遠距離攻撃手段がない以上、攻撃の瞬間には相手に接近するしかない。ウィーラは接近戦に長けていた。炎を推進力にしたツナのスピードを、常人離れした反射神経でもって対応し、なおかつカウンターや攻撃すら仕掛けてくる。
「やばいな。思ったよりもツナは苦戦しそうだ」
「確かにな。相手が炎を使わない以上、肉弾戦しかないからな」
観戦場で観戦しているリボーン、それにディーノやバジル達は苦い顔をする。
XANXUS戦では活躍した〝零地点突破〟も、今では使えない。
炎を織り交ぜた戦い方をする奴より、ある意味体術に秀でた奴の方がツナと相性が悪いかもしれない。が、ツナ自身も基本的に炎の推進力でスピードを上げ、炎を拳に纏っているためパンチの一撃一撃の威力も高くなっている。
だが、元の肉体のスペックを死ぬ気状態でオーバースペックにしているとはいえ、それだけで簡単に相手のスペックを超えられるとも限らない。。
人には、身体能力や反射神経はもちろん、それまで戦ってきた経験など勝つために必要な要素はいくつもある。そう言った意味で考えると、ツナより相手側の方が分がある。
「沢田殿はこれまでの戦いのダメージも残ってます!これではいくら炎を回復したとはいえ、やられるのは時間の問題です!」
「確かに。時間的にもいつ死ぬ気モードが解けてもおかしくねーしな」
「それでも大丈夫なのは、ツナの気力とXANXUSにもらった炎のおかげか」
ディーノの言う通り。
長時間にわたり、死ぬ気状態を保てるようになったツナだが、さすがに限界が近づいている。まさにロウソクの上に揺らめく炎。そのうちふとしたことでも消えてしまいそうなほどに弱っているのも確か。
だがツナの気力が消えない限り燃え続けている。
「うおぉ!」
たとえ敵が格上だろうと、その身に纏う炎を燃やす。
力をくれた者のために、大切な仲間のために。
「はっ!」
「ふん!」
ウィーラの槌と、ツナの拳が再度ぶつかりあった。
「う"お"ぉい、いつまで続くんだよ」
二人共遥かに強い戦いをしているが、決定打をいまだに打てていない。
そしてやはりツナが体力面的にも不利。
「さて、そろそろかな」
「う"お"ぉい!白神光努!何の話だぁ?」
「クロームも多少気づいてたと思うが、もう来てるころか」
「なんの話だ?」
XANXUSの方も光努を睨むようにして尋ねる。睨むつもりなどないかもしれないが、眼光が鋭く殺気立ってるので睨んでいるようにしか見えない。いや、本当に睨んでるのか。
「それは、」
ドゴオオォオ!!
「「「「!」」」」
「お、やっぱ早かったな」
轟音がした瞬間、スクアーロやXANXUSはもちろんツナやウィーラの体が止まった。
光努を除く全員が音のした方を見ると、そこには、体育館の壁が崩壊している光景が見えた。
体育館の方角を見ていない光努の視界には、焦りの表情をわずかに浮かべるツナの顔が見える。
おそらく体育館にいるクロームを心配しているのだろう。リストバンド型のディスプレイを装備しているとは言え、ずっと見ているわけにもいかないし、今やカメラはほとんど壊され、今の時点では体育館は壁が破壊された際の煙で視界がディスプレイには写っていない。
何事かと思ってもしょうがない。
「けど、杞憂だぜ、ツナ」
ボフン!
煙の中から黒い物が飛び出してきた。
くるくると回転して次第に近づいてくる物体は全員目で追ったが、その着地地点はツナと少し距離をとっていたウィーラのすぐそばだった。
回転しながら途中で止まり、バサリという音を立てながら黒い先のボロボロのマントを翻して静かにウィーラの隣の地面の上に着地した。
「とんだMonsterが来たよ。ウィーラ、Heがいるなんて聞いてないよ?」
顔につけたゴーグルのレンズが不気味に赤く光りながら、〝暗殺者〟のアドルフォは手に持ったナイフを地面に捨てた。よくよくと見ると、まるで飴細工でもするかのようにナイフの先がぐにゃりと捻じ切られていて、もはや使い物になっていなかった。
「ありえない曲がり方だな。どうした?」
「どうもこうもないよ。ホント、今日はLuckyだかBadだか」
ジャキリと大量のナイフを取り出して自分が飛んできた場所、土埃の舞い上がる場所に向かってナイフを一斉に投擲した。
「暴蛇烈覇!!」
土埃を突き破り、飛んでくるナイフを全て受け止め、ひしゃげさせ、全て破壊したのは、直径1メートルはあろうかという巨大な鉄球。回転をかけられて飛んできた鉄球は、後ろに鎖がついていたため途中で止まって地面へと落ちた。その際ズシンという重い音を響かせながら、校庭の土をへこませていた。
飛ばされた鉄球と共に、土埃が吹き飛び、その場にいた人物の姿が現わになった。
オールバックにした黒い髪に、顔にある2本の切り傷のある体格の良い長身の男。
その手に握られている鎖の先には、さきほど飛んできた鉄球が取り付けられていた。
「取り違えるなよ、ボンゴレ。俺は助けに来たのではない」
口を開いた男を見て、ツナの目は驚愕に見開かれた。
「礼を言いに来た」
「ランチアさん!」
かつて、黒曜ランドでの骸との戦いの際、ツナと戦った骸の影武者だった男。
かつて自らの所属していた家族同然のファミリーを、骸の憑依弾によって操られ皆殺しにした経緯を持つ不幸のマフィア。
〝
昔の荒々しい死ぬ気モードのツナを一方的に退けるほどの実力を持っていたが、その頃は骸に操られ精神不安定な状態でもあった。だが、影武者としてツナ達の前に立ちはだかって山本達を戦闘不能にしたにも関わらず、ツナによってその内に秘めた優しさを見破られ、最終的には敗北した。
その後は、骸達と共に一旦
そして憑依されていた時の影響なのか、骸の言葉を感じ取り、リング争奪戦の場に駆けつけてくれた。
「「「ボスー!」」」
と、ランチアの後ろの崩壊した体育館の壁の穴から出てきたのは、さきほどまで中でアドルフォと戦っていたクロームとベルとマーモンの三人。
ところどころ切り傷や怪我が見え隠れしているが、致命傷とも呼べるほどに重症は見当たらないのにツナはほっとした。全員ボスと読んでいるが、もちろんクロームはツナに対して、ベルとマーモンはXANXSUに対して言ったのである。
「10代目ー!」
「うぉー!大丈夫かー!」
「ツナー!」
ついで別方向から来たのは、こちらもやはりボロボロだがひとまず動くには問題なさそうな獄寺と了平と山本の三人。
あと獄寺に抱えられて眠っているランボ。ルッスーリアの方は他の敵がもういないことからひとまず隠すように校舎の中においてきたそうだ。さすがにベッドごと縛られて連れてこられたルッスーリアを抱えては移動できない。
「三人とも!無事だったのか!」
ツナが無事とわかり喜ぶ獄寺達。ツナの方も、三人が無事だと知って喜ぶ。
これでこの場に置ける、ツナ側の数が墓造会側の数を圧倒的に上回った。
まあツナ側とXANXUS側が共同しているわけでもないのだが。
喜びもつかの間、校庭に佇むウィーラとアドルフォを見て獄寺達も笑顔を潜める。
が、すぐに表情は変わった。
ボゴオォ!!
再び起こった爆発音に、今度はさっきより多い目線が爆発場所に向かった。
校舎の三階一部が崩壊している。先ほどと似たような状況。
さっきの体育館の壁の崩壊は、ランチアの蛇綱球によって壊された。が、今回はあの校舎の中にいる誰かによって起こされた爆発音。
煙の中から白い物体が飛び出し、壁をけって威力を殺し、地面について校庭に飛び出す白い影。アドルフォとウィーラの近くに降り立った影は、その白いローブをたらい、ピエロのような仮面をした姿でチャクラムを構えた。
「ジャンピエロ。おまえもか」
「うん、あんなのいるなんてホントに聞いてない」
〝道化師〟ジャンピエロは無感情な声だが、本当に面倒くさそうに呟く。
今造墓会のメンバーが3人とも校庭に揃った。
煙の校舎から誰かが降りてきて、こちらに歩いてくる。
「雲雀さん!」
ツナが叫んだとおり、現れたのは雲雀恭弥。
ボンゴレ雲の守護者にして、並盛中学風紀委員長。
しかしその体はお世辞にも軽傷とは言い難い。もしかしたらツナ側の中では一番重症かもしれない。両手に持つトンファーが特徴的。その鋭い目は容赦なく校庭に向けられている。
「ボロボロだな恭弥。今の爆発お前か?」
いつの間にか近くにいた光努が楽しそうに雲雀に話しかける。
「・・・そこにいる彼の仕業だよ」
睨みつけるように殺気を放ち、後ろをむく雲雀。
音もなく、いつからそこにいたのだろう。気づいたらそこにいた。
スタスタと躊躇なくこちらに歩いてくる人影が誰か認識したとき、ツナ側は「誰だ?」という反応がほとんど。ヴァリアー側は「げっ!」といった本気で驚いてい
る反応がほとんど。
XANXSUですらそこにいる人物が、なぜそこにいるのか珍しく少し驚いている。いや、驚きよりも殺気の方が強いが。
あいも変わらず楽しそうにしているのは光努だけだった。
青黒い髪を揺らしながら、静かに音も立てずに歩いてくる影。丈の眺めの灰色のコートを来て身軽そうな格好。黒い手袋に包まれたその手に握られているのは、一本の槍。全長2メートル程はある、夜の闇に染めたような漆黒の槍。てっぺんから先まで全て真っ黒に染められたその槍は、見るものにとっては鮮やかな夜にも、不気味に広がる闇にも見える。
全員が見えるような場所に来た男はここで初めて声をかけれた。
「遅かったね、槍時。何してたの?」
「光努。少し別件で遅れてしまいましたよ。でもまだ間に合ってますよね?」
海棠槍時。
イリスファミリーの誇る戦闘部隊『アヤメ』の男。
今やこの並盛中に、様々な組織関係が入り乱れていた。
状況的には、一体誰が不利なのか、誰が有利なのか?
ボンゴレ、ヴァリアー、イリス、プレギエーラ、墓造会。
リング争奪戦の終わりは、すぐそこまで迫っている。