特異点の白夜   作:DOS

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『剣帝』

 

 

 

 

時雨金時を、両手で握り締めて顔の横あたりまで持っていく。

 

そのまま少し腰を落として構えた。

 

その姿はまるで、バッターボックスに立つ打者のよう。

 

「なんだぁ、そのふざけた構えは。野球でもするつもりか!?」

「あいにく、野球(こいつ)しか取り柄がないんでね」

 

スクアーロの馬鹿にするかのような言葉に、山本はにかっと笑って返す。

 

「山本のやつ、新たな自分の型を放つ気だぞ」

「なるほど。常に流派を越えようとする流派・・・・・・。もしそれが本当にできるのなら、確かに時雨蒼燕流は―――――」

 

 

 

―――完全無欠最強無敵!!

 

 

 

「図に乗るなよガキ!!俺の剣の真の力を思い知れ!!」

 

叫んだスクアーロが左手の剣を振るう。先ほどよりも速く、もっと速く、超高速で振るわれた剣は空間を切り裂き、足元を流れる水をもえぐりとり、床がさらけ出す。自分の目の前にあるものを全て切り刻み、その状態のままにして山本に向かって特攻する。

 

その昔、この技を使ってスクアーロは、三日三晩戦い抜いた剣帝との戦いに終わり

と告げた。スクアーロの最強の奥義。

 

 

鮫特攻(スコントロ・ディ・スクアーロ)!!

 

 

まさに獲物を喰らおうとする鮫のごとく、スクアーロの山本が武に迫った。

だが、その姿を見ても意思は変わらない。

 

「時雨蒼燕流、九の型」

 

ザバァ!!

 

「!?」

 

剣を振い、武が水柱を立ち上げると同時にその場から消えた。

その後をスクアーロが通過したが、すぐに別の場所に発見した。

前進に特攻したスクアーロの横方面に現れたが、スクアーロは剣を振りながら方向転換し、山本に向かう。

 

超高速で剣を振るったままの方向転換にはかなりの力と技量を有する。

獲物を追いかけるように自在に動きながら剣を振り続けることができるスクアーロを、さすが剣帝を倒した男というべきか。そして今そのスクアーロに立ち向かっている山本武もさすがと言うべき。

 

方向転換して前から突っ込んできたスクアーロの剣をかろうじて受けるが、全て受けきれているわけでなく、ところどころ切り傷が走る。

受けているだけでこれだから実際に受けた日には切り傷程度じゃ到底収まらないと思われる。

 

そのまま後ろに下がり続けていく武が柱の影に隠れたが、そんなことなど問答無用にスクアーロが柱に向かって特攻する。

 

だが、鋭いスクアーロの瞳が捉えた。

 

自らの剣が切り裂き、えぐりとって後ろに飛ぶ水飛沫の中から剣を振りかぶった山本の姿を。

 

(逆!?正直ここまでやるとはな。だが――)

 

そう考えると同時に、スクアーロの剣が備わっている左手手首に切れ目が入り、中に機械でできたアームが現れて、左手首から先を通常ならできない折り方をして、剣の方向を180度真後ろに変化させた。

 

「義手!?」

「俺の剣に、死角はねぇ!!」

 

前進に特攻する剣技の最中の後ろからの奇襲。普通ならこのまま後ろから攻撃を当たるところだが、誤算があった。スクアーロは、左手を持たない剣帝テュールの技を理解するために己の左手を落として義手とした。その為、スクアーロの左手首から先は全て機械。さらに中に機械のアームを入れることで、左手が動かせる角度を180度反対側へと可能にした。剣を持つのではなく、固定しているスクアーロだからこそのやり方だとも言える。

 

正確に、自分の後ろに見える山本の胸を貫いた。

 

「!!」

 

ザバァ!!

 

大量の水。

スクアーロが武に剣を突き立てたと思ったらその姿はブレ、代わりに大量の水が止まったスクアーロに降りかかった。

 

スクアーロが切ったのは、水面に映った武本人の影。

 

山本が最初に立ち上げた水柱。その柱をスクアーロの後ろに来るように自分が後ろに下がりながら移動する。そして水柱に自分の姿を映し出してスクアーロが切る。だが、それは水でできた偽物の為、本当の山本は水柱の方を向いて後ろを向いていたスクアーロの後ろ、つまり本来スクアーロが特攻していた方向から飛びかかる。

 

 

自分の切ったと思ったのが偽物だったこと。

 

今の自分の左手は一度手首から少し切り離して腕の方向と真逆に向けているため、すぐには元に戻せないこと。

 

そして、格好の隙ができたスクアーロを、山本が見逃すはずがなかった。

 

時雨蒼燕流、攻式九の型!

 

 

―――――うつし雨!!

 

 

振り下ろした時雨金時の峰を、スクアーロの頭上から放った。

武の上から振り下ろした懇親の一撃は、スクーロを沈めるには十分だった。

 

(これが・・・・敗北・・・・)

 

そしてスクアーロが、山本武という新たな剣士に敗北した瞬間だった。

先ほど柱の隙間で見つけた箱を取り出す。

雨の紋章が描かれた箱を開き、中の物を取り出す。

そして武はカメラに向かって、雨の刻印のされたボンゴレリングを見せて、にかっと笑った。

 

「勝ったぜ!」

 

 

 

 

***

 

 

 

「スクアーロが、負けた?」

「しし・・マジかよ・・・」

「HAHAHAHAHA!」

「やぁ!」

 

キィンキィン!!

 

ベルのオリジナルナイフとクロームの槍と、マーモンの幻覚の氷とアドルフォのナイフがぶつかり合う。

 

今の状態はバトルロイヤルのような状態だが、状況的にアドルフォを先に倒すようにしている3人。その為1対3の状況なのだが、中々に倒せないでいた。

 

全身がプロテクターと機械の塊なのでナイフが刺さりにくく、さらには幻覚もかなり効きにくい。その為戦いはほぼ五分と五分。それに加え、腕がありえない方向に曲がったり、体中から武器を取り出すため、クローム達からしたらかなり戦いにくい相手でもある。

 

空中から飛んでくるベルのナイフを正面から突っ込んで防ぎ、幻覚の中を突っ込んできて直接攻撃を当てにくる。

 

「ちっ。あの機械野郎。俺のナイフ刺さんねぇし・・・」

「幻覚も効きにくい」

「本当に面倒な相手だね」

 

もはや辺りにはベルのワイヤーが張り巡らされ、床や壁には切り傷や刺し傷が所々にある。見た目だけは派手に壊し合ってるが、実際にはマーモンは戦っていないから他の3人で壊している。

 

今現在は、ベルのワイヤーのために両者大きな動きが取れず、お互いに止まった状態が続いていた。

 

「それでどうする」

「ああいう奴らなら、レヴィの雷攻撃のほうが効きそうだけどな」

「案外効かないかもよ」

「・・・・・・・」

「どうするの?」

「さて・・・どーすっかな」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ぐ!」

 

ドガァ!!

自前の銃から炎を噴射して宙へと飛ぶXANXUSに、両の手から炎を噴射させて同じように飛んできたツナの蹴りがあたった。

 

先ほどの激しい攻防と比べて、明らかにツナの動きが違う。観戦していたコロネロも、驚きの声を上げる。XANXUSに炎の弾丸を打ち込まれたと思ったら、気づいた時にはツナはXANXUSのそばにまで迫り、攻撃を繰り出す。圧倒していたXANXUSの高速移動をもものともしない速度で動き、各自に打撃を当てていた。

 

「この野郎!炎の鉄槌(マルテーロ・ディ・フィアンマ)!!」

 

二丁拳銃から大量の炎の塊を連射。尋常でない連射速度に、大量の炎が上空にいたツナへと直撃した。だが、直撃したと思ったら、炎がツナを中心に円形状に広がり、全ての炎が構えた両手の中央に集約され、ツナの額から多くの炎が燃え盛った。

 

ボァ!!

先ほどよりも、さらに強大な炎をその両手と額に纏い、一瞬でXANXUSの元まで移動して殴り飛ばした。

 

「ちぃ!」

 

かろうじて防御が間に合いガードしたXANXUSは、一旦距離をとって二人上空に佇んだ。

 

「この死にぞこないが!あのカスザメも負けやがって」

 

XANXUSがその場で炎を噴射して移動した。だがそれはツナに向かってではなく、さらに上空へと駆け上がった。

 

「何をする気だ、コラ」

 

さらに上空へと移動して、空中にとどまる。

そしてXANXUSは銃をある一箇所に向けて、炎の弾丸を放った。

 

「!!やめろ!XANXUS!」

 

一瞬、不可解なXANXUSの行動に遅れをとってしまった。小さなことだが、それは戦いにおいて大きな隙となる。そんな隙をものともしないように、XANXUSは、雨の守護者のフィールドに炎を打ち込んだ。

 

ツナは向かおうと思ったが、もう一つのXANXUSの拳銃が炎を吹いた。

ツナと校舎、迫り来る炎に立ち止まったツナをあざ笑うかのように、XANXUSの炎の連射が雨のフィールドを破壊した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「とりあえず、生きてるみたいだし。俺も外へ・・・ん?」

山本が足元を流れる水の上をバシャバシャと歩き、出口へと向かう。

一応スクアーロが倒れていたが、とりあえず水の中から出して瓦礫の上に寝かせたのでしばらくしたら身を覚ますだろうと思い、自分も他の守護者を手伝いに向かう。

 

その時だった。

 

光。

 

天井のヒビの隙間から、光が漏れた。

一体何事かと思ったが、その理由はすぐにわかる。

天井が崩壊した。外側から衝撃を加えたように、爆発した天井から瓦礫の雨をふらせた。そしてその雨は、山本やスクアーロへと降り注いだ。

 

「やべっ!くっ・・・スクアーロ!」

 

スクアーロはまだ気を失っている。

たとえさきほどまで戦った敵だろうと見捨てない。

理由などない。目の前に危ない人間がいたから、反射的に動いただけ。

たとえ自分が傷ついて満身創痍な体だろうが、助けるために地を蹴り、手を伸ばした。

 

だが無情にも、二人を覆うように瓦礫が降り注いだ。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「山本!」

 

眼下に見える瓦礫と化した校舎の一部。各守護者に配られた小型ディスプレイ付きのリストバンドを見ても、カメラが壊れたのか映像が写っていない。

上空からみても、瓦礫と煙が見えるだけで、人影が見当たらない。

通常なら大丈夫かもしれなかったが、今の山本もスクアーロも満身創痍。

その命は絶望的だった。

 

もちろんそれは、そこにいたのが二人だけだった場合だが。

 

「危機一髪。XANXUSようしゃねー」

「ははは、まじ危ね・・・・・サンキュー光努」

「!?」

 

破壊された校舎の屋上の縁に立ち、左手には気絶したスクアーロ。そして右手には、ボロボロながらも笑っている山本の姿があった。

 

「光努!」

「あのガキ。邪魔しやがって」

 

再び銃口を光努たちに向けたXANXUSだが、目の前には一瞬で移動したツナが立ちはだかった。

 

「おまえの相手は俺だぞ。XANXUS」

 

両手の炎を燃やし、ツナとXANXUSが再び対峙した。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

パキ!

ところどころ割れたガラスを踏み割り、廊下を悠々と歩く姿。

その体は多少傷ついて出血多量なのだが、そんなことなど関係のないように歩く。

両手に握られたトンファーと鋭い目つき。

 

雲雀恭弥は、侵入者を迎撃しながら並中校舎内を闊歩していた。ベルとの戦いで傷ついた体も、多少は回復し、止血も済んでいる。仮面をつけた乱入者の存在がいたが、問答無用で蹴散らしていた。

 

「・・・・ん?」

 

が、唐突に、その場で立ち止まった。

 

パキ!

立ち止まったのに聞こえるガラスの割れる音。

雲雀の視線の先には、割れて廊下の上に落ちた窓ガラスを踏みつける存在がいた。

 

全身を白いローブで覆いフードを目深にかぶり、顔に付けられた仮面。白地に青いダイヤの目と赤いハートの目。そして黒い三日月型の口の模様が描かれたピエロのような仮面。

 

その身に纏う雰囲気は、明らかに一般人とは異なるほどに鋭い。

 

"道化師"ジャンピエロ。さきほどまで戦っていた相手と明らかに格が違う相手が現れたことに、口角をあげ、自然と雲雀は狂喜した。

 

「ここにいる人はみんないなくなる。だから、私は君を壊すよ」

 

シャン。無感情な声で告げるその声に、ローブの袖から取り出したのは円形の薄いリング。見た限り外側に刃がついているのが見えることから、明らかに凶器。

 

「校内への不法侵入者の処罰は風紀委員の仕事。君を・・・・・咬み殺す」

 

野獣のような鋭い眼光。誰であろうと関係無い。来るものは全て地に伏せる。それが雲雀恭弥。自身の武器であるトンファーを構え、お互いに武器を前に出し、ぶつかり合った。

 

 

 

 

 





リル「じゃーん!思いつきのあとがきコーナー」

スクアーロ「う"お"ぉい!とっとと始めろぉ!」

リル「じゃあこの小説に置けるスクアーロの特技はなに?」

スクアーロ「キャベツの千切りだぁ!俺の剣なら造作もねぇ!」

リル「え?それホント?」

スクアーロ「冗談に決まってるだろうがぁ!信じるんじゃねぇ!」

リル「えー、違うのー。お好み焼き作ってもらおうと思ってるのに」

スクアーロ「思ってるんじゃねぇ!つうかオコノミヤキってなんだ!?」

リル「え、知らないの?・・・・・・・ぷっ」

スクアーロ「う"お"ぉい!そこになおれぇ!!」

リル「じゃ、次回もよろしく。ついでに感想もよろしく☆」

スクアーロ「無視すんじゃねぇ!!」


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