特異点の白夜   作:DOS

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『祈りの紋章と最強の剣』

 

 

 

 

「Haっ!!」

 

ヒュッ!!

先に鋭い爪の付いた手をつくように、クロームの顔に打つ。

すかさずクロームは顔を横に向けて爪を交わすが、それを待っていたとばかりにアドルフォの目元が赤く光った。

 

ドシュ!!

 

「!!」

 

すかさず、反射的に自分の持つ三叉槍の槍頭部分を顔のそばに持ってくると、突然きた衝撃に思わず顔をしかめ、一旦後ろに下がって距離をとった。

 

「Oh!躱されるとは、なかなかどうしてStrong」

 

見てみると、クロームにつきさそうとした腕の横から、少し歪曲した長さ50センチ程の刃が飛び出していた。よくよくと見れば、刃の飛び出して破れた服の周りや、他にも普通の肌でなく、金属質な部分が見え隠れしていた。

 

「その手、機械?」

「That's right!この腕も足も全部ね。とてもDangerだよ?」

 

カシャンという音とともに飛び出た刃をしまい、代わりにスクアーロ風に手首からナイフを飛び出させた。両手ともに刃を備え、再び構える。

 

全身が機械で出来ているアドルフォ。その体内には複数の武器が仕込まれており、人間には到底不可能な動きで動く。

 

しかも全身が機械な分、幻覚が全体的に効きにくい。もしかしたら効かないのかもしれない。術師であるクロームたちにとっては、かなり相性の悪い相手とも言える。だが、ただそれだけ。

 

「幻術が聞かなくても・・・戦える!」

「そうこなくて、ん?」

 

ボゴボゴォ!!

突如地面を突き破り生えてきたつららに、アドルフォは一瞬で飲み込まれた。

 

「僕を忘れてもらっては困るね」

 

ふよふよと空中浮遊しながら飛んできたマーモン。クロームを狙っていないところを見ると、先に邪魔者を始末するつもりみたい。

 

「おーいマーモン!生きてるかー!」

「あ、ベル」

 

と、入口から普通に入ってきたベル。

だけどマーモンとクロームがまだまだ無傷そうなところをみてにやりと笑う。

 

「ししし。まだ終わってなかったのかよ」

「うるさいね。ちょっと邪魔が入ったんだよ」

「えっと、危ないよ」

「ん?」

 

ヒュルル!

と、どこからともなくということなく、普通に地面から生えていた氷柱からナイフがベルの元まで飛んでくる。すかさずベルは手に持った自分のナイフを使って弾くが、なんで氷柱から?という風に見る。

 

すると、氷柱にビシビシと日々が入り、そしてついには全て割れ、中から黒ずくめのアドルフォが再び姿を現した。

 

「One,Two,Three。一人増えたけど、やっぱりNo problem」

「ししし。コイツって、"暗殺者"じゃん。あのファミリーが雇ってたのか」

「あのファミリーって。ベルは敵の正体知ってるの?」

「さっき思い出した。さっきいた黒服達の仮面の模様、プレギエーラファミリーの紋章だ。光努に答え合わせもしたしな」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「プレギエーラファミリーだと!」

「間違いねぇ。あの十字架を模した祈りの紋章は、確かにプレギエーラの紋章だ」

 

ディーノの言葉に同意するリボーン。

大型のディスプレイから見える襲撃してきたアドルフォや仮面をつけた黒服達。仮面の黒服達はみな一様に同じ模様を仮面につけている。

そしてその模様こそ、プレギエーラと呼ばれるマフィアの紋章。

 

「だが、あそこのボスのヴァスコさんは9代目の旧友で戦いなんて、というかプレギエーラにはそんなに戦力なんてないはずだぞ」

「確かに。しかも墓造会と繋がってるなんて。ありえねぇな」

「それにプレギエーラはボンゴレと同盟を組んでいたはず!一体なぜ拙者達が狙われているのですか!?」

「雷の守護者の戦いにいた"道化師"は、ボンゴレを潰すのが目的だったみてーだし、今いる奴らもそうだと思って間違いねーな」

 

プレギエーラファミリーは、典型的な穏健派と言われたボンゴレ9代目の旧友でもあるヴァスコ・プレギエーラ率いるファミリー。

それゆえに、リボーン達も分からない不可解なことが多い。

 

ボスのヴァスコは9代目と同じく穏健派。そしてそこまで大きいファミリーでもないため、戦力と呼べるほどのものをもっていないという事実。それなのに、今襲撃しているプレギエーラの紋章を身につけた黒服に、明らかに協力していると思われる墓造会の"暗殺者"であるアドルフォ。

 

「イタリアにいる親方様は大丈夫でしょうか」

 

イタリアのボンゴレ本部に戻った家光を心配するバジル。ボンゴレが狙われていると思われる状況なら、今は手薄と思われるボンゴレ本部も狙われるかもしれないという不安。まだ家光からの連絡がないから一体どう言う状況というのかも分からない。

 

「家光のやつならきっと大丈夫だ」

「ああ。あの人は、抜けてきた修羅場が違うからな。俺たちは目の前のツナ達を応援するぞ」

「・・・・はい!」

「そろそろ、向こうの戦いも佳境だな」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

ブシュッ!!

山本の胸のあたりから左肩にかけて切り傷が入り、鮮血が舞った。

水柱を出してスクアーロの攻撃を躱そうとしたが、スクアーロもおなじ水柱をだしてお互いに視界が見えなくなった。そして先に武を見つけたスクアーロによって深い傷をつけられた。

 

山本とスクアーロの戦いは、徐々に武が劣勢を強いられている。

 

最初に攻撃を仕掛けたのは山本だった。

時雨蒼燕流攻式五の型。五月雨。

 

一太刀与えるあいだに刀の持ち手を変えることで、軌道とタイミングをずらす変幻自在の型。左手にもった時雨金時を、右側からスクアーロに振るう。

その時、一度右側に持っていた刀をそこで手を離し、刀だけを右側に置いたまま左手を振り抜く。そして左手を離した刀を右手で素早くつかみ直して相手を切り裂く。

 

だが、スクアーロは無傷だった。

戦闘に関して一流のバジルから見ても、山本の刀を変える際に不自然な動作が見えなかった。なのに、スクアーロは山本の振るった刀に合わせて身を引くことで、紙一重で交わすことに成功している。まるで、その技を最初から知っていたかのように。

 

そして山本は体を切り裂かれる。

ディーノの不安な予感は的中した。

 

「その時雨蒼燕流は、昔ひねりつぶした流派だぁ!」

 

スクアーロの放った一言に、ディスプレイを見たり聞いたりしていた他の守護者や観戦者も驚きを隠せなかった。

 

 

その昔、剣帝テュールを倒したスクアーロは、自らの剣の腕を確かめる為、強い剣士を探していた。その時、東洋にてあまり知られてないが、密かに継承されている完全無欠の暗殺剣があるという噂を聞いた。

 

そして現地にて、スクアーロは戦った。

時雨蒼燕流の継承者と、その弟子の三人。

 

そして、全ての技を受けて見切り、体に刻み込み、全て破った。

つまり、スクアーロは全ての時雨蒼燕流の技を最初から知っている。

 

「聞いてねーな、そんな話」

「!」

「俺の聞いた時雨蒼燕流は、完全無欠最強なんでね」

 

切り裂かれた肩の傷を抑えつつ、再び刀を構える。

それをみてスクアーロは心底愉快そうに、そして獲物を狙う鮫のように獰猛に笑う。

 

「う"お"ぉい!行くぞぉ!!」

 

こちらも剣を構えて山本に突撃する。すかさず時雨金時を振るったが、スクアーロは簡単に避ける。

 

(五月雨!)

 

先ほど振るったのは右手のみ。左手で落とした刀をつかみ直し、再びスクアーロに斬りかかる。だが、スクアーロはそれをみて犬歯を見せてにやりと笑った。

 

 

ガギイィン!!

 

 

「!!」

 

お互いに剣を一度ぶつけ合い、そしてスクアーロは剣を戻して再び構えて山本に切りかかろうとしたが、武は打ち合った状態から動こうとしなかった。

 

鮫衝撃(アタッコ・ディ・スクアーロ)

 

渾身のひと振りを衝撃波に変え、打ち付けた剣から相手に伝わらせ、神経を麻痺させるスクアーロの衝撃剣。その為山本はすぐに動くことができなかったが、反対の腕で剣を持っていた手を思い切り打つことで硬直を解き、ギリギリスクアーロの斬撃を避けることに成功した。だがそれでも完璧にとはいかず、腹部には浅くない切り傷が入り血が滲んだ。

 

「動き出したら止まらねぇぞ!!」

 

そういって再び特攻して、高速で剣を突き刺す。連続で繰り出された高速の剣撃に、山本は転がり込むようにして避けるが、武の後ろにあった柱がまるで発泡スチロールのように砕ける。

 

まるで空間そのものを削り取るかのような連続の突きの剣、鮫の牙(ザンア・ディ・スクアーロ)

避けた先の山本にまでその剣は届き、やはり浅くない傷を与える。武のあちこちはすでに傷だらけ。しかもどれも重症。

すでに山本の体は悲鳴をあげ、満身創痍だった。

 

「どぉしたぁ!!継承者は八つの型を全て見せてくれたぜぇ!」

 

スクアーロの言う継承者とは、かつて自分が倒した時雨蒼燕流の継承者とその弟子達のこと。決して弱いとは言わなかったが、それでもスクアーロを倒すには心もとなかったのも事実。そしてその継承者と同じ技を使う山本の相手は、攻略本を見ながらゲームでもしているようなもの。

 

それを分かっているため、スクアーロは余裕そうに笑って語る。

 

「継承者は最後に八の型、『秋雨』を放ったと同時に無残に散ったがなぁ!」

「!?」

 

そのスクアーロの言葉に、ボロボロの山本の頭に疑問が浮かんだ。

 

(『秋雨』?なんだそりゃ。俺が教わった八の型は『篠突く雨』・・・・!!)

 

「なるほど、そーいうことか親父」

 

ある一つの結論に思い立ち、自分に剣を教えてくれた父親を思い浮かべていた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

まだ修行をしていた頃の話

 

一人、道場で剣を降っていた山本に声がかかった。

 

 

「よう。精が出るな武」

 

「おう、親父」

 

「どうだい。八つの型はモノにできそーかい?」

 

「ま、やるだけやるさ」

 

 

そういって明るくにかっと笑う。

 

 

「でも今んとこ、一番しっくり来るのは八の型、『篠突く雨』かな。なじむっつぅか、なんかしんねーけど打ちやすいんだよ」

 

「ほーう、やっぱ似るのかな。そうかいそうかい」

 

「?なんだよやけにうれしそうだな」

 

「篠突くは八つの中でも八番目にできた型でな。若い継承者が大事な友達を助け出すって時にできた型らしいぜ」

 

「へぇー、型にできた順番なんてあんのか」

 

「そりゃー当然さ。篠突くができたときは台風が迫っててな、突くように激しい雨

の中だったって話だ・・・・」

 

「ふーん」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ざっ!

 

「・・・何しに来た」

「いくぜ、時雨蒼燕流・・・」

 

そう言って体を低くし、右手で時雨金時を握り、居合いをするかのように左手を柄に添える構え。そしてそのままスクアーロに向かって走りこむ。

 

「その構えは知ってるぞ!!さあ打てぇ!!秋雨を!!」

 

その構えを見て、心底愉快そうに、走ってくる山本に迎え撃つように自分も同じように特攻を仕掛ける。

 

(終わりだぁ!!)

(時雨蒼燕流、攻式八の型―――――)

 

そして、互いにぶつかり合った

 

篠突く雨(しのつくあめ)!!

 

山本の振るった剣を、スクアーロは避けることができず、モロに体にくらって多少の血反吐を吐いた。その様子をディスプレイから見ているツナ側ヴァリアー側、そしてバジル達から見ても驚きだったが、もっとも驚愕しているのは技を喰らったスクアーロ本人だった。

 

「な・・にぃ・・!?」

 

倒れ水面に伏したが、すぐに問題無いように起き上がり、武を睨みつける。

 

「貴様ぁ!!時雨蒼燕流以外の流派を使えるのかぁ!?」

 

自分の知らない技を使った。

そのことにスクアーロは信じられなかった。確かに昔継承者と戦った際、実際に技を受けて見切り、全てを理解した。その為避けることなど造作もなかったが、避けることができなかった。否、元々自分の知っていた技と中身が違っていた。

 

「いんや、今のも時雨蒼燕流。八の型は、親父が作った型だ」

「!!」

 

時雨蒼燕流の継承者は、先人の残した型を受け継ぎ、また自らも型を生み出して、再び弟子へと伝えていく。その為、継承者が複数いると別の型が生まれ、型の違う分派が多く生まれると思うが、実際はそうではない。

 

自らを「最強」と謳い、あえて強者に狙われる宿命と、師から弟子へと型の継承をする際は立った一度だけという掟。その為、才のある継承者が途絶えたときは、この世から消えることも仕方なしとされた、「滅びの剣」と言われる。

 

スクアーロの昔倒した時雨蒼燕流の継承者と、山本の父である山本剛は同じ師匠から一から七の型を教わり、それぞれが別の八の型を作った。

 

 

それが、攻式八の型『秋雨』と『篠突く雨』。

 

 

別々の継承者がそれぞれ違う『八の型』を生み出したため、スクアーロは『秋雨』を避けたつもりだったが、実際に武が打ったのは『篠突く雨』。

 

結果的に、スクアーロの考えていた技と別の技のためにモロに攻撃を喰らってしまった。だが、そのこととは別に、スクアーロは何やら解せないことがあった。

 

「う"お"ぉい・・・正直ここまでやるとは思ってなかったが、だからこそ今の峰打

ちも解せねぇ。真剣勝負を舐めやがって」

 

曰く、勝つために戦っている為、殺すためじゃないから。

真剣勝負の中では甘いとしか言い様がないが、それも山本らしいといえば山本らしい。

 

そして、すでに八の型を使ったため、スクアーロは『篠突く雨』を見切った。

さすがに剣帝を倒したヴァリアーのボス候補。一度受けただけでその技を理解した。そして一から七の型はすでに知っている。状況だけ見れば、とても絶望的だった。

 

だがそれでも、いくら切り刻まれても、ボロボロにされても、底抜けに明るく笑い、こんな状況でも笑い、山本は再び剣を構えた。

 

「んじゃ、行ってみるか。時雨蒼燕流、九の型」

 

己の流派を超える為、時雨金時を握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 




次回は雨の守護者戦ラスト。
そして他の戦いも勃発中。

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