「はぁ」
ガガガ!
黒ずくめに仮面の人物。西洋剣を振りかぶり、思い切り振り下ろして校舎の壁をえぐる。獄寺は咄嗟に転がるように躱して、すかさずダイナマイトを取り出して投げつける。
ドゴォン!
黒服の目の前で爆発したダイナマイト。黒服を吹き飛ばす。
敵が吹き飛んだのを確認すると、まだ気を失っているランボを抱えて再び走り出す。その場にとどまっていると、先ほどの黒服がまたやってくるからである。
「くそ!一体どうなってやがるんだ」
隼人にもわけがわからない。明らかにこのリング戦に関係のない人間が入り込んでいる。
それも複数。
さっき倒した黒服の他にも、大勢の黒服が入り込んでいるらしい。ディスプレイ搭載のリストバンドを見るに、まだそう多く見つかっていないが、何人入っているかわかったもんじゃない。ひとまず他の奴らと合流しようとして走っているが、不意に声をかけられた。
「タコヘッド!無事か!」
「芝生頭!こっちは無事だが、お前は・・・・・て、何敵連れてきてんだよ!」
怪我がまだ癒えておらず、腕を吊った状態の良平が向こうから走ってくる。が、問題はその後ろ。
先ほどと同じ黒服が、4人程追いかけてくる。手にはそれぞれ剣を持っている。
やっと誰かに会えたと思っていたのに敵が一緒についてくるから。
「芝生頭、伏せろ!果てろ!!」
獄寺の言うとおりにその場に伏せると、獄寺はダイナマイトを投げつける。
そして、二度の噴射と角度変化よって、寸分たがわずに黒服の懐に入り込んで爆発をする。さすがにダイナマイト一個でも威力は高いらしく、死なない程度に吹き飛ぶ黒服をみて、獄寺は思わず安堵の息を吐く。そして了平を睨みつける。
「てめぇ!なに敵連れてんだよ!守護者ならそれぐらい対処しやがれ!」
「何を言う!ここは極限に協力する場面だろうが!やつらはまだまだいるぞ」
「ちっ、一体どうなってやがんだよ。10代目は大丈夫だろうか」
***
場面変わって別の場所。校舎の中にも死屍累々と、黒服が横たわっていた。そして悠々と歩いているのは、並中の制服をきた風紀委員長である雲雀恭弥。
武器のトンファーを振るい、襲いかかる黒服の攻撃をさばいていた。
キィン!!
雲雀の振るうトンファーと、黒服の剣が切り結ぶ。
すかさず仕込みトンファーから鉤爪を取り出して剣に引っ掛ける。そのままトンファーを振いへし折り、すかさず体に打撃を与える。そして体に顔にとトンファーの一撃が辺り、黒服はノックダウンする。そんなことを繰り返していると、あっという間に廊下は倒れふしている黒服が溢れてしまった。
「僕の前で群れる者は、咬み殺す」
誰にも邪魔されず、一人、雲雀は並中の風紀を乱すものに、鉄槌を下していた。
***
ボンゴレの独立暗殺部隊隊長にして、ボンゴレ10代目後継者候補の一人、XANXUS。
彼はボンゴレ当主の9代目の嫡子であり、威厳実力ともにボスとしてふさわしい程の力を持っていた。
そんな彼の持つ力の一つに、憤怒の炎と呼ばれるものがある。
過去にいた歴代ボンゴレボスの中で、唯一素手で戦っていたボンゴレⅡ世が持っていたとされる死ぬ気の炎の一種。
ツナの使う死ぬ気の炎と比べ、圧倒的な破壊力を持つ炎。
鉄筋コンクリートの校舎の壁すらも容易に灰にできるだけの破壊力を持つ。
ちなみに所々で光っていた手は全部この炎である。
そしてもう一つ。XANXUSは素手だったボンゴレⅡ世と違い武器を手にとった。
それが、銃。
しかも、歴代ボンゴレで唯一銃を使っていたとされる、ボンゴレⅦ世の持っていたのと同じタイプの銃。
ボンゴレⅦ世は、歴代のボスの中で一際自らの持つ死ぬ気の炎が弱かった。
その為、銃の中に入っている弾丸の中に炎を蓄積させ、一撃の破壊力を増大させたと言われる。その仕組みを持つ銃を持っているXANXUSだが、その炎はⅦ世と違って破壊力抜群の憤怒の炎。それはつまり、破壊力に長けた炎を蓄積することで、さらに圧倒的に破壊力が高い一撃を出せる。
死ぬ気の炎を使って自在に宙を飛び、骸をも圧倒したツナの力をもってしても、苦戦する程XANXUSの力は確かに強かった。
だが、ツナも今まで何もしてこなかったわけでない。
ツナが守護者の戦いの中も行っていた修行は、ある境地へといたる為の修行。
それが、死ぬ気の零地点突破。
死ぬ気の零、つまり死ぬ気でない素の状態。
そしてそれを突破するということは、零よりもさらに下、マイナスの状態になるということ。死ぬ気とは逆の境地へと至ることで、ツナはその時初代が生み出した技とはまた別の技を生み出した。
その技こそ、零地点突破・改。
手のひらを前後に向け、両手の親指と人差し指で正方形を作るような構え。
そこから手に集約された炎が、不規則にはためく。
ツナの超直感は見つけた。初代の使った技ではない。自分だけの零地点突破を。この状況は打破するために、XANXUSに勝つために、ツナは新たな技をあみだした。
「本物の零地点突破に、そんな構えはねぇ!」
「俺は俺の零地点突破を貫くだけだ」
叫ぶXANXUSに構え続けるツナ。
絶望的とも言えるようなこの状況なのに冷静な態度。その態度に業を煮やしたのか、XANXUSは銃口から炎を放ち高速移動をする。
XANXUSは憤怒の炎を、炎蓄積の機能を持つ弾丸の入った銃を使うことで、炎を飛ばして相手を攻撃することと、炎をジェット噴射のように使い、手のひらから炎を出して空を自在に移動するツナのように高速移動を可能にした。
「
ツナの空中を円を描くように飛び回り、中央にいるツナに炎の弾丸を叩き込む。まるで炎でできた蕾のようなその光景に、観戦していたシャマルやバジル、ディーノからも焦りが感じられる。
いまディスプレイに映し出されている光景は、ただツナがやられ続けている光景にしか見えない。だが、その状況とは別にXANXUSは内心余裕とまではいってなかった。
(この絶望的といえる状況。あのツラ・・・あの目!!同じだ・・・あの時のおいぼれと・・!)
暗殺部隊にいたXANXUSは知っている。
絶望した人間の目を。もう諦めた人間の目を。全てが黒く染まったようなその瞳を。だが、今目の前で痛みつけらているツナの瞳にはあきらめることがない。まだ勝つと信じている目。絶望を感じていない、希望を持った目を。そして、どこか全てを見透かしたようなその瞳を。
「どいつもこいつも!俺に楯突くんじゃねぇ!!
一際大きな炎。二丁拳銃から放たれた、強大な一撃は、正確にツナめがけて放たれ、倒れそうなツナを飲み込んだ。
ドゴォ!!
「沢田殿!!」
激しい炎の塊が地面にぶつかり、辺りに煙が立ち込めた。少し怒りすぎたのか、少々肩で息をするXANXUSが悠々と立っている。
確実に倒した。そう思ったXANXUSだが、後ろではためく炎の音を聞いて即座に振り返った。
気づかなかった。
いつの間にか、XANXUSの背後には、額とグローブに炎を灯したツナが迫っていた。
「次は俺の番だ、XANXUS」
***
「やっ!」
「ふん!」
火柱と氷柱。
二人が飛ばした柱がぶつかり合い、当たりに火の粉と氷の礫が飛び交う。
外から見た限りじゃ、そんな激しい戦いが繰り広げられてるとは夢にも思わない。
なぜなら実際に、そこにあるわけでないから。相手の脳を錯覚させ、ありもしない映像を映し出す。それが幻術。静かなる激しい戦い。
霧の守護者、クローム髑髏とマーモンが体育館の中で戦っていた。
お互いに幻術をかけあい、クロームは修羅道顔負けの格闘能力を発揮して、ほぼ互角の戦いを繰り広げていた。二人とも全力全開というわけではないが、それでも一流の幻術士らしく、派手に炎や氷、植物や雷やらいろいろと出しながら戦っていた。
床を見てみれば、すでに霧の刻印がされた箱が転がっており、完成された霧のボンゴレリングはマーモンの手の中にあった。だがそのまま逃がしくれるほどクロームは甘くなく、二人は戦っている。
ヒュ!
「!」
キィン!
不意に飛んできた物を、咄嗟に槍を使って弾いたものを見ると、それはナイフ。しかも黒塗りで真っ黒に装飾されている妙なナイフである。触れてみてわかったが、今のは幻覚ではない。確かに本物。けどマーモンが投げる気配など微塵もなかった。つまり、
「誰かいる!・・・・上!」
その言葉に、クロームと同様にマーモンも上を向くとそこにはそこだけ黒く塗りつぶしたような黒いものが天井にあった。
体育館の天井の鉄骨に脚を引っ掛けるようにしてぶら下がっていた。
先がボロボロの黒いマントを身にまとい、体中に黒いプロテクターを取り付けた黒ずくめ。黒い帽子とマスク、そして目元を覆うゴーグルのレンズ部分のみが、赤く不気味に光っていた。
「あいつは!"暗殺者"アドルフォ!なんでここに!」
「やっとMe達揃ったから、お前らKillしに来たんだよ」
軽快そうに愉快そうに、アドルフォは脚を離して降ってくる。
すかさずクロームが槍を地面に突くと、燃え盛る火柱が床を突き破り飛び出して、落ちてきたアドルフォをあっという間に飲み込んだ。そのまま天井まで伸びた火柱は天井にぶつかり、まるで花が咲くように当たりに炎を炸裂させた。
「やったか!」
マーモンがそう言ったが、明らかに言ってはいけない言葉を言った気がする。
燃え盛る炎の中から、ナイフがマーモンの元へと飛んできた。
肉弾戦が得意というわけでないマーモンだが、宙を飛べる為さっと回避する。
そして火柱を見てみると、そこから黒い腕が、足が、体が出てきた。
マーモンから見ても一流と言わしめる幻覚から抜け出てきたのは、先ほど落ちてきた全身黒ずくめの"暗殺者"アドルフォ。
「さて、楽しい楽しいTimeの始まりだ」
口元は見えないが、にやりと不気味に笑ったような気がした。
同時進行で一話にいくつか詰めてますけど、どうですか?