特異点の白夜   作:DOS

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あったらいいな必殺技。


『魔の剣豪』

 

 

 

とあるマフィア関係の子供が多く通う学園があった。

 

その中で名の通っている、一人の少年がいた。

 

彼はその圧倒的な剣の腕を磨いていた。

 

誰にも流派を教わることなく、西洋東洋世界中の剣術家を手当たり次第に襲い、決闘を申し込み、倒して勝利し、その剣術を自分のモノへと吸収していった。

後先考えず、まるで血の匂いに釣られていくような様は、まるで鮫のよう。

自身のスタイルはあくまで我流を貫き、剣士を倒すたびに新たな力を手に入れていった彼は、その剣技に磨きをかけ、どんどん強くなっていった。

 

その強さに、当時のボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーは、彼を隊へとスカウトした。その際、入隊の条件として少年は、その時のヴァリアーのボスである、剣の帝王と謳われたテュールとの決闘を条件とした。

 

テュールの強さをよく知る周りからしてみれば、彼の勝利を微塵も疑うことなどなかった。だが、2日間の死闘の末、ついに少年は剣帝を倒した。

 

そして少年は、今までかき集め、力をつけてきた我流のスタイルを、一つの流派とも呼べるべき己の唯一の剣術へと完成させた。そしてヴァリアーへと入隊した少年は、常にトップを撮り続けたという。

 

その少年の名を、S(スペルピ)・スクアーロと言った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

恭弥が帰ったあのあと、ディーノからスクアーロの話を聞いた。

上記に記載されたスクアーロの過去。その当時彼の通っていたマフィア関係の学校には、まだボスになる前のディーノも通っていた。だからこそスクアーロには少し詳しい。

 

だがそのディーノですら、スクアーロに関してわからないことがある。

 

スクアーロは、もともとヴァリアーのボスになるはずの男。

剣帝を倒したスクアーロが時期ボスだと誰も信じて疑わなかった。だが今のボスはXANXUS。一体スクアーロの過去に何があったのか?XANXUSには、ディーノすら知らない何かがある。

 

そしてこれが今回のディーノの話で一番重要なのだが、スクアーロはいくつもの流派を潰してきた男。その為、流派を超えるという助言を武に与えた。

一体勝敗はどうなるのか?そしてこの特訓もどうなるのか。

 

キィン!!キィンキィン!!

 

「うおっと」

「とう!」

「それ!」

 

リルとコルは左右から剣を振って、武は受けて避ける。

そのようなやり取りを繰り返していた。

 

「うわぁ、3人ともすごい。山本も、なんか剣士って感じだね」

「さすが山本。この短期間でかなり腕を上げてるな」

「と言っても今は軽く流してるだけだからな。今夜が気になるところ」

「あれで軽くなんだ・・・」

 

ツナの見た限り、3人は割と速く動いている。

今回は訓練ということで、武はリルとコルの攻撃をひたすらに避けたり受けたりとしている。

 

やっぱ真剣避ける方が(危機的な意味で)やる気になるよな。しかし二人の攻撃をこうも躱す武もすごいな。

 

「そういえば、リボーンってリルとコルの親父ってあったことある?」

「クルドか。昔2、3回あったことあるぞ」

「確かそいつも剣士なんだってな」

「というかイリス所属なのにお前が知らないのに俺は驚きだ」

「だって会ったことないし。『アヤメ』って基本世界中にいるらしいからな」

「ま、それもそうか」

「それでそのクルド?剣士だったら案外昔スクアーロと戦ったことあるんじゃないかと思うんだが」

「確かに。あいつほどの剣士ならスクアーロも標的にしそうだな」

「そんなに強いのか?」

「まあな。イリスの『魔天剣豪』といえば、かなり有名だぞ」

「『魔天剣豪』か・・・」

 

いつか会うことになるか。リルとコルの親父で師匠ってことか。

どんなやつなのだろうか。ていうか3人しかいないのに、『アヤメ』の連中ってまだ槍時しかあったことないんだよな・・・・。いいのかこれで?ボスとして?

 

「ま、それは置いといて。お前らストップだ」

「ん?終わりか?」

「もっとやろ」

「うん」

「ほらほら、武は今日試合なんだから終わりだ。わかったか」

「「はーい」」

「なんか光努が二人の兄貴みたいだ・・・」

「まあ似たようなものだしな」

「それでどうする?流派を超えるんだろ?」

「ま、これでなんとかやってみるわ」

 

そう言って時雨金時を掲げてにかっと笑う。

ま、武らしいっちゃ武らしい。ひとまず不安はなさそうだな。

じゃ、もうひとりの対戦相手のところに行ってみてくるか。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「う"お"ぉい!!てめぇ、どうやってこの場所を知ったぁ!!」

「え?いや普通に最大限に情報網を駆使した」

「ふざけんなよ!つーか、なんでリルとコルもいやがる!」

「お茶ないの?」

「客人に対しての態度じゃないよね」

「当たり前だぁ!!」

「何騒いんでんだよ、スクアーロ」

 

とあるホテルの一室。

ヴァリアーが借り切ったホテルのワンフロアの入口にいるのは、光努とリルとコル、そして出迎えに出てきたスクアーロ。スクアーロが何やら騒いでいると、奥にいたベルが出てきた。見た目は包帯が巻かれ松葉杖をついている。

 

先日の嵐戦のダメージがまだまだ抜けてないため、当然といえば当然の格好である。というか至近距離で大爆発に巻き込まれてもう立ってられるのに吃驚だけどな。

 

「よ、具合どうだ?もうダメ?そろそろ峠?」

「喧嘩売ってんのか?」

 

ちゃきりとナイフを構えるベル。

最近の殺し屋はなんでも荒事にしようとして困る。

 

「それで、何しに来たんだよ?ていうかそのガキ誰?双子?」

「リルだよ」

「コル」

「はっ、リルコルベルってなんか似てね?」

「心底どうでもいいが、結局何しに来たんだ」

「スクアーロからかいにきた」

「とっとと帰れぇ!!」

 

スクアーロがさらに激しく騒ぎ立てる。

が、構わず上がり込んで近くにあったテーブルに腰掛ける光努とリルとコル。

そしてついでにベルも腰掛けてスクアーロは立ちすくんだままだった。

もはやスクアーロの怒りのボルテージはうなぎのぼりである。

 

「スクアーロ、静かにしないとボスがまた怒るよ」

 

どこからか降ってきたように現れて、机の上にぽすりと座ったのはマーモン。黒いフードをかぶった赤ん坊である。

 

「赤ん坊だ!わーい!」

「うわっ!何だこいつら!」

「ほーら、飴だよ」

「いらないよ!」

「わお、マーモン大人気じゃん」

「嬉しくない!というか白神光努!なんでおまえがいるんだ」

「対戦前のスクアーロ見に来た」

「・・・・」

 

表情は見えないが明らかに呆れたような顔をするマーモン。そんな様子を見ている

ベルは笑い、スクアーロはさらに怒りを上げてきた。

 

「この二人はイリスのリルとコルじゃない。なんでこんなところにいるんだ?」

「マーモンその子供知ってるの?」

「まああのイリスファミリーで戦う奴らってのは珍しい方だからね。とりわけ、子供なのに侮りがたしって子供だからね、その二人は」

「その子供となんで光努が一緒にいるわけ?」

「そりゃ俺イリスのボスだからな」

「「「は?」」」

 

時が止まったかのように静寂が包んだ。

目元が隠れて表情が伺えなかったベルとマーモンも、先程まで怒りの表情を浮かべ叫んでいたスクアーロでさえ、目が点になって口をぽかんと開けたような顔をした気がした。実際にそのような顔をしたわけではないが、そう思うほどに驚いていた。

 

イリスファミリーとは、マフィア界においてボンゴレと何ら遜色ないほどの強大さを持つファミリー。だがすべてが同じようというわけでもなく、ボンゴレに比べたら戦う人間は、他のマフィアと比べても極めて少ない。

 

他にもマフィアよりも一企業としての方が有名なほど。

マフィア界において、一般企業としての方が有名なのだが、それでマフィアとして有名かと言われれば微妙なところ。

 

だがそれでも、勢力的にはマフィアとして十分なほど。

しかもイリスは、同盟を組んでいない。これは他のマフィアに助けられることもなければ、協力もできない孤立状態。だが言い換えれば、どのマフィアにも攻撃を仕掛けて来るかもしれない。

 

通常ならマフィアが同盟を組んでる所に仕掛けるなど自殺行為だが、受けるマフィア達も、イリスを完璧に迎え打てるかと言われたら微妙なところ。

 

それほどにイリスの『アヤメ』等、数少ない先頭部署は強かった。

 

そして現在、そのボンゴレ並のイリスのボスが目の前にいるボンゴレ暗殺部隊のヴァリアーの心境としては、

 

「嘘つけぇ!!てめぇがボスなんてあり得るか!」

「つくならちったぁマシな嘘つけ!」

「ありえない・・・」

 

という、わりかし当然の反応だった。

 

「有り得ないと言われるとは思わなかったな」

「だよね。光努ボスなのに」

「なんでだろ?」

「お前ら自分の姿鏡で見てこいよ・・・」

 

今座ってるのは、中学生と小学生位の子供が計三人。とう考えてもマフィアのボスパーティーには見えない。ベルの意見もごもっとも。逆に初対面でこれがマフィアとわかる者が何人いるか。

 

「てっきり沢田綱吉の関係者かと思ってた」

「間違ってはいないな。クラスメートだし」

「だったら尚更こんなところにいるのが分からないね」

「とっとと帰れば?」

 

素性がわかったところでなぜヴァリアーのアジト(仮)にいるのか疑問に思うのも当然。だってかなり意味ない行動をしているから。が、この事態を好奇と考えている奴が一人いた。

 

「いや早計だぜマーモン」

「ん?スクアーロ?」

 

にやり、と獰猛に犬歯を覗かせ笑うスクアーロ。剣士だけに(笑)

いつのまにか左手に剣を備え付け、構えている。

 

「同盟ファミリーなら殺っちまうと面倒になると思っていたが、そいつがイリスの人間だって言うなら話は別だ!今ここでカッ捌く!!」

 

チャキ

剣を構えて殺気を出してくるスクアーロ。

その様子に、ベルは怪我をしているため退避を始めていた。

マーモンもベルの頭の上に乗って一緒に退避を始める。

 

守護者同士の場外乱闘は厳禁という事と、同盟ファミリーであるキャバッローネや同じボンゴレの門外顧問たちは、殺り合うとなにかと面倒であったが、ボンゴレファミリーと同盟を組んでいないイリスなら殺っても問題ないというスクアーロの発想。安直だが特に問題ないのも事実。まあ実際はいろいろと問題だらけだが。

 

「スクアーロ」

「何だぁ!」

「わかってるとは思うけど」

「う"お"ぉい!白神光努!あいつだけカッ捌く!」

「了解。行こうベル」

「ちょっとみてこうぜ」

 

野次馬根性丸出して笑って少し離れて座る。

スクアーロと光努、リル、コルが対峙した。

 

「行くぜ!う"お"ぉい!!」

「辛かってやるよ、スクアーロ」

 

にやり、と光努もまた楽しそうに笑った。

 

 

 

 




ちなみに今日の夜には雨の守護者の戦いが始まります。

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