特異点の白夜   作:DOS

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『沈黙と勝敗』

 

 

 

 

 

 

さすがのベルも、自らの限界を超えた攻撃を喰らい沈黙した。

その様子はモニターを見ていたヴァリアー勢からも堕ちたと言われる程に、嵐の守護者の決着は目に見えていた。

 

あとは隼人が、ベルの首にかけられている嵐のハーフボンゴレリングと自分の持つハーフボンゴレリングを合わせれば隼人の勝利だった。

だが、そうは問屋が下ろさなかった。

 

「勝つの、オレ!!」

 

倒れたベルの首元のリングに、隼人が触れたとき、ベルもまた、倒れながら隼人のリングを掴み、飛びかかった。

 

「!!」

 

あきらかに力が入ってないが、隼人のリングを手に入れようとしている。

 

「ベルのやつ、まだやれるのか?」

「いいや、おそらく彼を動かしているのは勝利への本能、負けを認めない王子の本能だ」

「知れば知るほど異常なやつだ」

「お前らも大概だと思うがな」

「う"お"ぉい!よし、カッさばいてやる!」

「できるものならやってみやがれ」

「ちょ光努、無駄に挑発しないで」

「だってあのロン毛が、」

「ロン毛言うな!」

 

そうこうしている間にも、隼人とベルの戦いはヒートアップ、まあ言葉の表現としてはあまり適切でないが、心境的にはそんな感じ。

実際は二人の力は対して残っておらず、床の上で転がり合いながらお互いのリングを奪おうと取っ組み合っている。

 

ベルはもはや本能だけで戦うという所業に出てるため、出血で体力や力が落ちてる隼人が不利。しかも時間が来たため順番にフィールドの内のタービンが爆発している為、およそ1分後には図書室が爆発するというチェルベッロの言葉。

それにより、シャマルはリングを渡して引き上げろ言う。

 

シャマルと隼人の修行で、一番最初に隼人が気づいたことは、己の命。

 

今までは隼人はどこか己の命を軽視するような言動が多く見られた。

自分が多くの怪我をしようとやり遂げようとする。その姿勢は見事と言わざるを得ないが、隼人が怪我をして悲しむ人間だって多くいる。

 

隼人には、それをわかってほしいと、最初にシャマルは隼人に気づかせた。

その為、シャマルは隼人に逃げろといった。

いくら勝利の為とはいえ、命を散らせては元も子もない。

 

だが、シャマルの言葉を隼人は一蹴した。

 

確かに自らの命の重さを感じた隼人。

だがこの状況、ここで隼人が負ければ、奪われた雷と大空のリングと合わせて1勝3敗。全部で7戦がある状況では、先に4戦した方の勝ちであるため崖っぷちである。そこが隼人の意地になる理由。

ツナの右腕として、手ぶらでは帰れない。このリング戦において、ここで流れを帰る必要がある。それが隼人を突き動かすもの。

 

隼人は修行の最初で気づかされた、己の命について決して忘れてない。

くだらないことで、ただの喧嘩で、自分のことを軽く見て、命を捨てるつもりなどない。だからこそ、ここぞという時に、命を投げ出してもやることの為に、一番の使いどころで使う。死んでも引き下がれない状況、だからこそ隼人は、シャマルの言葉を聞かなかった。

 

「ふざけるな!何の為に戦ってると思ってるんだ!!」

 

その隼人の姿に、観覧席から声を張り上げるツナ。

 

「またみんなで雪合戦するんだ!花火見るんだ!だから戦うんだ!だから強くなる

んだ!」

 

ただの日常に戻るため、いつもみたいに馬鹿騒ぎをするため、ツナは戦う。

だがそれは、みんな揃ってというのが、当たり前の条件だった。

 

「またみんなで笑いたいのに、君が死んだら意味ないじゃないか!!」

「・・・・10代目・・・・」

 

ドガガァン!!

直後、無情にも図書室に置かれたタービンが爆発した。

観覧席に設置されたモニターには、カメラが壊れたのか映像が途切れ、雑音しか届かなかった。

 

「そんな・・・獄寺君・・・・」

 

「・・・!あそこみろ」

 

壁を支えに手をついて、爆煙の中からふらりふらりと歩いてくる影が、そこにはあ

った。

 

「獄寺君!!」

「獄寺!」

「獄寺殿!」

「タコヘッド!」

 

必死に歩き、観覧席の手前まで来て地面に倒れた。

赤外線センサーが解除されていることを確認して、ツナ達は次々に獄寺に駆け寄る。どうでもいいがなんで全員呼び方が一定しないのだろうか。

 

「すいません10代目・・・・。勝負に負けるってのに、花火見たさに戻ってきちまいました・・・」

 

倒れながらこぼす隼人。

その言葉に、ツナは本当によかったと喜んだ。隼人が無事でなにより。それはこの場にいるみんなが思っていることと同じだろう。

一方のベルは、爆発に巻き込まれたにも関わらずに手に入れたリングを、倒れながら掲げて心底喜んでいるように笑っている。見苦しいような異常な執念も、あそこまで行くと逆にあっぱれだな。

 

ふらふらになりながらかろうじて立ち上がり、武の胸ぐらを掴んだ隼人は、後は頼むと言った。普通なら絶対に言いたくないだろうが、残りの雲と霧の守護者がこの場にいない状況では、武に頼むしかないからな。

 

「嵐のリングはベルフェゴールの物となりましたので」

「この勝負の勝者はベルフェゴールとします」

 

ヴァリアー側の3勝。これで次の勝負にツナ達が負けたら終わりか。

だが真の守護者を決めるのに戦わずして終わるというのはいいのだろうか。

ボスなら守護者集めも一流でなくてはならない、みたいな?

割とどうでもいい思考をしていると、チェルベッロから次のカードが知らされた。

 

「明晩の勝負は、雨の守護者の対決です」

 

武VSスクアーロ。ボンゴレの剣士対決か。

スクアーロにやられて修行を始めた時から、武は父親に剣術を習っているみたいだ。今はどれほどのものになってるかわからないが、スクアーロはそう安安と倒せそうにないぞ?

 

まあ武の表情は、楽しみで笑っている。それはスクアーロも同様。速く明日が来ないかって顔してるな。お互いにいろいろと思うことは違うけど、戦いたいというのは同じだからな。

 

「失礼します!レヴィ隊長!校内へと侵入した何者かが、次々と雷撃隊を倒していってます!」

「何!」

 

侵入者?もしかして・・・・・。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「それで、あいつどんな感じ?」

「うん。すごく楽しそうだった」

 

並中からの帰り道、夜道を歩いているのは光努、そしてクロームに犬、千種の4人だった。

 

あのあと、校舎の中へと乱入してきた雲雀恭弥。校舎が崩壊している状態に激怒し、その場の全員(もちろんツナ達も含む)を噛み殺そうとしたが、リボーンの一言にとどまった。

 

また、骸と戦える。

 

その言葉を聞いたとき、チェルベッロに校舎が完全に治ることを確認してその場を去った。

 

雲雀がさったあと、追いかけてきた家庭教師のディーノに、スクアーロという男の話を聞いたのだが、ツナたちは衝撃することになった。

 

そして現在帰路についているところ。

ちなみにクローム達は別の校舎の屋上から戦いを見ていた。

ついでに言えば雷のリング戦も晴れのリング戦も見ていたのである。

もちろん、戦いを見ていたのはこの3人だけでなかった。

 

「やっぱり動けないと骸も暇なのかな」

「今は、割と楽しそう。みんなとヴァリアーの戦いが見られるから」

 

クロームを介して骸の様子はわかる。クロームも完璧に様子を見ることができるわけでないが、心境的にどんな感じというのが伝わってくる。

 

復讐者(ヴィンディチェ)の牢獄という、脱獄の常習犯だった骸の力をもってしても出るのが難しい牢獄なのだから、動くこともままならずに暇していると思う。

 

「それにしてもクロームの出番はもう少し後になりそうだ」

「つーか、次にあの山本が負けたら俺らの出番ねーじゃんかよ」

「山本武・・・・勝てるの?」

「どうだろうな~」

 

正直微妙。そう簡単に差が詰まるものでもないだろうが、武の成長幅も気になるところ。ふむ・・・・。そういえば武の修行は見てなかった。明日はおそらく修行してるだろうし、見に行くか。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

ところ変わって次の日。

武の家の道場目指して歩いている。

隣にいるのはリルとコル。今日スクアーロが戦うって言ったら見に来ると言い出した。

 

さしあたり、対戦相手の武の様子を見に行くというとやっぱり見に行くと言った。

そんなわけで二人を連れてやって来たのは、武ん家の剣道場。

外からみて明かりが見えるのと、何人かの声が聞こえる。武にツナ、それにリボーンがいるらしい。

 

修行が終わったのか、それとも武の様子が気になったのか、まあなんにしてもいるならちょうどいいや。とりあえずおじゃましますと。

 

「よ、武。流派超えられそう?」

「またいきなり核心ついた!ていうか光努!それにリルとコルまで」

「やっほー」

「元気?」

「よう光努。そっちの子は?」

「俺のファミリーのリルとコル。仲良くしてくれ」

「よろしくね」

「よろしく」

「おう、よろしくな」

 

常時明るくフレンドリーな武なだけある。あっという間に打ち解けたという感じだ。

 

「ん?武、その竹刀、竹刀か?」

 

文にしたらなんか変な質問だなと我ながら思うが、武の持っている竹刀。見た感じ普通の竹刀だが、なんか質感がもっと硬そう。

 

「ああ、これか?鋼でできた時雨金時ってやつだ」

「鋼製か。どうりで」

「それだけじゃねーぞ。こいつは山本のバットと似たやつだ」

 

時雨蒼燕流とは、武が父親より習いし流派の名称。

武がもっている時雨金時は、普段は鋼でできた硬い竹刀だが、時雨蒼燕流を使うことで変形し、刃を見せて日本等の形となる。つまり、時雨蒼燕流専用の刀。

 

「それでどうだ、勝てそう?」

「そうだな、親父にさっきいいこと聞いたんだ」

「?」

「親父の時雨蒼燕流は、完全無欠最強無敵なんだってさ」

 

そう言う武の表情は、不安など吹き飛んだかのような、晴れ晴れとした自信に溢れたような顔をして笑っていた。

 

「じゃあ見せて見せて」

 

無邪気に、唐突にリルは言った。

どこから取り出したのか小太刀を取り出しながら。

 

「と言ってるが、どうする武?」

「と言われても、この子戦えるのか?」

「大丈夫だぞ」

 

武の問いに答えるリボーン。

 

「リルとコルは剣士としては山本よりも経験高いからな。組手くらいいいんじゃねーか」

 

実際、武が剣術を習い始めたのはほんの一週間くらい前のこと。

それに比べると、年齢的にリルとコルは8歳とはいえ、正直いつから剣を振るっていたのかは知らないが1年以上たしなんでいるのは事実。それ程の差がありつつ、武が自分の習った流派、時雨蒼燕流の型をモノにできたのは、ひとえに武の持つ類まれなる才能と、それを活かすだけの努力を怠らなかったからである。

 

だがそれでも明らかに実践不足。犬と昔死闘したこともあり、咄嗟の状況判断にはかなり優れ、野球で鍛えた動体視力と反射神経も常人の比じゃない。このままスクアーロと戦っても、案外怯えもなくすんなりと戦いはできそうだが、経験を積んでおくに越したことはない。今日の夜が戦いなので無理はできないが、それなりに訓練はできると思う。

 

「よし!じゃ、少しやろっか」

「やった!」

「じゃ、さっそく」

 

時雨金時と、リルと、いつの間にか入ってるコルの刀がぶつかった。

あまり無理はしないように見てないとな。

 

 

 

 

 

 


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