特異点の白夜   作:DOS

59 / 170
『風穴と粉砕』

 

 

 

それは、ある一人の少年の話。

 

小学生の少年はとても元気だった。まっすぐ一直線に進む元気な少年。

ある日、その少年をよく思わない近所の中学生達が、少年の妹を人質に取って少年を呼び出した。妹が人質に取られてる為、少年はなにも抵抗できず、中学生達に袋叩きにあい、額を割られる程の重傷を負ってしまった。

 

それを自分のせいだと悲しんだ妹の為、少年はもう喧嘩はしないと誓った。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

ボンゴレ晴れの守護者、笹川了平VSルッスーリア。

 

檻に囲まれたリングが戦いの部隊。晴れの守護者にふさわしいステージとして用意されたそのリングは、圧倒的な光源によって生み出される熱と光の中でのデスマッチとなった。

 

その戦況は現在、了平の方が劣勢だった。

 

了平の必殺技『極限太陽(マキシマムキャノン)』は、了平の持つ何億人にひとりというしなやかかつ強靭な細胞一つ一つの力を己の右腕に集め、絶対なる破壊力を生み出すパンチ。細胞の伝達率によっては破壊力がさらに増大する。

 

だがその拳は、ルッスーリアの左膝に埋め込まれた鋼鉄、メタル・ニーによって防がれてしまった。

 

「ぐあぁあ!!」

 

メタル・ニーとぶつかった了平は、右拳から少なくない血を吹き出しながらうずくまってしまった。

 

(細胞の伝達率は90%というところだぜ。今のトレーニング時間じゃこれが限界か)

 

相棒の鷹、ファルコにつかまり上空から戦況を見守るコロネロ。

5日という短い修行時間では、精鋭ヴァリアーとの勝率を上げるのはアルコバレーノといえどわずか。後は本人次第というところだった。

 

「お兄ちゃん・・・?」

 

「!きょ・・・京子ちゃん!?なんでここに!!?」

 

「娘さん達がコロネロを探してたんでエスコートしたんだ」

 

「父さん!」

 

並中に現れたのは、了平の妹の笹川京子と親友の黒川花。

了平及びツナ達はヴァリアーとの戦いのことを一切京子には伝えていない。

ヴァリアー対策の特訓は、了平が相撲大会の特訓中だとごまかしている(普通はごまかされないが京子はごまかされている)。もしかしたら死の危険性のあるヴァリアーとの戦い、妹に心配をかけまいとして隠していたが、来てしまった。

居候のコロネロを追いかけて、隔離された並盛中に来てしまった(原因はコロネロと家光)。

 

「お兄ちゃんやめて!ケンカは死ないって約束したのに!」

 

(普通の喧嘩だと思ってる!)

 

京子の天然ぶりにツナも吃驚。殺し合いだとは微塵も考えていない様子。

 

「ああ・・・確かに、額を割られたとき・・・・もう喧嘩はしないと約束し

た・・・・。だが、こうも言ったはずだ」

 

 

――それでも俺は男だ・・・。どうしても

喧嘩をしなくちゃならない時が来るかもしれない・・・・――

 

――しかし、京子がそれほど泣くのならもう――

 

 

「俺は・・・負けんと!!」

 

立ち上がった!

良平は劣勢なる状況の中、心配する妹の為にその身を奮い立たせた。

妹を思うその気持ちが、了平の細胞伝達率を100%へと押し上げた。

 

「みさらせ!!これが本当の!!」

 

突撃する了平、ルッスーリアは迎え撃った。

 

極限太陽(マキシマムキャノン)!!!」

 

了平の右拳と、ルッスーリアのメタル・ニーが、再度ぶつかりあう。

その了平の拳は、まるで光り輝く太陽のようであった。

 

ピシピシ・・・バキン!!

 

「ぎゃあ!!」

 

絶対的な硬度を誇っていたルッスーリアのメタル・ニーが砕けた。

ルッスーリアにはもう了平の拳を止める方法がなくなった。

 

今この時、晴れの守護者の戦いの決着がついた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

キラ!

 

「あの光・・・やったか、了平」

 

「ヒャッハー!とっととKillさせな!」

 

「それは、勘弁だ!」

 

ドゴゥ!

 

光努の蹴りが"暗殺者"にぶつかったが、直前で後ろに跳んで躱しただけでなく、光努の伸ばした足に向かって爪を振るう。光努がすぐに足を引っ込めたので爪は空を切ったが、構わずに突撃して爪を光努の顔面に突き刺してきた。

 

「はっ!」

 

光努の下からのアッパーで"暗殺者"の腕を下から思い切り跳ね上げた。

あまりの威力に、腕を上にあげたまま”暗殺者”は一瞬硬直してしまった。

 

バギィ!!

 

「やっぱりか」

 

「へー、よく分かったな。どうしてだ?Why?」

 

「あからさまじゃねえかよ。腕から刃が生えるとか、膝から弾丸だぜ?」

 

光努の貫手が"暗殺者"の胴体を貫いていた。否、胴体に空いていた穴に貫手が通り抜けたというのが正しい。最初から空いていたかのような丸い穴。綺麗に空いていた丸い穴は、その人物が普通の人間でないことを示唆していた。

 

「!」

 

通り抜けた穴が縮まり、光努の腕が絞められて固定された。今二人は至近距離。そして光努の右手は固定され、"暗殺者"は両手が空いていた。

 

「今度こそGoodbye!」

 

左右から両手の爪を振り下ろすように光努の顔に向かって腕が振るわれた。

今度は動くこともできず、片手しか使えない状態。

まさに絶体絶命だった。常人だったらの話だが。

 

「ぬん!」

 

「Oh!What!?」

 

光努は固定されていた右腕を上に動かして"暗殺者"を()()()()()

左右から顔を刺すように振った両爪を、光努は本人を持ち上げることと、自分の膝を曲げ、頭を下げて態勢を低くすることで空振りに終わらせた。そしてそのまま、右腕を上に上げてから下に下ろすようにして、"暗殺者"を頭から地面に叩きつけた。

 

ドゴォ!!

 

地面に突き刺さった腕を引き抜くと、いつの間にか"暗殺者"が取れていた。そのまま正面を見ると、向かいのビルの屋上に着地する黒い姿が見えた。

先がボロボロの黒いマントが風になびき、顔のゴーグルが怪しく赤く光っていた。

 

「咄嗟に腕を外して、空中で投げられる勢いのまま跳んだのか」

 

「ハハ!危ない危ない。ん~、向こうの戦いもFinishのようだし、全員帰るな。今日はMeもHomeに帰らせてもらおう」

 

「おい!名前だけ名乗っていけよ!」

 

背を向けた"暗殺者"にむかって叫ぶと、くるりとこちらに向いた。

 

「Meは"暗殺者"アドルフォ!次はTargetを始末させてもらうよ。ついでにお前もな」

 

「させるとでも?」

 

「するさ。じゃ、今度は本当にGoodbye」

 

そう言うと、ビルの中に入って言った。

 

「ビルの上なら追いかけやすかったんだがな・・・・。さて、晴れの守護者の戦いも終わったみたいだな」

 

並中の方向を見ると、檻が開いたリングに、撤収する皆が見えた。

了平がツナ達と一緒に笑っている、そしてルッスーリアがモスカに抱えられてぐったりとしている。これを見れば勝敗は丸分かりだ。

 

「・・・・あ、灯夜?リング戦終わったぞ。ついでにアドルフォが撤退したぞ」

 

『まあターゲットがいなくなったからな。次のリング戦にはまた来るかもしれないな』

 

「面倒だな。目撃者も全員始末する気なんだろ?」

 

『大本が潰れるまで耐えろ。明日には槍時がそっちに着く』

 

「お、助かる。正直あいつ並のやつが複数来たら面倒だったんだよな」

 

『また何か会ったら連絡する』

 

「おう、サンキュ」

 

灯夜との通話を終わらせて並中を見る。

すでにツナたちはいなく、チェルベッロ機関の者と思われる奴らがリングを解体して運んでいる。さっきまであそこで命懸けのバトルをしていたのかと思うと中々シュールな光景だ。

 

「さてと、次のリング戦については、明日聞くか」

 

ビルを降りて、光努は暗い道を歩いて帰路についた。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。