ちなみにヴァリアーには偽リングがもうバレてイタリアから日本に向かってる。
森の中を歩いていた。
歩いていたのは、光努、リル、コル、犬、千種、クロームの5人。
森の中にある平坦な道をスタスタと歩いている。
進むにつれてだんだんと木々が曲がりくねって不気味な雰囲気を出しているが、ここにいる5人はそれくらいでは怯える程でもないので問題なしに歩いている。
「そろそろ見えてくるはずらしいが」
「見てみて光努、あれあれ」
「ん?あれか」
見えてきたのは、道端にぽつんと置かれた鳥居。
だが普通の鳥居と違って色は灰色。大きさは枠の中が普通の扉サイズと果てしなく小さい鳥居が森の中に道に建てられていた。
そして鳥居の額束にはただ一字、『獄』の文字が書かれていた。
「よし、始めるか。黒曜組の特訓メニュー。題して『地獄巡り』」
名前そのままのお題を、光努は告げた。
***
「ところでクロームも一応守護者だから特訓とかしなくていいのか?」
今日は学校が休みなので、家でくつろいでる。
犬は庭で遊んでおり、千種は自室、居間では光努とクローム、そしてリルとコルが二人でトランプのスピードをしている。
「一応してる。幻術のトレーニングとか」
クロームが沢田綱吉を守護する霧のボンゴレリングの守護者と光努が知ったのは少し前。どうやって知ったかはあえて語らないでおく。
「まあ幻術使える奴がいなさそうだから家庭教師もつけられないな。他の守護者に比べて少し不利だな」
話を聞いたところ、骸が霧の守護者として選ばれたが骸は現在牢獄の中なのでほぼ代理ということでクロームが参加している。
「なになに?クローム特訓するの?」
「特訓?戦うの?誰と?」
トランプを終えてリルとコルが興味深そうにクロームの元までやってくる。
今までの境遇から、ニコニコと笑って自分と親しげに話しかけてくるリル達に若干の戸惑いがあるものの、クロームも4日程一緒に暮らしていると多少この空気に慣れた。
「ヴァリアーだよ。そういえばお前らヴァリアー知らないのか?スクアーロは知ってるのに」
「だって剣使ってるのスクアーロだけだし」
「他は面識ないよ」
「お前らの知り合いは剣士しかいないのか・・・・」
「おーい、見てみて!面白いの拾ったびょん!」
「犬、拾い食いはあれほどダメだって」
「言われてねーしやらねーびょん!」
ひらり。
犬の手元から落ちたのは、一枚の紙。
何かのビラのようにも見える紙を、落ちたそばにいたクロームは拾って読み上げ
た。
「えっと、『これであなたも最強になれるツアー。剣士も術師も格闘家もドンと来い!』。犬、これって」
「いや・・・まあ負けたら骸さんに悪いし、今のままじゃその女よえーし」
つまり家庭教師のいないクロームの為に持ってきたと。
「おーおー優しいこった。あの犬がこんなにいい子に育つなんて。ビラは怪しいけど」
「時が経つのは早いねー。ビラは怪しいけど」
「感慨深いねー。ビラは怪しいけど」
「犬・・・」
「う、うるせーびょん!!あと一言余計らびょん!」
珍しく照れつつ、縁側にどさりと寝転がってそばにあった饅頭をガツガツと食べ始める。光努達はそんな犬を見てにやりとしつつ、クロームの持っているビラに目を落とした。
「えー、『いつでもお越し下さい。詳しいルールは下記記載』。ルールはっと・・・・・・なるほど」
「行こ行こ!楽しそう!」
「よし、じゃあ行くか!クロームの、いやまとめて黒曜組の特訓だ!」
***
ルールは簡単。
・入口の鳥居からスタート。
・山の頂上にある燈籠の元までたどり着けばゴール。
・それができれば君はレベルアップ!
・場所は地図参照。
それがビラに書かれていたルール。
そして今、光努達はスタート地点と思われる鳥居の元へとたどり着いた。
「特になんの変哲も無い山のようだな」
「ここから入って頂上に行けばいいってことだね」
「それでどうやって強くなるびょん?」
「めんどい・・・」
「えっと、注意書きがあるな」
※注意書き
・鳥居は一人ずつ入ってください。
・何かあっても全て自己責任といたします。
・お菓子は300円までです。
「・・・・・・・」
「どうしよう!400円分持ってきちゃったよ」
「リル、大丈夫。そのまま持ってていいぞ」
光努はリルの頭をぽんぽんと叩き、早速鳥居の中に入った。
「「!」」
鳥居をくぐった光努とクロームは、何かを感じ取った。
さっきまでとはまるで別の空間に出たような気がしたが、周りの景色に変化はなかった。紛れもないその場所。だけどその場所に違和感を感じていた。
「今の鳥居・・・何か、術がかけれてると思う」
「幻術か、多分。もうスタートしているのか」
「あ!鳥居が」
リルの声に後ろを向くと、先ほど通ってきた鳥居が影も形もなかった。
幻術を出したら光努は見破る、というよりほぼ効かないはずだが、光努は鳥居を見つけることができなかった。
「ま、いいさ。頂上に向かうぞ」
そして順番を変えて、
先頭クローム、犬、千種の三人。その後ろに光努とリルとコルの三人。
今回はクローム達の特訓なのであえて先頭において進む。
周りの木々は、普通の山のよう。平坦だった道はだんだんと上り坂になって山を登っているのがわかる。このままだと頂上まで楽勝ではないのか?と一同思ったが、そうは問屋が下ろさなかった。
ギュン!!
「あれは!」
空の上から飛んできたのは、平たい円形の物体。
よく見てみると、木でできた歯車のよう、大きさは直径で1メートル程。
「ライオンチャンネル!こんなの、引き裂いてやるびょん!」
たてがみを伸ばし、目を細くし、凶暴な牙と爪を持った犬は飛んでくる木の歯車に向かって跳んでいった。
「まずい!千種、犬を止めろ!」
「ふっ!」
咄嗟に、千種は光努の呼びかけに反応してヘッジホッグを操り、犬の体を糸で絡めて引っ張って無理やり後退させた。
「ぬぁ!」
犬のいたところを通過して、地面にぶつかった木の歯車は、
―――――――地面に吸い込まれるように消えた。
「え?」
一瞬クロームは幻覚?と思ったが、今の歯車からは幻覚の気配を感じることができなかった。つまり今のは――――――幻覚ではない。
「よく見てみろ、そこの地面」
「ん?これって!」
歯車の吸い込まれた地面をよく見てみると、一筋の黒い線。
だがさらによく見ると線ではなく細い1メートる程の穴。つまりさっきの歯車は地面に吸い込まれたのではなく、地面を切り裂いて地中に潜ったということ。
それほどに今の歯車は鋭く加工されており、回転数が異常なほど高かった。
もしも、犬があのまま歯車を引き裂こうとしていたら、人様にお見せできないような映像が出来上がっていただろう。
「随分と原始的なのに、恐ろしい罠仕掛けやがる。主催者はいったい誰なんだか・・・」
「犬、大丈夫?」
「・・・えぇい!さっさと頂上行くびょん!」
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
「おーい、危ないぞ」
さっきの歯車が再び飛んできた。
「それにしてもあの罠。随分と凶悪だな。犬達は大丈夫か!」
「うん、なんとか」
「ぜぇ・・大丈夫だびょん」
「大丈夫」
クローム達も、避けたり避けたり木を投げたり岩を投げたりと頑張ってなんとか対処した。ひとまず歯車の嵐はやんだようなので先を進む。
すでに暗くなっているが、光努達はそのまま突き進む。
クローム達は反射神経、動体視力、身体能力が向上した。。