「もぐ・・・美味しい!」
「でしょ?朝菜の料理美味しいよね」
「唐揚げうまっ」
「たくさん持ってきてよかったな」
黒曜ランド中央施設の一室。
椅子と机を用意してその上に持参していた3段重ねの重箱を広げる。
唐揚げや卵焼き、ハンバーグ、ナポリタン、とりあえずいろいろな料理が弁当箱には積まれていた。もちろん味は美味しい。灯夜の嫁の朝菜が作ったんだけど、流石主婦なだけあって料理はうまい。
それにしてもこの料理いつ作ったんだろ。頼んでから一時間くらいでこんなに数十種類って作れるものなのか?明らかに下ごしらえとか必要な料理とかあるような気がするけど、まあ美味しいからいいか。
「まあそれで骸に頼まれて来たんだよ」
骸の名前を出すとクロームは少し目を開いて驚いたような表情をする。
「骸様に?」
「ああ、それで犬と千種はどうしてる?」
「わからない。どこかに行ってる」
「そうか。匂いに釣られてくれば楽なんだがな」
「あー!お前ら何食ってるびょん!!」
来たよ・・・。
「よう犬。お前も食うか?」
「光努!何でいるか知らねーが、食うびょん!」
勢いよく飛び込んできてガツガツと弁当を食い始める。
荒っぽく手づかみで一心不乱に弁当を口に詰め込んでいる。行儀が悪いな。
少しは躾けないとな。ん?
そう思ってると犬の後ろにリルとコルがいつの間にか立ってた。
二人とも背中に手を回して小太刀を引き抜く。どの顔には影がかかり、目が赤く光ってるような気がした・・・。
そして弁当を食べている犬の背後にこっそりと忍び寄り、小太刀を二人とも一斉に振り上げて、犬の頭上に振り下ろした。
「「おあずけ!!」」
ガアァン!!
「ギャイン!」
ドゴラガシャァーン!!
机を粉砕しながら地面に顔を激突。そしてもともとボロボロだった床に顔をめり込まして動かなくなってしまった。
いくら犬の行儀が悪く、せっかくの料理が少々ぐちゃっとなってしまったとはいえ、これはやりすぎかなと思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・まあ犬は丈夫そうだからいいか?
「て!大丈夫なわけないびょん!」
ほら大丈夫だった。
ああ、心配なくても料理は全部閉まって俺の手に収まってるから壊れたのは机と犬の頭と床だけだ。こんな美味しい弁当を壊されてたまるものか!
「!お前ら何するんだびょん!ウルフチャンネル!グルルゥ!」
「変身だ!」
「狼、微妙。元の顔がアレだからからかな」
リルはともかくコルの辛辣な感想。
「大丈夫?犬」
勢いよく床に突っ込んだ犬を心配そうに見るクローム。
そのうち犬がリルとコルを追いかけて逃げる三人の構図が出来上がった。
鬼ごっこか、楽しそうだな(絶対に違います)。
まあなにわともあれ、弁当は無事だから食べるか。
***
「で、何か申し開きがあるなら言ってみろ。話だけは聞いてやる」
「だってこの狼がー!
「このガキ共が悪いびょん!」
「僕は悪くない」
「よし、お前ら少し黙ってもらおうか」
黒曜ランド中央にあった複合施設の外にある広場。
少し広い場所に大きめのシートを広げ、その上に正座して並んでいるリルとコルと犬の三人。そしてそれを見下ろす俺。となりではクロームが座って今の状況を見守っている。
何故中ではなく外に座っているのか。別に外が明るいからピクニックにするかというわけでもない。理由がある。
「お前ら、鬼ごっこもいいが・・・・建物を崩壊させてどうする!!」
今現在、俺の後ろには瓦礫の山が築き上げられていた。
先程まで会った建物は見る影もなく崩れ去ったということ。
なぜこんなことになったのかといえば話は簡単だ。
鬼ごっこをしたリルとコルと犬が暴れて壁や床を破壊したり切り刻んだりしたおかげでわずか数分で崩れた。もともとボロボロの廃墟だったのに、重要な柱とか崩してしまったおかげであっという間に瓦礫の山が出来上がったよ。
クロームを連れて建物から避難する羽目になったよ。
「お前たちの意見はよくわかった。よって罰を与える」
「コル!」
「うん!」
ダッシュ!
一瞬のうちにリルとコルが目の前から消えた。
犬も隣にいた二人が消えたから「あれ?」とか思っていたがよくよくと見たらすぐ近く、クロームの後ろに隠れるように逃げてクロームの背中からこちらを伺っていた。
「ちょ!お前ら!逃げるなびょん」
「わーん!クローム助けてー」
「え!?でも・・」
「ヘルプ・・・」
「はぁ・・・しょうがないな。よし、一人差し出せば他の二人は罰なしにしよう」
「「「!」」」
三人は考えた、どうやってこの罰から逃げ出すかと。静寂が三人の間で行われたが、それは一瞬だけだった。
「「じゃ、あとはよろしく」」
「え、待って二人とも・・」
リルとコルはクロームを連れて一目散に逃げ去った。
「え?待つびょ、ぎゃん!」
すぐに追いかけようとした犬は立ち上がってダッシュしようとした瞬間、地面に吸い付くように顔面を打ち付けた。よくよく見てみると、足首にロープが巻きつけて近くの木につながっていた。
あの二人いつの間に。まあこれでお仕置き対象は決まったわけだし。
「じゃ、犬」
「ちょ!待った!俺じゃないびょん!あいつらが・・」
すっ。
右手を上げて犬に手を見せる。
その手は、手をパーにした状態から中指を曲げ、先端に親指が付くようにして中指と親指で丸の形をした手の形。つまりはデコピンの手。
(お仕置きって・・・これ?)
犬の手を額に持ってきて、犬はこれくらいかとほっとした表情をしたが、
バシン!ドゴォ!!
額をデコピンで打ち付けられた犬は、地面と平行に飛んで行き、森の木をなぎ倒して向こうの建物を崩壊させて倒れた。
まあ気絶してるだけだろうから問題ないな。犬回収してリル達と合流するか。
(光努、罰を喰らわないように気を付けよう・・・・。そして犬、安らかに眠って)
そして物陰から見ていた千種は静かに犬に黙祷するのであった。
黒曜ランド崩壊、
後で責任もって修理いたします。
建築業者はもちろんイリス系列で。