現在午後5時頃。そろそろ太陽が沈みかけて夕日が見える時間帯。
イタリアのとある屋敷の近くの茂みにひとりの人間がいた。
「台所はここから少し遠いな」
少年、白神光努は茂みの中から明かりの着いている屋敷を見ていた。
さて現在光努は台所を探しているのだが別にお腹がすいているわけではない。
まあ厳密に言えばお昼に食べたけどそろそろ夕食時だからお腹なすいたな~くらいにはすいているけど(結局すいてるじゃん!)
今回のミッションは盗まれた機密書類の奪還!―――――ではなく。
それは少し前のこと。
***
「それでルールって何?てかなんで赤ん坊?」
「それはこのおしゃぶりに秘密がある」
ハクリは自分の胸に着いているおしゃぶりを指す。
「なんだ?そのおしゃぶりは?」
「これは最強の赤ん坊といわれるアルコバレーノのおしゃぶりと同じようなものだ。このおしゃぶりの呪いで赤ん坊の姿になっている」
「最強の赤ん坊?呪いで?それにアルコバレーノって虹のことだな」
「そう、全部で7人のアルコバレーノがこの世界に存在する。全員俺のことは知らないけどこのおしゃぶりのことはなんとなく感じ取ってるかもしれないな」
「そうか。でもそんなのなくてもいいだろ?」
「じつはこのおしゃぶりを外してしばらくするとこの世界は崩壊する」
「・・・・・・・そんな危険なもの返してくれば」
「俺専用だからしょうがない。本来なら世界の維持に必要のないものだが私たちが来たことによりその分の世界が歪んだから正常にするのに必要なんだ」
「ふーん」
「そもそも別次元の場所に来るには場所によってルールが追加されて来るんだよ。これもその一つ」
「まあどうでもいいや」
「いいのかよ!」
「俺には関係のないことだしな。つまりハクリがつけてればいいんだろ?この世界にいる間はつけてろよ。つけても別に困らないだろ。小さくなる以外は」
「これおしゃぶりに炎灯すから結構力使うんだぜ~」
「炎?」
「後で教えてやる。それよりハーゲンダッツ食いに行こう」
「アイス?ここは森のど真ん中だぞ。ていうかどこだよ。日本ではないと思うけど」
「ああ、ここはイタリアだよ。それよりハーゲンダッツだ」
そう言うと光努は何かを感じた。何か妙な感じ。
「おい、なんだソレ」
光努の頭の上にいるハクリの小さい手のひらから妙な炎が出て宙に浮かんでいた。
「ただの擬似テレポーテーションだよ♪昔知り合いに教えてもらったんだ。というわけで行ってこい!」
「なんだとおぉぉ―――」
光努は炎に吸い込まれてどこかに行った。残ったハクリは人知れずどこかへ行くのであった。
***
「しまった!回想シーンなのに全然わかんねー!!」
情報の分析ができない作者に変わって俺が説明してやる!
ハクリの出した謎の炎によって元いた場所からどこかに移動した俺。
気づいたらやはり森の中。そばにあったメモにはハクリが書いたと思われる文字。
メモには「ここから北西に200メートルの場所にある屋敷の台所にハーゲンダッツが2つあるからとってくるといい。戻ってきたらここで落ち合おう。byハクリ」と書かれていた。
どうあってもハーゲンダッツを持ってこないと現れないらしい。ハクリを探すの至難の業だから向こうから出てきてもらうしかないので俺は結局ハーゲンダッツを取りに行くことにした。
ならもらいに行けばいいじゃないかって?それは無理。メモには「誰にもバレないようにしましょう(要注意)」と書かれていたからどうにかこっそりと奪うしかないな。まあ見つかったらそれはそれでしょうがないよね♪
安心しろ。ちゃんとハーゲンダッツ2つ分として1000円札をおいておこう。お釣りは相手に迷惑料として置いておいてもらおう。これで一安心(どこか!?)
「さてと、まずは台所の場所を探すか」
***
屋敷のとある一室。
広々として快適そうな部屋のお椅子に座っているのはまだ若い男。
少し長めの金髪をして首筋から左腕にかけた刺青。肩には小さい亀をのせた青年。
そばには黒い服の部下と思しき男たちが数人いた。
「ボス。日本へ行く用意が整いました。明日の飛行機で行けます」
「そうか。サンキューな。リボーンに会うのも久しぶりだし楽しみだな」
ボスと呼ばれた青年はディーノ。跳ね馬と呼ばれるキャバッローネファミリーの若きボス。
どうやら日本へと行くようだ。
「よし。そろそろメシにするか」
「そうですね。広間に用意されています」
「ああ」
ディーノと部下が部屋を出て少し歩くと廊下の上に何やら黒い物体が落ちていた。
いや、よく見ると黒いのは服。ディーノの部下と同じを黒服をきた人間が廊下に落ちる、もとい倒れていた。
「ボス!」
「ああ!大丈夫か!?イワン!」
そばに駆け寄って起こす。イワンと呼ばれる部下の男。どうやら気絶しているようだ。特に目立った外傷はないようなのでひとまずディーノは安心した。
「ロマーリオ!直ぐに屋敷を搜索だ!全員2人1組で当たれ!」
「イエス!ボス」
「どうやらキャバッローネに客が来たみたいだな」
ディーノside
懐かしい家庭教師のリボーンに会いにいくために日本行きの準備を済ませてひと段落したと思ったら騒がしくなったきたな。
とりあえず屋敷を少し見て回ると倒れていたのはさっきの一人だけ。ひとまず安心したけどうちの部下だってそう簡単にやられるたまじゃない。誰かに気絶させられたみたいだから次の被害が出る前になんとか侵入者を見つけないとな。
「ボス!3階の窓が一つ外れてます!」
「外れてる?壊されたんじゃなくてか?」
「ええ、窓枠から綺麗に外れてました。ちなみに窓ガラスは一枚も割れてませんでした」
「まあ・・・なんというか・・・随分と荒っぽいような・・・荒っぽくないような・・・」
まあこれで侵入経路はわかった。誰にも気づかれずに3階から侵入となると随分と手練かもしれないな。
ひとまず全員に探索するように言ったが相手が相当なやつだとあいつらじゃ分が悪いかもしれない。
というよりまずは見つけないとどうしようもないな。人相もわからないし何か起きるまで待つか。
俺は廊下を通って広間に入る。
「うまい!これが本場のパスタか。ん?そういえば飛ばされたからここがイタリアかどうかも分からないな。まあうまいからいいか」
「・・・・・・・・」
確かにさっきロマーリオが広間にメシの支度をしたと言っていた。そして俺は探索活動をしてこの広間にやってきた。目の前に広がるのはテーブルに乗る料理を食べているひとりの少年の姿だった。美味しそうに今日の晩飯であるパスタを頬張ってる少年は特徴的な白い髪をした中学生くらいの子供。
「・・・なあ、お前は誰だ?」
いろいろと疑問を持ったが、俺は意を決して話しかけた。
ディーノside out
***
もぐもぐもぐ。
「・・・・・なあ、お前は誰だ?」
もぐもぐもぐ。
「・・・・・」
もぐもぐもぐ。
「ひとまず飲み込んでくれ」
ごっくん。
「あ、ご馳走様です」
「あ・・・ああ、お粗末さま・・・て違う!お前は何者だ」
ディーノは再び問うと光努は椅子から立ち上がる。
「白神光努。そして済まないが・・・・あんたには寝てもらう」
「なに!お前はどこのモンだ!キャバッローネに何か用か?」
「キャバッローネ?あんたの名前?」
(見たとことぼけてるようには見えないな。ここがどこだが知らずに来たっていうのか?)
その時ディーノの入って来た扉から部下が入って来た。
「ボス!イワンが目を覚ましました!て、誰ですか?」
「ロマーリオ。俺もまだわからないんだがな。おい。戦う気はないんだが少し話をしないか?」
「まあ後で眠らせればいいか(ぼそり)それで何の話する?」
ディーノは最初の方をあえて聞かなかったことにして交渉の余地があるから話をまずすることにした。
とりあえずテーブルに二人とも座ってロマーリオの入れてきた紅茶を飲む。
「紅茶って美味しいな~。クッキーとかない?」
「・・・・・お前って確か家に侵入したんだよな?」
「そうとも言う」
「とりあえずお前はどこかの組織の者か?」
ディーノにはいろいろと疑問があった。そもそもまだ十代の子供が一人でこんなところに、しかもマフィアの屋敷に侵入するなど目的とかいろいろと聞きたいことがあったがひとまず素性から聞くことにした。
「違うよ」
即答されたので少し面食らってしまった。
「じゃあこの家に来た目的は?」
「ハーゲンダッツ」
「は?」
ディーノは一瞬聞き間違いかと思った。しかしそれもしょうがないだろう。
目的を聞いたのにアイスの名前が出たのだから。
「この家の台所の冷蔵庫にあるハーゲンダッツを頂きに来た」
「・・・・・・ボス・・」
「・・・・・・・・・・」
ディーノも反応に困ってしまった。これがキャバッローネファミリーに攻めてきた別のマフィアだったのなら迎撃するのだが侵入してきたのは子供。しかも目的はアイス。一瞬デタラメ言ってるのかと思ったがディーノには目の前にいる光努が嘘をついているようには見えなかった。
それゆえにどう対応していいのか本気で困ってしまった。
「・・・・ロマーリオ。この家の冷蔵庫にハーゲンダッツはあったか?」
「え?・・・・ええ。確か2つ程残っていましたね」
「じゃあ頂戴♪」
無邪気な笑顔でそういう目の前の少年。ディーノには、その少年が悪いやつには思えなかった。
「ハハ、もし嫌だって言ったら、お前はどうする?」
「もちろん実力行使に決まってるじゃないか」
「クク、ハハハ!ロマーリオ。冷蔵庫のアイス持ってきてくれ」
「ククク、オーケー、ボス」
笑いをこらえつつロマーリオは台所に向かった。
「それで、なんでこの家に来たんだ?」
「この家の冷蔵庫の」
「いや、そうじゃなくて、なんでわざわざこの森の方にある屋敷に来たんだ?しかも冷蔵庫の中のハーゲンダッツなんてピンポイントなこと。あるかもわからないのに」
「・・・・・・まあいろいろあってね」
なんだか苦労してる空気を感じたのかあえてディーノはこれ以上聞くのをやめるのだった。