『避難は速やかに行いましょう』
暗い夜。
ビルの立ち並ぶ都心の下では夜でも人が多く、営業してる店も多かった。明るい通路、人が賑わう声。そんな声と裏腹に、高く立ち並び、暗いビルの屋上にて、激しい金属音が響いていた。
キィン!キキン!キン!
金属と金属のぶつかる激しい音。
二人の人間が争っていた。
一人は少年とも言えるまだ中学性程の子供。持ち手のついたブーメラン状の武器を持ち、常人離れした身体能力を発揮し、その額には青い死ぬ気の炎が灯っていた。
もう一人は大人の男性。男にしては長い髪、全身黒ずくめの服装に左手には両刃の剣が備え付けてあった。
刃物同士がぶつかり合う金属音、壁の破壊される音に爆発音。
まさに命懸けの戦いをしている真っ最中だった。
「う"お"ぉい!!てめぇなんで日本に来たぁ?ゲロっちまわねえと三枚におろすぞぉ!おらぁ!」
「答える必要はない」
黒ずくめの男性の荒っぽい問いかけに、少年は何も答える必要はないと答えた。
その答えに、黒ずくめの男は獰猛な笑みを浮かべ、地面を蹴って少年に迫った。
ガキン!!
男の振った剣を、少年は自らのブレードで防いだが、男の剣の威力に押されてビルの屋上から飛ばされた。
咄嗟にビルの屋上の淵を掴み、少年は宙にぶら下がる状態となり、屋上に立つ男は少年を見下ろした。
「う"お"ぉい!よえぇぞ」
ヒラリ。
ぶら下がる少年の懐から一枚の紙が落ちる。
(こんなところで、負けるわけには!)
咄嗟に紙を掴む少年。それは紙ではなく一枚の写真。
そこに写っていたのは小さな子供。母親に肩車されている小学生程の子供の写真。その顔はまだまだ幼いが、確かに沢田綱吉のものだった。
***
「えっと、バニラとチョコとイチゴくださーい」
「へいおまち。嬢ちゃん、落とさないように気をつけな」
「わーい!」
リルはアイスの屋台で三段重ねのアイスを買ってこちらに走ってきた。
「見てみてー!光努!」
「おー、うまそうだな。こっちはたこ焼きだ。いいだろう」
「冷たいものと熱いものは合わないよ」
「そりゃお腹壊すからな」
リルと一緒にデパートの3階にあるフードコートからそれぞれたこ焼きとアイスを買いつつ、窓際の席に座って食べ始める。
今日は日曜なのでリルと一緒に買い物にやってきた。
仕事?もちろん休み。だって世の中日曜だし、最近の会社って土日祝日休みのほうが多いみたいだからな。まあそうでなくても普通に平日だって休みにするけどな。もちろん学校には行くけど。
二人とも食べ終わると一息ついて次にどこに行こうかと話す。
「で、次どこ行きたい?」
「ん~、ケーキ食べたい!」
「さっきアイス食べたばかりだろ」
「ケーキって甘いんだよ?」
「いや、知ってるけど」
リルは甘いものが好きみたい。ここら辺は子供らしいなと思ったけど逆にコルは辛いものがお好みときた。なんで双子でこうも逆の味覚してるのだろうか。まあそれでもさすがは双子らしく共通点が多い。
「ケーキ買ってくるー!」
と言っていつの間にかリルがいなくなってるけど、まあ食い過ぎないように注意しないとな。じゃあ俺はラーメンでも買ってくるか。さっきやっていた30分以内に間食すれば無料になる「
なかなか洒落の聞いた名前だ。だが、間食して見せよう!
「親父ー!白乾児麺一丁!」
「ふっ、まさか俺のこの麺を頼むものが来るとはな。いいだろう、お前に世界の壁を教えてやる!」
そして出されたのは巨大なラーメン。ゴミバケツのような巨大な器に入った麺。汁と麺と具が大量に入っている、尋常じゃない量が。
「これを食えるか、兄ちゃん」
「ふ、俺も甘く見られたな。いいぜ、やってやるぜ!」
箸を取り、俺は麺を取って食べ始めた!
(光努頑張って。なんかよく分からない展開だけど・・・・)
隣でいつの間にか戻っていたリルが、光努と店主の妙に暑い展開に頭にハテナを浮かべていたけど、ショートケーキをほおばって光努を応援していた。
ドーンドーン。
「ん?光努、下が騒がしくない?」
「ズズズ、どうした?騒がしいって?そりゃデパートだからな」
「そうじゃなくって!なんかすごい音が」
ドゴーン!ドゴーン!
さっきより明らかに大きい爆発音。
「パクパクパク。緊急事態か、下で何が起こってるんだ?」
窓から下を見てみると、下の方の建物が多少崩壊している。
おおぉ、意外と切迫しているみたいだな。
「光努ー!早くー!」
「ゴクゴクゴク、ぷはー。ちょっと待ってろ。親父、ごっそさん」
ラーメンの器を置いてリルと一緒にラーメン屋をあとにした。
「まさか俺の麺をわずか10分で間食するとはな。ナイスな食いっぷりだ兄ちゃん」
後ろからそんなつぶやき声が聞こえた気がした。
ドゴォーン!!ドガァーン!!
下で爆発が起こったことにより、デパート内で買い物したり食事したりしていた人が大量に外へ出ようと走っている。というかもうほとんどいないな。
リルに聞いたところラーメンを食べている間に行ってしまったみたい。いや別にラーメン食べるのに夢中だったわけじゃないんだからそれくらい知ってるよ。
窓のから外を見てみると、下の方から煙が上がっている。
その近く、地上で何人かの人間が残っていた。
どっかで見たことのあるような制服、というかあれ並中の制服じゃね?
「光努、あれツナ達だよ」
「確かに、でも知らない奴もいるな。二人ほど」
眼下に見える戦上では二人の人間が戦っていた。
一人は黒ずくめで長髪、そして左手に剣を備え付けている男。今はこちらのほうが優勢みたい、というか圧倒的。
もう一人はツナと同じくらいの少年。ブーメラン型の武器を持って応戦中。額には青い死ぬ気の炎。死ぬ気の炎?
つーことはボンゴレ関係者?確か死ぬ気の炎ってボンゴレに伝わる炎って前に聞いた気がするしな。
ということは黒ずくめは敵か。ツナも巻き込まれてるみたいだし大変だな。
というか武と隼人も倒れてるし。
「あ、スクアーロ」
「リル知り合い?どっち?」
「あの黒い方。前に少し会ったことあるよ」
剣を使ってるほうか。同じ剣士つながりで知ってるのか、リルが知ってるとは意外だな。
「スクアーロってどこ所属か知ってるか?」
「ボンゴレの人だって。パパが言ってた」
「ボンゴレ?」
ボンゴレ、ボンゴレ。ていうことはボンゴレ同士で戦ってるのか。
まあまだあの少年の方がボンゴレと決まったわけではないのだけど。
「ま、ピンチみたいだし、行くぞリル」
「おー!」
「はぁ!」
ガシャァン!!
デパートの窓を粉砕して、背中にリルを貼り付けて飛び降りた。
「「やっほおぉぉ!」」
***
「
時間は少し前、ツナ達は商店街で楽しく遊んでいたが、突如起こった爆発から飛び出てきたのはロン毛ことスクアーロと、少年バジル。二人は戦い、周りの人間は逃げ出した。スクアーロの攻撃によりツナの所まで吹き飛ばされたバジルはツナを見てバジルはツナのことを知っているみたいだったが、スクアーロがそのことを知り全員を標的とみなした。
応戦した山本と獄寺は、スクアーロの圧倒的な力で倒された。
かろうじて戦っていたバジルも、ついに倒れてしまった。
スクアーロは止めを刺そうとしたその時、「X」のエンブレムをつけた死ぬ気のツナに腕を掴まれた。
「う"お"ぉい・・・なんてこった・・・」
スクアーロはツナをみて、心底驚いたような表情を見せた。
「死ぬ気の炎に・・・このグローブのエンブレム。まさかお前、噂に聞いた日本の・・・・。そうか・・・お前と接触するために・・・・・・・」
驚いていた表情をしていたが、口角をあげ、獰猛な笑みを浮かべた。
「ますます貴様ら、何を企んでんだぁ!?死んでも吐いてもらうぞぉオラァ!!」
「うおおおお!!」
ガッ!!
「!?」
死ぬ気モードのツナの拳は、スクアーロにあっさりと受け止められてしまった。
「う"お"ぉい、よえぇぞ」
ガキン!
スクアーロの振った剣を、かろうじてツナはグローブの甲のエンブレムで受け止めたので無傷で澄んだが、あまりの威力に吹き飛ばされてしまった。
リボーン的には普通の死ぬ気弾による死ぬ気モードよりも、小言弾を使った
あっさりと倒され、死ぬ気状態も消えてしまったツナに剣に仕込まれた爆薬を飛ばすスクアーロ。寸前でバジルの投げたブーメランによって爆発を阻まれ、周りは煙で包まれた。
そのスキにバジルはツナを連れ出して、物陰へと避難した。
「君、大丈夫なの?」
「拙者はバジルといいます。親方様に頼まれて沢田殿にあるものを届けに来たのです」
バジルの時代錯誤な物言いにツナは戸惑ったが、バジルが取り出して見せたものに頭にハテナを浮かべた。
「何?これ・・」
バジルが見せたのは箱。中に収まっているのは、歪な形状をしている7つの指輪だった。
「何かはリボーンさんが知っています」
「え!君、リボーン知ってるの?」
「リボーンさんはわけあって戦えません。これを持って逃げてください」
「ちょ、急にそんなこと言われても」
「う"お"ぉい!」
「!!」
「そぉいぅことかぁ。こいつは見逃せねぇ、一大事じゃねーかぁ。貴様らをかっさばいてから、そいつは持ち帰らねぇとなぁ」
すでにバジルはボロボロの状態。箱を持って震えるツナとそれを見つめているリボーン。その時、
「「やっほおぉぉ!」」
空から声が聞こえた。
バイカル湖とは
ロシアにある三日月型の湖。
水深の深さは世界一。
別名、「シベリアの真珠」もしくはガラパゴス諸島と並ぶ「生物進化の博物館」。
世界遺産にも認定されている。