「どういうことだ、骸」
「クフフ、あの時戦っといて良かったと初めて思いましたよ」
光努の姿をした骸。
ツナ達の前に現れたのは、骸に憑依された光努だった。
***
「ここは・・・」
檻の中。
光努は檻の中にいた。
黒曜ランド映画館の入口付近に来て、急に意識がなくなって気づいたらこの場所で目を覚ました。明らかにおかしな場所。現実では有り会えないような場所。
「ふむ、肉体を乗っ取られたか」
精神世界。
そんなものがあるのか知らないが、理由はわからないが、光努はこの状況にすぐに適応した。
分かりやすく動けない状態というのが檻となって現れたという感じに、光努は精神世界のような世界に囚われていた。
「これは多分・・・・骸だな」
大正解。檻の中でポツリとつぶやいた。
「ふーん、やりやがって」
光努は楽しそうに、にやりと笑った。
***
骸は光努と以前戦っていた。
その時、骸の三叉は最初の攻撃の時に一撃、傷を入れることに成功していた。
骸の剣で傷をつけること。それが、骸が憑依する条件。
あの時は憑依弾は一発しかな、使うことができなかったが、今骸は憑依弾を使った状態で目の前に現れた光努は剣で傷を入れられていた。
結果、光努は骸に憑依された。
「そういうことか」
「ええ、僕も驚きのタイミングで来ましたよ。正直彼をどうしようかと思っていた
ところでしたからね」
骸の憑依弾は別の対象に憑依してから自分に対象を戻したら効力がなくなる。
骸が獄寺達の体から離れ自分の体に戻ると思ったときに光努が来たのだから本当に骸自身にとってもナイスタイミングだった。
「僕は運がいい」
光努(骸)はツナに迫り拳を繰り出した。
ツナはすぐに対処して拳を手のひらで受けたが、
「くっ!」
「クフフ」
一瞬止まったが、ツナが後ろに押されている。
ツナは光努を見てみたが重傷ではない。所々焦げているがすべて軽傷。
ツナ多少の無茶しても大丈夫だと判断して攻撃にかかった。
体を横にして掴んだ拳を前にだし、そのまま回転するように裏拳を顔に放つが、光努(骸)は少し顔を後ろにそらして躱した。
「――餓鬼道」
技を奪い取る能力、餓鬼道を発動して光努(骸)は蹴りをツナに当てる。
そしてそのまま蹴りぬくと、ツナは壁まで吹き飛んだ。
ドゴオォン!!
派手な爆発音を出して壁を崩壊させてツナは叩きつけられた。
「ほぉ、正直僕も予想以上の威力でしたよ」
(餓鬼道か。光努の力はあまり知らねーが、マフィアランドで見せた力から見ても相当だな。ツナ・・・・・)
「クフフ、もう終わりですか?」
「まだだぜ骸。光努の体・・・・返してもらう」
煙の中から立ち上がったツナは、額に当てていた手を外すと、両方のグローブに額のものと同じ炎が灯った。
「わかってきたみてーだな、グローブの意味が」
「クフフ、正直勝つのは無理だと思いますよ」
(それにしても、この白神光努の体・・・・おかしい)
憑依弾の憑依は他人の肉体を乗っ取って戦う弾。
なので自分とは違うからだに入って動かすため、わずかに違和感が生じる。
それでも同じ人間の体を操るのだから違和感はほんの小さなもの。さらに餓鬼道によりその肉体の本人と同じ動きが可能である。それでもある程度の違和感がある。
触れればわずかだが必ず摩擦が生じるように、憑依にも多少の違和感があるのだが、
(この体には違和感がまるで感じられない。まるで自分の肉体に入ってるように・・・・・・。一体どういうことでしょうか・・・・)
今の骸には都合のいいことだが、どこか納得できないでいた。
(ま、それは後で考えるとしますか。今は・・・)
眼前のツナは額と両手に大きな炎を灯してたっていた。
「
「クフフ、いくらオーラの見てくれを変えたところで無意味ですよ」
「死ぬ気の炎はオーラじゃない」
「ほう。ならば見せてもらいましょうか!」
光努(骸)はツナに接近し拳のラッシュを放つ。
それをツナは紙一重で躱す。
そして、炎の灯ったグローブで光努(骸)の腕を掴んで拳を止める。
(熱い!オーラが熱を帯びてる!!)
すぐに腕を放して距離をとり、蹴りを繰り出そうとして
ピタ。
「!」
「どうした?」
ツナの拳を喰らって吹っ飛ばされる。
(?骸の動きが一瞬止まった。どうした?)
「これは・・・」
「余所見をするな」
吹き飛ばした骸の背後にツナはいた。
(いつの間に後ろに!)
そのまま炎の拳を背中に喰らう寸前、体をひねり躱す。そのままこちらから仕掛けようと拳を構えたが、
(!まただ!体が思うように動かない!)
そのまま避けることもできずツナの攻撃を喰らう。
「ガハッ!・・・く!」
確実に、光努(骸)の動きが鈍くなっていた。
(これは・・・まさか!・・・・・)
「終わりだ」
背後に一瞬で現れたツナは、手刀を光努(骸)の首の後ろに落とした。
いや、落としたはずだった。
だがそれは、手を後ろに回した光努によって止められた。
攻撃を止められたツナの超直感は、何かを感じ取った。
「!・・・・光努!」
「正解。よう、ツナ。少し様変わりしたな」
いつの間にか、光努の右目はいつもどおりの目に戻り、楽しそうな笑みをしていた。
***
「檻壊していろいろしたら肉体を取り戻した」
「・・・・光努、でたらめだな」
「ランチアは記憶がなかったって言ってんじゃなかったのか?」
「ランチアって影骸か。それにしても一体何が起こったんだ?」
リボーンはこれまでの経緯と骸と憑依弾について光努に説明した。
「ふーん。憑依か。なるほど、納得だな。じゃ、灸を据えるか・・・・・・・なあ?骸」
暗がりのステージの方へと、光努は話しかけた。
コツコツ。
クツ音。誰のかは聞かなくても、ツナもリボーンも光努もわかっていた。
「クフフ、これはどういうことでしょうかね。白神光努」
六道骸。憑依弾を撃った時に出来た傷が額から血を少し流していた。
「何がだ?」
「僕の憑依を強制的に解除。こんなのは初めてですよ」
「目論見が外れたみたいだな。だが俺の体を使った代償は支払ってもらおうか」
「ほう、何を要求するつもりですか?」
「そうだな・・・そういえばまだ見てなかったな」
「?」
「お前の力。5番目の能力、人間道」
そう、骸はこの戦いで六つの能力のうち、天界道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の5つは使用したが一つだけ使用していない能力がある。
それが人間道。
人間の住むこの世界を表す。
だが骸は語る。他の5つの冥界よりも、この世界が一番酷い。
人間道は最も醜く、とても危険な世界。だからこそ骸も使用を避けたかった。
「ですが、こうなってはしょうがないですね」
骸は人間道を瞳に写しだした。
それと同時に、骸からどす黒いオーラが吹き出してきた。
「最終手段、つまり切り札か」
「さあどうしますか。なんなら二人まとめてでもいいですよ」
先端のない棒を構える骸。
「・・・・・・・」
「ツナ、ちょっと待ってろ」
「どうするつもりだ?」
「骸、前回の続きしようぜ」
「クフフ、いいでしょう。かかってきなさい」
「行くぜ」