ピク!
「今の・・・・・銃声か?」
ラッシュ達と別れ、ツナ達を一人で追いかけながら、光努はふとつぶやいた。
***
光努がラッシュ、考魔と戦っているとき、ツナ達は骸の元へと来ていた。
骸の脱獄囚仲間のMM、バーズ、ヂヂ&ジジ、そして骸の影武者であるランチアをどうにか倒した。
そして骸の本拠地、3階の映画館で本物の六道骸と対峙した。
骸の能力によって追い詰められたが、後からあらわれた雲雀恭弥と獄寺隼人の二人。
雲雀恭弥はドクターシャマルによって『桜クラ病』という桜を見るとフラフラになるという不治の病をかけられていた。そのため骸は手っ取り早く、近接格闘で互角の雲雀を潰すため、地獄道の幻覚で桜を再現した。
だが、その油断から雲雀の攻撃を食らってしまった。
事前に合流していた獄寺に特効薬をもらっていた雲雀は病気を治したことにより、桜を見ても平気な状態となっていた。
結果として、骸は雲雀に攻撃を受け倒れた。雲雀も力つき、倒れた。
そして拳銃を取り出して、自らの頭を撃ち抜いた。
それで終わりのはずだった・・・・・。
***
「どういうことだ、憑依弾は禁断のはずだぞ。どこで手に入れやがった」
自らを撃ち抜いた骸。そのまま倒れたがビアンキがツナを攻撃した。
そしてビアンキが倒れて獄寺がツナを攻撃した。
まるでバトンリレーのように倒れては別の人物がツナを攻撃する。
そして現在、ツナを攻撃した獄寺の右目には、骸とおなうじ「六」と刻印された赤い瞳が・・・・。
「クフフフ、気づきましたか。これが特殊弾による憑依だと」
「え?特殊弾って死ぬ気弾や嘆き弾のこと?」
ちなみに嘆き弾とは。トマゾファミリーに伝わるという、撃った人物を嘆き状態にして卑屈になった人物は周りから同情を買うという効力がある。別段他人に興味のないようなやつには効かない弾なのだが。
「そうだ。憑依弾はその名のとおり、他人の肉体に取り付いて操る弾だぞ」
「なんだってー!!」
その昔。
エストラーネオファミリーとよばれるマフィアが開発した特殊弾。
画期的な発明だったのだが、使いこなすためには強い精神力、そして何より弾自身との相性の良さが必要とされていた。死ぬ気弾も自分が後悔をしないとそのまま死んでしまうかもしれないというリスクが存在するが、憑依弾も弾に拒否されたのならそのまま死に至るかもしれない危険な弾。
憑依という特性上、使用方法があまりにも酷く、他人の肉体を乗っ取って犯罪を犯すものも多発したためにマフィア界で禁弾とされ、弾も製法も葬られたとされていた。
「マインドコントロールの比ではありませんよ。操るのではなく乗っ取るのです。そして頭の頂辺からつま先まで支配する。つまりこの身体は・・・・・・・・・・・・僕のものだ」
そう言って獄寺に憑依した骸は自らの体に傷をつけた。
「や・・・やめろ!!」
「さあ、次は君に憑依する番ですよ。ボンゴレ10代目」
「な・・俺!?」
「やはり、お前の目的は・・・・・」
「クフフ、目的ではなく手段ですよ。若きマフィアのボスを手中に収めてから僕の復讐は始まる」
「な・・・何言ってんのー!!俺はダメダメで・・・いいことないって!!」
自分が狙われていると知って自分はダメだとパニックになりながらアピール(?)するツナ。半端なくビビってるのがよくわかる。
「奴の剣に気を付けろ。あの剣で傷つけられると憑依を許すことになるぞ」
「そ・・そんな!」
「よくご存知で」
獄寺(骸)は持っていた剣を投げるとその場で倒れこみ。
「その通りです」
倒れていたビアンキが立ち上がり剣を受け取り、倒れている雲雀に剣で傷をつけると倒れこみ。
「ま・・まさか、雲雀さんの中にまで!!」
ふらりと雲雀が立ち上がり、持っていたトンファーでツナを殴り飛ばした。
バキ!!
「がっ!」
どさっ!
だが、殴った勢いのまま倒れてしまった。
雲雀の体はすでに限界に近いほど傷つけられていた。一度目の襲撃の時に骸の用意した桜によって戦闘不能状態のままあっけなくやられ、その傷のためすでに立ち上がることすらできなくなっていた。
雲雀に憑依した骸は倒れ、憑依を解いた。
「気をつけろ、また獄寺かビアンキに憑依するぞ」
「!」
立ち上がったのは獄寺。・・・・そしてビアンキ。
「獄寺君!え!?ビアンキも!?」
バキャ!
扉を破壊して入ってきたのは、雲雀と獄寺に戦闘不能にされた犬と千種。
二人ともボロボロの体だが、獄寺、ビアンキと同様に右目に「六」の文字の入った
赤い瞳があった。
「骸が四人!!」
「四人同時に憑依するなんて、聞いたことねーぞ」
「それだけでは、ありませんよ」
獄寺(骸)が使ったのはダイナマイト攻撃。
千種(骸)が使ったのは仕込みヨーヨー、ヘッジホッグによる攻撃。
ダイナマイトの爆発に、ツナはなんとか逃げ回り、
ヘッジホッグの針による攻撃に、リボーンは上着を盾にして針を防ぐ。
「第二の道、餓鬼道は・・・・・・技を奪い取る能力」
今の骸には、憑依した獄寺のダイナマイト、ビアンキのポインズックキング、千種のヘッジホッグ、犬のチャンネルを全て使うことができる。
それに加え、骸個人の六道輪廻の能力も使うことが可能。つまりツナとリボーンは4人の骸と戦っていると言っても良い状態である。
地面から幻覚の火柱を出しながら、二人を追い詰めていく。
リボーンは今回の骸の犬に9代目の命により手出しができない。
だからツナには攻撃できるが骸には攻撃ができなく、避けるしかないのが現状。
だが、骸からの攻撃を避けるリボーンはまだまだ余裕そう。
それでもツナはめちゃくちゃ焦ってる。
「俺は手は出せねーんだ。ツナ、早くなんとかしやがれ」
「ひいぃ!!無茶いうなよ!!俺のなんとか出来るレベル超えてるよ!!」
「俺の教え子なら超えられるはずだぞ」
「そんなメチャクチャな理屈ってあるかよ!?」
「クフフ、先生は焦っているのですよ。生徒の絶体絶命の危機に、支離滅裂になっている」
会話をしながらビアンキ(骸)はリボーンにポインズンクッキングで攻撃を仕掛ける。リボーンはそれを飛んで躱す。
「ウソじゃねーぞ。お前の兄貴分のディーノ超えてきた道だぞ」
リボーン曰く、リボーンの相棒の形状記憶カメレオンのレオンはある時しっぽがちぎれてる。その際、リボーンの生徒、昔ならディーノ、今ならツナに絶体絶命のピンチが訪れるという定番のお約束みたいなことがあるらしい。
かつて、ディーノが生徒だった時も絶体絶命のピンチが訪れ、見事にその試練を超えたとき、"へなちょこのディーノ"から"跳ね馬のディーノ"に成長したという。
「なったって・・・意味わかんねーよ!だいたい俺は、」
「上だぞ」
ドガガン!!
「がはっ!」
ダイナマイトの攻撃をくらい、ツナの体はすでにボロボロ。
爆風に吹き飛ばされ床に叩きつけられる。
「さあ、おしゃべりはこれくらいにして終わりにしましょう」
「死ぬ気の炎!」
千種(骸)は右目を「四」の修羅道にし、剣を構えて座り込むツナに迫った。
ドサ!
ツナの元へつく前に千種(骸)は倒れた。
そのまま手放した剣は床を滑って犬(骸)が手にとった。
憑依弾は相手の身体、敷いては精神を乗っ取る特殊弾。
骸はいくら憑依した人物越しで傷を負おうが痛みを感じない。
いくら傷を負って出血しようが、まだ動く範囲内であれば骸は無理やり動かすことが可能。だがあまりにも怪我が多く、肉体が壊れてしまっては憑依していようが動くことができない。
千種(骸)は怪我をして血を流しているが、まだ動かせるのか、フラフラとしながら立ち上がる。
「ああ、無理やり起こしたら怪我が・・・」
「クフフ、平気ですよ。僕は痛みを感じませんから」
そう言った千種(骸)の顔と体には、多量の血が流れていた。
だが自分には関係ないとでもいうように笑っていた。
「何言ってんの!仲間の体なんだろ!!」
「違いますよ、憑依したら僕の体です。こわれようが 息絶えようが僕の勝手だ」
その言葉にツナは絶句した。
人を人として思わず、仲間を仲間と考えない骸に。
「そんなの・・・おかしいよ」
「他人の心配をしている暇があるんですか?」
ツナの後ろに立つ獄寺(骸)とビアンキ(骸)からも明らかに軽傷ではない傷が。肉体の方も限界に近づいているのか、骸は平気でもフラフラと立っている。
「たのむ!やめてくれ!このままじゃ死んじゃう!」
すでに立っているのも限界の獄寺達の体をこれ以上酷使したのなら、それこそ重傷では済まない事態になる。
そして骸は思いついてしまった。
光努がラッシュ達と戦っている時にツナたちが戦ったバーズ。
彼は並盛町に刺客を放ち、京子とハルの二人を人質に、ツナを殺そうとした。
ツナは友達のため、自らその要求を受け入れる寸前までいったが、その時事前にリボーンによって頼まれていた助っ人が現れ、刺客は倒され、人質は解放された。
人質。優しいツナは、人質を見捨てることができない性格。そこを突いた。
「いいですか?君の仲間をこれ以上傷つけられたくなければ、逃げずに大人しく契約してください」
「・・・そ・・そんな」
「やまり迷うのですね。どのみち君のような人間はこの世界では生き残れない。ボ
ンゴレの10代目には不適格です。さあ、体を明け渡してもらいましょう」
剣を持った犬(骸)が迫る。
「どうしよう・・・・リボーンどうしよう!!」
「俺は何もしてやれないぞ、自分でなんとかしろ」
「そんなぁ、いつも助けてくれるじゃないか!見捨てないでよリボーン!!」
バキ!
ツナに蹴りを繰り出して向き合うリボーン。
「情けねえ声だすな。おまえは誰よりもボンゴレ10代目なんだ」
「!?」
「お前の気持ちを吐き出せば、それがボンゴレの答えだ」
「クフフ、家庭教師もサジを投げましたか。彼の気持ちは"逃げ出したい"ですよ。
それとも"仲間のために逃げられない"・・・かな?」
「骸に・・・・・・勝ちたい・・・・・」
ポツリとつぶやかれたツナの言葉。
「ほう、これは以外ですね。だが続きは乗っ取った後でゆっくり聞きましょう。君の手で仲間を葬った後でね」
「・・・・・・こんなひどい奴に負けたくない・・・・」
静かだが確かな言葉。骸を許せないという気持ち。
「こいつにだけは勝ちたいんだ!!!」
そこには確かな意思が込められていた。
カッ!
その時、リボーンの背で丸くなっていたレオンが飛び出し、光りながらまるで繭のように体から糸のようなものを部屋全体に飛ばした。
「!」
「うわぁ!」
「ボンゴレ、何をした!」
「俺は何も・・・・・あっ!レオン!!?」
突然のレオンの変化に、リボーンは「羽化した」と言った。
「あの時と一緒だ、ディーノが"跳ね馬"になった時とな」