特異点の白夜   作:DOS

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『VS襲撃者②―慣れた―』

 

 

 

ラッシュ&考魔の戦略はありえないような攻撃で隙をつくこと。

骸からの情報により、正面からの攻撃は防がれる可能性が高いことにより、今回はいくつもの爆弾付きの刃と爆発弾(ボム)による超火力攻撃。それも虚をつくように刃先から出した爆弾と、普通の銃弾に見せかけた爆弾。

 

光努は先ほどの閃光弾(フラッシュ)から今度の銃弾も何かあると予想をしていたが、一度跳弾したことによりこの考えを捨てた。爆発したり閃光を出したりするような弾なら、ぶつかった瞬間に効力が発揮するからである。

 

だからこそ、今回は光努は隙を突かれた。

 

ラッシュと考魔は光努の読みを惑わせたのだ。

 

周りが煙で立ち込める中、上空にいたラッシュは地面に着地した。

 

「考魔、あいつは中か?」

 

『ああ。サーモグラフィーで見たらまだ煙の中。確かに爆発の直撃を受けたはずだが・・・』

 

さすがの光努も今の爆撃には無傷で済まないはず。

 

考魔が使ったのは跳爆弾(リフレクトボム)。外郭と内郭の構造上、一度だけの跳

弾を可能にして二度目の着弾時に爆発させる銃弾。普通に撃つ分には最初のあたりで爆発しないので使えないが、跳弾させて方向転換させ爆発させるのにもってこいという銃弾。

 

光努は銃弾の特性を一つだけと考えた。考魔の持つ銃弾にはぶつかった瞬間爆破する爆発弾(ボム)や威力を殺して跳弾しやすくした跳躍弾(ジャンプ)、閃光を放出する閃光弾(フラッシュ)など数多く存在する。

 

光努も考えなかった。まさか二つ、跳弾と爆発の特性を持つ銃弾があるということを。注意深く様子を探るラッシュと考魔。

 

ちなみにサーモグラフィーは人の体温を感知して画面上に映し出す機械なので光努の居場所は煙の中でも正確に分かる。

考魔から見て光努は煙の中でしゃがみこんでいた。

 

「ふぅ。ギリギリセーフか」

 

「!やっぱり、ていうかなんてタフなやつ」

 

『それでもダメージは与えられたみたいだな』

 

片膝をついて腕をクロスにしてガードの態勢をしている光努。

だが無事とは言えず、服の所々は煤けて黒曜の制服の上着に至っては下半分ほど燃えていた。光努自身も焦げた跡が見える。

 

「この制服が衝撃吸収素材と耐火繊維でできてなかったらシャツもこげていたな」

 

「なんでそんな制服来てんだよ!ていうか最近の制服はそんなに高性能なのか!?」

 

「最近の制服をなめるなよ。もらった制服を改造して作り出した俺の制服に死角な

ど存在しない」

 

「今改造って言ってよな!正規品じゃねえのかよ!」

 

「そりゃそうだ、こんな制服。日頃から学校で銃撃戦でもない限り防弾とか耐火と

かの機能なんか必要ねえよ」

 

「・・・・・・」

 

『まあなんにしてもまだ仕留めてないってことだな』

 

「そうだな」

 

光努は立ち上がって汚れを落としつつ、首をコキコキと鳴らして軽くストレッチし終わる「ふぅ」と息を吐く。

 

「そのナイフ。どんな仕組みだ?」

 

「これは蜃気楼剣(ミラージュナイフ)記憶剣(メモリーダガー)。両方合わせ、計21の機構を持つナイフだ、いいだろう。これまで見せたのはたったの3つ。まだ行くぞ」

 

チャキ。

そう言ってナイフを構えるラッシュ。

 

「いいぜ、そっちの狙撃手は?」

 

グッ。

そう言って拳を握る光努。

 

「蔵見考魔。あいつは今回援護一択だからな。それでももっと派手にやってやるぜ」

 

「そうか!」

 

一足でラッシュに接近して拳を振るった。ラッシュは予想通りと言わんばかりにその場にしゃがむ。

 

通常よけられないであろう光努の拳だが、事前情報が効いているのか、ラッシュは避けることができた。

 

「はぁ!」

 

避けつつナイフを横に薙ぐように振るうとナイフの刃が伸び光努に向かった。

 

「そりゃ、飽きたぜ?」

 

「そうか、じゃあこれはどうだ?」

 

光努がナイフを避けるとラッシュは後ろに下がり腕を振るった。ナイフの長さを変えても明らかに届かない距離。だが、

 

シュルルル。

 

「うおっと!」

 

ナイフの柄からワイヤーが伸び、そのワイヤを掴んで鞭を振るうようにナイフをを当てに来た。

 

ヒュヒュヒュ。

巧みにワイヤーを操り、光努にナイフを当てにかかる。

 

ガシ!

 

だがそこは光努。あっさりとナイフを止めてしまった。

その瞬間。掴んだ光努の腕に向かって銃弾が放たれた。

光努の腕に向かってまっすぐ飛んできた銃弾は、ワイヤーを掴んで止まった光努の腕に当たると思われた。

 

ドッ!

 

「『!!』」

 

光度の腕には銃弾は当たらなかった。銃弾が飛んできた瞬間、ワイヤーを掴んだ方の手と逆の方の手を手刀にして側面から()()()()()!!

 

そう、素手で銃弾を打ち払ったのだ。

飛んでくる銃弾の威力のある正面ではなく、横から銃弾以上の速度で打ち払われた銃弾はそのまま地面にぶつかって停止した。今回は普通の銃弾を使ったゆえに何もアクションは怒らなかったのだが・・・・。

 

「おい。てめぇ、何しやがった」

 

「何がだ?」

 

「銃弾が素手で払えるか!何した!」

 

「お前は飛んでくる物体を払うこともできないのか?」

 

「な!」

 

「そろそろ銃弾には、慣れた」

 

(こいつ、音速で飛ぶ銃弾をキャッチボールの玉程度にしか考えてないのか!?)

 

光努にとっては、飛んできた野球ボールを横から力を加えて落としたようなもの。だが普通はできない。

 

ましてや考魔は今、狙撃用に狙撃銃を使っている。一般的な拳銃と比べて狙撃銃の弾丸の速さはおよそ3倍。その速度は音速を優に超える速度。

 

その物体を横から落とすことなどできようか?普通は触れることすら難しく、またできたとしてもはじかれる。だから難しいが避けるか、何かで正面から弾いたりするもの。それにある程度の硬度のある武器を持ち、力と速さのあるものなら可能かもしれないが、それでも素手でやる分には等に人間の枠を超えている。

 

「おらっ!」

 

「ぐっ!」

 

ワイヤーを引っ張って、ラッシュを上空へと上げた。

そのままワイヤーを放して跳躍し、ラッシュへと接近。そして殴る!

 

「う!!」

 

咄嗟に腕を出して防御をしたが、いかんせん光努の拳はパワーがある。

防御したまま地面に思い切り叩きつけられた。

上空にいる光努に向かって銃弾が放たれたが、ワイヤーを両手で掴んでピンと張り、銃弾を当てて防いだ。

 

そのまま地面へと着地と同時に、倒れているラッシュへと拳を振るう。

ドゴオ!!

 

「どうだ?」

 

「はぁ・・・・・降参だ」

 

自分の顔のすぐ横の地面に拳をめり込ませた光努に向かって、ラッシュはそう宣言

した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「考魔だっけ。お前まだ大丈夫なのに降参していいのか?」

 

「いいんだよ。依頼なんて、まあまあで完了しとけば」

 

気だるそうに岩に腰掛けながらくつろいでいるのは先程までラッシュと共に光努と戦っていた狙撃手、蔵見考魔。

 

ラッシュと同じ迷彩柄の帽子と服装、少し長めの黒髪を後ろで一つに縛り、狙撃銃を肩から下げいる男。

 

あの後、ラッシュがした降参宣言に考魔も同意して狙撃地点からバイクで光努の所まで来た。

 

「ラッシュ、そんなんでいいのか?」

 

「何か言ったら精一杯やりましたと言うだけだ」

 

「すごいなそれは・・・」

 

ラッシュと考魔は骸に雇われた傭兵のようなもの。

今回骸に光努を仕留めて来いと頼まれていたのだが、

 

「あれは絶対に無理だなって思ってる顔だな」

 

「そうだな、なんか胡散臭い笑顔してたし」

 

「骸の信用ガタ落ちだな・・・・」

 

その後、骸の愚痴、敷いては脱獄囚どもの愚痴をつらつらと話してきて光努も苦笑いで返していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 


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