一方その頃、ツナ達はMMと交戦中。
襲撃者は男性。
かぶっている帽子、シャツ、ズボンは全て迷彩柄の男。
帽子の中から金髪の髪がはみ出し蒼い瞳をした推定年齢10代後半くらい。
上から黒曜の制服を羽織っていたが、すぐに脱ぎ捨てた。
その姿はまるで軍人のようだった。
右手には先ほど光努に仕掛けた妙な形状のナイフが握られていた。
通常のナイフから刃が伸びて剣並の長さとなったナイフが。
カシャン。
少し手を振ると、先ほどのナイフは元の長さへと戻った。
「やりあう前に一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
狙撃が止まっている。男の耳にインカムが付けられていることからここでの会話は狙撃手にも聞こえているらしい。
「お前、名前なんての?」
「俺の名前はラッシュ・ギナ。悪いが骸に言われてね、ちょいと始末してくれってさ」
「あれ?あいつ会いたがってたって聞いたけど」
「俺らが来たからよろしくってさ」
「そうか、つまりお前ら突破して来いと」
「そうともいうかな、まあなんにしても」
そう言ってラッシュはナイフを構える。
「悪く思うなよ?」
「当然」
ビュッ!
突き刺してきたナイフを光努は左に躱そうとしたが途中でやめて後ろに下がった。その瞬間光努の左側に弾が飛んでくる。
(銃で避け道を塞いでナイフ攻撃か。面倒だな)
カチリ、カシャン。
「うおっと!」
突き刺してきたナイフをバックステップで避けたが、またナイフの刃が伸びてきた。後ろに下がった状態から上体をさらに後ろにそらしナイフを避け、そのままバク転をして一旦距離をとって着地した。
「らっ!」
着地と同時にラッシュがピンを口で引き抜いた手榴弾を光努に投げつけた。
だがそこは光努。投げつけてきた手榴弾を掴んで投げ返そうと手を伸ばしたら、手榴弾が狙撃された。
ドゴオォン!!
結果、手榴弾は目的に当たる前に爆発した。
『どうだ、ラッシュ?』
「多分まだだな。骸の話じゃ、随分と人間離れしてるみたいだからな。ほら」
通信機に話しかけていたラッシュが上を向くと、爆発で生じた煙の中から光努が上空に飛び出してきた。
タアァン!
上空に飛んだ光努に向かって狙撃手からまたもや銃弾が飛んできた。
光努に当たると思いきや、
カッ!!
「な!(銃弾型の閃光弾!しまった、目が!)」
そのまま墜落して着地は無事にする光努。だが至近距離で閃光弾を食らったことにより目を伏せる。
この閃光弾の目的は一時的な失明。
相手の戦略。
この場で戦っているのは光努と二人の人物。
ラッシュともう一人、
通常攻撃なら骸の修羅道でさえ、ほぼ躱す光努。ならばどうするか?
予想外の事態を連続で起こして隙を無理やり作る作戦。
ラッシュのナイフ。そして手榴弾を打ち抜く。さらに銃弾型の閃光弾による一時的失明。結果、光努現在地面に膝をつけ、手で目を伏せていた。
『ラッシュ!』
「あいよ!」
ラッシュは光努に素早く接近してナイフを振るう。
むき出しの刃が、光努に迫る。
タアーン!
それと同時に狙撃音!光努に向かって銃弾が飛んできた。
銃弾より早くナイフの刃が光努に迫った。
「!」
カッ!
光努は目を開いた。そのままナイフをふるって来たラッシュのナイフを躱し、ラッ
シュのナイフを持つ腕を掴んで少し引っ張るように動かすと、
キン!
「『!』」
ラッシュのナイフに狙撃銃の弾丸が当たった。そしてはじかれた。
「はっ!」
いきなり持っていたナイフに銃弾が当たり、衝撃が加わったことにより一瞬態勢を崩したラッシュを光努は上空へと蹴り飛ばした。
「ぐっ!(こいつ!何をした!?」
蹴られたラッシュはそのまま木の上に着地した。
蹴られた箇所を抑えつつ光努を上から見る。
『大丈夫かラッシュ』
「ああ、なんとかな」
『
「確かに・・・」
『それに・・・・撃ってくる場所を読んでるな』
「おいおい、化物かよ・・・・・」
光努は立ったまま木の上にいるラッシュに視線を向ける。
「ふぅ、視力問題なし。そろそろ俺から行くぞ」
「・・・・・面白いじゃん。考魔、援護頼んだぜ!」
『任せろ』
ラッシュは懐に、ナイフを持っていない方の手を入れた。
***
黒曜ランド中央のレジャーランド内。骸の本拠地。
その中の一室で獄寺に負傷された柿本千種とボス、六道骸が話をしていた。
「骸様、彼らは今どちらに・・・」
千種の言う彼らとは骸、犬、千種の三人の元へやってきた援軍。
少し前、光努達がこの黒曜ランドへ来る前、骸たちの元へ数人の人間がやってきていた。今回は骸達の仲間ということで全員黒曜生の制服を着ていく。だからといって皆中学程の年齢というわけではないのだが。10代のものもいれば20代、ましては30代の者もいる。
「MMは先ほどやられたようですね。今沢田綱吉達がバーズと、そして白神光努はラッシュ、考魔の二人と交戦中みたいですね」
「そうですか・・・・・あの二人は何者ですか」
骸達の援軍とは、骸達の脱獄の際に一緒に脱獄してきた者たちのこと。その中に千種の記憶ではラッシュと考魔の二人はいなかった。
「僕がこちらに来る前に知り合いましてね。元傭兵のようなものですよ」
「そうでしたか」
「あの二人なら、もしかしたら白神光努も倒せるかもしれませんね」
「お会いにならなくていいのですか?」
「クフフ、まあ今度こそ消すつもりでしたからね。ここで消えてくれたのならラッキー・・・ってところでしょうか」
「・・・・・」
(そう・・・・・・それなら幸運なんですけどね)
にやりと骸は笑うのだった。
***
シャッ!
ラッシュが懐から取り出したのはもう一本のナイフ。
これでラッシュの両手にはナイフが一本ずつ握られた。
(同じナイフ、双剣。これがラッシュの全力)
「――――――
木から飛び光努の上空へと飛び出した。
光努は狙撃を警戒しつつ上空のラッシュを見上げる。
ヒュヒュッ!!
ラッシュがナイフを振るうと先端からナイフの刃先が外れ、光努に向かって飛び出した。とんできた2本の刃先を掴もうとして光努は何か感じたのか、後ろへと下がった。
ドゴン!!ドゴン!!
「爆発!あの刃先、爆弾か!」
飛んできた刃先が地面にぶつかった瞬間、爆発が生じた。火力が割と高め。
地面には少しえぐれたあとが残った。
「はあぁ!」
上空で身をひねる、回転するようにナイフを振り、刃先をいくつも光努に向けて飛ばした。
ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!
「危なっ!」
ターンターン!
(2発の狙撃音!だけど・・・・二箇所とも俺から外れてるな。わざとか?)
爆発を避ける光努の耳には狙撃音が聞こえた。
横目で見てみると、光努から数メートル離れた位置を通過してラッシュがさっきまで乗っていた木に向かって飛んでいった。もう一発はこれも光努から少し離れた位置、光努の横にある岩に飛んでいった。
(あの狙撃位置・・・跳弾!)
キキン!
(普通木とか跳ねるかよ・・)
光努の予想通り、木と岩にぶつかった銃弾は一度跳ねて方向を変え、光努に向かって飛んできた。俗に言う跳弾というやつである。
上から爆弾の雨。横からは跳弾による狙撃。
「まだだ!」
光努の手に握られていたのは小石。
避けながら拾った小石を手を振ることで上空へと投げつけた。
落ちて爆発する前に小石にぶつかったナイフの刃先は、上空で爆発し、連鎖的に周りの刃先も爆発させた。
そして体をわずかにずらすと、二方向から飛んできた銃弾は、ちょうど光努を中心として鏡のように飛んできたことにより光努が中心からいなくなるとお互いにぶつかった。
「この狙撃・・・・距離が多少あるのと、あの爆弾の爆発の後に入っていくように撃たれたから避けられ」
『
カチン。
「!」
ドゴオオォオ!!
まるで鏡合わせのように跳弾した銃弾同士が正面からぶつかり、光努の至近距離で爆炎を上げた。