特異点の白夜   作:DOS

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元々更新が定期的なこの『特異点の白夜』でしたが、少しHUNTER×HUNTERの方でも昔の話を投稿していたので、やっぱり定期的な更新です。でもまだ終わるつもりは一応無いです。
一応HUNTER×HUNTER原作の『消す黄金の太陽、奪う白銀の月』も見て見てください。

そんなわけで後日談です。


『エピローグ・イリス』

 

 

 

「たっだいまぁ!灯夜―!帰ったよー!」

 

広大な敷地の中央に建つ建物の扉を開き、快活な元気な少女の声が響いた。

某所、イリスファミリー本拠地母屋の中に入る影は3つ。軽快に靴音を鳴らす少女の後に続いて、二人の男がその後に続いて母屋へと入った。

 

「リル、あまり叫ばない方がいい。また傷が開くよ」

「安心しろコル。一先ず傷は塞がったからよっぽどの無茶が無い限り大丈夫だろう。しばらく本調子の戦闘は安静だが、叫ぶだけならいくらでも叫べばいい」

 

若干の面倒くさそうな声色の男、ルイはてくてくと歩き、すぐそばにあったソファにどっかりと座り込み、一息吐いた。10年前の時点では果てしなく面倒くさがりな彼が、ここまで普通に歩いて移動を重ねることができたのは、この10年の成長の賜物と言えるだろう。

 

一足飛びで過去から未来へ来た光努的には珍しい物ではあったが、同じように成長を重ねた未来に住む人間たるリル達にとっては、もはや過去の非日常は、未来の日常の一部となっているのであった。

 

バン!

 

「帰ったか、3人共」

 

静寂をぶち破るような音という一般人ならびくりとするような演出にも、リルとコルとルイは微動だにせずに音源の方へと顔を向ける。

 

静謐な声音と共に扉を開いて現れたのは、灯夜だった。勝手知ったる顔だが、リル達3人は珍し気に顔を少し驚かせる。

 

原因は2つ。

 

普通ならあまりしないような足でけり飛ばして扉を開けるという、無駄に荒っぽい方法。

そしてもう一つは、その恰好、出で立ち。

 

いつも着ている黒スーツは上着を脱ぎ、白いワイシャツのみとなっているラフな格好だが、袖を肘までまくり上げ、さらに両手に持っているのは、なみなみと水の入ったバケツにモップと箒とチリトリ。

 

まるで今の今まで掃除をしているような姿。そして灯夜にしては実に妙な格好に、コルもルイも突っ込むべきかと迷っていたのだが、

 

「何その恰好。灯夜掃除でもしてたの?」

 

リルには割と関係なかった。

 

「見た通り、掃除だ。お前ら、俺は今からここを掃除するから、向こうの客間で休んでろ。おそらく掃除も終わってるはずだ」

 

有無を言わさない言葉だが、すぐに帰ってきたリル達に強制的に掃除参加をさせずにしっかりと休ませる辺り、流石と言ったところだろう。ファミリーを労わる事に関しては、中々に心得ているイリスナンバー2だった。

 

さっさと掃除に入りる灯夜を他所に、リル達はスムーズに扉をくぐって客間へと向かうのであった。

 

「そういえば灯夜はなんで掃除なんてしてるんだ?」

「そうだな、日本(ジャポン)では年末に掃除をする習慣があると聞いた事があるが」

「ルイ、まだ年末には2か月くらい早いよ?」

 

ちなみにヨーロッパでは春、中国では正月、モンゴルでは同じく年末に大掃除をするらしい。そしてアメリカに年末にも春にも大掃除の習慣は、無い!

 

窓から差し込む光が反射しているかのようにピカピカに磨かれた廊下を眺めていると、灯夜の仕事に対しての姿勢がよく見える。最も、なんで彼が使用人がしそうな事をしているのかはとてつもない疑問ではあるのだが。

 

「ところで、灯夜の口ぶりだと他にも掃除してる人がいるらしいけど、今って他に誰かいたっけ?」

「確か灯夜の他だと(ロウ)とラッシュに槍時。ああ、そういえばクルドと師匠もいたはずだったな」

「パパとママも!やった!」

「二人揃ってるなんて珍しいね。客間にいるかな」

「いや、母屋広いしそうそう出会えるわけ―――」

 

ルイの言葉が終わるよりも早く、リルは目と鼻の先に迫った客間へと飛び込んだ。

 

「パパ、マ………ま?」

「あ」

 

部屋に飛び込んだリルは、その場の時が止まったかの如く対面した人物と目を合わせる。同様に、相手も時が止まったかのように瞳を見開き、リルと対面した。

 

大海原を思わせるような蒼海色の長い髪を流し、同色の瞳は丸く見開き驚きに表情を染めていたのは、リル達より幾分か幼くみえる少女だった。

 

見た事ある顔だけになぜここに?という疑問が浮上し、そしてその恰好にさらに疑問符。

黒を基調としたロングスカートに純白のエプロンドレスとホワイトプリムを頭に装着した姿は、まさにザ・メイドと言うような出で立ち。数本の花を持って今まさに机の上の花瓶に入れようとしている姿は、家を守るメイドそのものだった。

 

そしてそのメイド姿の少女が元真6弔花という事実。

 

「ブ…ブルーベル!?何してるの!?」

「うにゅ!そういうあんたは確か………イリスのリル!?」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

じとりとした視線を浴びつつ、リル達はテーブルに着き、後ろからするりと燕尾服の男の差し出す紅茶をこくりと飲む。

 

ストレートでありながら、まろやかな甘さが舌の上を溶け、喉を通る。ほんわかとした気分に包ま―――

 

「無視するなぁ!!あんたら何呑気に紅茶なんか飲んでんのよぉ!だいたいなんでこんなところにいるのよ!」

「それはこっちのセリフだ、ブルーベル。自分の家に帰って何か言う事はあっても、何か言われる筋合いは無いな」

「うにゅぅ……何よ。あんた、私の邪魔したイリスのコルね………」

「まあまあ二人とも。今は同じイリスなんだから仲良くしてよ。お姉ちゃんからのお願い」

 

一瞬で険悪な雰囲気を作り出したコルとブルーベルの間に立ち笑顔を向けるリルは、確かに姉らしかった。

 

リルの言葉にコルは無表情ながら気を落ち着けたのか、椅子に座り直し目の前に差し出された紅茶をすする。その態度にも、ブルーベルはやはり不満げに頬を膨らませるのだった。

 

ルイも飲み干した紅茶を机に戻し、ざっと視線を動かして口を開く。

 

「それで、結局こんな所で何してるんだ?ブルーベルと………桔梗」

「おや、気づいていましたか。流石イリスに名高い科学者ルイですね。感服致しました」

「お前絶対馬鹿にしてるだろ」

 

背後から聞こえる柔らかい口調。

リルとコルも振り返ってみれば、そこにいたのは元真6弔花の桔梗。

 

黒い燕尾服に身を包み、手に持ったトレーには紅茶の入ったポットを持ち、静かに壁際にたたずんでいる姿はまさに本職の執事を彷彿とさせる佇まい。元々物腰の柔らかい桔梗には、中々にその姿は似合っていた。というかもしかして今執事してたりするのか?誰の!?

 

「何をしているも何も、並盛で私達を黒道灯夜に引き渡したのはあなた方ではないですか。今更何を」

 

やれやれという風に芝居がかったような桔梗だ、その姿も様になっている。

が、そんなことは当事者であるリルもコルもルイも分かりきっている。この質問の意図として正しいのは、なんで執事とメイド?だ。

 

「うにゅにゅ………これには深い深いわけがあるのよ!」

「黒道灯夜にこの屋敷の掃除の手伝いを頼まれましてね。一先ずこの格好で各自掃除をしていたところなんですよ」

「もぉー!桔梗!」

 

意味深な雰囲気を出していたが、あっさりと桔梗にばらされてブルーベルは憤慨した。そしてそのやり取りを、隣でリル達は笑って見ていた。そこでふと、コルは今更ながらに思い出して口を開いた。

 

「そういえば、なんで今掃除なんてしてるんだ?」

「先のイリスとミルフィオーレの戦いで、母屋含め敷地が汚れたので、戦いも終わったので心機一転、という意味合いも込めての清掃らしいですよ。ま、我々としては仕事が軽すぎて少々物足りないですけどね」

 

そりゃ今まで大規模破壊並みの任務しかしてこなかったのだから、マフィアと全く関係の無い掃除任務には軽いと言いたくもなるだろう。しかしながら、優雅に語る桔梗と裏腹に、ブルーベルは若干青ざめているのが少し気になった。

 

「どうしたの?ブルーベル」

「軽い?……ふふ、桔梗もとうとうダメになっちゃったんだ」

「ブルーベル?」

「これは掃除なんかじゃないわ……ある意味拷問よ!」

「どうしたのブルーベル!?」

 

突然ホラー映画の一幕のように叫び声をあげるブルーベルに、リルは驚き心配になってきた。一体何があればこうなるのか、そしてよくよくと見れば、先ほどまで笑っていた桔梗も、若干顔が青ざめている。一体何が!?

 

「黒道灯夜、あいつは鬼よ!.私達が人間を超越した存在である事を利用して、戦いが終わって今の今まで、私達不眠不休で掃除し続けていたのよ!」

 

驚愕すべきイリスの実態。それはコールタールのように塗りつぶされたブラック企業!

 

「いやいや、イリスは白夜の空もたじろぐ純白のホワイト企業だ。人聞きの悪い事を言うな」

 

と思ったら、ルイに反論された。

まあイリス傘下の企業を見て見れば、そこにブラックの欠片も無い事はすぐに分かるだろう。しかし、現状どろっどろのブラック任務(掃除)中のブルーベルと桔梗的には、その言葉こそまさに反論したい一言。

 

「現状私達の状況的にその反論を聞き入れるのは難しいですね。では、このクマの正体をどう説明するのですか!」

 

びしりと擬音が付きそうに、自分の目の下を指さして見て見れば、確かにうっすらとクマができている。元真6弔花のリーダー桔梗にここまで働かせる灯夜って一体。

 

そして疲労がピークに差し掛かっているのか、若干桔梗のテンションと口調が壊れ始めている気がした。

 

「そういえば二人以外は?ザクロとデージーと。あ、トリカブトとGHOSTはいないんだよね確か」

 

GHOSTは光努によってこの世界の炎へと還され、トリカブトは本体の仮面をリルによって両断され、この世に未練を残す暇も無く消された。この場にいる二人以外では、後はリルの言う通りザクロとデイジーも一緒にここに来ているはず。姿が見えないので、同じように他の場所を掃除しているか、はたまたそれとも。

 

「ザクロは熱中症でちょっと前に倒れたわ」

「待って、僕は今何かすごくおかしな言葉が聞こえた気がする。桔梗、もう一回お願い」

「ザクロは熱中症で倒れましたよ」

「………できれば聞き間違えであって欲しかった」

 

まさかマグマ風呂で口笛を吹くザクロが、熱中症とは悪い冗談だ。どうやら掃除と言うちまちました作業が面倒そうだったので、外で木を切り倒したり瓦礫を運んだりと力仕事を重点的に行った結果、今に至ると。

 

「いやぁ、不眠不休に太陽の下での外作業の連続。実に悲しい事ですよ」

 

無駄に優雅に肩を竦める桔梗。心底心配しているのか面白おかしんでいるのか桔梗自身もテンションが変になっているか微妙な所である。

 

実を言うともう一つ原因がある。

彼ら元真6弔花がこのイリスの本拠地にやってきたのは、最終決戦が終わり割とすぐ。まあ簡単な事を言えば、疲労が取れていない。

 

「「「ああ………」」」

 

その言葉を聞いて、イリス組の3人は同情的な視線を向けた。

ただ疲れているだけではなく、GHOSTに炎も取られているので、その疲労は計り知れない。あれから時も経っているので多少は回復したが、全快と言われるとまた違う。こんな所で永遠と掃除をし続けていれば当然と言えるだろう。寧ろ今この場でまだ掃除をしていた桔梗とブルーベルに対して賞賛するべきだろう。

 

リルは自分の持ち物のバッグの中をごそごそと探り、中に入っていた日本土産のもみじ饅頭を二つ机の上の置いた。

 

「二人共、よかったらこれ食べて」

「優しくしないでよ!なんか悲しくなる!でも食べるわ!ありがとう!」

「喜んで頂きましょう」

 

即座に食べ始めるに、中々に疲れていたのだろう。ここまでくると、命じたであろう灯夜が鬼か悪魔じゃないかと思えてくる。

 

「灯夜って実は鬼かなんかじゃないかな」

「リルも言うときは言うね。ま、実際はそんな生易しい物じゃないけどね」

「どういう事?」

 

寧ろ魔王か何かだとでも言いたいのか?

そう思っていたら、客間の扉が開いて新たな乱入者。

 

「大変だぁ!デイジーもついに眠ったぁ!」

「あ、ラッシュただいま~」

「ああ、お帰り。一応無事そうだな………て、そうじゃなくて」

 

入って来たのは、ラッシュ・ギナ。リルやコルと同じ、イリス第二戦闘部隊『シャガ』の一員である男。

 

いつものように迷彩柄の服装だが、今は上着を脱いで黒いシャツのみとなっており、頭にはいつもの帽子では無く柄は同じ迷彩柄のバンダナが巻かれていた。その背には、彼も掃除担当である事が分かりやすいように、ゴミの入った籠が背負われていた。そして小脇に抱えるようにして、ぐったりとしたデイジーがいる。

 

「おや、不死身に定評のあるデイジーもついに倒れてしまいましたか。不死身なのに倒れるとは、これ如何に?」

「やっぱり桔梗も疲れてるわね。いつになくおかしいわ」

「いやいや、お前ら一旦休めよ」

 

ラッシュは苦笑いしつつ、抱えていたデイジーを空いているソファに寝かせる。

不死身の肉体を持つと言われるデイジーだが、流石に不眠不休労働には叶わなかったようだった。まあ今は元真6弔花のメンバーはリングを持たず、力のほとんどが激減しているのでこれも当然と言えば当然の結果と言えるのではあるが。

 

「ラッシュはよく平気だね。一番最初に倒れそうなのに」

「ひどい言い草。つーかこいつらと違って普通に適度に休んでるからな。当然だ」

「え?何それ元真6弔花めっちゃこき使ってるの?灯夜やっぱり鬼?」

 

まさかの自分の上司の実態に、リルは若干引き始める。元々仕事中毒(ワーカーホリック)の気が多い灯夜ではあるが、まさかここまでとは。しかし、リルの言葉にラッシュは、手をひらひらと振って軽く否定した。

 

「ああ、違う違う。別に灯夜は不眠不休の強制労働とかして無いから」

「え?じゃあ今のこの地獄絵図な現状何?」

 

働き過ぎてテンションがおかしくなった桔梗にブルーベル、熱中症になったザクロに疲れで倒れたデイジー。

 

嘗てのミルフィオーレファミリーを知っていたらありえない現実だ。そしてその現実を作り出したのは誰かと言えば。

 

「いや、そもそもブルーベルのせいだろうが」

「それってどういう事?」

「とりあえず冗談半分で灯夜が寝ずに働けって言ったら、ブルーベルが「上等よ!そんなのちょちょいのちょいだわ!」みたいな感じで言ったからその通りにさせられてるな。灯夜は有言実行だし」

 

(ブルーベル………)

(灯夜は本当に冗談半分だったのかな?)

(お腹すいたなぁ)

 

「な、なによ!その目はぁ!」

 

一人だけ場違いな事を考えているが、三者三葉で呆れていた。原因を探ってみれば、ブルーベルの負けず嫌いな言葉が原因だと。そして他の元真6弔花もそれに引っ張られていると。

 

「あ、ちなみに灯夜も寝ずに働いているぞ。あれサイボークか何かじゃないか?」

 

ラッシュの言葉に、さらにリル達は、苦笑いするしかなかった。

元真6弔花もそうだったが、灯夜も例にもれず疲れているはず。

 

灯夜含めイリスファミリー第一戦闘部隊『アヤメ』の海棠槍時、獄燈籠、クルドの3人に加えて、第二戦闘部隊『シャガ』のラッシュ。

 

彼らは白蘭と真6弔花が並盛を襲撃している間、ミルフィオーレA級兵士軍隊による襲撃を受け、それを迎撃していた。それはメローネ基地の数百倍の戦力と言っても過言では無い程であり、一マフィアであれば瞬く間に壊滅させられる程だろう。

 

が、逆に返り討ちにしてしまった。果てしなく恐ろしい。

 

主に前衛として敵の部隊を殲滅させた灯夜とクルドの二人が、最も恐ろしかったと言えるだろう。さながら敵は、魔王の降臨でも見たような気分だったと言われている。

そして、その戦いの後から今にかけて、元真6弔花と同様に灯夜も、休まず動き回っていると。

 

「灯夜もたいがいだね………」

 

先ほどコルが言ってた、鬼と表現する事が生易しい、というのが分かった気がする。

あそこまで行けば鬼じゃなくてサイボークがゾンビなのかもしれない。正直リルとコル、ルイなどイリス勢にとって、灯夜が疲れ果てている、という光景は中々想像できない物であった。

 

「なんだ、お前ら全員ここに居たのか。現場はどうだ」

 

ラッシュに続き、再び先ほどあった灯夜が戻って来た。相変わらずのスーツを着崩した掃除スタイルは今更だが、一体どうしたというのだろうか。

 

「ああ、灯夜さん。デイジーがダウンしましたよ。やっぱ俺達だけじゃきついですって。一旦休むかもう少し業者雇いましょうよ」

「ていうかここ広いんだしそうしなよ」

 

イリスファミリーの敷地は広い。

そして戦闘被害にあったのはおおよそ全域。破壊された建物多数、燃え尽きたり切り刻まれた木々多数、森もほぼ全壊、地面も抉れ、瓦礫が辺りを埋まる。母屋だけはほぼ無傷で残ったのは、そういう戦い方をしたからである。

 

そしてこの全域の瓦礫や木々の撤去が、一番大変。だから外作業だったザクロやデイジーも倒れたのである。

 

ラッシュの言葉に、灯夜もやれやれという風に溜息を吐く。

 

「しょうがない、伝手はあるから一度全域改築するか。それとも一度更地にした方が早いか」

「物騒な事いうわね、この男」

「ハハン。その方がいいのでは?我々の負担も軽減する事ですし」

 

割と物騒な提案も、真6弔花にとっては些細な事なのだろう。確かに瓦礫などをどかす手間を考えれば、全て消し飛ばした方が早いと言えるが。

 

「そんな事できるの?」

「籠に頼めば時間はかからないだろう。その後で新しく建てて整備すればいい」

「すごい計画内容がざっくりしてるね」

「よし、とりあえず全員休暇だ。暫く休んでいいぞ。数日したら再会する。ていうかほぼ限界だろ?」

 

その言葉に桔梗とブルーベルは心の中でガッツポーズした。ブルーベルのせいではあるが、それを鵜呑みにした灯夜も灯夜である。

 

「さてと、それじゃあ飯にするか。食堂に来い。今頃槍時が全員分作り終わってる頃だろうからな」

「やった!ブルーベルも、早く行こ」

「ちょ、待ちなさいよ!」

「それじゃあ行こうか。桔梗も。デイジーはまだ寝かせておこう」

「それがいいですね。空腹では無く寝不足が原因のようでもありますし」

「ラッシュ、ザクロはどうしてるんだ?」

「医務室で寝てるよ。ま、熱中症っていうよりこっちも寝不足だったのもあるし、少し寝たら戻ると思うぜ?」

 

何て事の無いやり取りをして、皆は部屋を出て食堂へと向かう。

 

嘗て真6弔花として、イリスにも攻め入った4人が、イリスのこの屋敷で働くとは不思議な事である。それもボスである光努がその場のノリでしたのかもしれないが、イリスの皆は割とそれを受け入れた。元々ミルフィオーレからのイリスに対しての被害がそこまで大きく無かったというのもあるが、それでも誰も拒まなかった。

 

元真6弔花の者達にとって、イリスが新たな主となるのかはまだ分からない。

 

それでも、今は皆笑い、同じ場所で暮らしているのだった。

 

今もイリスファミリー母屋の食堂から、楽し気な声が聞こえてくるのだった。

 

 

 

 

 

 




これで本当に未来編は終わりです。結局76話程もやっていました。
この後は日常編をしますが、その後の継承式はもう少し短くなるようにしたいと思います。

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