特異点の白夜   作:DOS

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そろそろ未来辺も終わりそうだな、と考え次の話を作っている最中。
話を作るだけ作ったけど設定上矛盾とかおかしな点ってあるかな?
あったらすみません、少しずつ改善していきたいと思います。

疑問感想ご意見ご報告、お待ちしてます。


『イノベーション・アライアンス・イリス』

 

 

 

 

白蘭は、眼下に見える光景に対して、相も変わらず金剛不快の笑みを浮かべていた。

 

絶対的な有利を確信し、絶対崩れない最高の牙城を築いた事に疑問を持たない。過信か慢心かと思う程の確信だが、そう思える程に、白蘭の策は滞りなく進んでいた。

 

己に絶対の忠誠を誓う配下である真6弔花と、敵対勢力であるイリス、ボンゴレとのルール無用の最後の戦い。そして戦いが佳境になる頃に投入される、ある種最も信頼する男、GHOST。その能力により、全炎を無差別に吸い尽くし、それはそのままこの世界に存在するGHOST、つまりは白蘭の元へと流れ込む。

 

元を辿れば同じ人間だからこそ、間に道具も距離も関係に無く、GHOSTの炎は白蘭へと直接流れ込む。

 

自分が二人いれば楽だ、だから連れてこよう。そんな安直な考えを実行し、平行世界の一つを潰してまで、技術的不完全な状態で届いたGHOSTだったが、最後はあっさりとやられたにも拘わらず、実にいい働きをしてくれた。元は同じ白蘭だったのであろうが、この世界に来た時点でそれは変わったのだろう。白蘭ではなく、GHOSTという名称を与えたのも、自分は別の存在である、自分の影であるという意味合いをつけたのかもしれない。

だが結果として、白蘭は万全のコンディションで最後の戦いに臨める。

 

広大な海を意味すマーレリングの適応者、白蘭には、果てしない程の容量、炎を取り込めるだけの才能があった。GHOSTが吸い込んだ匣、リング、人を問わない死ぬ気の炎の数々は、たった一人に集約されたにも拘わらずに、白蘭はそれを全て受け入れ、己の糧とした。

 

崩れない笑みを浮かべる白蘭の背には、二対の翼。

 

圧縮した死ぬ気の炎の塊なのだろうが、白蘭が求めたそういった理論的な答えでは無い。

 

それは象徴。この時点でより、人を超えた証であるという力の象徴だった。

 

そしてそれはある意味正しく、ある意味誤り。

 

この場にいる全員が、今は白蘭には足元にも及ばないだろう。単純に、GHOSTが吸い込んだ炎の量は一人一人から限界まで吸い上げる。現れた瞬間骸とXANXUSが一度攻撃を仕掛けたが、炎のほぼ切れた二人の攻撃を、白蘭は片手で振り払った。万全の状態ならいざ知らず、炎を吸われた状態で白蘭に立ち迎える者など、今はこの場にいない沢田綱吉一人だけだろう。誰もがそう考える。

 

が、ここで一つだけ誤算があるとするならば、彼の存在だった。

 

どこか白蘭と似通った、楽し気な笑みを浮かべる少年の存在。

 

イリスファミリーボス、白神光努は、上空に表れた白蘭の存在に、やはり、楽し気な笑みを浮かべる。

 

次の瞬間、白神光努は空中にいた白蘭の前へと、無謀に躍り出るのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あはは♪やっぱり君は思ったより元気そうじゃないか、光努君!ま、せっかく準備して来たんだから、他の有象無象と同じように地面に這いつくばるなんて、興覚めもいい所だけどね!」

 

「人を閉じ込めたり炎吸ったり、準備に随分と時間がかかるな。それでやっと人の前に表れたと思ったらフル装備。折角チョイスで俺とツナがいたんだからお前も出てくればよかったのに、そうすればバランスよかったのにな」

 

「しょうがないじゃん。あれってジャイロルーレットが勝手に決めた事だし、僕は不干渉だよ。第一僕が出れなかったに加えて、最高戦力であるボス自ら出場できたんだから、二人とも運はすごくよかったと思うけど。光努君は猶更だけどね」

 

「それでパンドラ送りにされたけど、なんかいいように利用された気分だなぁ」

 

 

ドオオォン!!

気づけば上空にいたのは、拳を振りぬく白神光努と、それを片腕で受け止める白蘭の姿だった。

 

さらに、追撃する光努の拳と、やはりそれを防ぐ白蘭。数度の攻防を繰り返しているが、そのどれもが銅鑼でも鳴らしたような鈍い音を響かせ、びりびりとした空気の振動を辺りにまき散らす。大地を抉り、木々を薙ぎ倒すような光努の拳を、白蘭は受け続けていた。

 

驚嘆すべきはGHOST襲来後の状況下においてもその猛威を振るう光努なのか、その拳を受け止める膂力を見せた白蘭なのか。どちらにしても化け物じみている。その戦いを観戦する眼下のボンゴレ、イリス、ミルフィオーレ勢は、全員同じ面持ちだった。

 

「あいつ、なんでGHOSTに炎吸われた後であんな元気なんだよ……」

「まあ光努だし」

「いやいや、どう考えもそれで説明つかないだろ」

 

既にこの場に集まってきていたリルの無条件に光努を信頼した発言に、同じく一先ずの治療を終えた獄寺は容赦なく突っ込む。この場合獄寺と同じ考えの人間の方が多いだろうが、リルと、その弟であるコル的にはそうは感じない。むしろ白神光努という人物の出鱈目さを知っているからこそ、今の状況が決して良い物とは考えなかった。

 

「光努、思ったよりパワーが落ちてる。白蘭一人吹っ飛ばせないなんて」

「なによ、びゃくらんの方が弱いっての~?」

「コルに賛成。多分この中でも結構炎吸われた方だと思うよ、光努」

「もぅ!何なのこの姉弟!むかつく!」

「ブルーベル落ち着いて。白蘭様が劣るかどうかはともかく、確かに白神光努は先の

GHOST戦で我々同様か、それ以上に炎を吸われているはずです」

 

無条件光努押しのコルを、こちらも無条件白蘭押しの真6弔花ブルーベルは実に子供らしく頬を膨らませて睨みつける。傍か見れば白蘭がGHOSTを使い両陣営全滅を図ったようだが、こうして今光努と戦っている様子を見ればまるで真6弔花を助けに来てくれたようにも見えるから実に不思議だ。

 

しかし桔梗の中では、既に白蘭の中に自分達の存在がいるかどうか疑問だった。

GHOSTという存在は知らされていた者の、その能力はあまりにも暴力的に、それこそ骸の推定した災害とも呼べる一つの現象。もしも光努がいなければ、今より被害は甚大だっただろう。炎を吸い尽くされ、死へと誘われていた者もいたかもしれない。

 

だからこそ、桔梗は冷静に今の状況を見る事が出来た。

白蘭への忠誠は変わらない。だが、白蘭はどう思っているのか。それに、光努はやはり弱体化している。

 

最もGHOSTの近くで体を張り、最もGHOSTを止めた男。

 

例えGHOSTの光の触手を直接体に受けなくても、GHOST本体がいるだけで引力のように炎を引き寄せる。実際、光努がGHOSTのそばにいる時も、普通にフィオーレリング、それに白虹(デア・イリス)からは炎が徐々に抜かれ続けていた。

 

(故に……恐ろしい)

 

たらりと、桔梗の額に冷や汗が流れる。

もしも光努が万全の状態であったのなら、今互角の攻防を繰り広げている白蘭は、あっという間にやられていたのではないのだろうか?

 

桔梗はその考えを一瞬考え、頭を振るう。一瞬とは言えば、主の敗北を認めるような事はならない。

 

例え白蘭が裏切ろうとも、根柢の揺らがない誠の忠誠心は、再び戦いを瞳に映す。

 

その攻防は、やはり常軌を逸していた。

 

 

ドオオンン!

 

 

再び爆音を響かせ、光努の拳と白蘭の手の平がぶつかる。

じりじりと互いに力を込め合いながらも、楽し気に二人は笑みを浮かべていた。

 

「お前、もう少し絡めて来るタイプかと思ったら、意外とパワータイプだな。正直俺腕力

には結構自信あったんだけどなぁ、ちょっとへこむぜ」

 

「あは♪全然そんな顔してないくせに。それに炎圧カンストした僕と正面から対峙出来てるだけで、冗談抜きで光努君馬鹿げてるから。まあ今は結構弱ってるみたいだけどね。GHOST様様だね。君の纏っていた白夜の炎も、もう消えちゃってるし」

 

「これはあれだ、ちょっと出かけてるんだよ。ほら、あいつ鴉だから光物に目が無くて

さ。それより、お前素手ばっかだけど匣とか無いのか?ミルフィオーレのボスなんだから今更出し惜しみなしだぜ」

 

「思ったよりも光努君余裕そうだね。それならちょっと見せちゃおっかな。ちょうど飛び入りの来客みたいだしね」

 

その言葉と、白蘭が光努とは別の方向をちらりと見るのを確認すると、光努も同じ方向を見てみる。

 

そこに映った小さな灯は、次第に速度と炎圧を増し、白蘭と光努に向かって飛んできた。

さながら一筋の流星の如く、沢田綱吉はグローブから澄んだ大空の炎を噴出し、今戦場に駆け付けた。

 

「白蘭!光努!」

 

既に獄寺達より通信機で、この場の状況は伝わっている。故に、ツナは迷いなく、一直線に白蘭に拳を振るった。

 

大空の7属性随一の炎の推進力を糧とした、必殺の拳打。間違っても光努に当たらないように、白蘭を中心とした光努との対角線上から攻める一手は、この光景を見た瞬間に最善を導き出す超直感の賜物だろう。

 

だがそれすらも、今の白蘭が持つ圧倒的な力が、嘲り笑う。

 

 

ガッ!

 

「!?」

「あれ?どうしたんだい?君の精一杯(フルパワー)はこんなもんかい?」

 

余裕の笑みで言葉を交わす白蘭だが、相対するツナは冷や汗を感じる。

己の振るう拳が、あろうことが白蘭のたった一本の指で受け止められているのだから。その事実を知ったとき、一様に驚きの波が広がる。

 

同時進行で光努とは腕による鍔迫り合いを演じている為片腕しか使えない状態だが、白蘭は片腕でも多いと、ツナに割いた己の肉体は指一本ただそれだけ。だがそれだけで、ツナは簡単に止められてしまった。

 

まるで強大な山に拳を当てているような不動の圧力。

 

「じゃあ、僕の番だ♪白指!」

 

瞬間、ツナを受け止めている手に嵌められたマーレリングに光が灯り、洪水のような勢いで衝撃がツナを襲った。

 

圧倒的な力の奔流に抗えず、眼下の森へと激突した。

木々と葉と地面をグラグラと揺らす衝撃に、下の全員思わず顔を腕で覆う。衝撃が収まったと同時に見てみれば、そこにはうまく中空で身を翻したツナ。だがその衝撃を殺す事は

出来ず、激突の威力に片膝を着いた状態だった。

 

「これくらいで参ってもらっちゃ困るよ。まだ――おっと」

 

ビュン!

話途中に、光努の蹴りが白蘭の頭を打ちぬく。正確には、撃ち抜こうとした矢先、白蘭が屈みこむようにあっさりと躱し、そのままばさりと翼を翻して距離を取る。その対応に、光努は楽し気ににやりと笑みを浮かべる。

 

「どうした、白蘭。折角だからさっきみたいに、指一本で受け止めてみろよ」

「冗談♪僕の指がへし折れるって。流石に君の拳や蹴りには、片腕使わざるを得ないかな」

 

そう言ってひらひらと手を振る白蘭だが、どこまでもその表情には余裕という言葉が剥がれ落ちない。使わざるを得ない、なんて言葉を使って自身を低く見せているが、それは裏を返せば、片手で十分だ、そう暗に物語っていた。

 

だがそれでも、決して崩せないわけではないという事を、光努は証明している。

 

「流石にツナの拳を指一本ってのには驚いたけど……」

「その白蘭に躱す選択をさせる程の威力を放つ白神光努の方に驚きですね」

「師匠、あの人本当はサイボークかなんかじゃないんですかー」

 

下で前にも言われた事があるような発言が聞こえた気がしたが、光努はあえて無視する。

今目の前にいる白蘭を、どう料理してくれようかと楽し気に口角を持ち上げ、指をバキバキと鳴らしていた。

 

完全フルパワー状態の白蘭を前にその態度は味方としては頼もしい限りだが、同時に人間離れした行動に若干ドン引き物でもあった。まあ相手が相手なので、一週まわってなんだ普通に見えてしまうのもなぜか悲しい。

 

「やる気満々みたいだね光努君。それに比べて、綱吉君はいつまでへたり込んでいるんだい?それとも、そのままそこでじっと見ているかい?この未来世界の命運を、光努君に託して傍観者となる。それも一つの選択肢だと思うけどね」

 

甘く響くような、白い悪魔の囁き。まあ上の二人はどちらも白いが。

現状の戦力差を考えれば、今のツナよりは光努の方が勝機がある事は見れば分かる。元々ツナは戦いを好まない性格であり、待っていればもしかしたら白蘭を代わりに倒してくれる。その可能性だってある。光努の強さはツナもよく知っている。

 

だが、本当にそれでいいのか?

 

「元々君は何の変哲も無い一般人だったんだ。君が戦いたくないと言えば、皆わかってくれるよ。光努君は元々僕に用があるみたいだし、僕も相手になる。それだけの実力もある。だけど、君には無い。このまま闘えば、綱吉君、君の命はあっさりと散ってしまう」

 

残酷に無情に、感慨も無く、冷徹な目で白蘭は事実を語る。

たった一撃とはいえ、己の炎と拳を余裕綽々と反撃された。嘗て、これ程まで圧倒的だった敵はいただろうか?ここまでツナの攻撃を正面から受け止めて、笑っていた人物がいただろうか?

 

(いや、光努も笑ってたな……)

 

残酷な言葉と共に、冷水を浴びせられたようなツナの脳裏に思い出されたのは、模擬戦でわずかに拳を合わせた、楽し気に笑う光努の姿。

 

それを思い出したとき、ツナは絶望の淵に立ってなお、ふと笑った。

 

「さてと、それじゃあ始めようか、光努く――ッ!」

 

湧き上がる大空の炎柱。人の死角の一つである、真下から炎の拳を、不意をついた事もあり、先ほどの余裕さとは打って変わり、白蘭は咄嗟に躱して距離を取った。

 

光努も少し驚いた風に、自分の隣に飛び現れた少年、ツナを見る。

 

純度の高い大空の炎を身に纏い、見透かすような瞳を相対者、白蘭へと向ける。先ほどとは違う、覚悟の強い、大河のように流れる大空の炎がリングより迸っていた。肌を突き刺すような、強い炎の力を誰もが感じていた。

 

「いいのかい?綱吉君。君と僕には圧倒的な力の差がある。それでも挑むという事は、到底まともな結果にならないと思うけど」

「そんな事は関係ない」

「……へぇ」

「俺は、皆で無事に過去に帰る為に戦う。そして何より光努を、仲間を一人で戦わせて外から見てるなんて、俺が俺自身を許せない!」

 

そこに滾る覚悟も、炎も、全てが本物。まだ中学生とは言え、数々の死闘を潜り抜けてきたツナに、今更引く、という選択肢は最初から存在していなかった。自分の隣で拳を握るツナに、光努はふと珍し気に柔らかく微笑んだ。

 

「なるほどなぁ……よし!なぁツナ」

「光努?」

 

ちょいちょいとした手招き。

微笑みから一転して、楽し気な笑みを浮かべた光努。先ほどまでとは打って変わり、まるで悪戯を思いついた子供のようでもあり、プレゼントを開ける前の子供のような、実に楽し気な笑みを浮かべた。

 

急にどうしたものかと、少し疑問に思う光努だが、次の言葉で一瞬呆けた。

 

「なぁツナ、同盟組もうぜ。イリスとボンゴレで」

 

それは何気ない一言だったのかもしれない。聞く側もそれまで軽い気分で聞いていたのかもしれない。

 

しかしそこに込められた意味合いは、到底軽いなんて物で済まされる物ではない。ただの同盟ならばこうはならないだろう。そこに出てくるのがイリスという言葉になれば、天地を揺るがし歴史を転換する一言だった。

 

過去、マフィアの中でも古豪であるボンゴレ並みの歴史を持つ大組織、イリスファミリーだが、その中で他のファミリーと同盟を結んだ記録は存在していない。仕事上の契約などは探せばいくらでも転がり出てくるが、マフィアとして他のマフィアと対等なる同盟、不可侵を結ぶ事は無い。それは基本中立を行くイリスの伝統なのか、それともただただ誰もがイリスという力と組まないように牽制したった結果だったのか、結果としてイリスは今日まで同盟はしていない。

 

この未来の状況下でさえ、イリスとボンゴレはほぼ協力関係と言っても過言ではない自他共に認める周知の事実だが、それでさえ同盟を正式に結んだわけではなかった。

 

イリスは誰とも同盟を結ばない。誰も味方にしない、誰も敵にしない。

 

マフィア間でも有名な共通認識が、今この瞬間に崩れ去ろうとしている。

 

「馬鹿な!あのイリスがボンゴレと同盟を組む!?」

「光努、本気みたいだけど……後で灯夜に怒られないかな……」

「どういう事だ!極限にもはや光努は俺たちの仲間だろ?」

「確かに協力関係を築いていますが、光努殿が言ったのはボンゴレとイリスによる正式な同盟提案。これは過去初めてですよ!」

 

興奮したようなバジルの言葉だが、それもしょうがない。

古くは自警団を前身に、強大な力を高め続けた歴史と力のボンゴレ。そしてボンゴレと同等の歴史を誇る、世界に名だたる会社をその身に宿す大企業イリス。その二つが同盟となれば、ただ事ではない。

 

しかしバジルの言葉に、ぴたりと光努は指を一つ立てて訂正を促す。

 

「一つ勘違いがある。ボンゴレとイリスの同盟はこれが初めてじゃない。これはイリスの歴史を調べて少し前に知ったことだが、イリスとボンゴレの前身を作り出した二人の人物、初代イリスとボンゴレⅠ世は嘗て互いに対等なる不可侵協定を結んでいたらしい。まあ不可侵って言っても潰し合わないだけで不干渉ってわけじゃないけどな」

 

それは初耳だ、というような反応がほとんど、というか全員がそうだった。

 

歴史の裏側、奇しくもマフィアとしての歴史以前の個人的なやり取りの部分だったからこそ、記録を見つける事が出来なかったのであろうが、まさか現代に残る巨大マフィアの創始者がそんな協定を結んでいたとは夢にも思わなかった。確かにボンゴレとイリスの初代達は仲が良かったらしいという話は聞いたが、この内容には白蘭も驚いた様子だった。

 

「へぇ、イリスファミリーには初代イリスの文献が残っていたんだ。それは知らなかったな。何せ、初代イリスに関する記録はほとんど残っていなかったからね」

 

「まあ正式なやり取りじゃなく手紙のやり取りだったみたいだからね。内容も「やほー、ジョット。僕ら組織作ったけど今そっちとバトるとなんか面倒だからしばらく不可侵ってことで☆あ、武器と食料減ったら3割引きで提供しとくよ、それじゃよろしく♪」とかそんな感じだしな。あ、ジョットってボンゴレⅠ世の名前な」

 

「軽っ!初代イリス軽っ!」

 

思わずツナが突っ込むが、白蘭含めて全員気持ちは一つだった。

思ったよりも軽い手紙内容に、思わず光努が捏造したんじゃないか?と思ったが、実際にこの内容だったらしい。

 

しかし後に、初代イリスは行方をくらませる直前にその協定を、敷いてはその時築いていた他の同盟関連などを全て白紙に戻したという。無論それは相手からもきちんとした了承あっての事なので問題は無いが、なぜ初代イリスがそのような行動をとったかまでは流石に記録には残っていなかった。それを知るのは、当時を生きた嘗ての過去の偉人達のみだった。

 

「せっかく仲間なんて言ってくれたのに、ただの協力は無いだろ。今この瞬間、俺は正式にイリスファミリーボスとして、ボンゴレに同盟を申し入れる」

「いいのかい?それをするってことは、初代イリスの残したイリスファミリーの根本が壊れるって事を意味すると思うんだけど、光努君。君はそれを望むのかい?」

「上等。それにイリスはマフィアの伝統(ルール)で成り立ってるんじゃねぇ、ボスが

あり方を決めるんだ。だから、俺は同盟する事に異論を唱えさえない。というわけでツナ、どうよ?」

 

澄んだ純白の石の嵌め込まれた、フィオーレリングを身に着けた拳を握り、ツナへと向ける。

 

光努の目の前のツナは、瞳を見開き、そして微笑んだ。

 

横暴なんて物じゃない。この少年は確かに根本を揺るがそうとも、必ず己が頂点より引っ張る事をするだろう。決してファミリーを、無下にはしない。

 

ツナも自然と、ボンゴレリングの嵌る拳を握りこんだ。

 

「ああ、頼むぞ、イリス!」

「こっちもな、ボンゴレ!」

 

フィオーレリングとボンゴレリング。

 

カチリと互いにぶつかり合い、触れた拳が誓いを立てた。

 

二人のリングが互いを共鳴しあうかのように光輝き、揺れる白夜と大空の炎が絡み合い、太陽の光に照らされてさらに光を生み出す。リングとリングが、互いに共鳴しあうかのように光を灯し、まるでリングが喜んでいるかのように暖かい炎を辺りにばら撒く。

 

正式な場ではないが、空の上で互いを称え、イリスとボンゴレは同盟で結ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、了承したからこれでツナも正式にボンゴレ10代目か」

「ここで水差さないでよ!」

 

 

 





敵も味方もいないイリス宙ぶらりん状態。

理由①:イリスは群れるのが嫌い
理由②:イリスは強いから抜け駆けが無いよう周りが牽制しあってる
理由③:イリスと同盟を結ぶと碌な展開にならないと都市伝説
理由④:特に誰も欲しがっていない
理由⑤:初代イリスのただの趣味

さあどれだ!

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