特異点の白夜   作:DOS

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チョイスがやっと開始。
かれこれこの物語も長くなったけど、いつまで続くんだろう……。
まあ続くまで続けよう。


未来編Ⅴ『チョイス』
『チョイス開幕』


 

 

 

日本時間、PM12:00

 

 

並盛神社の境内より、ボンゴレファミリーはチョイスの場へと旅立った。

上空の雲のの中から顔を覗かせた超炎リング転送装置。その効力は、高密度エネルギーである死ぬ気の炎を使用することで、多人数を一度に長距離へと一瞬で移動させることができる、最先端科学技術の結晶。パラレルワールドの技術をふんだんに使ったとしても、実用化できたのはつい最近。

 

いくら可能性の世界といっても、所詮可能性の世界。

確かにありえない事象を起こすことも可能だが、限度というものが存在する。いくら技術力が高くても、さすがに火星に住むまではいかないのと同様、いわゆるテレポーテーションシステムであるこの機械も、そうそう簡単に使える代物でないのである。

 

メリットとして長距離を移動できるが、デメリットとしてはエネルギー不足。

500万FV(フィアンマボルテージ)という、メローネ基地で戦ったツナのフルパワーのX・BURNER(イクスバーナー)20倍の炎エネルギー。メローネ基地の3区画を消し飛ばしたツナの技。それの20倍など普通なら不可能と言いたい所だが、そんな心配は入江の杞憂だった。

 

ツナ達は、ボンゴレリングに炎を灯し、ボンゴレ匣を開匣した。

ツナ、獄寺、山本、ランボ、了平、雲雀、クローム。

 

10年前の時代からやってた、若き10代目ボンゴレファミリー。

白蘭も驚いたことに、彼らの出した炎の数値は、システムの貯蓄限界値の1000万FV(フィアンマボルテージ)オーバー。正常に作動した超炎リング転送システムは、ツナと守護者、そして入江や京子達非戦闘員達を連れて、光の中に包まれた。

 

瞬間、浮遊感とともに、次にツナ達が感じたのは地面に降り立ったような小さな衝撃。

そして目のまえに広がる光景を見て、瞳を丸くした。

 

そこに見えたのは、ビル。

 

コンクリートでできた、よく見かける建物。

そのビルが、所狭しと視界一面に立ち並ぶ。超高層ビル群の中へとそびえ立つビルの一つ。その屋上へと、ツナ達は転送された。

 

この場所は、フィールドの選択(チョイス)によって決定された場所。

ツナ達が転送される前に、見事1000万まで死ぬ気の炎を吐き出したことによりご褒美と称して、白蘭によってフィールドのチョイス権がツナに与えられた。大量に用意されたカードの中から一枚選び、それがフィールドの場所となる。そしてツナが選んだカードこそ、『雷のフィールド』。

 

 

チョイスフィールド

 

 

雷のステージ[超雷炎硬層高層ビル群]

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「やっ♪ようこそチョイス会場へ」

 

転送後、煙が晴れるようにしてツナ達に掛けられた声。聞こえた声は、ツナ達にとっては聞き覚えのある声。気楽に話す声に、同じようにその表情は楽しそうに笑っている姿。白髪と左目の三爪のマーク。見る人が見れば救いの手を差し伸べる天の使いにも見えれば、ある人物から見れば笑いかけて地獄に落とそうとしてくる悪魔にも見える。

その男の持つカリスマ性でもあり、残虐性でもある。

 

白蘭は、ようやく会場へときたツナ達に、気軽に笑いかけた。

後ろには、一度ツナ達の前に映像として見せた、(リアル)6弔花を引き連れて。

 

「出た!白蘭と(リアル)6弔花!!」

 

超炎リング転送システムに炎を灯した時の死ぬ気モードが解け、ついに自分たちの前に現れた白蘭達に対して、ツナは若干怯え気味に叫んだ。

今までの騒動、すべての元凶とも呼べる人物が、今目の前にたっているのであるのだから当然の反応といえば当然であった。

 

「ここで戦闘をするからね。いいロケーションだと思わないかい?」

 

まるで子供が玩具を自慢するように、周りを指し示す白蘭。

ツナとしては、その言葉に不安気。並盛町で戦わないというのはよかった、だからといってこんなビルが立ち並ぶ人が多そうな場所。そんなところで戦えるわけないというが、その心配もなく、白蘭は笑って回答する。この場には、自分たち以外誰もいないと。

 

確かにそう聞くと、周りからしてくるのは人混みのざわめきでも、車がクラクションを鳴らす音でもない。ただただビルの隙間を風が吹く音だけだった。確かに無人。不気味な程人の気配が欠けているのだった。こういったフィールドを用意できるあたり、さすがミルフィオーレ、もしくはさすが白蘭と言うしかないのだろうか。

 

「じゃあさっそくチョイスを始めようか」

 

にこりと笑う白蘭に、ツナ達は緊張感に包まれる。

 

ついに、世界の命運を、というのは大げさなのかその通りなのか、少なくとも自分達の未来が、過去がかかった命懸けの戦いが、これから始まろうとしている。

この戦いに負けたあと、どうなるのか想像するのに難しくなかった。

 

 

「白蘭・・・・」

 

 

だが、ツナ達はそれを承知の上で、この戦いに参加した。今まで修行してきた。

平和かどうかわからない。また何かに巻き込まれるかもしれない。

 

けどこんな未来ではない、確かに平和な日常があった10年前の過去に帰るため。

 

 

「白蘭さん、始めましょう。チョイスを」

 

 

入江正一。最も白蘭と近くにいた男。

 

自分が招いた責任は、自分が拭う。まだ中学生であるツナ達を戦わせるのに抵抗があった。いくら10年後のツナの承認を得たとはいえ、大人である自分があまりにも一人では無力だった。だけど、入江はツナ達の戦いを見て、決意をみて、修行を見て、その力に可能性を見出した。

 

白蘭という強大な力に立ち向かい、打ち勝つことのできる可能性を。

 

いつもの少しおどおどした入江の態度ではなく、覚悟を決めた男の顔。

 

真剣な眼差しで、開戦の合図を待つのだった。

 

 

「うん………って言いたいところだけど、もう少し待ってね」

「え!?」

 

 

明らかに戦うムードだったために意表を突かれた入江は、若干こけそうになったが、なんとか態勢を立て直した。

 

「びゃ、白蘭さん!?」

「早とちりだなぁ正チャンは。まだみんな揃ってないじゃない」

 

ハハハと軽く笑う白蘭。

 

入江は白蘭の言葉に再確認する。

 

沢田綱吉率いる、ボンゴレファミリー。

そして白蘭と(リアル)6弔花で構成された、ミルフィオーレファミリー。

 

 

 

 

・・・・・・・あれ?

 

 

 

そう思って思わず口に出そうとした瞬間、視界がまばゆい光に遮られた。

清々しい青空の一部から、丸い光の柱がツナ達白蘭達に向かっていきなり降り注いだ。突然の事態に、一体何事かというボンゴレファミリー側。

 

「な、何これ!?」

 

だが対称にミルフィオーレ側は特に慌てふためく様子も見せず余裕綽々。白蘭は待ってましたとばかりに上空から降る光の柱を、少し目を細めながら見つめて、楽しそうにつぶやいた。

 

「やっと来たね」

 

バシュウゥ!!

この光は、ツナ達が来るときにも使用した、超炎リング転送システムの光。

視界がまばゆいばかりの光一色の中、何かがツナ達のいるビルの屋上にぶつかるような音が響いた。降りぶつかる、光と煙が晴れたとき、その場にはボンゴレとミルフィオーレとは別の、最後の役者が揃った。

 

先頭に立っていたのは、ツナ達と同じくらいの年齢に見える少年。

ビル風が、柔らかそうな白い髪を揺らし、その表情はどこかで見たことあるような、この状況ではなかなかに頼もしい程に楽しそうに笑っている。その少年にしては珍しい防御目的なのか、両手に嵌められた少し長めの白いグローブと、甲と腕に付けられた手甲。そしてその右手の指に嵌められていたのは、白く透き通るような石がはめ込まれて装飾の施された、見るものの目を引く輝くような指輪だった。

 

「さっきも綱吉君に行ったけど……ようこそ、チョイス会場へ。光努君♪」

 

楽しそうに笑う白蘭に、光努は同じように笑って答えた。

 

「実際に会うのは初めてだな、白蘭。まあ今日はお互いいい勝負でもしようじゃないか」

「ハハハ、光努君は好戦的だなぁ。ま、悔いの無いようにしようか」

 

表面上は笑ってるが、明らかに自分が勝気満々の二人、ツナと違って光努の性格上、白蘭に大して怯えるという選択肢がまったく持ってないのだが、ただの少年とは思えない、神をも恐れぬ度胸と迫力に、白蘭の隣の(リアル)6弔花である桔梗も少し苦笑い気味になるのだが、それに気づくものはいなかった。

 

この時点で、チョイスの参加メンバーが全て揃った。

 

ツナ達ボンゴレ側は、ボスのツナ、そして守護者である獄寺、山本、ランボ、了平、雲雀、クローム。そして家庭教師、サポート要員であるリボーン、入江、スパナ、ジャンニーニ、ビアンキ、フゥ太、バジル、ディーノ、京子、ハル、イーピン。こうして表記してみるとツナと守護者含めて18人とは意外と多く感じる。というか実際に多い。守護者の3倍はある。しかし大きなマフィア間の視点で見てみれば、とても少なく平均年齢も低い。

 

対するミルフィオーレ側は、ボスの白蘭。そして(リアル)6弔花である桔梗、ザクロ、ブルーベル、デイジー、トリカブトの計6人。ボンゴレ側と比べて、この場にいるミルフィオーレ側はなかなかに少ない。というかマーレリング保持者が少ない、足りない。マーレリングはボンゴレリング同様に、大空属性のボスのマーレリングと、それを守護する守護者に与えられている6つのマーレリングに分けられている。と考えると、ミルフィオーレはやっぱり一人足りない。これでどうやってチョイスをするのだろうか。

 

イリス側は、更にすごい状況だった。

ボスである光努にリルとコル、灯夜、ルイ、ハクリの6人。しかも同じ数だが、基本戦闘に参加しない面々もいれると、ミルフィオーレ側よりも少なかった。本当にチョイスができるのかどうかという点では、ミルフィオーレには負けていなかった。

 

「なはーんだ、ちびっ子ばっかりじゃない。こんなのぜ~~~んぶ、ブルーベル一人で殺せちゃうもんね」

 

白蘭の隣で聞こえた少女の笑い声。(リアル)6弔花の一人であり、膝下まである海を思わせる水色の髪色をした雨のマーレリングを持つ少女の名は、ブルーベル。異彩を放つ(リアル)6弔花の中では、まだ少女といういこともあり嫌でも目立つ。だが、馬鹿にしたように笑い、その手を振り上げると、腕が雨の炎に纏われ変形し、肘から先が雨の炎の槍のようになった。

 

その人間離れした光景に驚くツナ達だったが、次の瞬間、何か異様な者がその腕に巻き付き、今にも攻撃してきそうだったブルーベルが強制的にストップさせられた。させたのは後ろにいる、雲のマーレリングを持ち、ミントグリーン長めの髪を後ろで縛り、シルバーのピアスを嵌めた優しげな雰囲気の男。(リアル)6弔花のリーダー、桔梗。

 

「ハハン。慌てないでブルーベル。白蘭様が楽しみにしておられた祭りなのですよ。ゆっくり楽しみましょう」

 

一見常識的な柔らかな口調なのに、有無を言わさない迫力のようなものが感じる。しぶしぶといった表情だったが、ブルーベルはおとなしく後ろに下がったのだった。

 

「さすが人知を超えると言うだけある。変わってるのが多いな」

「え、それ光努が言っちゃうの?」

 

ブルーベルとと桔梗のやり取りをみて、光努の感想は案外あっさりしていた。まあ光努を驚かそうと思ったらそんじょそこらの驚かし方ではなかなか驚かない。自分のことを棚にあげての発言に、隣にいたリルは若干ジト目で突っ込むのであった。

 

「それじゃあ皆揃ったことだし、次のチョイスをはじめよーか。綱吉君、光努君、こっちきなよ」

 

そう言って白蘭が取り出したのは、ジャイロルーレット。

高さ30センチに直径20センチほどの円筒形の形に、下に持ち手のついた形。

中には不規則的な数字の羅列の歯車が8つ通っており、縦に全ての歯車のひとつが見えるように、8つの窓が2箇所につけられていた。

 

白蘭がルーレットを少し操作すると、そこから伸びた光が空間に文字と図形を投影させた。全員が見やすいようにと投影されたのは、それぞれのマフィアの紋章と、その下に守護者の属性6つ、さらにそのしたに『□』の記号の計8つ。それがそれぞれボンゴレ、イリスが1つずつ、ミルフィオーレが2つ現れた。

 

「普通はチョイスって1対1なんだけど、今回は変則的にボンゴレ、イリスが同盟みたいなものじゃん?だから戦いをフェアにするために僕も2チーム作ることにしたんだよ」

 

ミルフィオーレとボンゴレ、イリス。この3チームが戦おうとすると、誰がどう見ても敵対関係にあるミルフィオーレが不利にしか見えない。実際は不利かどうかは分からないが、それでも戦いの条件を揃えるには3チームというのはキリも悪いため、4チームにすることでルールを作りやすくした、というのが実際のところ。

 

「そういうことなら・・・・仕方ないですね」

「おい入江!てめぇそれでいいのかよ!」

「白蘭さんもチョイスには不正はしないから、僕らも公平(フェア)にしないと・・・」

 

しぶしぶ、といったような、どこか葛藤したような表情の入江。誰よりも人一倍白蘭を倒したいという思っている入江だが、それと同時に白蘭を信頼している部分もある。長い時を共にしてきたからこそ、白蘭の性格をよく知っている。もちろん、それは白蘭も同じであるため、互いに油断はできないのもまた現状である。

 

「というわけで、最初に僕と(リアル)6弔花中心のミルフィオーレチームと、綱吉君率いるボンゴレチーム。次に基本部下中心のミルフィオーレチームと、光努君率いるイリスチームの参加人数を決めようか」

 

ジャイロルーレットは、それぞれの属性の参加者を決める為のルーレット。ステージの選択(チョイス)の次は、戦いの人数の選択(チョイス)。不正の無いように作られたらしく、歯車を回すことで不規則に勝手に数字が止まるという構造である。それではいざ早速、というところで、白蘭の前、ツナの隣にいた光努が口を開いた。

 

「そうだ白蘭。一つ確認しておきたいんだが」

 

ふと思い出したように、光努が白蘭に話しかけた。内心では白蘭がすぐこそにいる状態に、平常時のツナはびくびくとしているのにたいして、なかなかに光努は落ち着いている。度胸があるのか無謀なのか、見習っていいものなのかどうなのかと、どちらにしろツナは心の中で光努を賞賛しているのだった。話しかけられた白蘭は、機嫌よく質問には答えてくれる。これでいてなかなかに話好きな面、マフィアのボスらしくないけど、自分が楽しむことは心得ているらしい。

 

「ん♪なんだい光努君」

「こっちにはボンゴレやミルフィオーレと違って守護者なんてものいないし。チョイスのルーレットで出たそれぞれの数字、その属性の炎が出せる奴が参加でいいか?」

 

そもそもボンゴレリングやマーレリングは、大空の属性のリングをボスに、その他の6つのリングはボスを守護する守護者が持つものと決められている。が、フィオーレリングはそれ一つしか存在しないため、その属性の守護者が参加、というのはいささかイリスには当てはまらないための確認。普通に考えて炎を出せればオッケーという、一応の確認である。当然、白蘭も最初からそのつもりだったのか、気軽にオッケーの返事を返した。

 

「うん、いいよ。ま、元々守護者のいないイリスにはそのつもりだったしね」

 

その言葉に、光努は少し俯きながら若干笑みを浮かべるが、そのことに気づくものは誰もいなかった。

 

確認も終了し、チョイスの掛け声と共に、ジャイロルーレットにリングの手を触れて数字の歯車を回した。

 

 

「「「チョイス」」」

 

 

カラカラと回るジャイロルーレット。

緊張感に包まれる中、数字の羅列の並んだ8つの歯車が、それぞれ不規則に、しだいのその回転を止めていった。白蘭、ツナ、光努。全ての歯車を回し終え、周りに投影されていた4つの表には、それぞれに止まった数字が記されていた。

 

「これで決まったからね。バトル参加者♪」

 

 

 

ボンゴレファミリー

大空『1』・晴れ『0』・霧『0』・雲『0』・雨『1』・雷『0』・嵐『1』・□『2』

 

 

ミルフィオーレ『パフィオペデュラム』((リアル)6弔構成チーム)

大空『0』・晴れ『1』・霧『2』・雲『1』・雨『0』・雷『0』・嵐『0』・□『0』

 

 

イリスファミリー

大空『0』・晴れ『0』・霧『0』・雲『0』・雨『0』・雷『2』・嵐『0』・□『0』

 

 

ミルフィオーレ『ガロファーノ』(他部下によるチーム》

大空『0』・晴れ『0』・霧『0』・雲『1』・雨『0』・雷『1』・嵐『1』・□『0』

 

 

 

 

 

 

 




2対1でバトルロイヤル形式な公平なルールが思いつきませんでしたので、ミルフィオーレ側を増やして4チームにしてやりやすくしてしまいました。

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