チョイスに向けてツナ達は修行を行う。
そのためにツナ達にはそれぞれ家庭教師がつけられて修行方法がそれぞれに決められる。そしてイタリアからやってきたのは、キャバッローネファミリーのボス、跳ね馬のディーノ。
今回は全員の全体を仕切る家庭教師、いわばまとめ役兼、雲雀の家庭教師。
ツナは一度ボンゴレ匣を開口した際に、中から飛び出したのは竜にも見えるような炎の塊の怪物。だがそれは匣本来の姿ではなく、デリケートな大空の匣兵器が間違った開口をした際に飛び出した物。その為ツナは、正しく匣を開口できるまで一人であると言い渡された。
獄寺は最初は修行ではなく、匣初心者である了平とランボの二人に未来の戦いを教える教師役。当初不満だらけの獄寺だが、もう教える立場ですごいというツナの素直な賞賛で一発オーケーをだし、二人と共に図書室に入ったという。
クロームは、この時代にはいないマーモンが残した幻覚強化プログラムによる特訓。
そして山本は、パス。まだ彼の家庭教師が到着していないということで、しばし一人での特訓となった。
以上がボンゴレツナ達の修行風景。
だがまあ一日目じゃそうそううまくいくはずもなく、他にも合間にいろいろと修行以外にもやることはたくさん。チョイスのフィールド直径10キロ内移動用のバイク練習もその一つ。果たしてツナ達の修行はどうなるのだろうか。ボイコットも続くなか、修行2日目に突入するのであった。
***
「それで、ディーノは恭弥の修行視てんだ」
「そういうこった。それより、お前らはどうなんだ?」
「どうって?」
「修行だよ。チョイスに向けて、何かしらしてんだろ?」
そう言って笑っているのは、少し長めの金髪に、首筋から左手にかけて刺青をした男、ディーノ。
キャバッローネファミリーのボスであり、この時代においてボンゴレと共にミルフィオーレに立ち向かう同盟ファミリー。今はイタリアからやってきて、ツナ達の修行の家庭教師の総指揮兼恭弥の家庭教師を買って出ているのであった。
ソファの正面に座る光努に話しかけ、対する光努はソファに体を預けながら少し退屈そうにあくびを噛み殺した。
「といってもな。俺は修行しようにもまだ匣ができてないしな。リルとコルは今更修行、って感じだし。なぁ?」
そう言ってディーノと光努が対面して座るソファーと机の隣側、別の丸いテーブルと椅子に座っていたは、リルとコル。机の上に乗っていたのは、鉄板と爪楊枝。一体これで何をしていたのかわからないが、光努はそんな二人の方を向いて同意を求めるようだった。
「そうだね。やることと言ったら新しい武器の慣らしくらいだけど」
「相性が良かったからかな。そう時間はかからないと思う。すぐに物にできそうだ、よっと」
カン!
軽い音がしたと思ったら、視線は机の上に置かれている鉄板。
そこには綺麗に深々と、爪楊枝が刺さって貫通している光景が見えたのだった。もちろんコルが持っているのだから、コルが突き刺したのだろう。
「会話しながらお前は何してんだ」
「ん?一点集中の修行。ほら、名刺で割り箸とか割るじゃない。アレみたいなもの」
「いや、結構なことやってるぞ今」
見てみると鉄板の厚さは薄い紙ではなく、3ミリはあるぞ。しかも板状にもかかわらず綺麗に突き刺さっているし。
そんな光景にディーノは少し笑みがひきつるのであった。
「そうだ!ねぇディーノ」
目にも止まらぬ素早さでもって腕を振い、普通の爪楊枝をコルが持って構えた鉄板に綺麗に突き刺したリルは、隣に位置されているソファに座るディーノの方を向いた。
「ん?どうした、リル」
「そういえば武って今家庭教師いないんだよね。てことは多分修行内容は一人で型の繰り返しとか筋トレとかだよね」
「まあそれはそうだが・・・・・リル、おまえまさか」
「ちょっと修行手伝ってこようかな。経験値稼ぎ、みたいな?」
「あー・・俺は構わんと思うが、後が怖いぞ?」
山本には今家庭教師がついておらず、自主練状態。その為、ボンゴレ匣を使っての修行もお預け。その理由は、この時代の2代目剣帝と呼ばれ恐れられる、ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアー所属のスクアーロがボンゴレ基地に、山本を鍛え上げるために向かっている途中であるから。その為ディーノが山本に下手なこと教え用なら、スクアーロは容赦なく剣戟を浴びせるだろう。「跳ね馬ぁ!!てめぇ、余計なことをしやがってぇえ!!ゔお゙ぉい!!」とか言いながら。
その為ディーノとしては、スクアーロが剣士として山本の一番の理解者であり、最も家庭教師に適していることも知り、一旦山本の修行は保留としているのであった。
なのでもしもリルとコルが何かしようならスクアーロが起こるんじゃないのか?というのがディーノのちょっとした心配である。
「大丈夫だよ。別に何か教えるわけじゃないし。どうせ武も暇してるだろうから気分を一新して、戦えば経験値アップ間違いなし♪」
「というわけで、僕らは武のところ行ってくるから」
ガタガタと椅子から立ち上がるリルとコルの二人。
爪楊枝の大量に突き刺さった鉄板を片付けて、壁に立てかけてあった刀を持った。
さて行こう、と思ったら部屋の扉が開いた。
中へと入ってきたのはビアンキ。基地内には獄寺がいるため、顔には少し大きめのゴーグルがかけられていた。確か今はクロームの特訓を手伝っているはず。
「あらリル、ここにいたの」
「ビアンキじゃない。どうしたの?」
「ちょっとクロームの修行を手伝って欲しいのだけど、頼めるかしら?」
クロームの修行に付き合っているのは、イーピンとビアンキの二人。
基本的にクロームの修行方法は、今はいないアルコバレーノの一人であるバイパーことマーモンの残した幻覚強化プログラムによる幻覚能力の向上と、格闘能力の向上という全体的向上トレーニング。あとは他の守護者と同じようにボンゴレ匣の修行。ビアンキ達が手伝っているのは、格闘能力向上。しかし丁度いいところに格闘戦が得意な剣士であるリルがいたため声をかけたのである。
ちなみになぜコルではなくリルであるかといえば、全員女性だから当然の選択肢と言えば当然である。
「いいよ、じゃあ私行ってくるね」
「じゃ、俺も恭弥のところに言ってくる。光努、お前はどうする?」
「そうだな、あと残ってるのは隼人達にツナのところか。よし、隼人のところ行ってこよ」
理由はなぜか、組み合わせが獄寺、了平、ランボだからきっと面白そうだなと思ってのことである。
そして一旦、リルはクロームの、コルは山本、そして光努は獄寺の元へと向かうのであった。
***
(時雨蒼燕流、攻式八の型――――篠突く雨)
ヒュヒュヒュ!!
ボンゴレ基地内ではあまりない和式の板張りの道場で、空気を切り裂く音が聞こえた。
ボンゴレ雨の守護者、時雨蒼燕流の継承者でもある、山本武。
今は家庭教師がいないため、ボンゴレ匣の修行はお預け。自己鍛錬に勤しんでいた。
手に持った時雨金時を振り抜いて停止したと同時に、周りに置かれていた巻藁は、真ん中から綺麗に真っ二つに切り裂かれた。静かに山本は息を吐くと同時に、手に持った時雨金時は、証明の灯りに照らされた銀色の刃から竹刀へと戻った。
時雨蒼燕流の型を一通り済ませ、最後に自分が最も得意とする型を終わらせ、そばに置いてあったスポーツタオルをとって汗を吹く。爽やかにスポーツドリンクを飲む様はなかなかに野球少年の山本に似合っていたのだった。
「精が出るな。調子はどうだ?」
「ん?おお、コル!まあまあってところだけど、どうしたんだ?」
入口からやってきたのは、木刀を何本か籠に入れて背負ったコル。
コルが来たのに少し驚いたようだったが、山本は楽しそうに笑ってスポーツドリンクを床に置いた。
「一人で暇してるんじゃないかと思ってな。修行手伝ってやろうかと」
「まじ?コル、相手してくれるのか?」
「まあ炎を使うのは危ないから、ほら」
コルは背に背負った籠から木刀を一本取り出し、山本に放った。難なく山本はキャッチし、代わりに時雨金時を壁際に立てかけた。
「武は剣士との経験値がスクアーロと幻騎士くらいしかないからな。少し経験値あげたほうがいいかと思って」
よくよくと考えれば、本当に山本は剣士になり立てにもかかわらず、ヴァリアーの剣帝、10年後の時代最強と名高いミルフィオーレの幻騎士。今まで戦った剣士は、戦うしかない状況が状況とはいえ幸か不幸か、確かに大物と戦ってばかりなのであった。そう考えると経験値はかなり高い。もちろん、序盤で中ボスに当たるRPGならそく瞬殺されるはずなのだが、そこは最初のレベルと成長率が高い山本であった。
「そういえば、コルって強いのか?俺コルの剣とか見たことないけどさ」
二人共メローネ基地にいたとはいえ、全く別の場所にいたので互いに剣を見たわけでなく、10年前の時点で山本は子供のコルとしか、しかも多少しか会ったこと無い為、剣士としてどうなのか未知数なのであった。
「そうだな、実力はわからんが、戦い方なら、スクアーロと幻騎士の中間くらいかな」
そう言って籠を降ろし、中に入った木刀を2本抜き取り、くるくると手で回しながら握り、両の手に持って構えた。
「中間、なるほど。二刀流・・・ってことか」
幻騎士は四刀、スクアーロは一刀。二刀流の相手とはまだ戦ったことなく、相手の実力も未知数。しかし、構えるコルからにじみ出る剣気。同じ剣士として、対峙してわかる。リング戦でスクアーロと戦った時のような、幻騎士と対峙したような、リボーンとの修行のような、そんな気分。
だが、それはいつもと同じだ。そんな状況だとは言え、山本は常に勝つ気でいる。勝てると思い、己の剣を最強と信じ、剣を振るう。
目に真剣の用な鋭さを纏い、にやりと笑う山本。そんな山本を見て、コルも珍しくふっと笑う。
二人共普通の木刀。リングや匣など使わない、純粋な身体技能と剣による模擬戦。
だが二人から発せられる雰囲気は、普通の模擬戦で済ませるには中々に迫力があった。
互いに木刀を構え、床を蹴ってぶつかり合うのだった。
***
一方光努は、図書室で勉強中の獄寺、了平、ランボの元へとやってきたのだった。
獄寺は基本的に理論派なので、ディーノから了平とランボにリングや匣などのことを教えてやあってくれと言われ、鉛筆とノートを使って図書室で勉強が始まったのであった。
昨日は了平が匣兵器の漢我流を勝手に出し、ランボに至っては偶然にもボンゴレ匣を開口してしまい、最終的には3人は訳も分からずボロボロになって気絶したのであった。
そして今日は昨日のリターンマッチとして、再び図書室で勉強・・・・・・のはずだったのだが。
「ぬおおぉお!!内容が頭に入ってこん!タコヘッド、やはり体を動かすべきだぁ!!」
獄寺と正反対の肉体派、脳筋とも言われる程に勉強が苦手な良平は、開始3分で既に限界に達していたのだった。もちろん5歳のランボも、鉛筆を持つまもなく床に寝転がってゴロゴロしているのであった。
「てめぇら!!ちったぁ勉強しやがれ!そんなんじゃ、今度のチョイスで戦えねぇだろうがぁ!!」
「だが!俺は極限に勉強が苦手だぁ!やるなら実践あるのみ!さぁ、特訓所に行くぞぉ!!」
「生徒のてめぇが決めるんじゃねぇ!!」
方針が逆の二人なので、当然と言えば当然、中々噛み合わないのはしょうがない。
そんな様子を隣で眺めてるリボーンは、優雅にコーヒーブレイクを楽しんでいたのだった。
とそんな時、図書室の扉が開いて誰か入ってきた。
「よ、調子はどうだ隼人、了平にランボ。あ、リボーンもいたか」
「ちゃおっす光努。獄寺も、
「理論派と肉体派と子供だし、しょうがないんじゃないか」
「ま、それもそうだな」
「光努、てめぇは何しに来やがった。ていうか修行しなくてもいいのかよ」
「いや、みんなどうしてるかなと思って。了平、調子はどうだ」
「おう、光努か。タコヘッドに教われと言われたのだが、極限に何を言っているのかさっぱりわからん」
「てめぇ!!」
これは平行線じゃないのか、と光努は思ったが、隣のリボーンを見ると、面白いだろ?とでも言うように笑っていたので、じゃあ見学でもしてようかなと思い始めた。
「けど隼人さぁ、匣のこと教授するなら開いた方がてっとり早いんじゃないのか?わかりやすいし」
「いいや、こういうのはまず理論を学ばなくちゃだめだな」
「炎を灯して匣に入れれば開く。でいいと思うけど」
「おお、極限に光努の話はわかりやすいな」
「てめぇ、芝生頭!!」
まあ子供でもわかるように教えれば、了平も理解できる。
覚悟からリングに波動が流れ、波動とリングの属性を一致させることで、ある一定量の炎を放出できる。覚悟の力とリングの精製度により、それは大きく跳ね上がり、様々な匣を開くことが可能。ただ重要なのは、匣とリングの属性を揃え、なおかつ匣を開くためには物によって一定量の炎を必要とする。そして開いた匣からは、炎を灯した動物や、武器や防具などを出すことが可能であると。
とまあこんな説明をしても、百聞は一見にしかずという言葉があるとおり、了平の場合は一度開けてみれば感覚で理解できる。別に頭が悪いというわけでは、いや学校の成績という意味ではそこまでよくないのだが、実際に動いて理解し、判断を直感に任せる節が多々あるので、こういう時は細々した勉強よりかは大雑把に匣開けといったほうがわかりやすいのであった。
「と、俺は思うんだが、隼人はどうだ」
「・・・・・まぁ、確かに芝生みたいな脳筋はそれがベストか」
「タコヘッド!極限になんかけなされてる気がするぞ!」
「というわけで、実際にやったところを見せたほうがいいぞ。お手本というやつだ」
なるほどと、獄寺は思う。それなら二人に説明(見せるだけだが)しながら、自分の匣の修行もできてなんと一石二鳥!
「よしてめぇら!訓練所に行くぞ!ついてこい!」
「うおぉお!!極限にトレーニングだぁ!!」
「わーい、ランボさん遊ぶんだもんね」
気分が一転して図書室から出ていく三人を後ろから見ていた光努は、手元で口を隠しながらふっとほくそ笑むのだった。
「うまく誘導したな、光努」
「誘導とは人聞き悪いな。了平達にはあれがいいと思ったし。ま、俺も少し動きたいなと思ったのは事実だけど」
リボーンと話す光努の目線は、楽しそうに獄寺を見ていた。
「模擬戦も立派な訓練だしな。それに了平と隼人、タイプが違う奴と戦ってみたいし♪」
(うまく乗せられたな獄寺。でも、俺も見てみたいし、まいっか)
隼人と了平は、それぞれ遠距離と近距離のプロ二人。修行するにはうってつけなのであった。
修行二日目、今だボイコット継続中。
次回、光努戦います。