前回までのあらすじ!
やって来たのは、木々の生い茂る深い霧に囲まれた森の中に、ぽつんと存在していた古い寺。そしてその中へと入ることに成功した光努とリルとコルの三人。
見た目と中身は古ぼけた寺であるにもかかわらず、光努達の攻撃によっても全く傷のつくことのない建物で謎が多かったのだが、あえてそこは置いておいて先に進む光努達。
そしてまっすぐに中の廊下を進んで現れたのは、四つの扉。
荒々しく哮る竜。
咆哮が聞こえてくるような虎。
羽ばたく姿は威風堂々とした鳥。
蜷局を巻きその場にとどまる亀。
青竜、白虎、朱雀、玄武の4匹の生物がそれぞれ彫られた四つの鉄製の扉。
そして入ってきた扉に書かれていたのは、謎の文章。
〔血の器 水を浸して 葉が浮かぶ その衣を纏い 汝の元へ 示す導き 天へと誘う〕
前半は俳句のようにも見えるが、それにしては後が字余りすぎる。
根拠はないが、おそらくこの文章にはどの扉へ入ればいいかの手がかりが隠されている。
もしも間違った扉に入れば、それはそれは恐ろしいことが待っているはず。その為、謎を解くため頑張る光努達であった。
***
四聖獣のレリーフがそれぞれの付けられた鉄製の4つの扉の前に立つ光努、リル、コルの三人。謎の文章に目を通し、いざその灰色の脳細胞をフルに活用させ、文字の中に隠された謎を時かかった。
「じゃあ謎も解けたし、行くか」
が、すぐに終わった。
「早っ!展開がすごく早いよ!読者に一切の説明ないの!?」
「リル、その発言はメタ発言だよ」
「コル、お前もな」
リルに突っ込むコルの二人を横目に、さて先へ進もうかなと軽くスルー気味に扉に手をかけようとしたら、再び後ろからリルがストップをかけてきた。
「ちょっと待ってよ!本当に説明なし!?せっかく正しい扉をわざわざ考えた読者達の期待を裏切る気なの!?光努はそんな人じゃないでしょ」
「えぇ、別にいいじゃんか。きっと読んでる読者もそこまで気にして見てないって。せいぜい『あ、ここで終わりか。次の更新いつかな~』くらいしか思ってないだろ。きっと謎まで深く考えてないって」
「光努がそれ言っていいの!?」
もはやこの物語の主人公の言葉とは思えなかった。
「わかったよ、じゃあ説明するよ」
やれやれというふうに言う光努。けどもともと冗談半分本気半分だったのか、割りとあっさり折れる当たり光努も結構冗談多めだったらしい。
「鍵となるのは扉表面に付けられた『彩の間』。つまりキーワードは『色』だ」
この部屋へと入るために入ってきた両面扉に付けられたプレートに書かれいたのは、『彩の間』の文字。
彩とは
この建物に入って目にしてきたものの中で、扉の裏に書かれた文章以外で唯一存在していた文字。つまりこの文字が謎をとく鍵となる言葉。
「血の器、水を浸して、葉が浮かぶ。血は『赤』、水は『青』、葉は『緑』を表しているということ」
「赤と青と緑。その色って確か」
「そう、いわゆる三原色と呼ばれる色だ」
三原色とは、原色となる色を組み合わせ、混合することで、様々な種類の色を作り出す色の組み合わせ。ただ色といっても、光の色や絵の具の色などもあり、赤、青、黄の三原色は絵の具によって混ぜ合わせる色の三原色。印刷機に入っている、いわゆるマゼンダ、シアン、イエローとも言う色である。
三原色と言っても、基本的な組み合わせがあるが、それでも他にいろいろと組み合わせがあり、橙、緑、紫の3種類の組み合せも存在する。
今回の三原色である赤、青、緑の3つは、光の三原色、RGBとも呼ばれる色で、テレビやモニターなどのディスプレイは、この三種類の色でもって画面を映している。
画家が絵の具でこの三色を混ぜることで黒色を作り出し、強力な光としてこの三色を掛け合わせることで白色を作り出すという。
「血の器に、水と葉を入れる。これはそれぞれの色、『赤』と『青』と『緑』を一箇所に集める、つまり混ぜ合わせるという意味。そしてこの混ぜ合わせによってできるのは、白か黒のどちらか」
「ていうことは、色的には白虎と玄武。けど正しい扉は一つじゃないの?」
「そ、ここで必要なのが続きの言葉。『その衣を纏い』の部分。白い服ないし黒い服を纏うということ」
なるほどと思うリルとコルだが、ここでも疑問。
そもそも扉にあるのが四聖獣の獣。当然服を着ている奴らなど存在していない。
この手がかりだけではまだわからないのでは?という疑問もあったが、光努はそんなリルとコルを見て楽しげに笑っていた。
「白虎は白帝、朱雀は炎帝とも言われたり、四神はしばしば他の言葉にも使われてんだ。ちなみに○帝っていうのは俳句の季語のこと」
他にも青竜なら青帝や、玄武なら冬帝なども存在する。
それぞれの方角を表すと同時に季節も表す四神達。
確定した情報はなく、その存在は人が聞けばすぐに思い浮かべるイメージの姿もあれば、他にいろいろな姿で描かれる。
「玄武は一般に長い脚の亀と、それに巻き付く蛇の絵柄で描かれることが多いが、他にもいくつか考えられるイラストがある。その一つに、玄天上帝というのがあってな」
コツン。
靴音を響かせ、鉄製の扉の一つの前に立つ光努。
そこに居が枯れていたのは生物。
脚が長めであり、甲羅を背負い、蛇が巻き付く聖獣の姿。
「玄天上帝の姿には、黒服の男が描かれている」
トン、と玄武の描かれる扉を押すと、奥へ奥へと続く道が姿を表した。
「そして示す導きは、天へと誘う。さて、行くか」
***
先ほどの部屋と違って最初の木製の廊下を歩く光努達。
やはりギシリとした音が鳴るが、それでも全く壊れるような構造をしておらず、なぜか傷すらつかない為、普通にコツンと長い廊下を歩き続ける。
明らかに最初に見た寺の大きさよりも廊下の長さの方が長いと思われるが、廊下の構造自体を気づきにくいようにわずかに下斜めの構造にすることで、途中から地上ではなく地下へと続く道になっているらしい。地上なら建物の大きさだけ限りができるが、地下ならば邪魔がなければ無限に道を作ることができる。
「光努って頭よかったの?」
「その質問俺もしたんだけどなぁ。まあいいか悪いかでいえばいいぞ。見聞きしたら忘れない程度にはな」
「それって結構いいってことだよね」
「知識だけあってもしょうがないがな。人は応用してなんぼだろ」
はははと軽く笑う光努。
人は知識を吸収し、それを応用することができる。知識に人の発想、思考、転換、様々な要素が組み合わされば、それが謎を解明して、新たに知識を得ていく。
玄武の扉に入り、長い廊下を特に苦もなく歩く三人であった。
ちなみに、他の扉を試しに開けてみたら、白虎の扉を開けた瞬間上からギロチンの要領で薄い刃が落ちて危うく人様に表現できない事態になるところだったので、他の二つは開けないでおいたのだった。無駄に寿命を縮めたくないし。
「けど結構簡単に解いたね。もっと時間がかかるかと思って早く来たけど、取り越し苦労みたい」
歩きながらそういうコル。確かに速い。まだ日も登りきっていないような時間帯でほとんどの人間はまだ夢の中のような時間。光努達もちょっとはやく来すぎたかなと思ったが、ちょっとどころではなかった。
ちなみに寺に入ってからここまでわずか10分である。
「けどすごいよね。もういっそ探偵とかになったら?面白そうじゃない」
「場所的に探偵とは少し違うんじゃないか?学者とか陰陽師とか、寺とか遺跡だとそんな感じの職種を思い浮かんぶんだが。それに・・」
(昔、もっとすごいのいたしな)
「?どうした光努」
「いや、なんでもない。それより先を急ぐか」
目的地まで、もう少し?
***
「あー、楽しい楽しいピクニック気分だな。よし、そろそろ弁当でも食べるか」
「光努、言葉が棒読みになってるよ。正直に面倒になってきたって言ってもいいよ」
「そう言うコルも面倒になってきたよね~」
かれこれ2時間程歩いたが、未だに廊下が終わらない。
何もないというのは構わないが、こうも何もないと逆に罠くらい出てこいよと思ってきた光努たちであった。
「見れば見るほど木ばかり。長いよ!いつまで歩くんだよ!もう20キロは歩いているぞ!」
明らかに普通に歩いただけで行けるような距離ではないが、特に気にしない気にしない。
「と思っていたら、扉が見えた」
光努の言うとおり、目の前を見てみると、木の扉が廊下の先には確かにあった。
ここまでわりと長い道のりだったが、疲れてはいないがようやく見えてきた別の景色に光努達は内心微妙にほっとしていたのであった。
ちなみに全く説明をしていなかったが、当然廊下等に光源は無い為、みんなで見た目旧式のオイルランプをもって光源としている。このランプは見た目炎を灯すタイプの物だが、中に灯っているのは持ち手の死ぬ気の炎であり、炎エネルギーを光として増幅させて通常の炎よりも周りをよく照らすかなり高い技術力が使われている見た目旧式ランプである。
目の前にある両開きの扉。なんの変哲もない扉だが、だがらこそ、その先にある物の存在感を、光努達は肌で感じていた。目の前に立つ光努は目を少し見開き、楽しげに笑みを浮かべた。
後ろのリルにランプを預けながら、両手で目の前に扉に触れ、力を込めた。
「よし、開くか」
重々しい扉を開く光努。
古い扉だからなのか、ギイィという一際大きな音がなりその先を見せてくる。
扉の向こう側は、大きさは思っていたよりも小さめの、6畳程の部屋だった。
廊下と同じように、全てが木でできている立方体の部屋。床や天井には何もなくがらんどうとしているが、そんなことなど気にならなかった。一際存在感を放つ物質が、その部屋にある。
正面の壁に備え付けられていた、刀掛台。
存在感を放つ物質は、壁に掛けられていた2本の刀。
柄に巻かれた柄糸が血のように濃い真紅の刀と、夜明けを思わせるような紺碧の柄糸の刀。
両方黒塗りの鞘に収められ、静かに壁に掛けられている。
見た目は普通の刀にしか見えない。だが、ただの刀出ないということは、光努にはもちろん、剣士であるリルとコルも理解している。リルは光努のように楽しげに笑い、コルも珍しく笑みを浮かべ刀を見ていた。
「これが、お前たちの探しものか」
「うん!本当にあった♪」
楽しげに笑い刀を見るリルと、静かに刀を見つめるコルの二人は、光努の横を通り抜けて壁際に寄る。リルは真紅の柄の刀、コルは紺碧の柄の刀へと、それぞれその手を伸ばした。
(さすが超一流の剣士。刀を前にして二人の存在感が跳ね上がったな。ま、ものがものだけにしょうがないか。精製度
かつて平安時代頃に存在していたとされる刀鍛冶の名。
彼の打った刀はどれも精度の高い刀であり、皇室御物の、遥か昔、八尺を超える大鴉の羽から出たと伝承されたと言われる小烏丸と呼ばれる刀が存在するが、それは天國が作ったと言われる刀。
だがこの人物、出身、経歴、素性、には謎が多く、ほとんどのことが解明されておらず、ほんとにそんな人物がいたのかすら不明である。
小烏丸に刻まれるはずの銘が無く無名であるため、やはりそれが誰の手によって作られたものなのか、憶測の息を出ていない。
だが一部の人間には解明の手立てが見られているらしく、小烏丸はは天國が作り出した刀であるということが分かり、今目の前にある2本の刀も同じ。
同じ天國の刀だが、違いがあるとすれば、その刀の作られた用途。
美と戦。飾り宝として掲げる為に作られたのが小烏丸。そして戦闘に適し、天國の戦いの技術が込められた刀こそ、神器天國刀。
同じ製作者でも、神器と呼べるほどの力は、小烏丸にはなかった。
だが今目の前に存在する刀、2本の天國刀には、人を魅了する美術工芸品とはまた別に、人の意識に突き刺すような威圧と存在感を、鋭い刃のように吹き出していた。
リルとコルの二人が刀をそれぞれ手に握り、一息に抜き放った。
少し反るような刀の刃。抜き放ったと同時に閃光が光る。
いや、よく見ると閃光ではなく、緑色に光る雷の死ぬ気の炎。
そして刀から吹き出すように、蒼炎の雨の炎と、真紅の嵐の炎が、部屋の中で踊るように吹き出した。まるでその手になじむように、あるべきところへと収まるように三種の炎が揺らめいていた。
(すごいな。神器は人を選び、相性があると聞いていたが、まるで刀が喜んでいるようだ)
一息に抜いた刀を二人は鞘に収めると、炎は霧散し、後に残ったのは、ランプの炎の光だけだった。
「それが神器か。一回しか見たことないけど、間近で見ると迫力がすごいな」
「私たちも持つのは初めて。見たことはあるんだけどね」
明るい笑顔を向けて、楽しそうに話すリル。
二人の今まで戦闘時に使用していたのは、特に普通の西洋剣と日本刀。神器がイリス内の秘匿事項といっても、その存在場所があまり多くなく、そう簡単に手に入るものでもないため、こういった自分の専用武器というのが初めてのリルとコルだった。
だからこそ、新たな武器を手にした二人はとても楽しそうだった。
いそいそとリルは端が輪っかのように巻かれた革のベルトを取り出し、刀の鞘に輪を二つ通して、肩から腰に斜めがけするようにして刀を背負うのだった。コルは既に用意していたのか、刀を挿す場所の拵えたベルトをしており、自分の腰に刀を挿した。
「結構すんなり手に入ったけど、その刀大丈夫か?」
「ん~、特に問題なさそう。持ってみてわかったけど、本当に人が作ったものこれ?」
「神器、なんて大げさかと思ったけど、僕も納得したよ」
「お前ら目がプロの鑑定家みたいになってるぞ」
若干呆れ気味の光努だが、なんだか新しい玩具をもらった子供みたいに笑っている二人を見てな、なかなかに微笑ましい気分になったのであった。
「さてと、じゃあそろそろ帰・・・ん?」
楽しそうに刀を持つ二人を横目に、光努はスタスタと歩いて、刀の無くなった刀掛台の前に立つ。そしてじっと見つめ、右手を伸ばして刀掛台の横の壁を少し指でなぞる。
(部屋が薄暗いから普通じゃ醜い微妙な隙間。それに少し木目があってない。この後ろ、もしかしたら・・・・)
指をわずかな黒い線のような隙間をなぞり、一辺1センチ程の正方形の切れ目の用な物を見つけた。そのまま押せるらしく、指の先でもって力を少し込めると、後ろに動きカタンといった音がした。
どこからか、カタカタカタといった木出来て歯車が回る用な音が聞こえたと思ったら、ぐらりと刀掛台が壁の一部とともに前に倒れ、その後ろに人がくぐり抜けそうな四角い穴が現れた。
「隠し扉!この奥があるの?」
「一先ず、二人はそこにいろ。もう一部屋みたいだから、ちょっと言ってくる」
一人でいくと行ったのは、隣にもう一部屋あるだけのようであり、なおかつ隣の部屋からは、全くと言っていいほど危険な感じがしなかったから。
この部屋に入る前に感じた存在感は、間違いなく天國刀2本の存在感。今なお現れた隠し扉の向こう側には、本当に空っぽの感じがした。
「さて、鬼が出るか蛇がでるか」
四角い穴をくぐり抜け隣の部屋に入る光努。
やはり灯りもなく暗い場所だったが、光努はランプをもって中を照らすとその場所
に少し目を見開いた。
およそ先ほどの部屋より小さい、4畳半程の小さな部屋。だが薄汚れ、切り傷などが多く刻まれており、さっきまで歩いてきた廊下や、刀の置いてあった部屋と比べると明らかに古びてボロボロとした場所。
だが、そんな古さなど光努は全く気にもせず、他のところに目を止めていた。
「この場所は・・・」
真っ白い和紙のような紙に、梵字のような文字の書かれた護符。
壁や床、天井には大量の札が貼り付けられていた。
まるで何か悪霊でも封印されていたかのような札の数々。
その異常な光景には不気味さが見え、そして部屋の壁際には、桐でできた細長い箱が置かれていた。そこにも部屋と同じように、不可解な文字や図形の羅列の札がいくつも貼られていた。
(これは、明らかに刀を納める刀箱。しかしこの札は・・・)
足を曲げてしゃがみこみ、桐の蓋に手をかけて、一息に中を確かめるべく、蓋を持ち上げた。
「空っぽだと?」
そこには空虚に、何もなく、ただ箱だけとなった刀箱が置かれているのだった。
リル「ダメだしのコーナー」
光努「リル、それってなんのコーナーだ?」
コル「それはね。この小説の作者の書いた小説を私達がダメだしするという斬新なコーナーだよ」
光努「え、それって俺らがしていいものなのか?」
リル「大丈夫大丈夫。というわけで早速行ってみよう!」
コル「まず今回のこの小説だけど、正直作者の知識がにわかなので正しいこと書いているかが微妙である」
光努「あー、それあるよなぁ。専門分野ならともかく、付け焼刃だとボロが出そうだ」
リル「そんなわけで、ツッコミ所があったら遠慮なくツッコンでね♡」
コル「大丈夫。作者のメンタルは(多分)強いから遠慮は無用だよ」
光努「お前ら括弧の中に多分とか付けるなよ・・・・」
リル「後謎が納得いかないものでもツッコンでいいからね」
コル「どんどん感想(とうなのダメだし攻撃)待ってまーす」
光努「やめろぉ、あいつの体力は既にぜr――――」
リルコル「じゃあ待ったねー」