でも問題はないはず!
『We are VARIA!』
イタリア戦線。
ツナ達が日本支部であるメローネ基地を襲撃した日、全世界のボンゴレとイリスがミルフィオーレに襲撃を開始していた。
ボンゴレの他にも多くの同盟ファミリーがこの作戦に加担し、ミルフィオーレもそれを迎撃すべく動いている。場所によってはボンゴレが優勢にミルフィオーレを追い詰める所もあれば、ミルフィオーレの戦力に苦戦を強いられる所も存在する。
ミルフィオーレの支部が多く存在すると言っても、どれもこれもが最高戦力を備えているというわけでない。ただでさえ、日本のメローネ基地に6弔花が4人も配置しているため、残りはB級以下で戦力を整えるしかない。別にB級以下が弱いというわけでないが、割と戦力の低い支部なら、ボンゴレの他の同盟ファミリーでも、イリスの『アヤメ』の一人でも行けばすぐに壊滅する。
この戦いも入江達が計画した中に含まれているが、すべてが勝てると思っていうわけでない。不確定要素も多く、いくらかは賭けとなって入江はあとは信じることしかできない。
とりわけ入江が重要視しているのが、イタリアにおけるボンゴレ連合ファミリーとミルフィオーレの戦い。
ボンゴレ連合ファミリーはミルフィオーレに奇襲を仕掛けたが、ミルフィオーレに逆に奇襲を早期に察知されてしまい、圧倒的戦力の前にボンゴレ側は追い詰められたように見えた。
だが、XANXUS率いるボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアーの奇襲により、わずか10分という短い時間でミルフィオーレ指揮官を暗殺し、拠点としていた古城を占拠してみせた。
しかしこれにより、隊員が32名しかいないヴァリアーは、古城の四方を圧倒的兵力のミルフィオーレ勢により囲まれ、窮地に立たされることになったのだった。
***
石造りの古城。
そのバルコニーの一つに固まっている数人の人影。
黒とクリーム色の2色のカラーに、肩に付けられた『VARIA』の文字。
毛皮の付いたフード突きのお揃いのコートは、その者たちが同じ組織に所属する人物だと示している。
「んもぅ!嫌になっちゃうは、籠城戦なんて退屈よ!ディフェンスなんて、性に合わないわ!」
モヒカンのようなカラフルな髪型に、夜でも問題無いようにつけているサングラスに、女性口調が特徴の男。個人的に戦いのに、受けてに回っているこの状況をあまりよく思っていないのか、若干不満げな声を出している。
「残った連合軍も当てになんねーしな。こんなことなら跳ね馬日本に向かわせるんじゃなかったな」
ししし、と歯を出して笑っている男。ところどころ跳ねて目元を隠すような髪型と、頭に乗せられた小さめの王冠。この状況を楽しんでいるのか相変わらず笑っている。
「何を弱気になっておる!この程度の的、我が手にかかれば造作もない!」
自身満々に答える、逆立つ黒髪と髭の生やした男。背中には八本の剣のような物を指している男。
「レヴィさーん。だったら一人で造作もなくやっちゃってくださーい。見てますんで」
そんな男の声に受け答えするかのような別の声。黒い大きめのカエルのようなかぶりものをかぶり、無表情ながら横目で会話に参加しているが、その声は棒読みに近い喋り方で、心底どうでもいいような感じがする。
「そうだな。いっそあたって砕ける感じで突っ込むといい。後で形式的に悲しむから心配するな」
微妙に気だるげに割と容赦なく答えた男。ゴーグルのかけたツバ付きの帽子の中に黒髪を収め、大きめの長いバッグを肩にかけていた。
「フラン!
「〝だが〟の使い方おかしいだろ。変態雷親父」
「ぬぉう!貴様!今なんといった!」
レヴィの言葉に、辛辣に毒舌を吐くカエルのかぶりものをしているフラン。その言葉にさらにレヴィが憤慨するが、言った当の本人は森の方を見ながら「キレイな空だなー」とどこ吹く風でスルーしている。
「で、みんなの配置はどうするの?スクアーロ作戦隊長」
モヒカンサングラスのオカマ、ルッスーリアが黙って様子を見ていたスクアーロに尋ねる。XANXUSがこの場にいない今、立場的にはスクアーロが一番偉いのである。ちなみにXANUSは今頃食事でもしている頃であろう。
「ゔむ・・・。レヴィとルッスーリアは城で待機。何かあればサポートだ。
固めて動くのは得策ではない。古城で敵を待つのも、兵力の数が多いミルフィオーレファミリーにはまずい戦法。レヴィの言ったこともあながち間違っておらず、この古城のある地形は、森の広がる大地の一部が深く凹んでおり、またそこに森が広がりその中央に古城があるいという構造の為、崖のない入口から入る確率も高い。
さすがに作戦隊長。的確に指示を投げる。
が、この配置、主に組み合わせに、ベルは若干不満げに顔をしかめた。
「げ、俺がフランのお守りかよ」
「嫌なのはミーも同じですー。あいつ嫌なタイプですのでー。前任のマーモンの人の変わりだとかでこんなかぶりもの強制的にかぶせられるのも納得いかないしー」
ベルとフランの組み合わせは、双方個人的にあまり好ましくないらしいが、作戦隊長の指示の前では問答無用なのである。
「ていうかー、それなら考魔先輩も前任者の格好してくださいよ。ミーだけなんて何か嫌ですしー」
「あらフラン、それはダメよ。そんなことしたら
「俺の前任者が非常に気になるが、せっかく弁護してくれたからあえて聞かないでおくよ」
その前任者のバージョンアップされた後継機が、ミルフィオーレ側でうじゃうじゃと動いているが、あくまで余談である。
「スクアーロ作戦隊長。作戦中にあのカエル死ぬかもしんない。・・・・オレの手によって」
そういうベルはわずかに殺気を放っていつでもやれるぜとばかりに手をぶらぶらと
させていた。
「ざけんなガキィ!新米幹部はぺーぺー幹部が面倒みんに決まってんだろ!」
「俺もうぺーぺーじゃねーし。だったら考魔とフラン組ませろよ。こいつまだまだぺーぺーだろ」
「別に俺はフランと組んでもいいけど。ベルのオリジナルナイフをこの城から数百メートル単位の的に当てられるなら話は別だけど」
「・・・・・・・・・」
フランと組んで直に敵を切り刻みに行くか、フランと離れて城でお留守番。
ベルの中でフランと組みたくないが、留守番も嫌だなというメリットデメリットの天秤がカタカタと揺れる。
「まあ無理だと思うから諦めるんだな」
「カッチーン。いまの言葉はちょっと頭に来たぜ」
スッ!そう言ってベルは袖から何本ものナイフを取り出して構える。
ベルが自分専用に作ったオリジナルの形状をしたナイフ。体のいたるところに忍ばせていつでも戦闘対戦万全だと言わんばかりである。
「なんだ、やるか?」
チャキリ。両腿のホルスターに収められた拳銃の片方を引き抜き、構える考魔。
銀色のラインの入った漆黒のリヴォルバー銃。
互いに同い年だといいうこともあるが、剣と銃ということで微妙に相容れないような空気と、ヴァリアーでは日常的な殺気の混ざった空気が二人の周りを取り巻く。
「ゔお゙ぉい!!ガキども!喧嘩してねぇでとっとと行けぇ!!ベルはフランとだぁ!異論する奴はかっさばくぞぉ!」
が、作戦隊長の怒鳴り声でさっと霧散して、若干不満げながらも渋々とナイフと銃をしまい、動き始める面々であった。
***
森が切り開かれている東側の守りを固めるため、スクアーロは木々の枝に足をかけて跳び、移動を繰り返していた。
長い髪とヴァリアー隊服である黒とクリーム色の二色のコートを揺らして移動していたが、その常人離れした五感が何かくると察知して、一旦木の枝に足を止めた。
上空から迫る、というよりかは何かが落ちてくるような音。
木々の葉や枝ににぶつかり、ガサガサと音を立てて地面に落ちたのは、自分と同じ隊服に身を包んだ構成員32名しかいないヴァリアーの部下であった。その顔あ体には傷があり、どうやら負傷している様子。
「報・・・告します・・・」
「なんだぁ!誰にやられたぁ!!」
かすれるような声色に、中々にダメージを受けた様子。
「XANXSU・・・様です。肉が食べたい・・・らしいのですが・・・用意できず・・・」
「なんだとぉ!?最高級のラム肉を持ってきたはずだぞぉ!」
「それが・・・牛肉を食べたかった・・・・らしく」
ヴァリアーのボスであるXANXUSは、食通でありわがままな傍若無人であるため、自分が欲しいものは問答無用でもってこさせる。持ってこなかったら即抹殺である。
が、そこは長年付き合ったスクアーロ。XAMXUSがどんな食事を好み、欲しているかなど、そんなことは想定済みである。
「和牛のサーロインも持ってきたはずだぁ!!他のコンテナをよく探せぇ!!」
どしゃり!
再び木々を揺らして上から降ってきた人影は、別のヴァリアーの部下。
そちらの部下も傷が目立ち、ボロボロの状態。スクアーロの言葉に答えたのは、こちらの部下であった。
「それが隊長・・・フィレ肉を食べたい・・とのことで」
「そいつも持ってきたはずだぁ!!」
そしてまたも降ってきたボロボロの部下。
地面に突っ伏したがなんとか顔を上に向け、語った。
「それが・・・・手が滑ったとかで床に落として・・・・・「こんなもの食えるか」と・・・・」
ブチ!
怒りのストレージが溜まりに溜まっていたスクアーロだったが、三人目の部下の言葉についにキレた。
「あんのクソボスがァ!!このクソ忙しい時にぃ!!」
と、その時、スクアーロの後ろから迫ってくる刃と人間。
全身真っ白な白装束に身を包む、ミルフィオーレホワイスペルの人間。
Fシューズを装着して、死ぬ気の炎の推進力により空を飛行し、森の木々を縫うように飛んできた兵隊は、その手に持つハルバートをスクアーロに向かって振り上げた。
「ゔお゙ぉい・・・。俺は今、虫の居所が、悪いんだぁ!!」
右手にはめられてリングから、雨の炎を放出し、ヴァリアーのマークの入った匣に炎を注入した。
中から飛び出すように現れたのは、、凶暴な表情と、その口に備えられた全てを噛み砕かんとするばかりの強靭なる牙。
全身で雨の炎を纏われた巨体は、ヒレを動かし宙を泳いだ。
自らの名を冠する獰猛なる鮫の匣兵器は、一瞬でミルフィオーレの兵隊に迫り、その牙をもって噛み砕け、あっという間に仕留めてしまった。
考魔に関しては骸編で少し出てきたので、よかったら見直してみてね。