特異点の白夜   作:DOS

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いろいろと端折ったけど、ついにここまで来た!!


『君達を待ってた』

 

 

 

 

 

 

元々幻騎士は、γと同じジッリョネロファミリーに所属する人間。だが、とある経緯からその忠誠は、絶対的に白蘭へと誓っていた。

 

その為、白蘭がマーレリング欲しさに、ジッリョネロを潰してというお願いを、幻騎士はためらいもせずに御意と受け取った。

 

 

手順は簡単。

 

 

とある剣士と戦い、重症の姿でアジトに戻り、ファミリーの人間が油断したところで打つというもの。

 

もちろん実際に怪我を負うわけでなく、幻覚でそのように見せるだけ。

そしてファミリーの人間に重症を装い、全員が心配顔で自分の近くに寄ってきた時、いざ作戦を結構しようと倒れふした振りをしている中、剣をつかもうとしたその手を、小さな手が抑えた。

 

後ろで一本に結われた黒髪に、左目の下にある五弁花のマーク。そしてその胸には、オレンジ色のおしゃぶりが首から下げられていた。

その小さな少女は、ジッリョネロのボスでもあり、そして幻騎士を気遣うように、その手を優しく包む。

 

結果として、幻騎士はファミリーの人間を誰ひとりとして手をかけることはできなかった。

 

まだ幼い自分たちのボスである少女。

だがその瞳に宿る光は、どこか全てを知っている、見透かしているような瞳に、強い意思の力、苦悩と覚悟を映した瞳だった。

 

結果としてミルフィオーレは二つのマフィアを合併して作られたが、ジッリョネロを滅ぼすことを、幻騎士は、まだまだ幼い自分たちのボスの瞳に気圧されてできなかった。

 

そして今、目の前で自分が戦うツナの瞳に宿る光。表面で顕になる、覚悟の光。

その瞳を見るたびに、自分が白蘭の命を実行できなかった、悪しき記憶が蘇る。そんなこと、あってはならない。

 

真の忠誠を誓う為に幻騎士は、あの瞳を克服するべく、自分の精神をヘルリングに食わせるのだった。

 

ヘルリングに己の精神を喰わせ、その力を何倍にも増大させた幻騎士。

だが、ヘルリングに精神を喰わせた代償なのか、どこか頭に血が上っているようであり、過去の記憶がフラッシュバックして、自分のへの失態を罵る。

 

あの時、殺すことができなかった。

 

ジッリョネロを、ボスを、滅ぼすことができなかったと。

 

冷静さを欠く自分の戦闘能力を補うように、幻覚によって卑劣な手を、ツナの仲間の幻覚にツナを殺させようとする。

 

誇り高きジッリョネロの騎士が、ヘルリングの力により別人のようになる。もしくは、これが幻騎士の本性だったのか?それは誰もわからない。

 

だが、自分の大切な仲間を使った攻撃に、ツナは、幻騎士を許さなかった。

 

幻覚は本人の生命と繋がっている、という幻騎士の言葉が真実かわからないため、ツナは温和に幻覚を防いだ。自分の首を締めようとしてくる仲間たちだが、その手を凍らせることで、それを防いだ。

 

霧の死ぬ気の炎でもって作られた幻覚の為、ツナの死ぬ気の零地点突破初代(ファースト)エディションによって凍らせることができる。

 

そしてその間に、時間を稼ぐことが出来た。

 

ツナの後ろには、すでに柔の炎でもって、強大な支えが出来上がっていtあ。

その炎の大きさは、アイリス達を倒して3ブロックを消滅させた炎圧の20万F(フィアンマ)V(ボルテージ)よりもさらに上、25万まで上昇した。

 

その数値は、スパナの予想していた最高出力よりも遥かに高い数値。

対する幻騎士も、自身の分身を作り出し、炎の最大出力でもって、正面から斬りにかかった。

 

 

X(イクス)BURNER(バーナー) (ハイパー)爆発(イクスプロージョン)

 

 

幻騎士に向かって放たれた、強大な死ぬ気の炎。

 

対抗する幻騎士も、炎を正面から受け止めることに成功したが、それも長く続かず、ついにはその剣にはヒビが入り、鎧すらも破壊され、幻騎士はその強大な炎に飲み込まれた。

 

幻騎士を飲み込んだ炎はそのまま天井を突き破り、さらには次の階層をも貫いた。そして最後まで破壊つくした穴から見えたのは、白くて丸い装置だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

スパナと共に両手の炎でもって飛び上がり、ツナがやってきた場所は、自分たちの目的だった場所。この場所へ来るために、この基地では戦い抜いた。それがここ、白くて丸い装置のある入江正一の研究室。

 

 

「まさか、幻騎士を倒すとは計算外だったよ、沢田綱吉」

 

 

立ち尽くすツナとスパナの元へと聞こえた声の先にいたのは、一人の男と、そのそばに付き従う二人の女性。

 

二人の女性は、ツナも見覚えがある。ホワイトスペルの服装に、褐色のはだと目元を隠すような黒いマスク。ツナ達がリング争奪戦をした際、審判をしていた女性、チェルベッロ。

 

そしてその二人の前にたつようにしているのが、少しクシャりとした髪型にメガネを掛け、ミルフィオーレホワイトスペルの服装をした男性。その右手にはめられた指輪は、楕円形の丸い石に、畳むような両翼の意匠を拵えた指輪、晴れのマーレリング。

 

 

入江正一。

 

 

いまツナ達が目的とした、過去に帰る手がかりを持つ人物が、眼前に立っていた。

その姿を見たとき、ツナは拳を上げ、グローブに炎を灯したが、入江のストップの発言で拳を抑えた。入江の目線の先には、大きく透明なケースのような機会に入っている、獄寺や山本、雲雀にクロームに了平、ランボ、イーピン、草壁、ツナの仲間が全員眠らされて入れられていた。

 

 

「彼がいないが、先にこちらが来てしまってはしょうがない」

 

 

ピッ。

手元のリモコンを操作すると、ケースの中のガス、おそらく眠りガスを排気口から摘出し、次第に中で眠っていた全員が目を覚まし出した。

 

ケースの壁はナノコンポジットの壁で覆われており、頑丈な作りのため名から出るのは難し。それにくわえ、既に彼らのリングや匣は回収されており、入江の見せる左手の中には、ボンゴレリングだけでなく、他のリングも全て乗せられていた。

 

 

「かまわん!貴様の手で装置を破壊しろ!沢田!」

 

 

目の前に目的があるのに、人質のため破壊できなかったなど、ラルは望むべくもなく、ツナに声を上げる。

 

だがその言葉を聞く入江は、どこか呆れたような表情をしていた。

 

 

「全く、お前達の無知ぶりには呆れるばかりだぞ。この装置を破壊すれば困るのは

お前達だぞ」

 

 

その言葉の意味をツナ達が考える前に、白く丸い装置が開くと同時に、その中を見た入江達以外の全員が驚愕した。

 

 

「この装置に入っているのは、この時代のお前たちだ」

 

 

10年バズーカは、本来当たった人物を10年後のその人物を入れ替える。

 

その理屈で行けば10年前のツナ達はこの時代に来、この時代のツナ達は10年前に行く。だが、入江が膨大な時間をかけて作り出した装置により、本来この時代の人物が10年前に行くところ、分子状に分解してこの時代のこの装置の中に留めることに成功していた。

 

 

「この時代のお前たちが過去に戻って余計なことをされては、(トゥリニセッテ)ポリシーに乱れが生じるからな」

 

 

10年バズーカによって、ツナ達をこの時代に呼び寄せたのは、入江。

この時代の科学技術を使い、本来なら当てるのも難しいような相手にもバズーカを確実に当てていった。リボーンでさえも、この時代にある非7³線(ノン・トゥリニセッテ)を照射すれば、身動きがとれなくなる。

 

 

「でも、どうして?なんでそんなことしてまで、俺達をこの時代に連れてきたんだ!」

 

 

当然の疑問。なんでわざわざ10年前のツナ達を連れててきたのか。そのことが、どうしてもわからなかった。ツナ達がくるメリットなど、あるのだろうかと。

 

 

「簡単なことだ。白蘭サンがこの世界を手中に収め、もう一つの世界を創るために、ボンゴレリングが必要だからだ」

 

 

ボンゴレリング。過去にツナ達が勝ち取り、この時代には既に無いもの。

 

 

「この世には、力を秘めた数多くのリングが存在するが、『マーレリング』『ボンゴレリング』『アルコバレーノのおしゃぶり』各7つの計21個を、(トゥリニセッテ)と言う」

 

 

そして(トゥリニセッテ)の原石こそ、世界を想像した礎。

 

 

「そしてあまり知られていないが、この(トゥリニセッテ)とは別の、世界を守ると言われる2つの存在がある。それこそ『フィオーレリング』と『白いおしゃぶり』」

「世界を!?それにフィオーレリングって、光努の持ってるリング!」

「この二つを+2(アルトラドゥエ)と呼ぶ。もっとも、この存在を知っている人間はごくわずか。そこのアルコバレーノすらその存在については詳しくないだろう」

 

 

入江の言うとおり、確かにラルには、その二つの存在について詳しくない。

フィオーレリングのことは知っているが、それが強大な何かという認識はなかった。さらには、白いおしゃぶりに至ってはその存在もほとんど知らなかった。

 

だが、リボーンはその存在を知っている。しかも、通常のおしゃぶりやリングとは違う、どこか不思議な力があることを、リボーンは知っていた。それも、光努達のことを知っているからわかったことだろう。

 

 

「白神光努、ハクリ。この二人はここにはいないようだが、先にボンゴレリングの回収を進めさせてもらおうか」

 

 

そう言うと、チェルベッロの一人は拳銃を取り出し、リモコンのスイッチに手をかけながら、銃口をツナに向けた。

 

「沢田綱吉、大空のボンゴレリングを渡しなさい。さもなくば守護者達は毒殺しま

す」

 

ケースの中に睡眠ガスを入れていたように、毒ガスに変えられたら、彼らにとってはなすすべなくその命を終える。ツナがいくら素早く動けるといっても、スイッチに手をかけて今にも毒ガスを動かせる状態では、なすすべがない。

 

この一手で、ツナの選択肢は迫られる。

 

 

リングを渡すか、守護者の命と引き換えに奴らを倒すか。

 

 

だが、入江を倒したからといって過去に帰れるとは限らない。装置の中の人物が10年後のみんなだとすると、やはり壊すこともできない。

 

かと言ってリングを渡しても、全員無事に帰れるという保証も、やはりなかった。なおかつ、リングが最も重要なものという話を聞いたばかりで、そんなものを白蘭に渡したら、どうなるのか想像に難くない。

 

もう一度言おう。

 

ツナには、なすすべがなかった。

 

 

ピシィ!

 

 

もっともそれは、この場で無事でいるのが、

 

 

ピシピシ!

 

 

ツナだけだった場合。

 

 

バキィン!

 

 

「「「「!」」」」

 

 

入江やツナ、チェルベッロにスパナ達はガラスの割るような音を聞いたとき、とっさにその方角に目を向けると、そこには、後ろからヒビを出しながら、崩壊する守護者達を入れたケースが破壊される光景が映っていた。

 

同時にケースにくっついた換気等の機械もバラバラに切り刻まれ、投げ出されるように床の上に落ちた守護者達の前にたつように、後ろから現れた人物は笑っていながら歩いてきた。

 

 

「これで、交渉の余地はあるよな?入江正一」

 

 

柔らかそうな白い髪を揺らしながら、割れたガラスを踏みつけてやってくる少年。楽しそうな笑顔を浮かべ、その瞳は入江の元へと真っ直ぐに向いていた。

そのチャラリと揺れる首にかけられた鎖には、白い石の埋め込まれた装飾の施され

たリング、フィオーレリングがかけられ、部屋の光を反射して光っていた。

 

 

「白神光努、いつの間に・・・」

 

 

入江の口からつぶやかれた言葉に、チェルベッロの女は我に戻り、手に持った拳銃を光努に向けた。

 

だがその瞬間、どこからか飛んで来た銀色の針が拳銃の銃身に突き刺さり、赤い炎

を上げて拳銃を燃やし尽くした。

 

 

「そんなの人のボスに向けたら、ダメじゃない」

 

 

切り裂かれ欠けた機械の上に腰掛ける人影が二つ。

 

二人して同じ柔らかな黒髪と、少しの違いがあるが同じような顔立ち。

少女の方は黒髪をリボンで結い、少し短めのポニーテールにし、少年の方はその腰に、黒塗りの鞘に収まる日本刀を携えていた。

 

 

「『シャガ』のリルとコル!君たちも白神光努と合流してたのか」

 

 

入江の言葉に、ツナはフゥ太と遊んでいた小さなリルとコルを思い浮かべ、もう一度目の前に二人を見て驚いていた。

 

確かに見れば面影がかなりある。しかもここまで似た顔立ちをしているから姉弟、双子ということも結構わかりやすい。

 

 

「くっ、入江様!」

 

 

入江を守るように前に立つチェルベッロの二人。

 

この状況を見れば、一目瞭然。まさに形勢逆転。

 

守護者達からはリングと匣を没収したが、今だこの場に残る人数の差と戦えるツナの存在。そして新たに乱入してきた光努とリルとコルの存在。

 

チェルベッロの二人も入江も、元々そこまで戦闘をするタイプではない。

だからこそ捕まえた守護者を人質に交渉というなの命令を執行するはずだが、人質がいなくなってしまい、入江たちはどうすることもできなかった。

 

チェルベッロの二人も歯噛みし、入江と光努達の間に、盾のごとく立ちふさがる。

 

後ろの入江は顔を伏せ、よくよくと表情が見えないが、立ち上がった入江は右手に持つそれを使った。

 

ズガガァン!!

 

 

「入・・江・・・様?・・・」

 

 

鈍い銀色の銃身。そして銃口から見える煙が、たった今使用したばかりの拳銃であることを示している。

 

入江の右手に握られた拳銃から放たれた弾は、自分の目の前にいた二人、チェルベッロの背中へとうたれ、そのまま二人は崩れるように地面へと倒れ込んだ。

 

出血のないことから、おそらく実弾ではなく、眠らせるのが目的の麻酔弾などを使用したのだろう。

 

 

だが、なぜ入江はこの二人を撃ったのか?

 

 

この場の入江意外、全員が驚いていた。光努でさえも、入江の行動に頭に疑問符を浮かべている。

 

 

「ふぅ、もうクタクタだよ。一時はどうなるかと思った」

 

 

深いため息と共に、入江は自分の着ているミルフィオーレホワイトスペルの上着を脱ぎ捨て、少し整えられていた髪をクシャりとかくように手でいじる。

 

さきほどまでの緊張の張り詰めたような空気が消えて、どこか砕けたような雰囲気が出ている。

 

 

「沢田綱吉君と、仲間(ファミリー)の皆さん。そして白神光努君に、『シャガ』のリルとコル」

 

 

どさり、とまるで足が疲れているかのように、床へと座り込み、再び深く疲れたような息を吐く。

 

そしてその口から出てきた言葉に、この場の誰しもがやはり驚きを隠せなった。

 

 

「よくここまで来たね。君達を待ってたんだ。僕は、君達の味方だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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