ほとんどそのままだけど一応ダイジェストにしました。
光努、リル、コルの三人が、グロ・キシニアに太猿野猿とブラックスペル、さらにジンジャーブレッドを各自撃破していた間、ツナ達ボンゴレ側とミルフィオーレ側でもいろいろと動きがあった。
山本を倒し、そのまま止めをさそうとしていた霧のマーレリングを持つ6弔花の幻騎士。
だがその時、二人のいた匣兵器実験場の壁を外から破壊して殴り込んできたのが、10年後の雲雀恭弥。
囮となってミルフィオーレの部隊を相手にしていた雲雀だが、全て片付けてさっそうと現れたのであった。もちろん、助けに来たというわけでなく、個人的な目的で来たのは言うまでもない。
10年後のボンゴレ守護者たちは、ミルフィオーレの最重要抹殺対象に指定されているため、もちろん雲雀恭弥を知っている。その為、現れた雲雀を始末すべく、自分の匣を展開した。
雲雀は過去の経験、骸に幻覚でやられた経験から、初対面で特に恨みの無い幻騎士と相対したとき、術師ということで割と好戦的になっていたのは余談である。
幻騎士の霧属性匣兵器である〝
霧属性の炎の特性は、〝構築〟!
訓練室を、周りが植物のフィールドに幻覚で構築した。
が、そんなことにも何ら焦る素振りを見せない雲雀。
幻騎士の幻覚は自分の考えるイメージを投影する為、映像処理の間に合わない負荷を与えれば、周りの幻覚は壊れる。雲雀の雲属性匣兵器である〝
さすがの幻騎士といえど、雲雀と高レベルの戦いを繰り広げながら、幻覚のフィールドを構築し続けるのは至難の技だったらしく、次第に幻覚フィールドは崩れ始め、匣兵器である
だがこれを、雲雀はリングの炎を使うことによって回避している。
リングの炎を薄く広範囲に広げ、見えなくなったとしても実態として存在する海牛が炎に触れた瞬間、リングの炎の揺らぎによってその方向を特定し、ハリネズミで防御、または回避することに成功していた。
今でこそお互いに対した傷もなしの高い攻防をしているが、この均衡はすぐにでも崩れる。
この戦いの肝は、やはり匣兵器。
海牛による攻撃をする幻騎士と、ハリネズミによって防御する雲雀。
だが、雲雀は生来から持つ強すぎる波動の為、精製度C級以下のリングを使えば、一回匣を開くだけでリングが砕けて使い物にならなくなってしまう、いわゆる使い捨て。
この時代には、精製度A級以上のボンゴレリングが無い為、雲雀は基本的に戦闘ではC級以下のリングで戦っている。
それでも相手をほぼ圧勝できるのは、雲雀の天才的な戦闘センスとその実力の高さ故である。
だが敵がそんじょそこらの有象無象でなく、ミルフィオーレ最強の6弔花であると、そうも簡単にいかないのが現状。リングが全て亡くなった時、匣兵器も使うことができず、幻騎士が火力面で圧倒的なアドバンテージを得る。いくら体術に優れている雲雀といえど、このままではやられる。
だからこそ雲雀は、強行的な手段を使った。
それこそが、〝裏・球針態〟と呼べる、
もう一つの使い方。
匣が壊れるほどに強大な炎を注入することで、その匣本来の使い方と別の使い方をする、雲雀の匣に隠された機能。だが、この匣を使うに当たり強大な炎を使うのだが、雲雀のもつリングはそれほどに強大な炎を出すことができないほどに精製度が低い。その為、現時点で残っているC級のリングを2つと、D級のリングを3つ同時にはめて、同時に炎を出すことで、リングの耐久力以上の炎を出すという荒業をしてのけた。
雲雀の手元からハリネズミが光となって広がり、雲雀と幻騎士の
白く輝き、巨大な針に囲まれた半円状の球体のフィールド。その場にいるのは幻騎士と雲雀の二人のみ。
〝裏・球針態〟とは、戦う人間意外を、匣兵器すら排除する、絶対遮断空間。
密閉度の高い雲の炎によって作られたドームは、敵に背を向けて破壊に専念するか、作り出した張本人である雲雀を倒すしか破壊する方法は無い。
ここからの戦いは、雲雀と幻騎士。己の体技による戦い。
雲雀の武器は、一対のトンファーのみ。
そして幻騎士の武器は、四本の両刃の剣。
これを幻騎士は、あろうことか両手
足で掴んた剣を地面に突き刺し軸とし、蹴り上げるように反対の足で掴んで剣を振り、逆手に持った両手の件でもって相手を串ざそうとする。
そんな変幻自在な剣さばきを、雲雀は両手のトンファーでもって受けた。お互いに一撃も譲らぬ戦い。
体術だけで言えば、幻騎士の技術は雲雀に匹敵した。
それだけに、ある一つの小さな要素が勝敗を分ける。
それが、幻騎士の持つ霧のマーレリング。
リングは死ぬ気の炎を生成し、それを武器に灯すことで、その武器を強化することができる。強化と言っても、その炎の特性にもよるのだが、あるとないではその差が出る。
高度の低い霧の炎でも、一点に剣に集中させれば、鋼鉄のトンファーを焼き切ることができる。
次第に雲雀が防御をするとき、トンファーがどんどんと焼き切れ、短くなり、次第に雲雀の全身に切り傷が増えてきた。
自分が圧倒的に優勢、にもかかわらず、幻騎士には拭えない違和感があった。
雲雀の表情は、立場に合わない表情。不敵に、笑っていた。
全身に切り傷が走り、自らの血にまみれた姿。匣は使えず、リングも武器であるトンファーも全て砕けてしまった。誰が見ても不利な、もう一息で終わる状況にも関わらず、その目に宿る光は幻騎士を見据え、自分の死など予感もしていない、不敵な目。
止めの渾身の剣撃と同時に、崩壊する裏・球針態。
崩れ落ちた瓦礫の山。土埃が立ち込める中で幻騎士は立ち尽くす。ひらひらと飛んでいる鳥を見つけたが、よくよくと見れば雲雀の鳥であったヒバード。雲雀の好きな並盛中の効果を歌いながら、パタパタを飛ぶのを幻騎士は見送る。
だが、ヒバードが高度を下げて土埃の中へと入ろうとしたとき、中から伸びた手の指へとその足を止めた。
煙が晴れたその姿を幻騎士が見たとき、驚愕に見開いた。
瓦礫の上に座る人物。黒髪に黒い学生服を方から掛け、その袖に付けられた『風紀』の二文字の入った赤い腕章。その右手の中指には、雲の刻印の記されたシルバーのリングがはめられていた。
「君・・・誰?僕の眠りを妨げると、どうなるか知ってるかい?」
幼さの残る顔立ち。
ボンゴレリングを持った10年前の雲雀恭弥が、そこにいた。
***
光努とリルとコルが戦い、雲雀と幻騎士も戦っている間、もっと言えば獄寺や山本が戦っていたときからだが、ツナはどこで何をしていたか?
その答えは、ブラックスペルのスパナに監禁されていたのであった。
まあ監禁といっても、結果的には匿ってもらっていたというのが正しい。
囮役を買って出たツナに対し、技術者であるスパナは自分の作り出した4体のモスカを使い、ツナを戦闘不能に追い込んだ。代償として4体のモスカは再起不能に大破されてしまったが、操縦者であるスパナは無事。
なら、なぜスパナはツナを助けたのか?
その答えは、「
技術者には変わり者が多いと聞くが、スパナも例外なく、自分が丹精込めて造り、沢田綱吉を倒せると判断したキングモスカを破壊した、ツナの
先程まで戦い、敵であったスパナの申し出に最初は戸惑っていたツナだが、だんだんとその言葉が本心からであり、スパナにも信頼を置くようになっていった。
支えとなる柔の炎と撃ちだす剛の炎のバランス。このバランスが味噌であり、例えば剛の炎が柔の炎より強すぎると、支えが足りずに逆に後ろに自分が吹き飛ぶ。
このバランスがぴったりと一致したとき、前方に強大な剛の炎が打ち出せる。
しかし、そうそう簡単に行くこともできない。柔の炎と剛の炎では、炎の出し方が異なり、そもそも同じだけ炎を出すのが難しい。だが不可能ではないが、それは炎が弱い時。強大な炎を放とうと思えば思う程、その炎の出力バランスが難しく、撃つのが困難となる。
それを解消する為にスパナが提案したのが、コンタクトディスプレイと呼ばれる最先端技術。
コンタクトやメガネに直接ディスプレイを映し出し、戦闘の補助を行うような技術であり、既に実用化されて、ボンゴレ側でいうと獄寺もコンタクトディスプレイを使用しており、ディスプレイ上に標的の位置を探ったりにも使える。
この技術を使ってツナのグローブと連動させることで、ディスプレイに左右のグローブの炎の出力が表示するように作るのが目標。
これを使えば、左右の炎の強大さを視認でき、バランスが取りやすく、フルパワーが打てるというスパナの予測。さすがミルフィオーレが誇る技術者だけあり、その予測は真に正しかった。
だが、そう簡単にできるはずもなく、スパナが開発中のところへやってきたのが、〝妖花〟アイリス・ヘップバーン。アフロヘアーという女性にしては変わった髪型をした女性であり、入江の命令により、死茎隊と呼ばれる部下を引き連れてツナとスパナのいる第4ドッグへと殴り込んできた。
アイリスの雲の鞭によって肉体増殖を繰り返す死茎隊は、もはや人間の原型からかけ離れ、その戦闘能力はスパナのキングもスカを遥かに凌ぐ。
だが、キングモスカと死茎隊の違いは、生物であるかないかということ。
生物に対してなら、ボンゴレの血統が受け継ぐ超直感が冴え渡る。
自分の為にコンタクトを作り続けるスパナの為、ツナは死ぬ気状態になって死茎隊と戦った。
超直感を使い、死茎隊を翻弄し、互角の戦いを繰り広げるツナ。
だが、死茎隊は一人ではないため、その攻撃の余波がスパナまで届く。
壁や天井の破損。機械の爆発。スパナは元々技術専門の為、自分で戦う力を持たないため、なすすべなく怪我が増えるが、その手は止まらず、一心に作業を続ける。
ボロボロになりながらも完成させたコンタクトを、スパナはツナへと託した。
薄れゆく意識の中、スパナは見た。上空に滞空しているツナと、その瞳に宿る自身の傑作の姿を。
「眠るのはまだ早いぞ、スパナ。おまえの見たがっていた、完璧な
ツナの瞳に映るのは、括弧のような形の上下一対のスロットルバー。
右手の炎を上に、左手の炎を下のバーに映し、そこからさらに剛の炎なら赤色、柔の炎なら緑色となってバーを塗りつぶしていく。
敵の攻撃を避けながら、炎の出力と同時にスロットルバーが赤や緑に埋まっていく様子を見て、コンタクトが正常に動くことを確認する。
「オペレーション
『了解シマシタ、ボス。
ツナがそう呟くと、機械音がヘッドホンから流れ、ディスプレイに表示されていたスロットルバーにプラスされ、両手の位置によって変動するターゲットの印と、バーのゲージを繋ぐラインが出現する。「オペレーション
両手の炎の数値によって変動するバーとライン。両手のバランスが取れるとき、それは上下のバーを繋ぐ線が一直線となるとき。
右腕を後ろに向け、柔の炎を放出し、ディスプレイでだんだんと上昇するバーを見つつ、その数値が15万
そして拳を握るように、左手のグローブのクリスタル内に、剛の炎を溜める。溜められた炎はゲージとなって、スロットルバーを赤く染め上げる。
対するアイリスたちは、迎え撃つように死茎隊の増殖され強大となった肉体をもって互いに壁のように組み、ツナの攻撃に受ける準備を整えた。
『ライトバーナー炎圧再上昇、20万
ヘッドホンの音声と共に、最高出力を叩き出した右手の炎を固定したまま、左手のクリスタル内の剛の炎をさらに充填する。
『レフトバーナー炎圧上昇、20万
瞳の中のゲージがMAXの数字を叩き出し、上昇したバーの先端を繋ぐラインが一直線を結んだとき、瞳の中央にXの模様が浮かび上がった。
「うおおぉ!!」
ツナの左手から放たれた渾身の炎。
強大な炎は前方の敵を、壁を、全て飲み込み、一瞬で目の前の空間をかき消していった。
ディスプレイの指示通り、両手の炎が最高出力でありながら、最も安定の取れた出力を叩き出し、ぶれることなく、完全なる
その威力は、耐炎製の壁で作られているにも関わらずに、ツナ達のいる第4ドッグから3ブロック先を一瞬で消滅させるほどに、強大な威力を顕にしたのだった。
ツナ側ダイジェスト終了!
あとはメローネ基地もそろそろ終盤だ!