あとは他にもいろいろと出す予定なので乞うご期待!
イリスファミリーには、戦闘できる人間が少ない。
元々が企業ということも有り、戦える人間は『アヤメ』の3人と数人の人間のみ。
それはこの10年後も例外ではなく、むしろこの10年後になってからイリス自体も崩壊気味のため、全体の割合で考えれば戦闘できる人間の方が増えた。最も、この割合というのも、企業崩壊で非戦闘員が減ったため、必然的に割合が増えたというだけで、人数が少ないのには変わりない。
だが、その残り少ない者達が、それぞれ個々の実力の高さを示している。
だからこそ、イリスはそう簡単に崩れることはなかった。
10年前から存在する、イリスファミリーの戦闘部隊『アヤメ』。
だがこの名称は少し変化があり、現在は、イリスファミリー第
そう、第一。
およそ数年前ほどに、イリスの戦闘部隊は一つ増えた。
それが、第二戦闘部隊『シャガ』。
『アヤメ』のごとく、所属している人数はたった3人しかいないのだが、この3人も曲者、高い実力を兼ね備えている。
その内二人は、若干10代でありながら、多くのミルフィオーレの人間を地に沈めて来たという。
そしてその中で一応ながらもリーダーをつとめているのが、リル。
『アヤメ』のリーダーでもあるクルドの娘でもあり、剣と炎を教えられた少女。
10年前より成長した少女
***
鉄柱の上に立ったリルは、足を曲げてその場にしゃがみ、膝の上に肘をついて手で顎を支える。
澄んだその瞳に写っているのは、床の上でこちらを見ているグロと、そばのえぐれた壁にもたれかかる無残に壊れた甲冑の姿だった。
「んー、あの甲冑結構気に入ってたんだけど」
ちょっと残念、というふうにため息をつくリル。
対するグロは、まさか鉄の塊の甲冑から出てきたのが、こんな少女とは思わなかったのか、驚愕に普段から冷静な表情が珍しく崩れていた。
「貴様、リル!なぜ『シャガ』がこんなところにいる!」
イリスファミリーの『アヤメ』と『シャガ』は、この時代ではバラバラとなっている。イリスの本拠地が崩壊したことで、そこにいた者達が散り散りになり、技術舎の人物たちなど、非戦闘員の者たちは日本にある『獲洞山』のアジトへと移動をする。
戦えない彼らは、どこかミルフィオーレ等、敵の来ない場所で一箇所に集まるのを吉とした。
現に、今の現在まで獲洞山にいる彼らは全くミルフィオーレに気づかれていないのである。入江も地下のボンゴレアジトの存在を全く知らなかったため、まさか山の中にイリスのアジトがあるとは思っても見ないのだろう。
だがあくまで非戦闘員の者たち。
戦える者たちは一人でも割とたくましく生きているため、あちこちで活動をしている。その為、彼らの人数が少ないと言っても一箇所に集まることはごくまれなのであった。
「うん、待ち合わせかな」
「待ち合わせだと?」
「その前に、グロにはやられてもらおうけどね」
ピクリ。
グロの右目周りがピクリと動く。
見た目には冷静だが、内心では炎のごとく怒りがグロを燃やしていた。
実は割と昔、リルとグロは会ったことがある。当時まだリングもそこまで主流でなく、己の体技と武器のみの世界だったのだが、そこでグロはやられた経験を持っている。
その為、相手が相手だけに戦闘のボルテージも色んな意味で上がっているのであった。
だが、ふっと炎を消し、冷静な思考を開始する。グロの強みは、たとえ奇想天外のことが起こっても、冷静に対応する力。
確かに予想外のことがおこったが、当初の予定では甲冑を破壊して撃退すること。ならば自分のすることは、甲冑の中身であるリルを倒せば済む話。
「いいだろう。貴様の企みも、潰してやる。やれ!」
巨大雨ヒトデがグロの頭上から回転し、雨の炎を纏いながら鉄柱の上のリルに向かって突っ込んでいく。
バチイィ!!
だがその行く手は、突如現れた緑色の光によって阻まれた。
緑色の石が背中にはめられた、ディフォルメされたドラゴンに、羽を下に向けて円を描くような独特な形状のリング。そこから発せられたのは、辺り鋭く、眩しい位に発光するような、電気に限りなく酷似した炎。
(雷の死ぬ気の炎によるバリア?だが、あれほどの純度と規模の炎を出すなど、あのリングは一体!)
雷の炎は、死ぬ気の炎の中で一番の硬度を持つ為、リングそのものから発せられる炎単体で攻撃を守る盾として使用できる。
しかしそれも、持ち主の持つ覚悟の力と、リング自体にも高い精製度が必要となる。
雲雀はボンゴレリングを持たないため、匣を開くのに必要な雲の炎を発するのに、C級のリングを上回る炎をだしてリングを使い捨てすることになったが、炎を盾にする場合放出し続ける必要がある。強度のないリングだと、雲雀の二の舞になる。
その為、純度の高い炎を放出するリングを持つリルに対して、グロは少し舌打ちしていた。
(あそこまで炎を出すとはな。γ並の威力。だがそれもいつまで持つか)
スパアァン!!
「何!」
目の前で見た光景は、真っ二つにされる巨大雨ヒトデ。
しかもそこからいくつもの剣線が通り、一瞬にして巨大雨ヒトデは細切れとなってしまった。
そこにたたずむリルの手に持っていたのが、どこからか取り出した一本の剣。
反対の手に、蓋の開いた匣が握られていたため、おそらく匣の中から出したのだろう。
細かな装飾の施された、両刃のついた西洋風の剣。刃の表面を伝うように雷の死ぬ気の炎が纏われ、その剣でもって巨大雨ヒトデを切り裂いたのだと示していた。
(雷の炎の特性を利用した〝硬化コーティング〟か。こうもあっさりヒトデを切り
裂くとは・・・)
ただ単純に剣と炎の威力だけでない。持ち主の剣の腕も遥かに高い。
魔天剣豪、通称〝魔剣〟と呼ばれる『アヤメ』のリーダー、クルドの娘だけある。
「だが、剣一本で私は止められない。いたぶってやろう!」
雨の炎を注入し、匣を開いて中から出てきた巨大生物。
巨体の為、鉄柱の隙間を縫うように動いている足が、雨の炎を纏って敵を見定める。
グロが合図すると同時に、雨巨大イカの足がうねり、鉄柱の上のリルに向かって攻撃を仕掛けた。
タン!
鉄柱から跳びだし、周りの鉄柱を蹴りつつ、飛んでくる雨の炎が纏われた足を避ける。
自分の周りに何本か待機させ、グロは半分以上の足を飛ばしたが、周りにある鉄柱を巧みに蹴り、素早い動きでもって足の隙間を縫うように移動し、巨大雨イカの足の届かない所へと着地する。
(先ほどより早いだと!いや、これは当然の結果か)
ずっとリルがつけていたのは、重量のある鉄の甲冑。にも関わらず、雨ヒトデの攻撃を受け、剣でもって突き刺した為、甲冑のなくなった今はもはや動きが別人のようである。
「さてと、こっちもなんとかしなきゃね」
グロと少し離れた位置に立ったリルは、匣を取り出した。
西洋の剣でもってXを描くような模様の匣。
雷の死ぬ気の炎をリングから放出し、匣へと注入した。
中から飛び出した4つの物体は、くるくると回転しながらリルの上を滞空し、回転を止めて炎を纏ったその姿を見せた。
鍔元に、翡翠のような石がはめ込まれた、両刃の剣。刃の中に白い花が描かれている4本の剣が、雷の死ぬ気の炎を纏って滞空していた。
「これは、
一説に、花開く前の蕾が剣のように見えることから、ラテン語の
バチバチとほとばしる緑色の閃光を放つ、グラジオラスの花の描かれた両刃の4本の剣は、中々に幻想的な雰囲気を出していた。
「剣の匣兵器だと?初めて見るタイプの兵器・・・」
「でも、イカの足はまだあるから、もう一つ開匣♪」
バチィイ!!
再び匣を開くと、中からさらに同じ剣が4本飛び出した。
「8本もの剣だと!だが、
ないぞ!」
水に酷似した雨の炎を、竜巻のごとく回転させるようにして巨大イカの足に纏わせる。
だんだんと、巨大イカが足をうねうね動かしながら近づくグロ。対するリルの周りを、ヒュンヒュンと8本の剣が飛び交う。
「心配しなくても大丈夫だよ」
ボゥ!
反対の手にはめられた、ディフォルメされたドラゴンを模した色違いの、紅い石のはめられたリングから放たれたのは、真っ赤に燃える嵐の炎。
(雷と嵐の二種類の炎だと!?)
二種類の炎に驚くグロだが、リルはそのまま嵐の炎でもって開匣した匣から出てきたのは、シンプルな両刃の剣。その刃には、嵐の炎が纏われていた。
右手に握られた、雷の炎を纏う洋剣。
左手に握られた、嵐の炎を纏う洋剣。
2本の剣と、リルの周りを飛び交う、8本の雷の炎を纏った剣。
「さしずめ、
そう呟くと、床を蹴ったリルは、グロと巨大イカの元へと向かった。
グロは対応するようにして、巨大イカに指示をだし、10本の触手を巧みに動かし、リルを迎撃せんとばかりに攻撃をする。
ザシュ!
「こ、これは!」
グロが驚愕したのも無理はない。
迎撃するべく飛ばした巨大イカの10本の足が全て、一本一本の剣でもって針に糸を通すがごとく、正確に突き刺されていた。
しかも、嵐の炎の纏われた剣の突き刺さった足は、嵐の〝分解〟でもって燃やされていた。
「馬鹿な!
「
パシィ!
足を一本燃やし尽くして落ちた嵐の炎の纏う剣を手に取り、グロに向かっていく。
「知ってるグロ?グラジオラスの花言葉を」
雷の死ぬ気の炎でもって〝硬化〟のコーティングを施された剣で容易に突き刺された巨大イカの足は固定され、さらには雷の炎によってダメージはさらに倍に喰らわせている。
他の匣もなく、もはや戦えるのはグロ自身の肉体のみ。
だが、体術だけとなると圧倒的にグロの方が分が悪い。
「く、くそおおぉ!!」
馬上鞭を振るうグロだが、リルの振るう剣によってバラバラに切り裂かれた。
「グラジオラスの花言葉は、勝利!」
***
頑丈なコンテナが障害物のごとく置かれている訓練室の一室には、たたずむ人間と、疲労する人間、倒れている人間の三種類がいた。
コンテナや床の上に投げ出されている人間は、全てブラックスペル、第3アフェランドラ隊のの部下とされている人間達。紫色の長髪の少年、野猿も床の上に投げ出され、嵐の炎を纏う匣兵器である
2、3人の部下がかろうじてだがまだ戦え、太猿ともどもに、Fシューズによって訓練室上方に飛んで滞空していた。その手には全員武器を所持し、太猿は野猿と同じ
「くそ!なんでてめーみたいのがこんなところに!」
目を引くのは、床に転がる鎧。
兜や胴など、嵐の炎でもってメラメラと燃やされている鎧のパーツ。
そして周りに散らばって燃える鎧の中央に佇むは、一人の男。
柔らかな黒髪と考えの読めない表情に、その手に持った一本の刀。
刀には、緑色に発光する鋭い雷の炎がバチバチと纏われ、その人物の周りには、同じく雷の死ぬ気の炎が纏われた4本の剣が床に突き刺さっていた。
「イリスの『シャガ』に所属してるコルが、なぜこの基地に!」
手に持つ
同様に部下達も、晴れの炎や雲の炎を纏った武器を持って炎を飛ばす。
訓練室の為、対匣兵器でも頑丈にできているのだが、それでも威力があるのがわかるように、まとめて飛ばされた炎はコルの下で爆発を起こす。
だが、爆風の中から飛び出してきたのは、無傷なコル。
そのままコンテナを蹴り、上空にいる太猿の他の部下の元へと飛び、目にも止まらぬ斬撃でもってFシューズを破壊した。
「うわぁ!」
そのまま墜落する前に、刀の柄頭でもって強打させ、意識を刈り取って床に落とす。
そうするうちに、ついには残りは太猿のみとなってしまった。
「おらぁ!そう簡単に、やられるかぁ!!」
「この基地に来たのはただの待ち合わせ、気にするな」
そう言うコルに、太猿はもはやなすすべがなかった。
メローネ基地もそろそろ終盤が見るかな?
次は途中だった光努の話かも。