間違えて消しちゃったので、再投稿!
少し文が変わってしまったのなら、ご迷惑をおかけします。
ビキビキ、パキイィン!!
「おっと」
光努の持っていた、木のような絵柄の書かれた匣、
倒れているニゲラはその光景に驚いたような表情をしたが、反対に光努は少し嘆息するような表情をしていた。
「うーん、やっぱり試作品は一回限りか。しかも中身はそのままだし」
砕けた匣の破片を袋に詰めてポケットに入れる光努。
一つのフィールドを作り出すといっても、やはりそう簡単にはいかないのが現状。一回限りで匣は大破、そして中からでたフィールドはしまうことができずそのままという、なんともはた迷惑な匣兵器である。
「なんだ・・・その匣は・・・」
ダメージがまだ抜けていない為、起き上がることはできないが、意識はかろうじて取り戻したニゲラが光努に語りかける。
「まだ試作だけど、結構面白いだろ?」
「はは・・・とんだ面白さだな・・・」
「じゃ、もう少し実験でもしてみるか」
そう言って倒れているニゲラに近寄り、その手から雲のリングをひょいと抜き取る。
何をするのかとニゲラは思ったが、そのまま光努は自分の手に雲のリングをはめた。
ボゥ!
(!これは、雲の炎!?)
光努がはめたニゲラの雲のリングから吹き出したのは、ニゲラと同じ雲属性の死ぬ気の炎。
そして光努が懐から出したのは、葉っぱのような模様の描かれた新たな匣。
そのまま雲の炎を、匣の中へと注入した。
「迷いの森、
その瞬間、中から飛び出したのは、雲の炎の纏われたウニのようなもの。
「実際は、ただの針の集合体なだけだけどな」
パチン!
光努がリングのはめられた指を鳴らした瞬間、全方位にわたり針が飛び出した。
絶妙な角度で飛び出した針は、光努とニゲラの二人には当たらず、周りの木々や草花に刺さっていった。
その瞬間、針に纏われた雲の炎が植物に吸い込まれていき、脈打つようにしてめきめきと成長と分裂を繰り返していった。
「今のは・・・・」
「ん?フィールド匣には別の属性による付加をかけることで、さらにアップデートすることができるんだ」
晴れの炎の特性である〝活性〟による植物の急成長。
そして、雲の炎の特性である〝増殖〟。
通常、フィールド匣は最初の植物の成長までで終わるものだが、別のアップデート用の匣を使うことで、成長した植物をさらに増殖させ、フィールドを広大かさせることができる。
ただやはりこのアップデート用の匣も、一度限りの匣であり、言い方が悪ければ使い捨てと言うことができる。まあ試作品なのでここが限界といえば限界なのだが。
「この部屋での成長にとどまった植物は、さらに増殖成長を繰り返して、最終的にはメローネ基地全体を森にする」
「何!?」
「予定なのだけど、多分そこまでいかないだろうな。この広さだとせいぜい3ブロックくらいを森にするくらいかな」
(それでも十分恐ろしいが・・・・・)
一先ずメローネ基地を動かす関係上、強度的には普通の植物より少し強いくらいの植物群の為、部屋と部屋を動かすには都合はきたさない。3ブロックというと広さ的にはかなり広い。今だ完成してなくて助かったと、ニゲラは内心少しほっとしたのであった。
「じゃ、これ」
「これは?」
コトリと、ニゲラの倒れている横においたのは、250mlのペットボトル大の小瓶を置いた。中に入っているのは、黄色みがかった蜂蜜だった。
最初から持っていた、というよりかは、この森の中でとってきた蜂蜜。
「この森で獲った蜂蜜。晴れの炎が練りこまれてるから飲めば早めに回復するとお
もうよ。じゃあな」
戦った自分にここまでする光努に少し唖然としていたが、去っていった光努を見て、穏やかに笑みを浮かべるニゲラだった。
***
雷のマーレリングを持つ6弔花の一人である、〝電光のγ〟は、油断をしなかった。
並盛神社にて、10年後の雲雀恭弥と戦い敗れたが、それがγの全力と言えば否だった。
10年前の獄寺と山本を圧倒し、戦力的には優位に立っていたためなのか、己の実力に絶対の自信があったためなのか、その後の雲雀恭弥と戦ったとき、油断もあった。
ボンゴレ最強と謳われる雲雀だが、ボンゴレリングの持たない状態でγを簡単に圧倒できるかといえば、否である。ミルフィオーレの6弔花というのは、そこまで伊達ではない。
油断をしていたから負けた、というには若干難しい程にγも全力だったのだが、それでも自分の持てる力を出し切ったといえば、やはり否。
だが、メローネ基地の移動によってγと鉢合わせた、了平と獄寺の二人。
二人が対峙したとき、もはやγには一欠片の油断もなかった。獄寺は、以前に出会ったγと今のγとで、どこか雰囲気が違っている事を感じた。
「女神が微笑んだのさ」
そう言ったγと了平との対決は、すぐに終わりを告げた。
γの武器であるエレットロ・ビリアルドは、一本のビリヤードのキューと、ビリヤードの9つの玉の組み合わせの匣兵器。キューとビリヤードの玉全てに雷の炎が纏わせ、玉を直接相手にぶつけることもできるが、宙を飛ぶ複数のビリヤードの玉と玉同士を雷の炎で繋ぎ、広範囲にわたり、鋭い雷の炎によって相手を倒す。
雷の炎の特性は、〝硬化〟!
炎単体で鋭い雷のごとく燃える雷の死ぬ気の炎は、純度が高くなれば高くなるほど鋭く切り裂き、その硬度を増す。
了平は飛んでくる玉を避けることには成功したが、広範囲で周りを囲む玉を雷の死ぬ気の炎で繋ぎ、中に入る相手を攻撃する技、『エレクトリック・タワー』によって全身を切り裂かれた。
この技を避けるには、雲雀の行ったように玉を避けながら一直線にγの元に向かうか、玉の放電しない範囲まで離れること。
そして、放電する雷の炎をなんらかの形で防御すること。
獄寺は、倒れる了平を守るように匣兵器を展開させた。
黒い骨が円を描くように複数作られたような、異様な形状をした匣兵器。独特なデザインのその匣は、三人の発明家の中で、最も芸術家肌だったイノチェンティによるオリジナル。
見た目によくわかる真っ赤な嵐の炎を纏われたその匣は、γの雷をほぼ完璧に防いだ。
異様なる形状をした複数のシールドを、自分を囲うようにして展開し、了平を破ったエレクトリック・タワーを完全に防いだ。
だが、その光景に違和感を覚えるγ。
嵐の炎の盾で雷の炎を完璧に防ぐ、という芸当をしてのけた獄寺。
だが本来、炎単体での攻撃力は高くても、防御力がそう高いわけでない嵐の炎。にもかかわらず、雷のマーレリングとγの覚悟が合わさった高純度の雷の炎を、通常なら防ぐことは不可能。匣兵器の力、と言ってしまえば簡単だが、それにしても不自然な点がいくつもある。
まあ、まだまだ獄寺の匣の兵器を全て理解したわけでないのだから、わからないのが当たり前。
戦いは、ここからが始まり。
己の覚悟をかけた二人の戦いは、始まった。
***
「獄寺隼人はγと戦い、山本武は幻騎士か」
コントロールルームで、獄寺とγとの戦いを見ながら呟く入江正一。各地でボンゴレとミルフィオーレの戦いが始まってから、襲撃から劣勢に立たされていた入江の不安や焦りはだいぶ拭えた。メローネ基地を予想より速く使うことになるとは思わなかったが、その甲斐あってか、その後の進捗は悪い状況ではない。
いくらボンゴレの守護者といっても、まだまだ中学生。
ミルフィオーレのA級の6弔花と戦い、ただで済むわけない。とりわけ幻騎士は、入江曰く白蘭の懐刀。戦いにおいてはかなりの信頼を置ける人物である。
「沢田綱吉は、まだ見つからないのか」
「はっ!只今捜索中であります!」
ブラックスペルB級のスパナが作り上げた4体のモスカ。囮役を買ってでたツナは、その4体モスカとの激闘を繰り広げた。最終的には用水路に落ちて行方不明、というスパナの報告を受け、入江はツナの捜索をすでに開始していた。
だが、いまだツナは見つからず、モスカの戦闘記録データをサルベージしているが、それも今だ時間がかかりそうである。
「獄燈籠に関しては、界羅が行ってくれたからよしとしよう」
白蘭の紹介で来た界羅は、入江がどうしようかと思っていた獄燈籠の元へと回された。正直入江はこの界羅という人物を、全面的に信用しているわけではなかった。にもかかわらず、このメローネ基地で敵の迎撃に努めさせるのには、それにたる信頼があった。
そしてもう一つ、その実力も高かった。
「最後は、イリスファミリーのボス、白神光努か」
正直光努の扱いに関してはどうしようかなと思っている入江。
〝鬼熊使い〟と呼ばれるニゲラは、自他共に認める強者。だが、光努との戦いにおいてはほぼ一方的にやられた。結果的に光努は無傷で圧勝した。
今このミルフィオーレで残っている戦力は、〝妖花〟アイリスと〝
一体誰を向かわせたものかと思案する入江だが、通信機から唐突に呼ばれた部下の言葉に思考を一時中断させた。
「どうした」
『そ・・それが・・』
返答に困っている様子。いや、むしろ言葉の端々からどこか焦っているようにも聞こえる部下の声色に疑問を持ちながら、部下がいるであろう地点の監視カメラの映像を開いた。
しかし、その映像を見たとき、入江はその表情を驚きに染めた。
通信をしてきたホワイトスペルの部下が通路に立っている映像。手には実弾のサブマシンガンを持っていることから、匣を支給されていない下級の兵隊であることが伺える。
基地内の警備だけなら匣を扱える兵士でなくともよい。リングと匣を扱える相手には少々心もとないが、刃物や銃も立派な装備であるため、ある程度の戦いで使用されている。
問題なのは、その兵士と少し距離を空けて相対している人物。いや、人物と呼んでいいものなのか。
「甲冑・・・だと!?」
全身を、銀色のプレートアーマーで覆った姿、正しく西洋の騎士甲冑。
だが、この場においてまったくそぐわないその格好が、立派な西洋の騎士のイメージと逆に不気味な雰囲気を放っている。
顔を全身をフルフェイスで隠し、手や肩、足、胴など、人の肌の見える部分がまったく無い甲冑姿。その左手には上部が平で下部が鋭い五角形の鉄の盾を携え、その腰には洋風の剣が刺さっていた。
少し動くだけでガチャリとなる音。部下である人物は実弾を放つが、全身を覆う甲冑の前には全くの無意味。だんだんと近づいてくる甲冑の音が、部下である男に恐怖を与えていた。
重量があろう甲冑を着ているにもかかわらず、重さを感じさせないなめらかさで動く騎士は、銃弾を正面から受けて部下の前に達、盾の持っていない右手を振るったと思うと、部下の男は倒れ気絶した。
その光景に唖然としていた入江だが、それもつかの間。別の部下からの通信が入江の耳に届いた。
『入江様!支給応援を!』
「今度はなんだ!」
カメラを操作して、先ほどと同じように部下がいるであろう部屋のカメラを開いた。
そこに写っていたのは、槍を携えた下級兵士の姿と、相対している、鎧武者。
胴は黒光りする鎧で囲まれ、袖、籠手、手甲と腕を覆う鎧。足や腕を見渡しても、やはり人肌の見える部位がない。
面具、つまり顔を守る用の仮面のような物を兜と共につけているため、顔も全くわからない。その腰には、日本刀が刺さっていた。
先ほどの騎士もそうだが、この武者も十分に異常なる雰囲気を放っていた。
手に持った刀を、居合のように抜くと同時に、部下である人物が持っていた槍は、柄と刃でバラバラに分割され、滑り寄った武者の一撃で部下は気絶した。
騎士と武者。正反対のような同じような人物の映像を見た入江は、驚愕していた。
「なんなんだ・・・・こいつらは・・・」
甲冑と鎧をならし、移動を再開する二体の映像を、驚きのまま見つめるのだった。