庭が爆発で生じた煙に包まれた。爆風が周りの木々を思い切り揺らした。
「な・・・あ・・バカな・・・・何が!?」
爆弾の起爆スイッチを押したカルカッサ部隊の隊長が横たわっていた。周りの部下たちもさっき倒れたのと同じ状態。つまり爆発の影響を受けていなかった。
リルとコルはしゃがんで頭を伏せて爆風を受け流していた。
そして光努は、倒れた隊長の前に立っていた。
「ふざけるなよ」
「な・・に?」
「まだお前の仲間がいただろうが。なのに自爆だと?そんなに任務が大事か?お前のしたのは意味のない自殺行為だ。得るものなど何もない」
「ふ・・お前らが道連れなら本望だ」
「お前の勝手で仲間を危険にさらすな!リルとコルもいたんだぞ!何かあったらどうする!お前が死んでも誰も代わりに責任をとるやつはいないんだぞ!」
「光努・・・」
「・・・・・」
リルとコルが光努の言葉に目を見開いた。子供とはいえ自分を攻撃した奴のことを心配してくれるのに吃驚していた。
「次同じことをするなら・・・・・今度は本気で潰す」
「くっ・・・」
そのまま男は意識を失った。
光努はリルとコルの元へ歩いていく。
「リル、コル。大丈夫か?爆風も結構強かったからな」
「うん、平気だよ」
「光努は?大丈夫」
「ハハハ、俺は頑丈だからな」
「3人とも!無事か!?」
母屋の方から灯夜が走ってきた。
「灯夜。見てたのか?」
「まあな。よく間に合ったな」
「まあな。平和的に終わって良かったよ」
光努はやったのは簡単なこと。
男が起爆スイッチを押す刹那、足に力を込めて一足で男に肉薄し、男の意識を刈り取る。しかし倒れながらも起爆スイッチを押したのでスイッチが押されてから爆発までのコンマ数秒の間に、爆弾を壊さないよう加減をしつつ思い切り蹴り上げ上空へ押し上げた。そして爆発。
文字にするだけなら簡単だけど実際にやるとなるととても難しい。僅かな失敗が命取りとなる。
上空およそ300m程の所まで一瞬で上がったがやはり爆発力は強く、そして爆風もその分強くなっており周りの木々を揺らしカメラまで破壊した。
「そうか。それにしても・・・・・なつかれたな」
「ん?」
「えへへ~」
「・・・・」
灯夜の目の前には光努にしがみついてぶら下がってる子供二人が目に映った。
「この二人がここまで懐くとは、珍しいな」
「まあいろいろと。それよりこいつら全員どうにかしといてくれ」
「フッ。まあ任せておけ。二人は頼んだぞ」
「ああ」
その後、灯夜がトラックを持ってきて黒装束を全員積み込んでどこかへ持ち去っていた。
「さて、俺達は――――ん?」
「zzz」
「スピー」
「とりあえず母屋に戻るかな」
***
光努side
とりあえずさっきの部屋に来てリルとコルを寝かせておいた。
ひとまずやることもないから敷地内でも散策しておこうかな。
だいぶ広いこの敷地内。建物がいくつかあり灯夜やリルやコルが基本的に住んでいるのは敷地の中央にある母屋である。その周りに倉庫や工場、他にもよくわからない建物などが多く存在している。後は間に道や森、庭に他にもいろいろとある。
「さて、どこから回ろうか」
母屋から出て森の間にある道を歩いていると前方に何か落ちていた。
「・・・・・・」
落ちていたのは人間。背中程ある金髪を後ろで一つにくくって白衣を来ている10代後半くらいの男。目の前で行き倒れていた。
「・・・・おーい。大丈夫か?」
「・・・・・・」
「・・・返事がない、ただの屍のようだ」
「だ・・だれが・・・屍だ・・・」
「大丈夫か?」
「あー・・・頼む・・・・・技術舎まで・・・連れてってくれ」
「技術舎?地図とかあるか?」
「こ・・れだ・・」
白衣のポケットから紙を出して腕を上げて渡された。地図を見てみるとこの道をまっすぐ行けば技術舎とやらにつくらしい。
それにしてもこの男いったい何者?まあ別に敵というわけではなさそうだな。地図とか持ってたし。
ひとまず男を背負って道をまっすぐ歩くとなんだか近未来的なドーム状の建物が見えて来た。これは面白い形だ。
自動ドアとなってるドアをくぐって中に入る。
「お邪魔しまーす」
「ああ、いらっしゃい。君は?て、主任!全く、また行き倒れてたんですか!?」
「また?」
「ああ、すまないね。ここの主任でな。昔から疲れやすくてほんの数十メートルを歩くだけですぐに疲れて倒れるんだ」
「なるほど。ここから母屋までの道に間で倒れていたよ」
「ああまたですか。よくあるんで気にしないでください。こちらで引き取りますよ。おーい!誰か手伝ってくれー!」
「あー、また主任が倒れたのか」
「あれほど誰かと一緒に行ってくださいって言ったのに」
部下と思われる白衣の男たちが数名来て主任と呼ばれる男を担いでいった。
「さてと、こちらは助かったわけだけど。君は?」
「あ、どうも。白神光努だ。イリスファミリーのボスになったからよろしく」
「ボスって、黒道さんが言ってた・・・ホントに見つかったんだ」
「黒道って誰?」
「ああ、黒道灯夜さん。オレらのボス代理の人」
「灯夜のことか」
「ええ。まあいきなりボスが現れたといってもピンと来ないんですけどね」
「まあそりゃそうだ。そこで俺はボスになるにはどうすればいいのかと考えてみた」
「ふむ、それで?」
「今日はこの技術舎で仕事をする!というわけでよろしく」
「え!?素人がそう簡単に入れる所では・・・・ていうか今は主任が寝込んでいるんですが」
「ちょうどいい。一人抜けたから俺が入ろう」
「・・・・・・まあ、どうぞ」
***
「ん・・・ここは・・」
「あ、主任。目が覚めましたか?」
行き倒れの所を光努に連れられて技術舎と呼ばれる建物に戻ってきた主任と呼ばれる若い男はベッドの上で目を覚ます。周りは機械だらけで作業をしていた部下の男たちは目を覚ました主任に声をかける。
「えーっと、どうなったんだっけな~。確か歩いていて・・・疲れて・・・そのまま倒れた」
「全く。あれほど一人で外出しないでくださいって言ったのに」
「ここには通りすがりの少年が連れてきてくれたのですよ」
「少年・・・そうか。礼を言わないとな。今どこにいる?」
「確かラインと一緒に第二研究室にいるはずです。確か少年の希望で一日体験入室
をしているそうですよ」
「そうか。俺ちょっと言ってくるよ」
男は部屋から出て廊下を歩いていく。少しあるいて第二研究室と書かれたプレートのかかっている扉を開けて中に入る。
「おーい、ライン。俺を助けてくれた少年は・・・どこ・・だ・・・」
「ここは燃料をもう少し分散して左のブースターの出力をあと30%ほどあげよう」
「え?でもそれだと機体の強度が持ちませんよ。そろそろ限界ですし途中で破損しますよ」
「大丈夫だ。そこはこれをここで使ってフォルムをこうすれば空気抵抗が少し軽減されてダメージも分散され…………」
「確かに!・・・・・これならなんとかなりますね」
「後は………して………を……すればいいはずだ」
「確かに!これは盲点、というより普通考えつきませんよ」
「まあ環境(というより世界)の違いかな?」
そう言いながらよくわからない会話を二人はしながら手元でいろいろと機会を弄っていた。
「おーい、二人ともー」
「ん?主任じゃないですか!起きたんですか」
「おっ?無事だったのか。まあ疲れてるだけだったみたいだしね」
そう言って動かす手を止めてひとまず話をすることにした。