インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~ 作:さすらいの旅人
活動報告で知っている人はいると思いますが、私は先月にギックリ背中となってしまいました。
完治ではありませんが、日常や仕事に差支えが無いほどに回復しています。それでも朝起きる時には背中に痛みは走っていますが。
執筆はしましたが、間が空いてしまったせいか今回の内容は短いです。
取り敢えずどうぞ!
「本音、寝坊した罰として今日の訓練では色々と手伝ってもらうからな。文句は言わせないぞ」
「え~……」
「…………………」
「………わ、分かったよ~」
一夏のいるところへ向かっている最中、ちょっとした罰を言った途端に本音は少し嫌そうな顔をしたが、俺の無言の眼差しであっと言う間に負けて頷いた。
本音の返事を聞いた俺はよろしいと言って、一夏がいる待ち合わせ場所に着く。
「悪い一夏、待たせた」
「お、和哉……って、何でのほほんさんを抱えてんだ?」
「そうした方が手っ取り早いと思ったからだ」
「やっほ~、おりむ~」
抱えてる本音を下ろすが若干反省の色を見せてなかったので、
「おい」
「あ……お、遅くなってごめんね、おりむ~。寝坊しちゃった」
俺が少し声を低めで言うと、気づいた本音はすぐ一夏に謝りながら理由を言う。
「あはは……。やっぱり和哉の言うとおりだったか」
本音の謝罪に一夏は大して怒っておらず、理由を聞いて俺の予想が当たっていた事に苦笑いをしていた。元々優しい奴だから、一夏はあんまり怒る事はしないからな。
「ところで一夏、俺がいない間に箒達の内の誰かと会ったか?」
「ん? ああ、お前が行った直後に偶然セシリアと会った」
念の為に訊いてみると、やはり一夏は遭遇していたようだ。しかもセシリアか。
内心面倒な事が起きそうだと思っていた俺だったが、一夏の口から予想外の事を言う。
「何かセシリアのやつ、夏休みを利用して本国のイギリスに戻るんだってさ。オルコット家当主の勤めとかで」
「それはそれは」
てっきり一夏に何処に行くのかを追求するのかと思っていたが、思わぬ展開に俺は内心安堵する。
そう言えばアイツ確か名門貴族のお嬢様で、しかも当主だったな。IS学園ではセシリアを貴族として見ず、一人の友人として接していたからすっかり忘れてた。
当主の勤めとかは庶民の俺には全く分からんが、色々と大変なんだろうな。アイツがIS学園に戻って来た時には、俺からの労いとしてアップルパイを作るとしよう。
「あと和哉が言った内容を聞いて、『必ず生きて帰ってきてください』って言いながら逃げるように去ったぞ。お前の名前が出た途端に顔を青褪めてたし」
「ほほぅ」
セシリアが戻ってきた後の事を内心考えてると、一夏のもう一つの報告に予想通りと思いながら笑みを浮かべた。
そう言う反応をしたって事は、どうやらこの前のお仕置きで相当こたえたようだな。ま、普段やらない事をやらされて全身筋肉痛になったんだから無理もないか。
因みに全身筋肉痛となっていた箒を除く一夏ラヴァーズ達は、その所為でまともに動く事が出来ずに授業を休もうとしていたが、千冬さんが許さんと言わんばかりに強制的に出席させられた事によって一日地獄を味わっていた。その時には俺を恨みがましい目で睨んでたよ。ま、俺は自業自得だと思って流してたけど。
「やっぱり俺の名前を出せばすんなり引いてくれたようだな」
「いや、あれは引くと言うよりも和哉に対する恐怖みたいな感じだったぞ。お前容赦無いから」
「かずーは怒ると恐いからね~」
「ほっとけ」
まぁそんな事より、これで漸く揃ったから出発するとしよう。早く行かないと今度は箒達に鉢合わせてしまいそうだし。
「取りあえず早く此処を出るぞ。いつまでも話してると箒達に会うかもしれないからな」
「おう」
「お~」
そして俺達は学園を出る為のモノレール駅へ向かった。
◇
「なあ和哉、ちょっと良いか?」
「何だ?」
モノレールに乗って目的地の駅に着き、そこから出ると一夏が俺に尋ねてくる。
「悪いけど家に寄ってもいいか? 道場へ行く前にちょっと家の様子を見に行きたくてな」
「ああ、構わん。俺も一度家に戻るつもりだからな」
俺も俺で道場に行く前に荷物の整理や、修行する時の道着を取りにいく予定だ。一夏も一夏で一度家に戻ると予想していたので問題無い。
「そっか。じゃあ先ずは和哉の家から行くか?」
「いや、一緒に行動してると時間が掛かるから一旦此処で別れよう。本音はどうする? 一夏に付いて行くか、俺と一緒に行くか」
「私はかずーと一緒に行くよ~。かずーの家見てみたいし~」
「そうかい。別にそんな大した所じゃないんだが……まあいいか。此処からは歩いていくからな」
本音はそう言いながら俺の左腕に引っ付いてくる。出来れば暑いから離れて欲しいんだが、コイツに言っても無駄だから敢えて言わない。
「まあ、のほほんさんとしては当然の選択だな」
「何が当然なんだ?」
思わず突っ込む俺だが一夏は何も言い返してくれなかったので、取り合えず集合場所を決めることにした。
「それじゃあ集合場所は……一時間後に喫茶店『AMAGI』の入り口前で良いか?」
「ああ、あの喫茶店か。分かった。じゃあ後でな」
頷いた一夏は家に戻ろうと一足早く俺たちと別れた。
「それじゃ俺達も行くとするか。言っとくが本音、ここからは歩いていくからな」
「分かってるよ~」
先に戻る一夏を見た後、俺は本音と一緒に自分の家へと向かう。
駅から歩いて5分以上経っているが、俺の左腕に引っ付いてる本音は未だに俺から離れようとしなかった。
「なぁ本音、前から思ってたんだが、何で君はいつも俺に引っ付くんだ?」
「私がこうしたいからだよ~」
答えになってない本音の返答に思わず内心呆れてしまう俺。
学園で引っ付かれるのは別に構わないんだが、流石にこんな場所でされたら周囲にいる人達に誤解されてしまうから止めて欲しかった。今の時間はそんなに人が少なくて知り合いがいないからまだ良いものの、もし友人の五反田弾や御手洗に会ったら確実に誤解される。
「いや、俺が訊きたいのはそうでなくて――」
『出来れば私としては離れてもらいたいですね、布仏本音』
「――ん? 黒閃」
待機状態になってる黒閃が突然言って来た事に、本音は少しムッとしていた。
「何でなの~? 別にいいじゃない~」
『いくら私が待機状態とは言え、そんなにマスターの左腕に密着されては流石に少しばかり暑苦しいです』
暑苦しいって……腕輪なのに本音の体温を感じ取れるのか。じゃあもしかして待機状態では常に俺の腕の体温を当てているって事じゃ……。ISとは言え、女性型である黒閃に何だか申し訳ない気持ちになってきた。
『マスター、お気になさらないで下さい。私はマスターの体温を感じている事で常に傍にいると認識していますので』
「……さいですか」
どうしてコイツは千冬さんみたいに俺の考えてる事が読めるんだろうか。俺も一夏と同じく分かり易いのかな?
「むぅ~~……」
「どうしたんだよ本音、そんな剥れ顔になって」
「べっっつに~。かずーって黒閃には凄く優しいんだな~って思っただけだよ~」
何かちょっと棘がある言い方だな。俺って本音の気に障るような事でも言ったか?
俺の左腕から離れた本音はツンとしながらそっぽを向いていたので、取り敢えずどうにかしようと左手で本音の頭を撫でた。
「何IS相手にムキになってるんだよ、君は」
「……こ、こんな事したって私の機嫌は直んないだからね~」
撫でられてる事に少し気持ち良さそうな顔をしてる本音だったが、未だに抵抗をしてる様子だ。
「ほう? じゃあもう止めるか」
「……つ、続けて~」
予想通りと言うべきか、手を放そうとする俺に本音が懇願してきた。相変わらず分かり易いな。
俺に頭を撫でられて本音の機嫌は直ったが――
『……布仏本音、それは少しばかりズルイです。マスターもマスターです。そうやって布仏本音を甘やかすのは如何なものかと思います』
今度は黒閃が不機嫌になってしまった。
えっと……黒閃を人間状態にさせて頭を撫でた方が良いんだろうか?