インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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 本編を読まれる前に、活動報告で書いた件について色々とお騒がせして申し訳ありませんでした。

 あと、しつこいようですいませんが、この作品を読んで嫌悪感を抱く人、オリ主や設定が気に入らないと思われる人は是非ともブラウザバックをお願いします。
 
 


第85話

「な、何か無茶苦茶だな……。俺、もう何が何だが……」

 

「ここまでISの常識を悉く壊されるとは……。これは流石の姉さんでも……」

 

「わたくし、もうこれ以上は処理が追い付きませんわ……」

 

「ISが人間になるなんて、もう非常識きわまりないわよ……。ていうかあの黒閃って子、ISのくせに何であたしより胸が大きいのよ……!」

 

「ご、ごめん……。僕もう混乱してきたよ……」

 

「むぅ……あのISは師匠の隣にいるのが当然のように座ってるな。弟子として面白くない……」

 

 十分ほどで一夏達がやっと正常な状態に戻るが、それでも黒閃の非常識な行動に疲れきった顔をしていた。それは俺にも言える事だが。

 

 因みに鈴は何故か黒閃を目の敵にするかのように胸を凝視しており、ラウラは面白くなさそうにジッと黒閃を見ている。

 

「ううう……織斑先生、もう私どうすればいいか分かりません……(涙)」

 

「………はぁっ。分かったから泣くな山田先生。私が学園側に報告しておく」

 

 もう完全にお手上げ状態で千冬さんに縋り付く山田先生に、何もかも達観するように山田先生の身代わりになろうとする千冬さん。

 

 いや、なんか、本当に本当にすいません。

 

 酷く申し訳ない気分になって無言で一夏達に頭を下げていると、黒閃が不思議そうな表情で見ていた。

 

「? 何をしているのですか、マスター?」

 

「気にしないでくれ。それよりも説明を」

 

「は、はぁ……。分かりました」

 

 俺の行動に不可解に思ってた黒閃だったが、取り敢えず説明しようと一夏達の方へと顔を向ける。

 

「貴方がたはもう既に大方の予想は付いてると思われますが、私がこのような事が出来るきっかけとなったのはマスターとの出会い、イギリス代表候補生セシリア・オルコットとのクラス代表決定戦から始まりました」

 

「え……? わ、わたくしの戦いから、ですか……?」

 

 黒閃がきっかけを話すと、さっきまで疲れきっていた様子を見せていたセシリアが一番に反応した。

 

「はい。マスターが織斑一夏と共にセシリア・オルコットと戦う前までの私は、学園によって設定された訓練機で一生を終えると諦めていた意思の無い人形でした。無論、それは私だけでなく他の訓練機にも言えることですが」

 

「「……………」」

 

 打鉄時代の頃を説明する黒閃に、教師である千冬さんと山田先生は複雑な顔をしていた。自分が設定してないとは言え、同じIS学園関係者としてISの意思を奪った事に、申し訳ない気持ちになっているかもしれない。

 

「そんな人形にマスターが私を己の手足のように扱い、訓練機であるにも拘らず、代表候補生専用機持ちであるセシリア・オルコットや凰鈴音に勝利した事で、私は意志が戻り始めました」

 

 セシリアと鈴との戦い、か。まぁ確かに勝ったけど、あの時の二人は最初俺を甘く見ていたから完全勝利とは言えないんだけどな。あくまで相手の裏を掻いて勝ったようなもんだし。もしセシリアや鈴が俺との戦いで何の油断も慢心も無かったら、IS操縦経験に乏しい俺はすぐに負けてると思う。

 

 と言いたい俺だが、黒閃が真剣に説明してる最中にそんな無粋な真似はしたくないので、敢えて黙って聴くことにする。

 

 因みに黒閃に名前を出されたセシリアと鈴は、あの時の事を思い出したのか、悔しそうな顔をしながら俺を睨んでいた。同時に次に戦う時は絶対勝つ、みたいな事を目で訴えて。

 

 そんな二人に黒閃は気にしないように話を続けようとする。

 

「それ以降もラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノアにも圧勝し、更には織斑一夏との戦いでマスターがある宣言をした事によって、私の意志は完全に戻ったと同時にある物も蘇りました」

 

「宣言? それって学年別トーナメントの時か?」

 

「はい。マスターが『IS学園最強を目指し、元世界最強の織斑千冬を倒し、各国IS操縦者代表全てを打ち倒して世界最強になる』と聞いた私は歓喜に震えました。マスターとなら私は再び頂点を目指すことが出来ると」

 

 問いに答える黒閃が喜びに満ちた表情をしながら俺を見ていたが、次にはコロッと変わるかのように申し訳なさそうな表情をした。

 

「ですが、私がマスターの宣言に心を奪われていた事によって、私の装甲が悲鳴をあげているのを気付かず、マスターの戦いを邪魔してしまいました。あの時は本当に申し訳ありませんでした、マスター」

 

「い、いや、別に謝らなくて良いって。って言うか、俺自身もお前に無理をした戦い方をしてたし」

 

「それでも、私はマスターの戦いを邪魔した事には変わりありません。あの時ほど自分が愚かだったと思った日はなく、マスターに顔向け出来ませんでした」

 

「………あ~分かった分かった。兎に角お前が意思を持った理由が俺だって言う理由は分かった。じゃあ次に、何故お前はセカンドシフトが出来たんだ? 訓練機には出来ない筈なんだが……?」

 

 このままだと自らを責め続ける思った俺はこの場にいる全員が一番気になる話題に変えると、黒閃は意思を汲み取るかのように問いに答えようとする。

 

「先に結論から言いますと、私がセカンドシフトが出来たのは、篠ノ之束が開発した第四世代型IS“紅椿”、そして篠ノ之束の妹である“篠ノ之箒”のおかげです」

 

 黒閃誕生の理由を知って一斉に箒を見る俺達。

 

「あ、紅椿と私が……? わ、私は何もしてないぞ……!」

 

 いきなり振られた箒は身に覚えがないと言わんばかりに両手をパタパタと振って、首も横に振っている。

 

 だが俺には心当たりがあった。

 

「いや待て箒、ひょっとしたらあの時かもしれないぞ」

 

「あ、あの時?」

 

「ほら。福音との戦闘中にお前が紅椿のワンオフ・アビリティーを発動させた時だ」

 

「………ああっ!」

 

 あの時の場面を言うと思い出した顔になる箒。

 

「た、確かにあれは《絢爛舞踏》が発動中の時に、和哉が私の肩に手を置いた瞬間に打鉄が突然光って――」

 

「そうです。篠ノ之箒が紅椿のワンオフ・アビリティー《絢爛舞踏》が発動中にマスターが触れた事によって、私は訓練機と言う殻を破り、生まれ変わる事が出来ました。感謝します、篠ノ之箒。もしあの場面に遭遇してなければ、私は未だに打鉄のままでした」

 

 ペコリと頭を下げて礼を言う黒閃に、箒は少し複雑そうな顔をする。

 

 箒が複雑な顔をしてる理由は分かる。あの時の箒は一夏とまた一緒に戦いと願ったから《絢爛舞踏》を発動しただけに過ぎなく、別に黒閃誕生の為にやった訳じゃないからだ。

 

 ついでに、あの篠ノ之束も予想外だと驚いているんじゃないかと俺は予想してる。あの女の事だから、どうせここにいる俺達の会話を何処かで盗み聞いてると思うし。と言うか、あの天才博士さんも一夏達と同じく、どうやって訓練機だった打鉄が専用機となった黒閃の経緯を知りたがらない訳が無い。

 

「黒閃、お前が専用機になれた経緯は分かった。だがどうして紅椿のワンオフ・アビリティーでセカンドシフト出来たんだ? 確かアレはエネルギーを回復させる物だって箒から聞いたが」

 

「あの時の私はマスターの戦いによって莫大な戦闘経験を得ていましたから、後はエネルギーをフル状態した事によってセカンドシフト出来たのです」

 

「莫大な戦闘経験? 俺はお前を使った回数はまだ数える程度だぞ。だから莫大ってのはいくらなんでも大袈裟じゃないか?」

 

 ってか俺はあのメ○ルスラ○ムみたいなもんなのか?

 

 え~っと、俺が打鉄を戦闘で使ったのは入学試験時、セシリアとのクラス代表決定戦、クラス代表トーナメントでの箒救出、鈴との模擬戦、ラウラとの乱入戦、学年別トーナメント、箒の紅椿での模擬戦、そして福音戦。まだ計八回だから、そんなに多くの戦闘経験を得れたとは思えない。

 

「いえ、マスターは従来のIS操縦者とは全く違う戦い方をしていて、そのどれもが濃密な内容ばかりでした。それによって、私は訓練機でありながらもあの莫大な戦闘経験を詰め込むことが出来たのです。今まで仮の操縦者を見てきた私でしたが、あれ程の戦いをしたのはマスター以外いないと断言します」

 

「…………俺はそんなに異常な戦いをしてたか?」

 

 黒閃がきっぱり答えたので思わず問いかけると、一夏達が一斉にうんうんと頷いていた。千冬さんだけは少しばかり苦笑していたが。

 

「とまあ簡単ではありますが、私がセカンドシフト出来た理由は以上です。ご理解頂けましたか、マスター?」

 

「………一応な。じゃあ最後に、何でお前は喋れたり人間の姿になれるんだ?」

 

「それは………分かりません」

 

『………は?』

 

 今までスラスラと質問に答えていた黒閃が分からないと言った事に、俺達は一斉に不可解な顔をした。

 

「お、おい、分からないって……どう言う事だ?」

 

「言葉通りの意味です。ISである私が何故喋れるのか、人間の姿になれるのかは私自身でさえ全く分かりません。ただ何故か、自分はこう言う事が出来ると認識しただけですので詳しい事は……」

 

 思っただけって……。おいおい、それだけの理由でこんな事が出来たのかよ。これはもう非常識云々のレベルじゃないぞ。

 

「ですが、これだけは言えます。マスター、私は貴方の専用機であり、私の身も心も全て貴方だけにしか委ねる事は出来ません。ですから私をマスターの傍に居させて下さい。私も一緒に戦わせて下さい」

 

「………へ?」

 

『…………んなっ!?』

 

 とんでもない発言をする黒閃に俺は素っ頓狂な声を出し、一夏達は間がありながらも顔を赤らめた。

 

 えっと、何でしょうか今の発言は? これって……告白、なのか?

 

「な、なぁ……俺の聞き間違いじゃないと思うんだが、今のってある意味プロポーズ、だよな?」

 

「な、な、な、何故あんな恥ずかしいこと平然と言えるんだ……? ISだからなのか……?」

 

「え、えっとぉ……わ、わたくしは、どう言う反応を示せばよろしいんでしょうか? 黒閃さんが本物の人間でしたら祝福すべきなんでしょうが……」

 

「て、て、て言うかあんなプロポーズ、は、初めて聞いたわよ……。こ、これが俗にいう禁断の愛ってやつ?」

 

「あ、ISと人の禁断の愛って……僕は応援するべきなのかな……?」

 

「ほう。あのようなプロポーズもあるのか、今度私も一夏に言ってみるとしよう」

 

「あ、あわわわわ……お、織斑先生ぇ、わ、私……あんなプロポーズ、私初めて聞きました……」

 

「………私は一体どう言えば良いんだ?」

 

 困惑している一夏達(一名だけ感心してるが)に、俺は何か言い返そうと必死に考えていた。、

 

「あ、あのなぁ黒閃、その言い方は誤解を招くから……」

 

「? 何が誤解なんですか? 私はISですから、マスターに身を委ねるのは当然かと思いますが」

 

「そう言うんじゃなくて! 俺が言いたいのはだな……! って何でいきなり引っ付く!?」

 

「……マスターは私と居るのが嫌なんですか?」

 

「いや違うから!」

 

 ああもう! 見知らぬ第三者でも何でも良いから誰か来てくれ! この突っ込みどころ満載な雰囲気をどうにかしてくれ! もう俺じゃどうにも出来ん!

 

 そんな俺の切なる願いが届いたのか、

 

 

 スパーンッ!

 

 

「やっと見つけたかずー! 私凄く心配し……て……」

 

「え? ああ、本音か」

 

「ん? 確か貴女は……」

 

 突然襖が開いて心配そうな顔をした本音が現れて、俺は一先ず安堵した。

 

 のだったが、本音は黒閃を見た途端急に不機嫌そうな顔になって、

 

「む~~~!! ちょっとかず~~!! その子一体誰なの~~~~!!??」

 

「え、ええ!? な、何この展開!? 何で本音が怒るんだ!? 訳分からんぞ!!」

 

 何故かすぐに俺を問い詰めてきた。

 

「うわ……修羅場だ。俺、和哉の修羅場なんて初めて見たぞ……」

 

「うむ。修羅場だな……」

 

「修羅場ですわね……」

 

「修羅場ね……。あたしもはじめて見たわ」

 

「しゅ、修羅場だね……」

 

「? 修羅場とは一体どう言う意味だ?」

 

「え、えっとぉ……織斑先生、この修羅場は一体どうすれば……?」

 

「………はぁっ。ガキどもの痴話喧嘩に付き合ってられんから、私は学園に報告しにいく」

 

 と言うかそこ! 黙って見てないで俺を助けてくれ!


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