インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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第83話

「ラウラ! セシリア! シャルロット! 鈴! 援護を頼む!」

 

「任せろ師匠!!」

 

「お任せください!!」

 

「了解!」

 

「分かってるわよ!」

 

 俺の指示にラウラ達は距離を取った福音に掩護射撃を繰り出し、

 

「一夏! 箒! 俺達の誰かが福音の動きを止めたら迷う事無く即座に決めろ!」

 

「おう!!」

 

「了解だ!!」

 

 俺と一夏、箒は近接戦で福音と激突していた。

 

 因みに一夏はさっきまでエネルギー残量が残り少ない状態だったが、遅れてきた箒が紅椿のワンオフ・アビリティーである絢爛舞踏でエネルギーが全快した事によって、雪片弐型のエネルギー刃を最大出力まで高めていた。

 

 そして俺達が福音と戦ってかなり時間が経つが、福音は未だにエネルギー切れを見せる傾向が無い。いくらアレが軍用ISだからと言って、アレだけのエネルギー弾を掃射してるから、そろそろエネルギーが無くなってもおかしくないのだが。

 

 そんな疑問を余所に、福音は俺に襲い掛かってきた。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 

『キアアアアアアッ!!』

 

 互いに両手足で攻撃して距離を取りながら激突を繰り返す俺と福音。距離を取った福音はすぐに翼から大量のエネルギー弾を掃射するが、俺はすぐに反応して難無くかわす。

 

 本来であれば凄まじい速度で撃ってくるあのエネルギー弾を全て避けるのは難しいのだが、打鉄改め黒閃がセカンドシフトした事によって性能が上がっていた。訓練機と比べ物にならないくらいに。

 

「凄いな黒閃。セカンドシフトしたとは言え、ここまで性能が格段に上がるのか?」

 

『半分当たりで、半分はずれです。確かに性能は上がりましたが、私を信頼し、自分の一部のように扱うマスターだからこそ、私の性能以上の力が発揮されるのです』

 

「………お前、自分で言ってて恥ずかしく無いか?」

 

『私は事実を言ったまでです』

 

 ああそうかよ。ったく。本当に調子が狂う奴だな。と言うか、よくもまぁあんな事を平然と言えるもんだ。ISだから大して気にしないのか? 俺はてっきり黒閃の性能が上がったのかと思っただけなんだが。

 

 っと、いかんいかん。戦闘中だってのに、余計な事を考えちゃダメだな。

 

「「はああああっ!!」」

 

『!!!』

 

 斬撃を繰り出そうとする一夏と箒に、福音が高速で距離を取ってすぐにクルリと舞うかのように回った。その瞬間、福音の周囲からエネルギー弾が形成されて、そのまま俺達に襲い掛かって来た。

 

「げっ! あれは流石にっ!」

 

『マスター! 盾を前に出して下さい!!』

 

「え? わ、分かった!!」

 

 一先ず黒閃の言う通りにした俺は、両肩に浮いていた二つの盾を前面に出すと、

 

水鏡(みかがみ)!』

 

 黒閃がそう叫んで若干光を帯びた盾がエネルギー弾に当たった瞬間、それは湾曲するかのように何処かへ行ってしまった。

 

「なっ……何なんだ、コレは?」

 

 この光景に俺だけでなく、何とか防いで回避していた一夏達も仰天していた。それはそうだろう。福音の主武装であるエネルギー弾を弾いたのだから、誰だって驚く。

 

 エネルギー弾をあられもない方向へ飛ばした盾を見た俺が信じられないかのような声を発すると、黒閃が説明するかのように語り始める。

 

『これが私のワンオフ・アビリティー《水鏡(みかがみ)》です。福音のようなエネルギー関連の射撃は全て弾く事が可能ですので』

 

「おいおい」

 

 全て弾くって……殆ど反則並みな代物じゃないか。と言う事は、セシリアのような遠距離中心としたレーザー射撃を全部弾く事が出来るって事なのか? 俺、とんでもない兵器を知っちゃったんだけど。

 

『ただしコレにはかなり欠点があり、長時間使用するとすぐにエネルギーが無くなってしまい、無差別に弾き飛ばしてしまいますので、仲間に危険が及んで集団戦には向きません』

 

 だろうな。そんな都合の良い物がホイホイ使える訳が無いのはお約束だ。

 

 取り敢えず、水鏡と言うワンオフ・アビリティーはあんまり使わないようにしておこう。あくまで俺自身が本当に避けきれない用として。

 

『キアアアアアアッ!!』

 

 うわっ。何か福音の奴が怒ってるような気がするのは俺の思い過ごしか?

 

 まぁ、ご自慢の兵器が刀一本で弾かれただけでなく、黒閃の水鏡にも悉く弾かれたから、恐らく福音のプライドはかなり傷付いたかもしれない。

 

『状況変更。危険分子である神代和哉を最優先に抹殺する』

 

「! 来るかっ!」

 

 高速接近してくる福音。それを見た俺は盾を元の位置に戻し、接近してくる福音に構えながら拳を繰り出す。

 

 福音はそれをかわして、反撃するかのように旋回しながら俺の顔目掛けて回し蹴りを繰り出した。当然俺もかわして再び反撃するが、お互いに避けて反撃の繰り返しをする。

 

 しかし、それが終わるかのように福音は俺の両拳を受け止めた直後、光の翼で俺を包み込もうとしていた。

 

「甘いんだよっ!! おらぁっ!!」

 

『!!!』

 

 即座に両足を福音に向けて、そのまま何度も腹に蹴りを喰らわせた。これには流石に福音も効いたようで、俺の両拳を掴んでいた両手を放す。

 

 福音から開放された俺はすかさず、

 

「はああああああぁぁ~~~っ!!!!!!」

 

 

 ドドドドドドドドドッ!!! 

 

 

 至近距離で俺の全パワーを込めた『乱撃』を高速で繰り出すと、福音は全て直撃して完全に動く事が出来なくなっていた。

 

「一夏ぁ! 今だぁ!!」

 

「うおおおおっ!!! 今度は逃さねぇ!!」

 

 俺の合図と共に横から福音の胴体へと零落白夜の刃を突きたてた一夏。その直後にブースターを最大出力まで上げる一夏は、福音と共に無人島の一つである砂浜に激突する。

 

 だが福音は零落白夜を受けながらも、一夏の首へと手を伸ばそうとしていたので、俺はすぐに砂浜へ真っ直ぐ急降下する。

 

「どけ一夏ぁ!」

 

「え? って、やばっ!!」

 

 俺が高速で来るのを見た一夏が即座に福音から離れてすぐ、俺の体当たりが福音に直撃した。

 

 直撃した福音は俺の首へと伸ばそうとするが、

 

「いい加減にくたばりやがれぇ!! おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらぁっ!!!!!!」

 

 

 ガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

 

 

 俺の拳の弾幕によってそれが叶わなくなった。

 

 そして俺の攻撃を受け続けた福音は漸くエネルギーが無くなったのか、完全に動きを停止した。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………やっと止まったが……はぁっ、はぁっ……またこれで復活は無いだろうな?」

 

『マスター、ご安心を。確認したところ、福音のシールドエネルギーは完全に無くなりました』

 

「はぁっ、はあっ……そうか……ふうっ」

 

 黒閃の台詞を聞いた俺が安堵してると、エネルギーが無くなった福音のアーマーが消え、スーツだけの状態になった操縦者が姿を現す。

 

「この女性が福音の操縦者、か……。ありゃりゃ、自分でやったとは言え、打撲傷がかなりあるな」

 

『あれだけマスターの攻撃を受けたんですから、そうなるのは無理もありません』

 

「まぁ、確かに」

 

 申し訳ない事をしたと思いながら、俺が操縦者の女性を抱き上げると、一夏がこっちに来た。

 

「やっと終わったな、和哉」

 

「ああ……。やっと、な」

 

「そっか……。だけど和哉、お前いきなりあんな事するなよ。死ぬかと思ったぞ」

 

 戦闘が終わった事に安堵する一夏だったが、急に不機嫌そうに文句を言ってきた。

 

「悪い悪い。ああでもしないと福音を倒せないと思ってな。それに一夏はすぐに避けてくれると分かってたし」

 

「………まぁ良いけど。って、その人が福音の操縦者か?」

 

「みたいだ。取り敢えずこの人を早く旅館に連れて行って治療させないとな」

 

「それはそうなんだが……俺としては――」

 

 一夏がそう言ってると、

 

「さあ和哉さん、早速説明してもらいますわよ。わたくしとしては、黒閃さんのワンオフ・アビリティーが一番知りたいですわ♪」

 

「約束よ和哉。そのISについて詳しく訊かせて」

 

「和哉、僕たちが納得できるまで逃さないからね」

 

「さぁ師匠、詳しく説明してもらうぞ」

 

「和哉、私からも頼む」

 

 セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、箒が俺に詰め寄って来た。特にセシリアが何やら怖い笑みを浮かべているのは、敢えて気にしないでおこう。

 

「お前等……。今はそんな事よりもこの人の治療が優先なんだが……?」

 

『全く。私は逃げも隠れもせずちゃんと説明するのに、随分とせっかちな方々ですね』

 

 セシリア達の行動に呆れる俺と黒閃だった。




取り敢えず決着が付きましたが、何だかいまいちでした。戦闘描写は本当に難しいです。

次回は………和哉とのほほんさんとのイチャラブをやってみようかと考え中です。

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