インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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今回はちょっと時間に余裕があったので書けました。
それではどうぞ!!


第63話

「あ、織斑君と神代君だ!」

 

「う、うそっ! わ、私の水着変じゃないよね!? 大丈夫よね!?」

 

「わ、わ~。体かっこい~。鍛えてるね~」

 

「て言うか、神代君の体のほうが凄いわ。織斑君と違ってすっごく引き締まった筋肉だし……」

 

「織斑くーん、あとでビーチバレーしようよ~」

 

「おー、時間があればいいぜ」

 

「ねぇ神代くーん、何故か本音がちょっと不機嫌だから相手して~」

 

「俺は本音の世話係じゃないんだが……」

 

 更衣室から浜辺に出ると、丁度隣の更衣室から出てきた女子数人と出会う俺と一夏。言うまでもないと思うが、どの女子達も可愛い水着を身につけており、露出度が少し目立っている。

 

 さてさて、砂浜に向けて一歩踏み出した瞬間………七月の太陽によって砂が熱くなっていた。

 

「あちちちっ」

 

「此処は相変わらずだな」

 

 熱い砂によって足の裏を焼かれた一夏は痛そうな顔をしているが、俺は以前から何度も来て慣れてるので大して熱くなかった。

 

「熱くないのか?」

 

「平気だ」

 

 一夏の問いに答えながら俺がビーチに向かって歩いてると、一夏はつま先立ちになりながら付いて来る。ビーチには既に多くの女子生徒達がおり、中には肌を焼いていたり、ビーチバレーをしていたり、泳いでたりと様々だ。着てる水着も色とりどりで、五反田弾が見たら『ここはパラダイスだ~!』なんて言いそうだ。

 

「和哉、準備運動しようぜ」

 

「当然。何事も準備運動は必要だからな」

 

 準備運動を始める俺と一夏。修行をするにしても海で遊ぶにしても、準備運動は必ずしなければいけない。海の場合は、足が攣って溺れてしまうなんて事があるからな。そう思いながら俺は一夏と同じく腕を伸ばして足を伸ばして背筋を伸ばしていると、

 

「い、ち、か~~~~っ!」

 

「のわっ!?」

 

 突然一夏に声を掛ける女子生徒の声が聞こえるとすぐに、一夏が情けない声を出す。

 

「あんたたちって真面目ねぇ。一生懸命体操しちゃって。ほらほら一夏、終わったんなら泳ぐわよ」

 

「相変わらずだな、鈴」

 

 振り向くと鈴が一夏に飛び乗っていた事に、呆れるように言う俺。鈴は中学生の頃に、水着になると一夏に飛びつくのを知っていたから大して驚きもしない。

 

 ついでに鈴が着てる水着はオレンジと白のストライプである、スポーティーなタンキニタイプだ。

 

「と言うかさっさと一夏から離れて、お前も俺と一夏と一緒に準備運動しろ」

 

「和哉の言うとおりだぜ。溺れてもしらねえぞ」

 

「あたしが溺れたことなんかないわよ。前世は人魚ね、たぶん」

 

「……いや、多分イノシシだと思う。特に猪突猛進なところが」

 

「何か言った和哉!?」

 

「別に何にも」

 

 そうこう言ってる内に、鈴が一夏の体をしゅるりと駆け上って肩車の体勢となっていた。もしかしたら鈴の前世はイノシシじゃなくて猿か蛇かもしれない。もうついでに言わせて貰うが、人魚=女とは限らないぞ。人魚ってのは男も含まれてるからな。

 

「おー高い高い。遠くまでよく見えていいわ。ちょっとした監視塔になれるわね、一夏」

 

「監視員じゃなくて監視塔かよ!」

 

「いいじゃん。人の役に立つじゃん」

 

「誰が乗るんだよ」

 

「んー……あたし?」

 

 にへへっと笑う鈴に、

 

「じゃあ俺も監視塔になってやろうか、鈴?」

 

「嫌よ! アンタ以前そう言って監視塔になった時、凄いスピードで走ってあたしを落とそうとしたじゃない!」

 

 俺が提案した瞬間、鈴は即座に断った。

 

「そうだっけ? 俺は鈴の要望に応えたんだが」

 

「まぁ確かにアレは流石の俺もちょっとな……」

 

 俺が心外そうに言うが、一夏が思い出しながら同情するように言った。

 

 あれは確か中学の頃に一夏達と海で遊んだ時に、俺が鈴を肩車してもっと速く走れって言ったから、全速力で走っただけなんだが。まぁそれで鈴は二度と俺に肩車をする事は無くなったな。

 

「あっ、あっ、ああっ!? な、何をしてますの!?」

 

 お、此処にやって来たセシリアがさっきまでと違って少々ご立腹だ。今アイツの手には簡単なビーチパラソルとシート、それにサンオイルを持っている。一夏にサンオイルを塗ってもらう為に機嫌良く持って来たが、この状況を見て一変してる。

 

 んで、セシリアの水着は鮮やかなブルーのビキニとパレオ付き。一夏はそれを見てついつい視線を逸らしている。ま、確かにセシリアのスタイルは良いから、そうしてしまうのは無理もないな。何度も海に行った俺はこんな展開もう慣れてるし、特に小学生とは思えないスタイル抜群の綾ちゃんの白ビキニで見慣れてもいる。その時は綾ちゃんをナンパしようとする男を追っ払ってたけど。

 

「何って、肩車。あるいは一夏の移動監視塔ごっこ」

 

「ごっこかよ」

 

「そりゃそうでしょ。あたし、ライフセーバーの資格とか持ってないし」

 

「安心しろ鈴。俺は資格持ってないが、それ相応の応急処置は出来るぞ。心肺蘇生術とか人工呼吸とか」

 

「ああ、確かに俺より和哉なら――」

 

「遠慮しとくわ! って言うか心肺蘇生ならまだしも、和哉に人工呼吸なんかされたくないわ!」

 

「ならお前が溺れて人工呼吸する際、一夏にやってもらうか」

 

「何で俺なんだよ、和哉」

 

「え、ええ!? い、一夏があたしに……」

 

「わ、わたくしを無視しないでいただきます!? というか和哉さん! 貴方はなんてことをいうのですか! わたくしの目が黒いうちはそんなことさせませんわよ!」

 

 おっと、ついセシリアを無視して一夏と鈴と一緒に会話してしまった。どうでも良い事なのだが、一夏が鈴にあんな風にベッタリとくっ付かれても平気な様子を見せる。本当ならば戸惑うのだが、一夏が平気な理由としては(言っちゃいけないが)鈴の胸がないからだ。平べったいから柔らかい感触と言うのが全然ないと一夏が言ってた。それと同時に鈴は以前からあんな感じで一夏に乗っかってるから、一夏としても慣れている。

 

「とにかく! 鈴さんは一夏さんから降りてください! 和哉さんにやってもらえばいいでしょうに!」

 

「ヤダ。あたし和哉に酷い目にあわされたし」

 

「な、なにを子供みたいになことを言って……!」

 

「まあまあ落ち着けセシリア」

 

「これが落ち着いていられますか!」

 

 俺にそう言ってセシリアがザクッ! とパラソルを砂浜に刺した。こりゃ鈴を下ろさないと収まりそうにないな。

 

「なになに? なんか揉め事?」

 

「って、あー! お、織斑君が肩車してる!」

 

「ええっ! いいなぁっ、いいなぁ~!」

 

「きっと交代制よ!」

 

「そして早い者勝ちよ!」

 

「何だったら俺が一夏の代わりに肩車してやるぞ?」

 

『絶対嫌よ!!』

 

 おやおや。一組以外の女子は相変わらず俺の事が嫌いみたいだな。

 

 ま、一組の女子でも俺より一夏にやってもらいたいと……

 

「ねぇかずー、私に肩車して~」

 

「………そういや君がいたな」

 

 どうやら例外がいたようだ。

 

 水着とは思えないキツネの着ぐるみらしき物を纏っている本音が俺の背後から抱き付いている。

 

「かずーすっごい筋肉だね~。どうやったらこんなに硬くなるの~?」

 

「師匠の修行をしてたら自然にこうなったよ」

 

「へ~」

 

「ってか本音。君はいつまで俺の身体を触り続けてるんだ?」

 

「かずーがすっごい逞しいからー」

 

「訳の分からんことを言ってないでとっとと離れんかい。君は男相手にセクハラする変態か」

 

 取り敢えず背中に本音から離れようとするが、

 

「じゃあこうする~」

 

 そう言って本音は次に正面から俺に抱き付いて来た。何も変わってないじゃないか。

 

「やっぱりかずーの胸板厚いねー」

 

「おい、さっきと大して変わってないぞ」

 

「ゴロゴロ~♪」

 

「聞けよ人の話。ってかいい加減に離れろ」

 

「やだ~」

 

 本音を引き剥がそうとするが、離れたくないと言わんばかりに本音が更に力を込めてギュッと俺に抱き付く。

 

「……なあ鈴、降りてくれないか? 俺、あの二人を見てるとすげー暑くて」

 

「……ああ、うん。あたしも暑くて下りようと思ってたから。ってか何よ、あのラブラブな雰囲気。あの子と和哉は付き合ってるの?」

 

「……はあっ。バスの中だけでは飽き足らず、ここに来てまで見せつけないで欲しいですわ……」

 

「相変わらずだね、あの二人」

 

「神代君と本音の近くにいると、ただでさえ暑いのに余計暑くなるよ……」

 

 あ、いつのまにか鈴が一夏から降りてるな。それよりも、ここにいる面子の殆どが俺たちを見て呆れているような目で見てるのは俺の気のせいか?

 

 まぁそれは別に良いとして、セシリアはここで一夏にサンオイルを塗ってもらうつもりなんだろうか。そんな事したら後々面倒な事になりそうな予感がする。

 

「ところでセシリア、アレをするんだったら――」

 

「って、忘れてましたわ! さあ一夏さん! わたくしにサンオイルを塗ってください!」

 

「「「え!?」」」

 

 思い出したセシリアが大声を出しながら暴露したため、それを聞いた女子が声を揃える。このバカ、人が折角遠回しで言った事を……。

 

「私サンオイル取ってくる!」

 

「私はシートを!」

 

「私はパラソルを!」

 

「じゃあ私はサンオイル落としてくる!」

 

 あ~らら、アイツ等もう完全に一夏にサンオイルを塗ってもらおうとする気満々だな。ってか、サンオイル落とすと言った女子が海に入ってるし。オイルの無駄遣いはよくないぞ。

 

「ねぇかずー、私にサンオイル塗って~」

 

「そんな格好してる君には不要だろ」

 

 顔と素足以外全身がキツネ着ぐるみ状態の本音にサンオイルを塗る必要は全く無い。太陽の光が当たらないからな。

 

「コホン。そ、それでは一夏さん。お願いしますわね」

 

 そう言ってしゅるりとパレオを脱ぐセシリアに、その色っぽい仕草を見た一夏は戸惑いを見せてる様子。

 

「え、えーと……背中だけだよな?」

 

「い、一夏さんがされたいのでしたら、前も結構ですわよ?」

 

 ハハハ~。それって暗に胸を触っても良いって言ってるも同然だぞセシリアさん。

 

「いや、その、背中だけで頼む」

 

 言うまでも無く断る一夏。もしここでやるなんて言ったら、鈴が絶対に止めるだろうけど。

 

「でしたら――」

 

 セシリアはいきなり首の後ろで結んでいたブラの紐を解いて、水着の上から胸を押さえてシートに寝そべった。

 

「さ、さあ、どうぞ?」

 

「お、おう」

 

「頑張れ一夏。応援してるぞ」

 

「何をだよ……」

 

 俺の応援に突っ込みを入れる一夏だったが、横たわったセシリアを見て何やら緊張していた。まぁ当然だな。体に潰されて乳房がむにゅりと形が歪め、脇の下から見ててかなりセクシーだし。

 

 それと、うつ伏せになっている事もあり、しっかりと発育したお尻も主張していた。本当にセシリアはスタイル抜群だな。

 

 そしてすらりと伸びた脚線美も良く、俺とした事がついつい無意識にジッと眺めて――

 

「いひはひははひふふんはほんへ?(訳:いきなり何するんだ本音?)」

 

「かずーがやらしー目でセッシーを見てるからだよー」

 

 不機嫌な顔をしてる本音が俺の左右の頬を同時に抓ってきた。ってかちょっと痛い。別に見るぐらい良いじゃないか、減るもんじゃあるまいし。

 

「あんたってもう完全その子に尻に敷かれてるわね。まぁそれだけ仲がいい証拠だけど」

 

「はんへはほ(訳:何でだよ)」

 

 俺は本音と付き合ってないって何度言わせるんだよ、鈴。

 

 そんなやり取りをしてると、一夏がセシリアの背中にサンオイルを塗っていた。塗られているセシリアは顔が上気している。

 

「ん……。いい感じですわ。一夏さん、もっと下の方も」

 

「せ、背中だけでいいんだよな?」

 

「い、いえ、折角ですし、手の届かないところは全部お願いします。脚と、その、お尻も」

 

「うえっ!?」

 

「!」

 

 セシリアの台詞に一夏が驚きの声を出し、聞いていた鈴がすぐに振り向いてセシリアに近寄って手にサンオイルを付けた。

 

「はいはい、あたしがやったげる。ぺたぺたっと」

 

「きゃあっ!? り、鈴さん、何を邪魔して――つ、冷たっ!」

 

 抗議するセシリアを無視する鈴はそのまま塗り続ける。

 

 と言うか本音、そろそろ抓るのを止めて欲しいんだが。

 

「いいじゃん。サンオイル塗れればなんでも。ほいほいっと」

 

「ああもうっ! いい加減に――」

 

 流石にいい加減頭に来たセシリアは、怒りながら体を起こす。そうすると、体から離れていた水着はそのまま下に落ちて胸がモロに見え……

 

「きゃああっ!?」

 

 胸が露わになった事にセシリアは気付き、耳まで真っ赤になって蹲る。

 

「あー……ごめん」

 

「い、い、今更謝ったって……鈴さん! 絶対に許しませんわよ!」

 

「うん、じゃあ逃げるまたね」

 

 謝る鈴にセシリアは聞く耳持たなかったので、鈴は一夏を連れて逃げようとする。

 

「って、おい! 俺まで巻き込むな! ああ、まったく……セシリアすまん! その、見えてはないから、な?」

 

「な、なっ……!」

 

 謝る一夏だったがそれが逆効果であり、セシリアは更にボッと赤くなってしまい、振り上げた拳をどうにもできずにそのままの格好で固まった。

 

「かずー、セッシーのおっぱい見たでしょ~?」

 

「いやいや見てないよ。セシリアのとても形良くてふっくらした乳首を……あ……」

 

「む~~! やっぱり見てた~! かずーのスケベ~!」

 

「いててててっ! 今度は耳かよ!」

 

「か~ず~や~さ~ん~」

 

 思わず本音を口にしてしまった俺に本音が怒って本気で俺の両耳を引っ張り、そしてさっきまで固まってたセシリアがいつのまにかブラの紐を結んで俺をギロリと睨む。これはちょっと不味いかも。

 

 本音はともかく、今のセシリアは悪鬼の如く怒ってるから今は逃げないとやばい。

 

「今からわたくしと接近戦の訓練でもしませんか~? 当然素手で。ウフフフフ……」

 

「素手と言いながらISを部分展開してレーザーライフル展開するなよ! どう見ても俺を殺る気満々だろうが! 俺を殺す気か!?」

 

 レーザーライフルを構えて俺に狙いを定めようとするセシリアに、俺は本気で逃げなければいけないと言う本能の警鐘が鳴り響いていた。

 

「オホホホホ、殺すだなんて人聞きが悪いですわ。わたくしは和哉さんをちょっとお仕置きするだけです」

 

「兵器出す時点でお仕置きじゃないだろうが!」

 

 殺気を感じた俺は耳を引っ張ってる本音が引き剥がして全速力で逃げると、セシリアが逃さんと言わんばかりに追いかけて来た。ってアイツ、スラスターまで部分展開しやがってる!

 

「ホホホホホ、お待ちなさい和哉さ~ん」

 

「たかが胸見られただけで大袈裟過ぎるだろ!?」

 

「淑女の胸を見てタダですむと思わないでくださいね~」

 

「くっ! こうなったら……!」 

 

 本気でレーザーライフルをぶっ放そうとするセシリアに、俺は動きを止めようとする為に『睨み殺し』を使う事にした。

 

 

 ギンッ!

 

 

「! か、身体がっ! 汚いですわよ和哉さん!」

 

「喧しい! 人にレーザーぶっ放そうとするセシリアに言われたくないわ!!」

 

 よしっ! セシリアが動けなくなったから、次は海へ逃亡だ!

 

 そして俺は海へと一直線に走る。そしてなるべく深く潜った方が良いと思った俺は、ある程度海の上を走る(・・・・・・)事にした。

 

「和哉さん!! あなたはどこまで規格外な人なんですか!? 片方の足が沈む前にもう片方の足を前に出せば水の上を走れる理論は普通の人間ではできませんのよ!?」

 

「ハッハッハ~~! 人間鍛えれば何だって出来るんだ~~!」

 

 そう言って俺は海に潜ってセシリアからの逃走に成功した。


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