インフィニット・ストラトス ~唐変木に疲れる苦労人~   作:さすらいの旅人

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久しぶりの投稿です。

他の作品を書いてた所為で、ISキャラたちの口調を忘れてしまい、これで良いかと不安に思ってます。

けれど一先ず投稿です!


第117話

 唐変木の一夏が篠ノ之神社へ行くと発言した為、俺はどうやって危険回避しようかと必死で考えた。

 

 危険回避とは箒の嫉妬による暴走の事を指してる。暴走する理由は……一緒に同行する綾ちゃんだから。

 

 知ってのとおり、綾ちゃんは小学生でも背が高い上にスタイルも良く、ぶっちゃけ一夏ラヴァーズの箒たち並みに可愛い。そんな綾ちゃんを一夏が一緒に同行して手を繋いでるところを箒が見たら……そこから先は言うまでもない。

 

 さてどうしようかと必死に頭の中をフル回転させていた俺だったが――

 

「あっ、いけない! 今日は修哉お兄ちゃん達と一緒にお祭りに行く日だった!」

 

 綾ちゃんは知り合いの約束をすっかり忘れていたようで、急遽別れる事となった。

 

「今日は神に大変感謝しなければいけないな」

 

「なに訳の分かんない事を言ってるんだ?」

 

 篠ノ之神社へ向かいながら天を仰ぎ見て神に感謝してる俺の行動を見た一夏が突っ込む。

 

 俺の心情を全く理解してない一夏に俺は思わずイラッときたが、今回は聞き流しておくよ。

 

「別に。ってか一夏、綾ちゃんと一緒に行けなくなったのを知った途端、随分と残念そうな顔をしてたな」

 

「そりゃそうだろう。俺としては箒に綾を紹介したかったんだよ。箒なら綾と仲良くなれると思ってたし」

 

「………あ、そう」

 

 一夏の台詞に俺は一瞬マジで殺意を抱くも何とか堪えた。

 

 このバカ、よりにもよって箒に綾ちゃんを紹介する気だったのか!? 何でお前は自ら修羅場展開を作ろうとすんだよ!

 

「マスター、心拍数がかなり高くなっていますよ」

 

「……今は気にしないでくれ」

 

 隣で俺の手を繋いでる浴衣姿の黒閃がそう呟いたので、俺は何でもないように言い返す。

 

「それにしても黒閃、綾ちゃんが用意したその浴衣似合ってるな」

 

「……ありがとう、ございます」

 

 少し照れた顔をする黒閃を見た俺は笑みを浮かべる。女の子らしい一面が少しずつ出来てきて何よりだ。

 

「何か、和哉と黒閃がカップルに見えるな」

 

「そうか?」

 

「………茶化さないで下さい、織斑一夏」

 

「と言ってる割には満更でも………分かった、分かったから此処で電撃を出そうとしないでくれ」

 

 からかわれてる黒閃は警告しようと思ったのか、空いてる片手で一夏にバチバチと電流を見せつけた。それを見た一夏は降参するように両手を上げる。

 

 因みに一夏が電流を出せるのを知ってる理由は、数日前に黒閃から追い掛けられてた時に手から電撃を放ったのを見たからだ。尤も、かなり弱い電撃だから死ぬ事は先ず無いがな。それでも危険な攻撃でもあるが。

 

「おい黒閃、こんな人目の付くところでやるな」

 

 軽く叱咤する俺に黒閃がすぐに手を引っ込めると、一夏は安堵するような顔をした。

 

 そんなやり取りをしてると、いつの間にか篠ノ之神社に到着する。

 

「へぇ。いつも商店街しか行ってなかったけど、この神社も結構人がいるな」

 

「和哉は篠ノ之神社には行かないのか?」

 

「夏祭りとかは近場の商店街で済ませてたからな」

 

 それに俺自身も神社はあんまり興味無いし。もし行くとしたら綾ちゃんの付き添い程度だけど。

 

「それはそうと、箒は一体どこにいるんだ?」

 

「多分、手伝いをしてると思うから……あ、いた!」

 

 キョロキョロと周囲を見回してる一夏は、対象者である箒をすぐに見つけた。一夏が指した方向には、巫女服姿の箒がお守り販売店にいる。

 

 ほほう、箒のあの格好を見るのは初めてだな。結構似合ってるじゃん。思わず見惚れてしまったよ。

 

「………………」

 

「ん? どうした、黒閃?」

 

「別に……」

 

 少し不機嫌そうな顔をする黒閃はすぐにそっぽを向く。なに剥れてんだよ。ってか、さり気なく手を握ってる力が強いんですけど。

 

 黒閃の不可解な行動に疑問を抱きつつも、俺達は箒がいる販売店へと向かう。

 

「よっ」

 

「やあ」

 

「お久しぶりですね、篠ノ之箒」

 

「…………………」

 

 一夏、俺、黒閃が挨拶をするも、箒は呆然として何も答えなかった。多分箒の事だから、まさか此処で俺達と会うなんて思いもしなかったんだろうな。

 

 俺が箒の反応を察してると、一夏は再度話しかけようとする。

 

「それにしても、凄いな。様になってて驚いた。箒って、女らしい格好も似合うんだな。キレイでびっくりした」

 

「っーー!?」

 

 一夏の台詞に箒が一瞬で真っ赤に染まった。その赤さは巫女装束の袴の色にも劣らないな。

 

 まさか一夏が箒の格好を褒めるとは思わなかったんだろうな。気持ちは分からんでもないが、そろそろ正気に戻って欲しい。

 

「夢だ!」

 

「な、なに?」

 

「いきなり何言ってんだ?」

 

 箒の突然の大声に驚く一夏と少し呆れる俺。

 

「コレは夢だ! 夢に違いない。はやく覚めろ!」

 

「やかましい」

 

 

 バチンッ!

 

 

 現実逃避してる箒が段々喧しくなったから、俺は箒の額にかなり手加減したデコピンを当てた。

 

「あいたっ!?」

 

「箒、いい加減現実に戻れ」

 

「む、むぅ……」

 

 当てられた額を押さえながら、どうにか現実に戻った箒。毎度の事だが、コイツは一夏関連になると色々な意味で暴走するな。

 

「丁度良い。箒、折角だから俺たちの案内も兼ねて夏祭りに行かないか?」

 

「は? い、いきなり何を言ってるんだ、お前は。見てのとおり、私は店の手伝いを――」

 

「いいわよ、箒ちゃん。あとは私がやるから、夏祭りに行ってきなさいな」

 

「って、雪子叔母さん!?」

 

 俺の提案に箒は断ろうとするも、いつの間にか現れた箒の関係者らしき人が賛成した。

 

 

 

 

 

 

「宜しかったのですか、マスター? 先程、織斑一夏と篠ノ之箒の両名から距離を取って態と逸れましたが」

 

「良いんだ。これが箒に対する俺なりの気遣いなんだ」

 

 箒と同行する事になった俺達だが、黒閃の言うとおり俺はさり気なく二人から距離を取って態と逸れた。恐らく一夏は今頃人混みの所為で逸れてしまったと勘違いしてるだろう。

 

 因みに俺は前以てコッソリと箒に『今から一夏と二人っきりにさせる』と言っておいた。それを聞いた箒が一瞬睨むも、反対する様子は見せなかった。

 

「コレを機に二人が恋人同士になってくれると良いんだけどなぁ」

 

「どうでしょうね。ISの私から見ても、あの二人にマスターが期待するような関係になるとは思えませんが……」

 

「それでも何もやらないよりはマシだ」

 

 片は唐変木の一夏、片はヘタレの箒。黒閃の言うとおり、二人が相思相愛になる確率は物凄く低いのは確かだ。

 

 だけどここは箒が根性を見せて、一夏に告ってくれれば俺としては万々歳なんだよなぁ。

 

「ま、アイツ等がこの夏祭りでどうなるかは後で聞くとしよう。俺達は俺達で祭りを楽し――」

 

 俺が言ってる途中、懐から携帯電話が鳴り始めた。すぐに取り出してディスプレイを見ると……一夏だった。

 

「もしもし?」

 

「和哉、お前どこにいるんだ? 急にいなくなったから心配したぞ」

 

「すまんすまん。余りにも人混みが多くて逸れちまったよ」

 

 電話の向こうで心配そうな声を出す一夏に、俺は苦笑しながら言う。

 

「取り敢えずどこかで合流しないか?」

 

「いや、お前はこのまま箒と一緒に祭りを楽しんでこい。箒としても、その方が好都合だからな」

 

「は? 何で箒が好都合なんだ?」

 

「い、いきなり何を言ってる和哉!?」

 

 途中から割り込むように聞こえる箒の声。顔を見ずとも、慌てふためいた様子で頬を赤らめてるのが容易に想像出来る。

 

「ま、俺は俺で黒閃と仲良くデートしてるからさ」

 

「黒閃とデートって……それ、のほほんさんが聞いたら絶対黙ってないぞ」

 

「何でそこで本音が……ん?」

 

 一夏の台詞に思わず突っ込もうとしてると、黒閃がいきなり俺の片腕に引っ付いてきた。

 

「どうかしたか?」

 

「何でもない。って事で、一時間ぐらいしたら俺の方から電話する。そんじゃ」

 

「あ、おい和――」

 

 引き止めようとする一夏を無視する俺はピッと通話終了ボタンを押した。もし一夏が電話しても今度はスルーさせてもらう。

 

「で? いきなり何のつもりだ、黒閃?」

 

 携帯電話を懐に入れながら黒閃に問う。よく見ると、黒閃の顔が少し赤かった。

 

「そ、その、マスターがデートと言ってましたので、思わずこうしてみようかと……」

 

「別にそこまでしなくても良いんだが」

 

 ま、コイツがそうしてくるんなら別に構わない。俺としては慣れてるし。主に綾ちゃんや本音で。

 

「まあいい。さて、何して遊ぼうか。黒閃は何かリクエストあるか?」

 

「私はマスターの傍にいるだけで充分ですので」

 

「それじゃ祭りに来た意味無いだろうが」

 

 祭りは遊ぶものだと言うのにコイツときたら……。ったく、黒閃が俺の命令無しに引っ付いたかと思いきや、急にコレかよ。少しは祭りを楽しもうと言う行動をしてくれよ。

 

 ……まぁ、ISのコイツに夏祭りを楽しめと言うのは少しばかり無理があるか。仕方ない。ここは俺が黒閃に夏祭りの遊び方を教えるしかないか。

 

「だったらマスターとして、お前に遊び方を教えてやるよ。先ずはあそこにある輪投げゲームからだ」

 

「了解しました、マスター」

 

 移動を開始すると、黒閃はずっと離れず俺の片腕に引っ付いている。周囲から誤解されなければ良いんだが。まぁその時は気にせずスルーしよう。

 

 どうでもいいんだが、本音は今頃何してるんだろうか? 俺達と同じく、どこかで夏祭りを楽しんでるんだろうか。

 

 

 

 

 ~その頃~

 

 

「むっ!!」

 

「本音、どうしたの?」

 

「急にムスッとした顔をしてるけど」

 

「むぅ~……何か、かずーがどこかの悪い虫につかれてる気がする~」

 

「「はぁ?」」

 

 とある夏祭り会場で何かを察知した本音に、意味不明な表情をしてる友人達であった。




 本当は本音とのイチャイチャ話でも書こうかと思いましたが、黒閃とのデート話にする事にしました。

 次回は黒閃とのイチャイチャ話(?)になるかどうかは分かりませんが。

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