百鬼夜行 葱   作:shake

13 / 15
リアルが忙しかったり別の文体を練習したりしてたら一月近く放置になってましたすいません。そして今回は幕間ですのでかなり短めです。


幕間

 

 神は死んだ。らしい。少なくとも自分を製造した上位存在は消滅したとの事である。

 それが何時の事なのか、如何云う理由でなのかは知らない。それまでには度々有った指令が無くなり、何も無い無駄な時間だけが果てし無く続く。

 その内、自分と同じ様な存在が”神様ごっこ”を始めた。

 上位存在により管理を任されていた世界を弄って、右往左往する人々を見て楽しむのだとか。

 初めは下らないと思っていた。そんなモノを見て何が楽しいのかと。

 彼等は自らを”管理者”と名乗り、その遊びを行う者同士で交流会を開いた。そしてその交流会から幾つかの事実が判明した。

 一つは、自分達が任されている――否、任されていた世界のとある出来事が、別の世界では創作物として取り扱われていた事。”世界”内部に居る人間が、外世界を知る術は無いにも関わらず、だ。

 次に、似た様な世界が相当数存在している事。所謂並行世界と云った物だが、それら全てが各並行世界の創作物と一致していた。

 そして、大多数の世界で『神は死んだ』と囁かれている事。

 これら事から、自分達が管理を任されていた世界群は”基点となる世界”で生み出された作品を元に創られた物ではないだろうかと推測されていた。

 ”基点世界”で神が信仰され、物語が生まれ、枝分かれが進み、神が死に、そして部下の我々と世界群が残された。

 そう云った事なのであろうと。

 自分が”神様ごっこ”を始めたのは、その話を聞いてからだった。

 仕えるべき主を失った天使は何に成るのか。天使のままなのか。堕天使なる存在なのか。それとも悪魔なのか。

 ――ま、どうせ人間の生み出した分類(カテゴリ)なんだけれど。

 迷子の子羊がどう思おうが、上位存在が消滅しようが復活しようが、自分は自分だ。延々と続くこの暇な時間を消化する為に娯楽を欲するだけの存在なのだ。人の世では『退屈は神をも殺す』と言われているらしいが、神が消滅した理由としてはそちらが正しいのかも知れない。

 ともあれ”暇潰し”の為、過去に行われた遊戯の記録を見せてもらえば確かに愉快な娯楽らしい。もっと早くに手を出しておけば良かったと思ったが、早くに飽きる可能性も高いので一概には言えまい。

 娯楽の記録によれば、自分が管理を任されていた――否、自分が管理する世界の名は”魔法先生ネギま!”と云う娯楽作品に類似点が多数有る様だ。

 ”立派な魔法使い(マギステル・マギ)”を目指す見習い魔法使い、ネギ・スプリングフィールドが魔法学校卒業後の修行として『日本で教師をする事』を命じられる。日本魔法使いの総本山、関東魔法協会が存在する学術都市、麻帆良。そこに教師として赴任した彼と、彼を取り巻く美少女達の織り成すラブコメディ及び好敵手達とのバトル。

 細かい点で差はあれど、大体はそんな感じである。

 ここに、他所の世界から引っ張ってきた人間の魂を転生させ、”本来のストーリー”とのズレを楽しむのが”神様ごっこ”の概要だ。

 例えば管理者A氏は、他所の創作物の主人公を複写し自分の世界に放り込む事を好んでいる。放り込まれた主人公は主人公らしく主人公的な行動を執り、本来の主人公であるネギ少年と共闘したり反目したりする訳だ。

 B氏は何名かの管理者と合同で世界を複合させ、幾つかのストーリーを並行して進めさせる事を好む。人間的に言えばクロスオーバーと云う物語だ。作品の組み合わせによって面白さが大幅に変わり、当たり外れが激しいとか。

 C氏は転生者に好きな能力を選ばせ管理世界に放り込む事が好きだ。転生者の数を変えたり下衆を転生させたりと、一つの世界で色々と楽しめる。遊びの最大派閥と言える。

 自分は、A氏とC氏の手法を何度かやってみて、『転生者に好きな能力を与えて、それに合わせて世界を弄る』と云う手法に落ち着いた。好き勝手やるぞと意気込む最低系オリ主が出鼻を挫かれ途方に暮れる様が面白かったのだ。

 会報にその記録を載せると割と好評だった様で、『自分もやってみた』と云う管理者が居て嬉しく思った。

 そんな遊びを幾度となく繰り返した訳だが、勿論失敗も多々有った。

 ネギ少年側か敵側の、どちらか一方が強くなり過ぎワンサイドゲームになった場合や、ラブコメディが過ぎてエロコメディになった場合がそうだ。エロコメになった場合は強制リセットする他無いが、ワンサイドゲームになりそうな時は相手側を強化する事で何とか出来る。会報では『パワーアップの理由に説得力が無い』と叩かれるし自分でもどうかと思うのだが、一方的な蹂躙は自分の好みではない。会報上でその記録を見るのは好きなのだが。まぁたかが暇潰しなのだから、遣りたい様に遣るのが吉だろう。

 今回もワンサイドゲームになりそうで相手側を強化しようと思ったのだが、差が有り過ぎた為に生半な事では不可能だと、コメディ色を強くしてみた。

 これで多少は楽しめる。そう思って伸びをした瞬間だった。

 

 目の前に、ネギ・スプリングフィールドが居た。

 

 は?と云う言葉しか出てこない。”読んでいた漫画からキャラクターが飛び出してきた”のだ。唖然とする他無いだろう。

 その硬直時間に左腕は切り飛ばされ、眉間に孔を穿たれ、足元は凍り付き、腹に杭を刺された。

 ――何が、起こった?

 

 

 相手方強化策の為繋いでいた”世界”へのリンクへ、”ネギ・スプリングフィールドは危険だ”と云う意識のみが流れ。

 管理者D氏はその存在を、ネギ少年によって滅ぼされた。




話の折り返し地点です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。