黒絹の皇妃   作:朱緒

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第232話

 今回の事件も、幾つかの関係がなさそうな事件が重なり、事態の悪化を招いていった。

 テロがいつ頃から計画されていたのかは分からないが ―― 始まりはヴェストパーレ男爵夫人邸から始まった。

 

 テロ発生の前日の夜、メックリンガーはヴェストパーレ男爵夫人の元を訪ねた。顔なじみの小間使いに案内され、男爵夫人が待っているという寝室へと向かう。

 

「お連れいたしました」

 

 案内を終えた小間使いは、早々に寝室を去る。

 寝室に足を踏み入れたメックリンガーは、貴婦人の寝室とは思えない殺気を感じ、寝室から去ろうとしたのだが、既に邸の主であるヴェストパーレ男爵夫人が人質に取られていた。

 藤色の大人の女性が着るに相応しいデザインのシルクのネグリジェを纏ったヴェストパーレ男爵夫人を背後に立ち、顎を無造作に掴んでいる男 ―― ラインハルトが軍法会議にかけ、軍籍を剥奪した人物。

 その男だけではなく、四名ほどの堅気ではないことがはっきりと分かる男たち。

 

「動くな。おかしな真似をしたら、男爵夫人は殺す。おかしな動きをせずとも、殺すがな」

 

 度胸のあるヴェストパーレ男爵夫人だが、自分を拘束している男が殺すと言った時、さすがに肩を震わせた。

 男はメックリンガーにヴェストパーレ男爵夫人と無理心中をするよう命じる。

 

「拒否したら男爵夫人がどんな目に遭うか、そっちの芸術家さんは分かってるだろう」

 

 ラインハルトに軍法会議にかけられた男だが、罪状は器物破損 ―― 破損したのは死体。この男は死体を犯す趣味があった。

 腕に抱いている形になっているヴェストパーレ男爵夫人の耳元で、男は滔々と楽しげに生命が失われ弾力を失い、死斑の浮く体を弄んだことを語る。

 視覚は目蓋を降ろせば拒絶できるが、聴覚はそうもいかない。

 ヴェストパーレ男爵夫人は確かに剛毅な女性だが ―― これはその範疇ではない。

 まだ入り口に近い場所に立っているメックリンガー。

 逃げることは出来るが、大きな寝室で、入り口から離れた所に立たされているヴェストパーレ男爵夫人を助けて脱出するのは不可能。

 彼が逃げたら、男はヴェストパーレ男爵夫人を殺害して犯すのは明らか。

 それがどれほど人としての尊厳を踏みにじられることなのか、この男の裁判書類に目を通していたメックリンガーは痛いほど分かっている

 

「屍姦して大通りに吊しても良い。むしろそっちの方が嬉しいが。男爵夫人、鳥は好きか? 鳥はあんたの眼球を好むだろうな。とても美味そうだ。足下に置いておくよ。眼球は俺が抜く。何でも知っていそうな顔をしていながら、知らないのか。意外と純情なんだな男爵夫人は」

 

 男は死後眼球を抜いて何をするのかを、ヴェストパーレ男爵夫人に語る。顔色を失う夫人。ヴェストパーレ男爵夫人の最低限の尊厳を守る為には、ここで言われたまま心中するしか道はない。メックリンガーにはヴェストパーレ男爵夫人を見捨てて逃げるという手もあったが、なまじ男爵夫人がラインハルトや、そのラインハルトにとって全てであるアンネローゼと交友があったため「殺され犯されるのが分かっていながら、その場を離れる」ということができなかった。

 

「分かった」

 

 メックリンガーは男がラインハルトに対する恨みを晴らすべく、このような行動を取ったのだと考えた。少ない情報だけでは、これが精一杯なのは仕方のないことである。

 

「遺書はこっちで用意した。署名しろ」

「男爵夫人の尊厳を損なうようなことはしないな」

「ああ」

 

 四人のうちの一人が、男爵夫人の心臓をナイフで突き刺す。

 男爵夫人は口から血が伝い、目は一瞬見開かれたが、すぐに瞳は光を失い目蓋は閉じられた。

 

 メックリンガーは渡された遺書に目を通す。遺書は印刷されたもの。通常であれば自殺か他殺かを少しは疑われる類いのものだが、遺書はとある漢詩の一部分を抜き出したもので、読み解けば心中に相応しいものであった。使われている文字が特殊で、印刷でも疑われる可能性が極めて低い ―― 彼の博識が災いしたとも言えよう。

 男たちは遺書を完成させるために、メックリンガーに署名するよう指示する。

 彼はこの遺書の中に、自分たちが殺害されたことを知らせる「違和感」を仕込めないかと考える。

 

『卿がメックリンガーか。小官はファーレンハイト中佐』

『ファーレハイト中佐。ああ、フレーゲル男爵夫人の所の』

『少々聞きたいことがあるのだが、良いだろうか?』

『ピアノに関してかな?』

 

いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす

 

『ピアノというか、そちら方面だ。よく分かったな』

『ジークリンデさま付きの軍人が、小官にわざわざ聞きに来るといったら、芸術方面しかないであろう』

『そうだな。それでな、この音階表記なのだが……本当にこれは使われていたものなのか?』

 

 メックリンガーは彼女が作った暗号を思い出し、男たちに署名だけではなく、一文を書かせて欲しいと申し出た。

 男たちは警戒して最初は拒否したが、

 

「サインだけでは逆に怪しまれるであろう。なにせ小官は身分を弁えず、積年の思いを爆発させ、無理心中を試みた男という立場だ。これでも小官は大公妃殿下とも、交友がある。あの聡い大公妃殿下は、名前のみでは違和感を覚えるはず。親交ある男爵夫人の死に関してだ、小官の遺言にも目を通されるであろう。なにせあの方は典礼の尚書殿下でもあらせられる」

 

 彼が彼女の知り合いであることは、事前に調査し知っていることもあり、別紙に下書きをし、余計なことを書いていないかどうか確認したら書き込んでも良いと許可する。

 男たちの目を欺きつつ、彼女に真意が届くことを願い、とある文章を認めた ―― 男たちはメックリンガーの意図に気付かず、そのまま書かせた。

 遺書の署名を確認した男たちから、一発分しかエネルギーが残っていないブラスターを手渡されたメックリンガーは、既にベッドに寝かされているヴェストパーレ男爵夫人に近づき、しっかりと手首を握りしめ、自らのこめかみに銃口をあてて、頭を撃ち抜いた。

 彼らは心中の偽装工作を手早く終え、メックリンガーを案内した小間使いに、手はず通り連絡を入れるよう指示をし邸を去った。

 

***********

 

 眠っていたフェルナーは緊急通信の起こされ ――

 

「オイゲンさん、どうしました? ……は? 心中ですか、あの男爵夫人が?」

 

 オイゲンからヴェストパーレ男爵夫人が心中したと告げられた。

 連絡を受けたフェルナーは「なんだ?」と思うと同程度に「何故自分にわざわざ連絡を」と訝しむ。

 不審がられていることに、オイゲン自身気付いていたが、ビッテンフェルトが呼べといっているので ―― どうしても足を運んで欲しいと言われたフェルナーは日付が変わってはいるがまだ夜明けには遠い闇の中、ヴェストパーレ男爵夫人の邸へと向かう。

 邸近くの道路で地上車を折り、使用人入り口から身を滑らせる。

 ヴェストパーレ男爵夫人の邸は何度も訪れたことがあるフェルナーは、オイゲンに言われた部屋を目指す。

 ヴェストパーレ男爵夫人が死亡していた部屋 ―― 寝室前でドアをノックして、

 

「来て下さいましたか」

 

 邸の主でもなんでもない、オイゲンに出迎えられて寝室へ足を踏み入れた。

 ベッドの上には、血で染まったネグリジェ姿のヴェストパーレ男爵夫人の遺体と、そこに上半身を覆い被させているメックリンガー。

 

「無理心中……ねえ」

 

 心中とは全く無縁そうなヴェストパーレ男爵夫人だが、無理心中となると ―― 過去にパトロンの一人が思慕を募らせ、ヴェストパーレ男爵夫人を殺害しようとしたこともあったので、絶対にないとは言い切れない。

 

「遺書は?」

「メックリンガー提督の遺書らしきものです」

「らしきもの?」

「芸術に造詣が深い方らしい遺書なので、どうも分からなくて。見ていただけませんか?」

 

 ”オイゲンで分からなかった、分かるわけない”と拒否するも、目を通してくださいと、手袋を手渡される。

 

「小官は、芸術の心得なんて微塵もありませんよ」

「オラニエンブルク大公妃殿下のお側仕えですから」

「側仕えですけど…………」

 

 ”ジークリンデさまに説明するために見ておくか……ん? なんでフォン・ビッテンフェルトがいるんだ”

 手袋をはめながら、彼女が帰ってきたら報告しなければと遺書に目を通そうとした時、何故ここに、芸術に無縁なビッテンフェルトがいるのか気になった。

 それを尋ねようとしたのだが、遺書に目を通したフェルナーはメックリンガーの直筆に驚き、尋ねようという気持ちが霧散してしまう。

 

「どうなさいました?」

 

 明らかに表情が変わったフェルナーに、オイゲンが声を掛けるが ―― 全てを読み解けなかったフェルナーは、人の悪い笑顔を向け誤魔化した。

 

「読み解けたらお教えします。ところで、これだけのために小官を?」

「いいや」

 

 今まで黙っていたビッテンフェルトから、ヴェストパーレ男爵家とラインハルトの間を調整するように指示される。門閥貴族は醜聞を嫌うので、無理心中などは病死で処理するのが暗黙の了解だが、メックリンガーの直属の上司はラインハルト。

 真相解明をせず、闇に葬り去るような真似をすんなりと受け入れるような人物ではない。よって間を調整しなくてはならないのだが ―― フェルナーが最適な人材かと言えば、オイゲンは首を傾げざるを得ない。

 そのような調整を頼むのであれば、シュトライトを呼ぶべきだと。だがビッテンフェルトはフェルナーを呼ぶように指示を出した。

 ただオイゲンは分からなかったが、フェルナーは徐々に理由が分かってきたこと、遺書が「彼女宛」であることを理解した以上ので、引き受ける以外の選択肢などなかった。

 

「分かりました。調整は引き受けます。あと遺書の解読も」

 

 フェルナーは遺書を撮影し、ヴェストパーレ男爵夫人邸を去った。フェルナーは車中でシュトライトに話があるので、待機してくれていてと連絡を入れから、遺書画像をじっくりと見つめる。

 ローエングラム邸に戻った頃には、夜が明け始めており ―― 出迎えてくれたシュトライトに、開口一番言い切った。

 

「ヴェストパーレ男爵夫人が無理心中を装って殺された」

 

 彼らは通信設備が整っている部屋へと真っ直ぐに向かい、フェルナーはメックリンガーの遺書をシュトライトに見せる。

 

「これは?」

「ヴェストパーレ男爵夫人と無理心中をはかったエルネスト・メックリンガーの遺書だ……と言われているが、どう見てもジークリンデさま宛だよな」

「そうだな」

 

 彼らは漢詩は読めないが、メックリンガーが残した文章には覚えがあった。

 

【いざさらば、敬愛する男爵夫人。壱廿+ エルネスト・メックリンガー ハⅣ♯Ⅲ♭ロ】

 

「LVB 誰のことだ?」

 

 ファーレンハイトがメックリンガーに「いろは……」について質問した関係で、彼も知っていると聞かされていた二人は「ハⅣ♯Ⅲ♭ロ」が「LVB」を指していることにすぐに気付いた。

 

 だが、それ以外がさっぱりわからなかった。

 

「プラスの前に書かれている文字、分かります? シュトライト」

「いいや。これは、文字なのか?」

「文字じゃないんでしょうかね。上の遺書部分の文字に似ているような、似てないような」

 

 フェルナーは「壱廿」を、遺書を構成している文字と同じ系列のものだと考えたが、シュトライトは別物だと考えていた。

 

「殺害に関わった第三者が監視している状態で、残せたわけだから、上の文字とは違うのではないか? おそらくこの上のコレを知っている者が側にいたであろうから、下手な文字は仕込めないであろうし」

「……」

「……」

「ジークリンデさまに、お尋ねしてみましょう」

「そうだな。分かったら教えてくれ。私は男爵家との調整にあたる」

「はい、お願いします。あ、それとコレは、あなたが私に出したクイズという形で尋ねさせてもらいます」

「了解した」

 

 シュトライトは通信室を出て、フェルナーはすぐに回線を開きファーレンハイトの艦へと繋いだ。

 

「分からない?」

『ああ』

「ジークリンデさまが分からなかったら」

 

 絶対に分かると思っていた彼女から、まさかの”分からない”

 

『なにかを省略していないかと仰っていたが』

「省略した覚えはありませんが。あとは”いざさらば、敬愛する男爵夫人。”ですから」

『昼食終了後に、それを付けて聞いてみる。待っていろ』

 

 朝の挨拶をした際に、世間話的に、またさほど重要ではないと持ちかけた話題だったこともあり、不審がられぬよう間を少し置くことにした。

 

「はい」

 

 それから三時間ほど経ち、ファーレンハイトから通信が来る。

 

「分かりましたか?」

『”皇帝陛下、お健やかに、お幸せに”ではないか、だそうだ』

 

 無理心中の署名に混ぜ込むには、おかしな文章。

 

「え……」

『メックリンガーがカザリン・ケートヘン陛下の幸せを願うとは、とても思えんのだが』

「ですね」

 

 そして【いざさらば、敬愛する男爵夫人。壱廿+ エルネスト・メックリンガー ハⅣ♯Ⅲ♭ロ】が【皇帝陛下、健やかに、お幸せに】になるのか? 詳しい理由を聞きたかった二人だが、この時は忙しく詳細は分からなかった ―― 彼女が帰国し、二人が偽装心中で殺害されたことを伝えてから、彼らは解説を聞くことになる。

 また彼女に伝えようとし、あの状況でメックリンガーが残せる唯一の文章が、少々曲解され、皇帝の身に何か危険が迫っているのではないかとなり、男爵家と折衝を終えたシュトライトが、真っ直ぐ新無憂宮には向かわず、侍従武官室へと急ぎ、モルトの死体を発見することになる。

 

 モルトの死体は彼らにとっては、想定よりも早く発見された ――

 

**********

 

 邸に待機中の彼女は、ヴェストパーレ男爵夫人とメックリンガーが殺害されたことを聞かされ、当然のごとくショックを受けたが、続く死亡報告や事件詳細についての報告に、二人の死に拘っていることができなかった。なにより死者が多すぎた。

 

「ジークリンデさまに伺いたいのですが……宜しいでしょうか?」

 

 報告の合間に、フェルナーが気分転換にでもなればと、自分の疑問について尋ねた。

 

「なにかしら、フェルナー」

「【いざさらば、敬愛する男爵夫人。壱廿+ エルネスト・メックリンガー ハⅣ♯Ⅲ♭ロ】がどうして【皇帝陛下、健やかに、お幸せに】になったんですか?」

 

 室内にいるフェルナー以外の面々、キスリングにオーベルシュタイン、そしてファーレンハイトも、それについては是非詳細を聞きたいと考えていた。

 

「それですか。分かりました。まずハⅣ♯Ⅲ♭ロはLVB。エルネスト・メックリンガーが得意な楽器はピアノ。ということでLVBはルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンだと推測したのです」

 

 他にも彼女が考えた暗号を使っているので、自分に関することだと考え ―― ピアノで古典作曲家でLVBとなれば、彼女はベートーヴェンが最初に思い浮かぶ。

 

「LVBって貴族の名前じゃなかったんですね」

 

 名前だとは分かった彼らだが、中に「v」にすっかりと欺され、貴族だと思い込んでいた。

 

「そうね。それで……そう言えば、フェルナー。あなた最初”いざさらば、敬愛する男爵夫人”を省略してたわね」

「ええ。必要ないと思いまして。いや、まさかその部分が大事だなんて、思いませんよ。なあ、キスリング」

「それに関してはフェルナー中将に同意します。被害者は男爵夫人でいらっしゃいましたから」

「メックリンガーも、それを狙ったのでしょう。それでこの重要な部分ですけれど、実は間違っているのよ。正式には”いざさらば、敬愛するテレーゼ”なのよ」

「そのテレーゼという女性は、男爵夫人だったのですか?」

「そうよ、ファーレンハイト。テレーゼ・フォン・ドロスディック男爵夫人。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの名曲”エリーゼのために”の被献呈者として良く名の挙がる人物です」

「あの曲ですか……なんで、エリーゼのためになんですか? テレーゼに捧げた筈なんでしょう?」

「テレーゼのためにと書いたものの、ベートーヴェンがあまりに悪筆で、エリーゼのためにと誤読されたのが原因だったとか」

 

 その場にいた全員がテレーゼ(Therese)とエリーゼ(Elise)のスペルを脳裏に描き ―― どう書いたらそこまで間違われるのか、不思議に思った。

 

「もっとも、エリーゼと呼ばれていたエリザベートという名の歌手に捧げたという説もあり、どれが正しいのかは判明しませんでした。そう言えばキスリングは、エリーゼのために、聞いたことある?」

「ありません」

「この話が終わったら弾くから、聞いてくれる。あなた達もどう?」

「喜んで」

「ではさっさと説明を終えましょう。エリーゼのためには作品番号がなくて”作品番号なし作品番号”が振られているの」

「WoOでしたか?」

「そうよ、フェルナー。それでエリーゼのためにはWoO59。120を足せと書いているから、59に120をプラスして179。WoO179のタイトルは【皇帝陛下、健やかに、お幸せに】なのよ」

 

 音楽が好きだった彼女は、かなりの曲名を覚えており、これに関しては記憶が薄れるようなことはなかった。

 

「これ120と読むんですか?」

 

 いきなり出てきた120という数字に、唯一解読されていない「壱廿」をフェルナーが指さす。

 

「読まないわ。百二十は普通は他の字が使われるわ。でも読めなくもないといったところ。こっちが1で、こっちが20。だからつなげて120。最初は1と20を足して21にして、意味不明だったんですけれど、”いざさらば、敬愛する男爵夫人”と書かれていたと聞き、作品番号に足すのだと」

「そう言えば、死亡時刻は深夜零時頃だったな」

 

 あの後、ヴェストパーレ男爵夫人とメックリンガーの遺体は解剖に回され、死亡推定時刻は日付が変わる頃。

 

「死亡時刻が深夜の0:00頃でしたので、時刻を書いたと勘違いされたのでしょう」

「ということは、その場にこの特殊文字を読める輩がいたということか」

 

 無理心中を工作した者たちはまだ捕まっていないこともあり、彼らは新たに得た情報を小声で語りながら、ピアノが置かれている部屋の一つのホールへと向かった。

 


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