大公妃の称号を授かった彼女は、次に尚書に就任し、その日の晩餐会を無事に終え、帰宅後、広いベッドに勢いよく転がった。
そして翌朝 ――
「ジークリンデさま」
ヘーゼルナッツ色をした総クロッシェレース製のアール・ヌーヴォー風のガウンを着て、ベッドの上で、フェルナーが持ってきた温かいミルクティーを飲んでいた彼女の元に、一糸乱れぬ軍服姿のオーベルシュタインがやってきた。
「どうしました? オーベルシュタイン」
―― 寝起きでも、髪くらい梳いておくべきでした
朝早くから自分の寝室にまでやってくるのだから、よほど重要なことなのだろうと ―― そうは思えど、化粧を直していないのが気になり、カップをトレイに置き、ガウン袖の豊かなレースで顔の半分を覆い隠し、訪問理由を尋ねた。
「未明のことですが、宮内の次官が死にました」
オーベルシュタインはこれでもかという程に素っ気なく、彼女に報告する。
「……え?」
このところの激務がたたったのか? 後継者が決まり、尚書も定まったので気が抜けたのか? その両方か? 高齢の宮内次官が、今朝、冷たくなって発見された。
発見したのは、起こしにやってきた召使いで、声をかけても反応せず、不審に思って手を触れた時にはすでに冷たくなっていたという。
「念のために解剖に回しましたが、事件性はないもようです」
今までの彼女は、お悔やみの言葉をかけ、葬儀に参列するだけで良かったが、尚書となればそれだけでは済まない。
「そうですか。ところで、後任の人事は?」
オーベルシュタインが片手に大判の端末を持っているので、次官の候補の選定は終わっているのだろうと、声をかける。
「省内の高級官吏です」
声をかけられたオーベルシュタインは、顔写真と名前が書かれている画面を表示し、彼女へと差し出した。
「これから選べばいいのかしら? オーベルシュタイン」
―― 全員、昨日の晩餐会に出席していましたね。無難と言えば無難なのですが……
「これぞと思う人物がいなければ、無理に選ぶ必要はございません」
「そうね。もう少し考えたいわ。その間の仕事は大丈夫かしら?」
「ご心配は無用です」
―― そうよねー。オーベルシュタインですもの。老齢の次官が一人いなくなったところで……でも、三つも任せているから、仕事が出来る人を早急に配置しないと。オーベルシュタインに従順で、仕事ができる、伯爵家以上……最後が難関です
宮内省の次官ともなれば、それなりの家柄でなくてはならない。他の省庁も、高官は家柄を必要とされるが、宮内省はその役割上、上流の貴族でなければ務まらない。逆に言えば上流の貴族であれば、誰でもある程度は務まる ―― だが役人である以上、事務の仕事もこなさなくてはならず、その能力を持ち合わせている門閥貴族となると、途端に数が減る。
―― 尚書が実務経験ゼロで、次官まで事務処理能力皆無では、さすがにねえ
オーベルシュタインが使える程度には仕事ができる門閥貴族……そう考えると、彼女は少しばかり気が遠くなり、ベッドにぱたりと倒れ込んだ。
「大丈夫ですか? ジークリンデさま」
「お疲れでしたら、今日はお休みになった方が」
寝室に控えていたキスリングと、報告しにやってきたオーベルシュタインの二人が、口々に休みましょうと言ってくるのだが、
―― 貴方たち、私のこと甘やかし過ぎです。余程のことがない限り、休みません
今日彼女は、各省へ尚書として初登庁の日である。
**********
あの後やってきたフェルナーや、ファーレンハイトにも「休んでは」と言われた彼女だが、彼らを必死に振り切り三省に初登庁し、各省で全職員に訓示を述べる ―― ただ彼女が喋るのではなく、座っている彼女の隣に立っているオーベルシュタインが、代理で原稿を読み上げる形式。
帝国では一般的に、女は公式の場で発言するものではないとされているので、このスタイルになったのだ。(国葬は例外)
もっとも皇族となったので、その枠におさまらないのだが、彼女としては喋らなくていいのならば、進んで喋りたいわけではないため、この形式に異論はなかった。
省に顔を出し、幹部たちの挨拶を受け取り、宮内次官の自宅に立ち寄り、ラインハルトの就任を祝うパーティーへ。
もちろん手配は彼女。
旧リヒテンラーデ公邸で開かれたパーティーは、彼女が取り仕切ったにしてはやや地味だが、華美を嫌うラインハルトには非常に好評であった。
その日彼女は帰宅せず、旧リヒテンラーデ公邸に泊まる。
客が全員帰ったあと、彼女は一人、テラスへと出た。
視線の先にあるのは、白く塗られた木製のベンチ。
彼女は用意しておくようには言っていないが、ベンチにはクッションが敷き詰められており、背もたれには、やや丈が長めで、首元が大きなリボンで、縁がレースで飾られているケープがピンで留められていた。
椅子にはコルクが抜かれた白ワインのボトルと、グラスが一つ置かれていた。
彼女は自らグラスに白ワインを注ぎ、一口含んだ。口には合ったのだが、それ以上酒は進まず、グラスを持ったまま夜空を仰ぐ。
そうしているとフェルナーがやってきて、背もたれにかけられていたケープを外し、彼女の肩にかける。
「夜空に黄昏れていないで、そろそろお部屋に戻りましょう。ポンチョ姫さま」
「誰がポンチョ姫ですか、フェルナー」
ケープを羽織った姿を、ポンチョと言われるのは構わない彼女だが、それに姫を付けられるのは別である。
「ジークリンデさまが。とってもお似合いですよ」
「もう……」
ジークリンデはふわりと立ち上がり、フェルナーの腕を掴み、撓垂れかかる。
「ジークリンデさま。レオンハルトさまが、開発させていた農業工場のこと覚えていますか?」
「もちろん、覚えているわよ」
「見学しにいきます?」
”なんかよく分からないですけど、楽しみですわ”
フェザーンでその話をした時のことが、そしてその前後を一気に思い出し、彼女は俯き、少々早足になる。
「今はまだいいです」
興味はあるのだが、いま見に行ったとしても、楽しめない気がしたので、止めておくことにした。どうせ行くのなら、楽しめるようになってからのほうが ―― それがいつなのかは、彼女にも分からないが。
「そうですか」
「ところで、フェルナー」
「なんですか?」
「ゾンビ映画を思い出してしまって、とても怖いので、一晩一緒にいてちょうだい」
前後を思い出してしまった結果、封印していたことまで思い出してしまい、フェルナーの腕を掴む手に力が籠もる。
「畏まりました。ゾンビと戦えるように、武装してまいりますね」
「私も武装するのは、駄目ですか?」
「駄目に決まってるでしょう。そんなに恐いのでしたら、一個旅団配置しますから、それで我慢してください」
「そんな大人数は要りません」
**********
当たり前だがゾンビに襲撃されることもなく、彼女は武装したフェルナーに見守られながらぐっすりと眠り、心地良い朝を迎えた。
翌日行われたローエングラム邸でのパーティーは、
「きえええぇぇぇぇ!」
「……ファーレンハイト。私の気のせいですか?」
聞き覚えのある女性の奇声に、閉じた扇子で口元を隠して「対処」するよう命じた。
「気のせいです。迷い込んだ猫二匹が、喧嘩しているだけです。いくぞ、リューネブルク!」
奇声の主はリューネブルク夫人で、追っているのはフェルナー。もはや定例と言ってもいい状況。
「おお、ファーレンハイト元帥。それでは失礼いたします、大公妃殿下」
”やれやれ”と思いつつ、彼女は会場を出てゆく二人の背を見送った。それ以外、なにも問題なくパーティーは終わり、リューネブルク夫妻は帰途につき、フェルナーは逃げ回り特に怪我はなかった。
「フェルナー」
特に怪我はない ―― リューネブルク夫人に付けられた傷はないが、逃げる際に植木に引っかけるなどして、顔に細かい傷が幾つかついてはいる。
「どうしました? ジークリンデさま」
客が全員帰ったので、フェルナーのところへとやって来た彼女は、顔の小さな傷を指でなぞる。
毎回こんな騒ぎを起こしているのだから、リューネブルク夫人を招待しなければいいのでは? ―― と言われそうだが、ここで皇族となった彼女が夫妻を招待しなくなれば、夫妻は社交界から事実上追放されたことになる。
門閥貴族にとって社交界から追放されるのは、まさに死活問題。
ここで見捨てて追い詰められてしまったら、最悪クロプシュトック事件の再現になりかねない。
最初から招いていなければ良かったのだが、彼女がリューネブルクと仲良くなりたくて招き始めたこともあり、最後まで責任を持ちたいと考えている。
「リューネブルク夫妻よりも、あなたの方がずっと大切よ、フェルナー」
「ありがとうございます」
自分の頬に触れている彼女の手を握り、こんな傷は大したことはないと、笑顔でこたえる。
フェルナーもリューネブルク夫妻の立場や、彼女の影響力を熟知しているので、リューネブルク夫人は面倒だとは思えど、招待することに異存はなかった。
「本当に大丈夫」
「ええ。面の皮はかなり厚いので、ご安心ください」
「ほんとに……」
彼女はもう片方の手もフェルナーの頬に添え、つま先立ちをして、傷口近くにキスをする。
「今夜はゆっくりと休んでね」
「はい」
こうして次々と開かれた、各尚書の就任パーティーも終わり、一息ついていた彼女の元に、面会希望者が訪れた。
「誰ですの?」
正確に言えば、彼女への面会希望者は大勢いる。
ただ、ほとんど取り次いでもらえず、オーベルシュタインのところで止められていた。一人一人会っていたら、彼女の身が持たないからだ。
そのオーベルシュタインが、珍しく取り次いだのは、その希望者が進退窮まっていたためである。
「エーリッヒ・フォン・ハルテンベルク」
「…………リューネブルク夫人の兄君の、ハルテンベルク伯ですか?」
「はい。先日の妹君の行動に対して謝罪をしたいと」
妹の奇行はハルテンベルク伯も知るところだったが、彼女が特段咎めなかったので、いままでその温情を頼りに、彼は領地で過ごしてきたのだが、この度、彼女が皇族となったことで ―― もと内務省に務めていたハルテンベルク伯は、フェルナーがどれほど彼女に気に入られているかを知っているので、これ以上は……と、覚悟を決めて領地からオーディンへとやってきた。
―― 貴族の部下に働いた非礼と、皇族の部下に働いた非礼では違いますものねー。私自身、あまり気にしていませんでしたが…………ハルテンベルク伯? ……
彼女の元へとやってきたハルテンベルク伯は、必死に彼女に詫びる。実はハルテンベルク伯、エリザベートを領地に連れ帰ろうとしたのだが、妻とその実家から大反対され、結局オーディンに滞在させていた。
だがさすがに彼女が皇族となったので、これ以上彼女に迷惑をかけたら、ハルテンベルク伯爵家だけでは済まないとなり、妻も了承するしかなかった。
二度とご迷惑をおかけしないので、今までのことは、どうかお許しください。何でもいたしますので、家の取り潰しはと。
―― 私、とっても悪役になった気がします
自分の父親ほどの年齢の男性貴族が、頭を下げて必死に詫びる姿を前にするのは、あまり気分がよいものではなかった ―― 少なくとも彼女にとっては。
「ハルテンベルク伯、頭を上げなさい」
彼女に言われたハルテンベルク伯は、顔を上げると冷や汗をハンカチで拭う。
「謝罪はそのくらいで。さきほど、なんでもすると言いましたね、ハルテンベルク伯」
「はい」
妹エリザベートの処分、良くて精神病院に入院させるように命じられるのではないかと、ハルテンベルク伯は考えていたが、
「では宮内次官の座に就くことを命じます」
彼女は伯が考えてもいなかったことを告げた。
「私がですか?」
「ここにあなた以外の伯爵以上の有爵貴族がいる?」
「おりません」
「直属の上司は私ですが、職務について話し合うのはオーベルシュタイン。庁内での立場は、貴方よりオーベルシュタインのほうが上です。我慢できますね」
「無論にございます」
「では、職務をまっとうしなさい」
ハルテンベルク伯を下がらせる。
「ハルテンベルク伯は元内務省の役人。義父で内務尚書を務めた侯爵閣下は、有能だったと仰っていました。でも、あなたにとって役に立たない、または無能であったら、私に言いなさいオーベルシュタイン」
「御意」
―― 決断力とか判断力とかは怪しいですけれど、実務能力はありそうですから。頑張ってくださいな。そしてエリザベートさん、さようなら……と
リューネブルク夫妻は、二人で兄の領地に戻ることになったのだが、シェーンコップが帝国に来たことを知ると、今度はリューネブルクが黙っていられなくなり ――
**********
彼女の手元に届く書類は、あまりない。オーベルシュタインで対処できるものは、全て彼が代理で対処してしまうので ―― 彼女の手元に届くのは、かなり大規模な事柄に関する書類ばかり。
―― ラインハルトさん、真面目に仕事してますね……でもね、これ、結構面倒よ
彼女は珍しく手元に届いた書類に目を通して、どうするつもりなのだろう? と、少しばかり心配していた。
実は書類が届く前に、ラインハルトがしようとしていることは、耳に届いていた。ラインハルトは財務省管轄下に、新たな庁を作ろうとしていた ―― 民政庁である。
大まかに言えば平民の生活と権利の向上に携わる庁。となれば、貴族の反対は当然であった。帝国の全権を握ったラインハルトならば簡単に作れただろうが、現在のラインハルトは権力はあれど、全権掌握とはほど遠い。
むしろ全権掌握しかかっているのは、彼女のほうだが、相変わらず当人は気付いていない。
―― カール・ブラッケが長官予定ですか。この人は、この私でもさすがに覚えています。相変わらず才能を見いだす能力はすごいですね、ラインハルト
オイゲン・リヒターは財務次官として、ラインハルトの配下に入っている。
―― なんかこう、上手い具合に民政庁を……それにしても、難しい文章です。読めますけど、頭に入ってこない
彼女も貴族としては、反対しなくてはならないのだが、感情としては作っても良いのではないかと。だが彼女の立場がある。
立場を無視してラインハルトに協力しては、これ以降、門閥貴族たちを纏められない恐れがある。
そうなっては、緊急事態が起こった際、後手になってしまうので、できれば緊急時に門閥貴族たちを従わせることができる現状のまま、民政庁設立に協力したかった。
ラインハルトに脅されて……でも通るには通るのだが、そんなことをしたら、ラインハルトが悪人になってしまうので、彼女としては避けたいところである。
―― なんか良い案ないかなあ……オーベルシュタインに聞いたほうが良いかしら。でも、この程度は……
書類を前に、悩んでいた彼女。
「ジークリンデさま」
そこへフェルナーが、人を連れてやってきた。
「なに、オーベルシュタイン……あら、フェルナーも。どうしたの?」
声をかけられて、頭を上げると、軍服をきっちりと着用している二人とは正反対の、貴族服を崩して着用し、無造作に長髪を纏めた無精髭の男がいた。
「ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒと申します」
「……」
名前は聞かずとも、誰なのかは彼女も分かっていた ―― ただし、ブルーノという名は記憶にはなかったが。
突如彼女の前に現れたシルヴァーベルヒ。彼は六年ほど前から、フレーゲル男爵領の一部、手つかずの惑星を、フェザーンの企業と共に開発する事業の、総責任者を務めていた。
「良人は成功の暁には、あなたに尚書の地位を約束していたと」
「はい。閣下も納得してくださる成果は出したと、確信しております」
資料を机上に並べられたが、彼女はそれに目を通しても、成功しているのかどうかなどは分からなかった。
だがフェルナーがこうして、彼女の前に連れてきたのならば、言っていることは正しいのだろうと判断し、約束の品を与えることにした。
「ならばもっと早くに来なさい。あなたが名乗りを挙げていたら、私は尚書の座などに就かなくて良かったのに」
―― 少しくらい苦労する形でも……才能ある人だから大丈夫でしょう
「それは、申し訳ございません」
憎たらしいほどに自信に溢れているシルヴァーベルヒに、彼女は丸投げすることにした。
「あなたは尚書になりたいと言うのですね」
「はい、それだけの才能は持ち合わせていると自負しております」
「分かりました。それでは、あなたの実力を見せてもらいましょう」
「これだけでは不満ですか?」
少しおどけたような素振りを見せたシルヴァーベルヒに、彼女はある提案をする。
「不満ではありません。尚書の座も用意しましょう。ですが、それを手に入れるには、あなた自身の努力が必要です」
ラインハルトが民政庁を作ろうとしているが、各所から反対されている ―― ラインハルトだけが行おうとしているから反対されるのであって、彼女も新たな庁を作るので、その引き替えにラインハルトにも好きにさせてやるように、根回しをすれば良いと考えた。
この方法をとった場合、門閥貴族は敵ではなく、最大の敵は協力しようとしている相手のラインハルト。
おおよそ無能な貴族がトップに就く庁の増設など、ラインハルトが首を縦に振るはずもない。よって、ラインハルトを納得させなくてはならない。
「何尚書を下さるのですかな? オラニエンブルク大公妃殿下」
シルヴァーベルヒは無精髭を撫でながら、彼女に尋ねる。
「工部尚書」
「は?」
シルヴァーベルヒは聞いたこともない省の名に、随分と気の抜けた声を思わず漏らしてしまった。
彼女の隣にいるオーベルシュタインや、彼女を正面から見ているフェルナーも、何のことだろうかと ――
「その才で省を作りなさい。そして尚書におさまれば良いのよ」
「……」
「怖じ気づきました?」
「考えたこともなかったもので」
シルヴァーベルヒは彼女の執務室にきて、初めて緊張を覚えたようで、生唾を飲み込む。その上下する喉仏を眺めつつ、
―― 普通の野心家と、宇宙を征服しようとする野心家の違いなのかしらね
才能はあるが、普通の枠に収まる人間なのだと分かり、彼女は安心を覚えた。
「最初から省は難しいでしょうから、最初は庁。長官はあなた。帝国の古くなっているシステムを刷新し、帝国に新たな活力を。その実績を持って省に昇格。長官は尚書に持ち上がり、これでどうかしら?」
「全てわたくしめ、一人で行わなくてはならないのでしょうか?」
「私が賛成している、私が作れと命じた。これだけで、充分でしょう? あとは、あなたの才のみ。その程度の実力は持ち合わせているのでしょう」
―― 正直に言うと、号令かけるくらいならできますけれど、新庁作るのに必要なことって分からないのよね。適当に作ってくれたらいいかな? って
庁の設立方法など、彼女には見当もつかないこと。
だが、シルヴァーベルヒならばできるのではないか? くらいに、軽い気持ちで。
「ローエングラム大公妃殿下」
―― オラニエンブルク大公妃殿下です。ローエングラムじゃないです。そっちの方が、通りが良いようですけれど
「なにかしら? シルヴァーベルヒ」
「謹んでお受けさせていただきます」
こうして国務省管轄下に工部庁が設立される運びとなった。