黒絹の皇妃   作:朱緒

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第110話

 階級に厳しい世界に生きていること ――

「失礼いたします」

 想いをはせていると、フェルナーと同じく背広姿のシューマッハがやってきた。

「どうしました? レオポルド」

「予約注文の品について、ご報告いたしたいことが」

「なにかしら?」

「向こうが、新しい品種を勧めてきました。ご希望でしたら、揃えておくと」

 ジークリンデは”せっかくフェザーンへ行くのだから、普段は人任せにしている商品を自分で買ってみましょう”と思い立ち、シューマッハにそれらの手はずを任せた。

 手はずも自分でしなければ、自分で商品を買うにならないのでは? と言われそうだが、貴婦人が買うだけで、細々としたことは部下に任せるのが普通なので、コレばかりは仕方がない。

「夫人、なんですか?」

 フェルナーは”品種”という単語に「花の種かペットか?」一般的なことを考えたのだが、

「乳牛の精子よ」

 若い女主は、彼が予想もしていなかった品目を、花も恥じらうような笑顔に、鈴を転がすような澄んだ声で告げた。

「……」

 言葉を失っているフェルナーに、

「種付け用のね」

 ”もしかしたら、知らないのかしら”とばかりに続ける。

 フェルナーは目を閉じて頭を振り、両手で制するようにして”言わないで下さい”と無言のまま頼み込む。

 その表情は、

―― 困っているというよりは、単純に情けないような……え?

 明らかに情けなかった。

 表情を見たファーレンハイトが、口の端を歪めるくらいに。

「お姫さまは、そんなこと言っちゃ駄目ですよ、夫人はお姫さまですから」

 フェルナーは女性に対して幻想など持っていない。

 姉三人に酷い目にあわされてきた男である。その暴虐は、原作ロイエンタールよりも重度の女嫌いになっても良いレベル。

「お姫さまって」

 だからこそジークリンデには”お姫さま”であって欲しいのかもしれないが。

 そのお姫さまことジークリンデは、領民のことを考える良い夫人だったので「乳の出が良くなる精子を購入して、良い乳が出る牝牛を増やしましょう」と ―― そこだけフェルナーの”お姫さま”ではなかった。

「伯姫さま」

「アーダルベルト」

「では姫様」

「レオポルド」

 皆に姫様、姫様言われながら、ジークリンデはフェルナーに購入理由を説明する。

 

 

 突然だが【ジャックと豆の木】という話をご存じだろうか?

 知らない人や、話を忘れてしまった方に簡単に説明すると「主人公ジャックが母親に言われて牝牛を売りに行くのだが、途中で豆と交換。その豆が一晩で天空まで伸び、それを昇ったところ、巨人の国にたどり着き、あとは宝を強奪して帰宅。豆の木を切り倒して終わり」このような物語である。

 後半が物語の面白いところなのだが、ここで必要なのは出だし。

 ジャックが牝牛を売りに行くというくだり。

 この牝牛、物語を読むと分かるのだが「乳の出がよい牝牛だから、高く売れる」と母親が言う。

 乳がまだ出る牝牛ならば、飼って乳を絞り売ったほうが良いのでは? 思う人もいたはず。

 確かにそのほうが良いのだが、この親子は「領主に種付け料が払えず、牝牛に仔を産ませることができないので、乳を得ることができない」という、物語に書かれていない部分が存在する。

 物語が書かれた当時は、説明する必要もないことなので、書かれなかった……そう言われている。

 

 

 中世の荘園と同じような支配を行っている帝国でも、当然領主がこれらを管理している。

 

 ならば管理者として、最良の種を購入し、収量を多くして領民にも牛乳を飲ませてあげよう! ジークリンデはそう思い立ち、牛の品種や精子の販売などについてシューマッハに調べさせた。

 案の定というか調べる前から分かっていたようなものだが、フェザーンのマーケットが最大。

 シューマッハの調査結果を疑っていないジークリンデは、フェザーンでの購入を決めたが、先入観と周囲の評価から、フェザーンの「商品」はともかく「商人」は色々と信頼できないので、シューマッハに学んでもらい買い付ける予定であった。

 

「種は全部、領主が売りつけているのです。ですから、フェザーンで良い種を購入したいと思いまして。変な商品を買わされると困るので、レオポルドに勉強してもらってます」

 シューマッハの報告とは「少々値は張りますが、同じような品質と乳量を維持しつつ、病気にも強い精子が手に入りました。こちらの商品はいかがですか」なるセールスメールが届いたこと。

「もともと興味のあることなので、いくらでもお申し付けください」

 深々と礼をするシューマッハと、嬉しそうに語るジークリンデ。

「乳量が1.8倍になって、品質も上がる予定なのよ。その種……なに? アントン」

「理由は分かりましたけど、駄目ですよ」

「なにがですか?」

 ジークリンデは小首を傾げ少し離れたところにいる、ファーレンハイトに”どうしたのかしら? フェルナー”と無言で語りかけた

 

―― ジークリンデさま、申し訳ございません。姉が三人もいる男なので、俺のように女性に多大な夢を持っていないと思い、採用に同意したのですが。どうやら間違いだったようです。なんでこんなに……気持ちは分かるが

 

 フェルナーをジークリンデの警護にすることに、渋い表情をしていた国務尚書を「姉が三人もいるのですから、女性に夢などもっておらず、必要以上に神聖視しない……」などと言って、ファーレンハイトが説得したのだ。

 

「そういうの、喋ってはいけませんよ、夫人」

 

 ちなみに新商品のセールスについてだが、値が張る方を購入しても、なんら問題がないほど、資金が用意できているので ―― あとは現地でシューマッハに調査してもらうことに。

 

**********

 

―― フォン・ビッテンフェルトといえば”カタリナ”だが、この中にいるのだろうか……それにしても、カタリナ多いな。エリザベートほどではないが

 

 ジークリンデはサロンで門閥貴族の女性たちと、会話を楽しんでいた。

 政治的な話などは一切なく、聞く人によっては「脳がバタークリーム」だが、今のジークリンデには必要なことなので、笑顔で会話を続ける。

 その背後で、フェルナーが覚えてきた名前と顔に、雰囲気などの必要事項を追加記憶する作業に勤しんでいた。

―― あっちがカタリナで、こっちはエリザベート。夫人の右隣がカタリナで、向かって左側がマルガレータ、そっちがエリザベート。エリザベートの隣にいるのがクリスティーネで、いまジークリンデさまが、お話をなさっているのが……グレーテル

 

 自分の仕えている主の名が「ジークリンデ」であることを、フェルナーは心から喜んだ。

 

「ジークリンデ、プレゼントよ」

「ありがとうございます、グレーテルおばさま」

 ジークリンデと会話を楽しんでいる女性は、四十も後半の公爵夫人。

 朗らかな性格で、人の良さそうな笑顔が魅力的な、幅と厚みと重みのある体格。

「まあ、素敵な真珠のチョーカー」

 プレゼントは中心に縁が金の、オバール型のカメオがアクセントになっている、三連の真珠のチョーカー。

「それだけじゃないのよ、ジークリンデ。こっちも、受け取って頂戴」

 ジークリンデは見ていた宝石箱を閉じ膝に乗せて、グレーテルがつきだしたもう一つの宝石箱を受け取り、すぐに開く。

「バルタザールおじさまからですか?」

 同じく真珠のチョーカーなのだが、小さな真珠と同じ大きさにカットされた無色の宝石で、レースのように編み込んだもの。先ほどのものが、シックな装い向けならば、こちらは若いジークリンデが身につければ、華やかさが増すようなデザイン。

「そうなの。あの人、ジークリンデにはこっちが似合うって言ってきかなくて」

 

 この公爵夫妻、ジークリンデを飾るのが好きなのだが、夫婦の趣味が合わない上に、両者譲らず、いつも自分が気に入った商品を購入するため ―― ジークリンデはいつも二つプレゼントをもらうことになる。

 取り巻きの女性たちとチョーカーを褒め、最終的の「お礼をしたいので」ということで、夕食を一緒に取る運びとなった。

 

 

「仲の良く趣味の合う夫婦だが、ジークリンデへのプレゼントに関しては、いつも正反対だ」

 

 夫妻で赴くのだが、一般的には男よりも女の方が身支度には時間が掛かる。

 それは男爵夫妻にも言えることで、準備が終わったフレーゲル男爵はジークリンデの準備が終わるのを待っていた。

 

「そうでしたか」

 フレーゲル男爵は時間つぶしに、新人のフェルナーに、なにか聞きたいことはないか? と、質問を許してやった。

 そこでフェルナーは、まず第一に「なぜ夫が選んだ贈り物を公爵夫人から贈るのか?」と尋ねた。

 対する答えは、”バルタザールおじさまは、妻であるグレーテルおばさま以外の女性には、自らプレゼントを渡さない。あの人は愛妻家だからな”フェルナーにとっては意外なもの。

 若くて綺麗な人妻に、妻に隠れてプレゼントを贈るような男ではない。それがバルタザールという男性の性格である。

 次に聞いたのは「そこまで贈り物に対してオープンなのでしたら、二人で一つでいいのでは?」という問いに、上記の答えが返ってきたのだ。

「他にはあるか」

「ではお言葉に甘えてもう一つ。貴婦人のお名前ですが、エリザベートやマグダレーナなど、特定の名前がやたらと多いのは、なにか理由があるのでしょうか?」

 平民にもエリザベートやマグダレーナは居るが、これほど多くはない。

「平民は知らぬか。そういえば、帝国騎士階級のファーレンハイトも知らなかったな」

 同じく部屋で待機しているファーレンハイトの名が上げられた。

「必要はありませんので」

―― どうやら、准将も同じ質問をしたようですね

「そうだな。では、説明してやろう。我らはルドルフ大帝より姓を与えられた、選ばれし民である」

 フレーゲル男爵の少々、実家自慢が入った説明に、フェルナーは黙って耳を傾ける。

「我らはゲルマン姓を与えられたので、名もそれに合うように改名することにした。その際に元の名をゲルマン読みにしたところ、多くがエリザベートとマルガレータになった」

 答えを知れば簡単なことだがエリザベス、イザベラ、リズ、リザ、ベス、エリス、エリーゼ、エリーザ、エリーズ、エリザヴェーダ……など。その名を全てが「エリザベート」になってしまったのだ。

 マルガレータも同様である。

 

 祖母など親族の名前をもらうのはヨーロッパ圏ではよくあること。

 

 ルドルフ大帝の后の名はエリザベート(エリサヴェト)・ブライトクロイツ。

 后の実家も爵位を授かりブライトクロイツ公爵家となった。

 次に家督を継ぐ兄は生まれた娘に、妹と同じ名エリザベートと付けた。以降、ブライトクロイツ公爵家の娘の多くは”エリザベート”と名付けられることになる。

 

 跡を継ぐべき直系男児が生まれなかったので、長女カタリナの息子が跡を継ぐ形となった銀河帝国。

 娘婿のヨアヒムはノイエ=シュタウフェン公爵位を授かったのだから、当然、公爵家をも引き継がなくてはならない。

 ヨアヒムとカタリナは一男一女に恵まれ ―― 娘が婿を取りノイエ=シュタウフェン公爵家を継ぐことになった。この娘は母親と同じ名を付けられ……以降、ノイエ=シュタウフェン公爵一門の娘の多くは”カタリナ”と名付けられることになる。

 

 そしてマグダレーナだが、これはルドルフ大帝の”良き”家臣であったエルンスト・ファルストロングの妻の名(ただし元はマルグリット)

 ルドルフは残された寡婦を手厚く保護し、ファルストロング家を継ぐことを特別に許可し ―― ファルストロング家ではよく使われる女性名となった。

「……だ。分かったか?」

「よく分かりました」

 平民でも親族女性の名を付けられるのは、珍しいことではないのだが、平民とは違い門閥貴族は狭い世界だけで婚姻を結ぶ上に、同じような家柄の者とばかり婚姻を繰り返した結果、同じ名前の女性ばかりになってしまったのだ。

「慣れればすぐに分かる。エリザベートが特に多いのは、他にもエリザベートが……アルブレヒト・フォン・クロプシュトックを知っているか?」

 ファルストロングとともに、ルドルフ大帝の腹心と言われたクロプシュトック。

 滅びゆくクロプシュトック侯爵家の始祖。

「存じております」

「あいつの娘もエリザベートだった。今では婚姻を結ぶ家などないが、かつて栄華を誇っていた際には、あちらこちらに縁づいていたこともあり、エリザベートが増えた」

「なるほど」

「……」

 そこまで言うと、フレーゲル男爵はフェルナーから視線を外し、思案げな面持ちに変わった。

「どうなさいました?」

 ファーレンハイトが声をかけると、ドアがノックされ、開いた扉から着替えたジークリンデが、笑顔で現れた。

「レオンハルト、お待たせしました」

 大量のギャザーと、アクセントのドレープによって作られる陰影が美しい、桜色のシルクサテンのドレス。胸元は当然大きく開いている。

 その首元を飾るのはダイヤのネックレス。デザインは首飾り事件で有名になったあの首飾り ―― の上の方に飾られているものによく似たデザイン。

「それにしたのか」

「ええ。今日いただいたチョーカーを、二つ付けるわけにもいきませんから」

 別々の品なら多少似合わずとも、両方とも身につけることができるが、同じものとなると、そうもいかない。

「それならば、二人も文句は言わんだろう……髪飾りは、以前バルタザールおじさまからもらった物だったな」

「はい。ブレスレットはグレーテルおばさまから、いただいたものです」

 ジークリンデの黒髪に編み込まれている真珠の髪飾り。繊細な造りは、今日彼女がバルタザールからもらった真珠のチョーカーによく似ていた。

 

―― バルタザール閣下は、こういうデザインが好きなのか。……夫人に、このデザインを贈るのが好きなのか

 

 ブレスレットはゴールドにダイヤモンドをあしらったシンプルな物。

 そのブレスレットで飾られた腕をフレーゲル男爵の腕に絡める。

「フェザーンで、グレーテルおばさまと、バルタザールおじさまに、今日いただいたチョーカーに合うドレスを買ってもらおうと思うんですけど」

「二人とも喜ぶだろう。では行こうか……ああ、そうだ。先ほど考えていたのは”滅びるときに滅び損ねたものは、惨めだな”と言いたかっただけだ。いくか」

 

**********

 

 フリードリヒ四世には兄で皇太子のリヒャルトと、弟のクレメンツがいた。

 この兄と弟が帝位を狙い、結局どちらも破滅し、フリードリヒ四世が二十九歳で帝位につくことになったのは、誰もが知っているところ。

 フリードリヒ四世にはルートヴィヒという一人息子がおり、彼は皇太子に冊立されていたが ―― 不吉な名とされていた通り、帝位に就くことなくこの世を去った。

 

 この皇太子ルートヴィヒだが、当然フリードリヒ四世が放蕩三昧の頃に生まれた息子だからこそ、この名が付けられた。

 父親である皇帝オトフリート五世から勘当寸前だったフリードリヒ四世だが、結婚はしていたことが分かる。

 

 ”滅びるときに滅び損ねたものは、惨めだな”

 

 フレーゲル男爵の言葉の意味が、理解できなかったフェルナーとファーレンハイトは「このような話をし、最期に”このように”締められた」説明し、貴族ならではの解説を求めた。

 

 ファーレンハイトも貴族といえば貴族だが、彼の場合は……

 

 説明を聞いたシュトライトは、少しばかり考えて、フレーゲル男爵の考えを、おおよそ推察した。

「それはクロプシュトック侯のことであろう……。クロプシュトック侯が陛下の政敵であった、クレメンツ大公を推し、敗北したことは知っているであろう。問題はクロプシュトック侯爵家が、なんら罰を受けずに残っていることです。クレメンツ大公に従いリヒャルト皇太子を陥れた廷臣、その数は二百。その彼らと、クレメンツ大公を推していたクロプシュトック侯が通じていないと思いますか?」

 クロプシュトック侯爵家は連座も免れ、爵位を下げられることもなかった。

「宮廷の採用条件を考えると、誰ともつながっていないとは考え辛いな」

 四年弱、門閥貴族の世界を間近で見てきたファーレンハイトとしても、後押ししておきながら、一人も血族を差し出さないなどあり得ないことなのは分かる。

「……ということは、クロプシュトック侯爵の縁者も含まれていたのですか? シュトライト大佐」

 フェルナーの問いにシュトライトは渋い顔で頷いた。

「ええ。私は陥れた廷臣が二百と申しましたが、死を賜ったのは百七十名ほど。残りの三十名ほどは釈放されました」

「善意や慈悲で解放したわけではあるまい」

「もちろんです、ファーレンハイト。彼らは生け贄にされるために、生かされたのです。同じような罪で処刑されたもの、処刑されないもの。処刑され罰せられた者たちは、処刑されず罰せられないものを恨み……そして”きっと奴らが自分たちを売ったに違いない”と邪推しました」

 

 この辺りはオフレッサーだけを生かして帰し、門閥貴族たちに疑念を植え付けた原作のオーベルシュタインの策に近い。

 

「帝国としてはそうしなくてはならなかったのです。クレメンツ大公を推した貴族たちは、クレメンツという旗を失ったからといって、易々と引くような人たちではありません。その頃、陛下にはすでにルートヴィヒさまもいらっしゃいましたので……はっきりと言えば、幼帝ルートヴィヒを立てて、邪魔な親は殺害するという策もありました。皇族を害するとは大それた計画ですが、陛下はその頃、勘当寸前でしたので、そのように考えた者たちがいても……おかしくはなかったそうです」

 

 むしろ放蕩大公をその座に就かせるよりは、育てようによっては”まとも”になりそうな、幼子のほうが良いと考えた者たちのほうが、よほど帝国のことを考えていた ―― のかも知れない。だがそれは、また内乱となる。

 

 内乱に次ぐ内乱……に次ぐ、内乱。極端な国力の低下を招く内乱に、終止符を打つためには、生け贄が必要だった。それがクロプシュトック侯爵。

 

「クロプシュトック一門の者は死を賜ることなく、領地を削られることもなく、クレメンツ大公の謀略に関与していながら、一切の罰を与えられませんでした。その結果、公職から追放され、社交界の門を閉ざされました」

 

 クロプシュトック侯はクレメンツ大公を売って生き延びた。次は自分たちが売られるかもしれない ―― その噂はすぐに広まった。

 こうして疑心暗鬼にとらわれた彼らは、なし崩し的にフリードリヒ側に付き、以来二十五年間、帝国は灰色ながらも内乱が起こることはなかった。

 

「人の性と申しましょうか、クロプシュトック一門の排除に精力的だったのは、共にクレメンツ大公を推していた人たちでした。こうして生け贄により、帝国は一応の落ち着きました」

 

 クロプシュトック侯爵がクレメンツ大公側に付きながら、フリードリヒ四世の世でも侯爵としての爵位を失うことなく、軍人の地位と領地を所持し、オーディンへの入国が許可されているのは、このような理由があった。

 

 それはまさに、貴族として生き恥をさらすような人生であり、クレメンツ大公の忠臣として、一族郎党、みな処刑されたほうがマシな生き方であった。

 


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