閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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連続投稿です(^^)


Nintiethird Judge

 

三途の川に激しい激突音と衝撃が数多に発生し、クレーターもボコボコになり無残な光景に変わり果てている

その中心でバチバチと雷撃を放ち自身も全身に雷を纏わせている先代閻魔大王のゴクヤマと体の節々を動かすたびに衝撃波が発生し青い一本角の青鬼の蒼隗潼が互いに息を切らして佇んでいた

二人の勝負は互角でありどちらも一歩譲らずといったところであり、三途の川に被害が及ぶだけであった

 

「中々やるじゃねぇか、俺も隠居している間に腕が落ちたみたいだな。体がなまりきってやがる」

 

「そりゃそうだ、俺は常に最前線で戦っていたんだ。あの時以来も朧技と一緒に自然に触れて地獄の環境を乗り越えてたんだ。罪にすがりよって身を潜めているお前とは違う!」

 

隗潼は両手を前に突き出して両の掌から巨大な衝撃波を発生させる

衝撃波はゴクヤマを飲み込み大地を勢い良く削り取る

 

「ゴクヤマ、何故美原千代を殺したんだ?どうして何の罪のない現世の人間に手を下したんだ?」

 

「俺が直接手を下したわけじゃねぇ、死神に依頼して美原千代をこっちに招いたにすぎない」

 

「なら、どうしてゼストに美原千代を殺させたんだ?」

 

そう、ゴクヤマは美原千代という現世で平凡かつ平和に暮らしていた一人の女性を死神であるゼストの手で殺させたのだ

死神にとって殺しや暗殺は仕事の類なのだが隗潼は悲しそうで怒りに満ちた瞳で訴えた

ゴクヤマは静かに口についた血を拭いながら応える

 

「奴はこちらに招く必要があった。ライラの生まれ変わりである彼女は俺の隣に来るべきだったんだ」

 

「.....どういうことだ、ライラさんの生まれ変わり?」

 

「輪廻転生の輪を知っているな?こちらの世界で死んだ者はそこに移動して新たな魂となるのだ」

 

つまり来世で病死したライラが輪廻転生の輪に乗り記憶を綺麗に洗い流され新たな魂へと転生する準備がなされていた、その生まれ変わり先こそが美原千代だと言うのがゴクヤマの推測であった

顔が同じという理由でゴクヤマはこのような奇行に走り絶対にしてはならない罪を背負い閻魔大王の職を辞退して息子に明け渡したのだ

 

「俺たち閻魔には魂を見る目がある、たとえ輪廻転生で生まれ変わったとしてもライラと美原千代の魂が一致していることなど見破ることは造作もない」

 

ゴクヤマは雷撃を再び隗潼に放つ

 

「俺はライラなしでは生きてはいけなかった。ヤマシロも母を失い悲しんでいた、ヤマクロに至っては母の愛情も十分に貰えぬまま帰らぬ者となったのだぞ!あいつらの辛さが貴様にわかるとでも言うのか!?」

 

ゴクヤマは特大の雷撃を放つ

そう、ゴクヤマがこのような事を行ったのは自分の心の傷を埋めるためや自分の心の支えを再び見つけること以前に、第一に幼い息子達のことを思い父親としての責務を不器用なりにも果たそうとしていたのだ

今回ゴクヤマが裁判所を襲いヤマシロ達の前に立ち塞がったのも自分の犯した罪を息子達に知られたくなかったからである

こう聞けば自分の罪を知られたくないように聞こえるが実際は父親の威厳を保ち美原千代と出会うことを避けたいというゴクヤマの思いやりが起こした行動だったのだ

 

しかし、隗潼は雷撃を受けてもなお立ち上がりゴクヤマの言葉を正面から全力で否定する

 

「ふざけんじゃねぇ!ヤマシロ達のことを想った?どの口がそう言いやがる、さっきまで殺すつもりで雷撃撃ってただろ!それにゼストの傷はそれだけじゃねぇ!自分の姉の生まれ変わりをお前は殺させたんだ、今回のことで一番の被害者はヤマシロでもヤマクロでも俺でもお前でも美原千代でもない、ゼストだ!俺もあいつにミァスマを渡したから何も言う権利はないのかもしれない。だけど俺はお前の言葉を肯定するつもりはねぇ!」

 

隗潼は喉が張り裂けそうになる勢いで叫んだ

そしてここ数ヶ月の出来事の元凶に向かって全力で殴りつける、もしゴクヤマが美原千代をゼストに殺させなかったら今回のことは起こらなかったかもしれない、もしゴクヤマが引退しなければ隗潼はミァスマを盗み出しゼストに渡すことはなかったかもしれないし隗潼達も天地の裁判所と総当り戦にならなかったかもしれない、もしミァスマを盗まなければヤマクロの封印が解けて天狼が死ぬことはなかったかもしれない、もしミァスマがゼストの手に渡らなければヤマシロと戦うことはなかったかもしれない

もし、という仮の話をしてしまえばここ数ヶ月の出来事を全てひていしてしまうことになってしまう

もしかしたらもっと前から気をつけていればこんなことにならなかったのかもしれない

 

隗潼の拳は肘からの衝撃波で加速し拳から衝撃波を発生させることで威力を底上げした、隗潼の怒りと哀しみの篭った拳はゴクヤマの顔面を正確に捉える

ゴクヤマは何の抵抗もせずにその拳を静かに受け止めた

 

「.......そうだな、俺が愚かだったのかもしれない。俺は大馬鹿で駄目な父親だな、誰一人守れやしない」

 

「そんなことはねぇ。俺が天地の裁判所を攻めたとき、あの時俺はお前に救われた。お前があそこで俺を止めてくれなかったら俺は娘を、麻稚を確実に殺していた」

 

「.....本当に、俺たちは不器用だよな」

 

「.....今頃気づいたのかよ、大馬鹿野郎」

 

ゴクヤマと隗潼は笑みを浮かべる、隗潼はゴクヤマの顔面から拳を引っ込める

そのままゴクヤマは力無くばたりとその場に倒れた

隗潼も体に限界を感じてその場に仰向けになって空を見上げる形で静かに倒れた

三途の川の空には何故か現世の光景が映っていた

 

 




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