閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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しばらくはこんな感じで進行していきます(^^)


Sixtiesecond Judge

 

地獄にそびえる巨大な天地の裁判所で働く鬼たち専用の共同住まい、麒麟亭は男性棟と女性棟が大広間を中心に分かれており女性棟の方がやや高い位置に建設されている

そして大広間の真上には大きな娯楽場がある、現世で言うところのカジノと言ったところだ

競馬、ギャンブル、トランプ、ルーレット、スロットマシン、エトセトラエトセトラと言ったところである

他にも映画やボウリングなどのアミューズメント施設も何故か充実しており仕事で疲れた鬼たちの唯一の楽しみの場でもあるのかもしれない

 

そして今日も娯楽場は大繁盛しておりあちこちから大量の熱気と欲望が渦巻いている

 

ちなみにここの強豪常連にはそれぞれ二つ名があり、彼らの戦いを傍観するのもまた娯楽と化していた

 

「おい、今日は四天王が大富豪で勝負するらしいぞ!」

 

「マジか、俺は誰に賭けようかな〜」

 

「んなコト言ってる場合かよ、早くしないと満席になっちまうぜ。もう最前線席は既に満席だってよ!」

 

「マジかよ!じゃあヤベェじゃん、急ごうぜ!!」

 

その中でも特に強い者は四天王と呼ばれており、四人全員が揃い真剣勝負をするのはかれこれ七年ぶりである

四天王の戦いを賭けて楽しむような輩も少なくはない

 

「おい、あれ真紅の魔女の亜逗子姐さんじゃん!やっぱ仕事の時よりもこっちの方が魅力あるよな!」

 

「あぁ、あの人のドレス姿なんてここでしか見られないからな!」

 

真紅の魔女、紅亜逗子

五代目閻魔大王ヤマシロの側近の一人にして四天王の中での実力はナンバー2と言ったところである

 

「今日も荒稼ぎしてやんよ」

 

普段とは違うどこか美しく妖艶で荒々しい雰囲気はそれだけでギャラリーを魅了していた

 

「ね、ねぇ!あっちの殿方って漆黒馬の貴公子じゃない!?」

 

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!瀬野様ーーーーーーーーーーーーーー!」

 

「こっち向いてーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

漆黒馬の貴公子、瀬野逸人(せのはやと)

娯楽場のプリンスで白と灰色のツートンヘアに黒スーツ、右目元には刺青が刻まれている

四天王内の実力はナンバー3である

 

「....まったく、だから大広間とここにはあまり来たくないんだ」

 

ハァ、と瀬野はため息を一つ漏らし肩を竦める

彼自身賭博は嫌いではないのだがギャラリーの女性がどうも苦手らしく宴などにもあまり姿を見せない、一日のほとんどを部屋に篭っていることもある

 

「お、あれは仮面道化師じゃねぇか!?」

 

「今日は一体どんな奇跡が見れるんだろうな、楽しみだぜ!」

 

「私はそれよりもあの仮面の下の美しい素顔が気になる!」

 

仮面道化師、楠華本性(くすかほんしょう)

素顔を一切見せない男で常に仮面を被っている

その素顔は謎に包まれており素顔を見たものは幸せになれる、なんて都市伝説まで完成してしまっている

四天王最弱だが実力は相当のモノである

 

「お、ついに来たか!」

 

「伝説の賭け職人...!」

 

「奴の通った道にはコイン一つ残らないと言われている伝説の!」

 

「やっぱし貫禄が違うよな、惚れそうだぜ」

 

「え、おま、そっち系...」

 

「違うわ、アホゥ!!」

 

伝説の賭け職人、金平貪欲(かねひらどんよく)

四天王最高年長者で実力も四天王トップクラス

二メートルを越える身長とそれに見合う体格が更にその雰囲気を引き出している

 

「久々に本物のゲームを見せてやるわ、若造ども」

 

彼はゴクヤマや蒼隗潼とも同期であるがぎっくり腰が悪化してしまい現役引退を果たすも陰でコソコソとこの場所を維持するためだけや働いている

 

「やっぱ威圧感が違うね、流石は生きる伝説だ」

 

「爺さんと久々にやれるとはな、あたいもテンション上がってきたぜ」

 

「.....集中」

 

三者三様の思いを胸に、今決戦の舞台へと四天王はそれぞれ一歩を踏み出す

そして舞台に立った戦士達はそれぞれ手元に置かれた手札を手に取った

 

 

 

「さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!いよいよ始まりました、七年ぶりの四天王による真剣勝負!司会進行は私、宴会の顔とも呼ばれている唐桶祭次が担当させていただいております!」

 

そしてそのステージの近く、客席の外のモニター付近で唐桶祭次による実況が行われていた

 

「さてではそろそろ始めましょう、この勝負貴方は誰に賭けますか?戦歴から判断するもよし、容姿で判断するもよし、運に任せてみるのもまた一興でしょう!」

 

唐桶の言葉に辺りはざわつき始める

ある程度四天王の賭けがあることは予測していたのだがいざ賭けるとなると迷いが見え始めているのだ

勝てば大金、負ければ破産

ここ大一番の勝負に娯楽場のムードは徐々に上昇していった

 

「あの、祭次さん。毎回ここはこのような感じなのですか?」

 

「なんだよ枡崎、お前ここ始めてなの?」

 

「今日は亜逗子様に突然連れられてきました、ほぼ無理矢理...」

 

「だったら覚悟を決めて帰るのは諦めろ、亜逗子の姉御が帰るなんて絶対に許さないからな。後が怖いぞ」

 

「き、肝に免じておきます」

 

枡崎仁、亜逗子の部下で主に資料室にいることの多い頭脳派でこのような娯楽場とは縁がないので慣れない様子である

今回は唐桶の手伝いをすることになっている

 

「いいからとりあえず盛り上がっとけ、ここは盛り上がらないと押しつぶされる場所だからな」

 

唐桶が枡崎にマイクを手渡す

彼は常にマイクを三つは携帯しておりこのような時などに役に立てている

 

「無理に話さなくてもいいから格好だけでもそれっぽくしておけ、浮くぞ」

 

「は、はい!」

 

「ではそろそろお時間です、皆様お決まりでしょうか?では、第二スクリーンをご覧ください!」

 

そして第二スクリーンに賭け率がドーンと表示された

第一スクリーンではもう今まさに勝負が始まろうとしていた

 

 

 

一方、亜逗子が娯楽場で優雅に勝負をしている同時刻三途の川では蒼麻稚とその部下たちは地獄が崩壊寸前に陥った時から急激に数を増やした餓鬼の始末に追われていた

漏れ出した瘴気が三途の川にまで影響を及ぼしてしまい修復も同時に行っている

 

「まったく、一向に数が減らないですね...」

 

「仕方ありませんよ麻稚の姐さん、餓鬼は瘴気の残留思念のようなモノですからね。あれだけ大量の瘴気が地獄から漏れ出したんじゃ自然と餓鬼の数も増えちまいますよ」

 

ハァ、と麻稚は大きくため息をつく

愛用のスナイパーライフルを何を思ってか最近銃口をマシンガンの様に改造したので序盤は実験とか何とかでテンションは上がっていたのだがこうも長時間続けていると流石に飽きてくるのは人間も鬼も同じである

 

「で、あと何億体血祭りに挙げたらよろしいのでしょうか?」

 

「真顔でサラッと怖いこと言わないでもらえませんか!?別にそんなに始末する必要はありませんよ、バランスも考えてあと二百ちょっとですから!」

 

「..............................足りない」

 

「お願いですから必要以上に始末しないでくださいね!」

 

麻稚の側近、畠斑謡代(はたむらようだい)は必死に上司の暴走を止めようとありとあらゆる手を使って彼女を落ち着かせる

畠斑は麻稚の部隊では最も信頼のある男で他の部下たちからの信頼も厚い実力者で唯一の麻稚のストッパーでもある

彼女が暴走したおりには必ず畠斑が呼び出される、ヤマシロでも止められないことがこの男は止めることができてしまう

 

「増援を頼んでもいいんですよ、前回みたいに閻魔様にお手を借りることだって不可能ではありませんよね?」

 

「いえ、それはダメ」

 

麻稚は声のトーンを下げてボソリと呟く

 

「閻魔様は最近仕事が溜まっているのでそんなことをしてる暇はないでしょう、ただでさえ裁判が続いているのでお疲れなのに雑務も多い。しかも最近何やら現世で人が大量に死ぬような何かも行われているようですし」

 

そう、最近ヤマシロは本当に休む暇がないほど多くの仕事を抱えているのだ

死人も続々とやって来て問題のある者も多く裁判も連続で行うことだってあったのだ

閻魔大王はこの来世を管理し亡者を裁くなどの仕事が主だ、だからこそ現世とのバランスも閻魔大王によって保っていると言っても過言ではない

だからこそこういう細かい部分にまで目が行き届かないので鬼たちを雇い仕事を頼んでいるのだ

 

「私は閻魔様の片腕、もう片方の腕が何をしているなんて興味すらありませんが私は私の使命を全うするまでです!」

 

「姐さん...」

 

「畠斑さん、餓鬼が現れました。行きますよ!」

 

「は、はい!」

 

麻稚はスナイパーライフルを構えて、畠斑は金棒を肩に乗せて餓鬼に攻撃を仕掛ける

彼らの仕事は餓鬼の始末と三途の川の管理

そして閻魔大王の仕事は別にある

他人の仕事を手伝う前に自分のすべきことを全うせよ、それは誰かの教えなのか過去の偉い人が言っていたことなのかは知らない

麻稚の部隊は一旦合流を果たし分担エリアの変更と編隊を行なった

 

「では、引き続き頑張りましょう」

 

 

 

この時、三途の川の異変が餓鬼の急増によるモノだけでないことはまだ誰も気がついていなかった

 




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