閻魔大王だって休みたい   作:Cr.M=かにかま

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間章
美原千代


 

私は願った

 

彼に想いを告げられずに逝ってしまったあの日から

 

私が消えてしまったあの日から

 

彼との日々が頭を過る

 

 

秋、初めて彼と出会い自己紹介をした

散りゆく落ち葉がまるで私の心を暗示しているようだった

ある日彼を私の家に招いた

私は部屋の片付けが終わっていないのにも関わらず彼を招いた

私の顔はおそらく夕焼けのように真っ赤だったでしょう

 

 

冬、私は彼に白いゲレンデに誘われた

降り積もる雪の中で彼とあっという間の楽しい時間を過ごした

彼と一緒にリフトに乗ったことはいい思い出だった

確か私がスキーで彼がスノーボードだった

彼の巧みな滑りに私の目を奪われた

 

 

春、今度は私が彼を花見に誘った

他にも友人がいて彼と二人になれなかったけれど彼も楽しそうだった

私の友人、彼の友人も楽しそうだった

私の作った料理に彼は美味しいと言ってくれた

舞い散る桜を背景にした花見は本当に楽しかった

 

 

梅雨、私は突然自宅で見知らぬ男と出会った

黒いマントに黒い髪をなびかせた長身の男だった

その男は悲しそうな表情と驚いた顔をして私を見ていた

雷も鳴り響いた大雨の日だった

私は男に殺されたらしい、らしいと言うのは実際何が起こったのかよくわからなかったから上手く表現できない

ただ、男は申し訳無い、という一言を残した

そして私は見たこともない場所にいた

もしかしたらあの世なのかもしれない

私は他の人たちに流されるまま一本道をひたすら前へと進んだ

すると目の前に大きな建物がそびえていた

私はその建物に入ると一人の男に声をかけられ別室に案内された

 

そこから先はよく覚えていないけど私は天国と呼ばれる場所にいた

私は彼のことを忘れられなかった

私は彼に会いたいと泣きながら一日中部屋に篭った日もあった

 

 

夏、私が天国にやって来てから数週間という日々が過ぎ去った

もう何日涙を流しただろう

もう何日部屋に篭っていただろう

時たま彼のことを頭に思い浮かべては思い出す

そして私はある日ある決意を心に抱く

しかし、それは手掛かりがなく長い年月を掛けても出来るかわからなかった

それでも私は構わなかった

彼ともう一度会いたいと願い続けていればいつか会える

私は彼とただただ会いたかった

 

 

 

そして決意を抱いた日から5年経った今日

彼は今何をして幸せに生きているだろうか

私はひたすら願い続けた

彼と出会えるならば私は喜んでこの身を捨て去る覚悟さえも出来ていた

それがたとえ彼が死んでしまうことを意味していることだとしても

 

 

また、彼ともう一度、あの楽しい日々を....

 

 

 


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